アリナミン製薬の生薬・漢方薬事典

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漢方の疑問・お悩みQ&A

「病気ではないけれど、なんだか最近体の調子がすぐれない・・・」そんなときこそ、漢方薬の出番です。しかし、漢方の場合、自分の体質に合っていなければ期待していた効果が得られないこともあります。
ここでは、よく耳にする症状をいくつかピックアップ。症状別に、漢方処方について漢方の専門家 花輪先生の解説をご紹介します。

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Q1.

ガンコな便秘で悩んでいます。
でも、便秘薬はお腹が痛くなりやすいので使うのをためらってしまいます。

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A.慢性的な便秘でお困りなら、「大黄甘草湯 だいおうかんぞうとう」をお試しください。

便秘の原因はさまざまですが、腸の動きがにぶることで生じている便秘には「大黄甘草湯」という漢方がおすすめです。

大黄甘草湯は、腸内細菌により瀉下効果をもたらしてくれる「ダイオウ」と、ダイオウの作用を助ける「カンゾウ」という生薬を組み合わせて作られた漢方薬です。

自然に近いお通じなので、大黄甘草湯は飲んでもお腹が痛くなりにくいんですよ。

ただ、ある程度便が出てしまうと、腸内細菌のバランスにも変化が生じます。もし、同じ分量を服用しても効き目が違う場合には、お腹の調子をみながら服用量を調整するとよいでしょう。

ちなみに、大黄甘草湯は便秘にとても効果的なお薬ですが、抗生物質を服用されている方では、腸内細菌が減少してしまい、ダイオウの効き目が少なくなってしまうのです。

また、ダイオウには体を冷やす効果もありますので、冷え性の方の中には別の便秘薬の方が効果的な場合があります。心当たりのある方は、一度、医師や薬剤師へ相談してみてください。

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Q2.

最近生理の周期が不規則で、期間があいたり、しばらく続いたりします。
その他、めまいやのぼせた感じ、一方で冷えも気になります。

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A.めまいやのぼせなど更年期障害の症状緩和には「連珠飲 れんじゅいん」がおすすめです。

女性の更年期は、一般的に閉経前後の45歳頃からはじまります。更年期障害は、のぼせやめまい、冷えやむくみ、イライラなど、いろいろな症状が出てきますが、多彩な症状を改善するのは漢方薬の得意分野!更年期障害の治療も、その得意分野のひとつなんです。

生理の量や周期が変動して貧血気味になったり、めまいやのぼせでポーッとする、一方で冷えに悩まれている場合などには、「連珠飲」がおすすめです。

ただし、連珠飲には体を温めるジオウという生薬が入っているので、胃腸の弱い方で胃もたれを感じるときは、別のお薬に変えた方がよいでしょう。

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Q3.

月末の締切り前など、仕事が忙しくなると、のどに何かつまったような不快感がして気持ちが悪くなります。

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A.ストレスなどによる のどのつかえ感にも、「半夏厚朴湯 はんげこくぼくとう」というお薬があります。

風邪を引いているわけでもないのに、のどに何かがひっかかっているような異物感があり、飲み込もうとしても飲み込めない。吐き出そうとすると、今度は吐き出せない。そんな“のどの違和感”を感じたことはありませんか?

また、不安をあらかじめ予期して心配し、そのせいでお腹が痛くなったり、何となく胸がつまるような感じがしたりすることはありませんか?

このような症状に心当たりがある方は、漢方でいう“気うつ”という状態です。ストレスなどによって気の巡りが滞り、心身の両面に不調が生じているのです。このような症状を感じる方は、ぜひ一度「半夏厚朴湯」というお薬をお試しください。これは、病名がない体の不調にも漢方なら治療が行えるという、漢方の特徴を示すいい例ですね。

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Q4.

大切な会議やプレゼンの前になると、みぞおちの辺りがキリキリと痛んだり、胸やけで気分が悪くなります。

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A.神経性の胃痛や胃炎は「安中散 あんちゅうさん」でやわらげましょう。

ストレスなどによって胃酸の分泌が多くなると、胸やけや胃痛を感じることがあります。こうした症状は、日頃から顔色が悪くて胃腸も弱く、きゃしゃな方に多くみられるようですね。試しにみぞおちをグッと押してみて、症状が緩和されるように感じたら、神経性胃炎の可能性があります。

そんな方におすすめしたい漢方が「安中散」です。安中散には、胃酸を和らげてくれるボレイや、キリキリとした胃痛を止めてくれるエンゴサクやショウキョウが含まれています。このお薬の場合、飲んでみて「おいしい」と思われたなら、このお薬があなたに合っている証拠。

薬がおいしいだなんて意外に思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、生薬の香りや味を楽しみながら治療が行えるのも、漢方薬ならではの特徴なんですよ。

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Q5.

学生時代から体力には自信があるのですが、なぜか仕事で営業まわりに行くと下痢になってしまいます。

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A.緊張や不安などのストレスが原因の下痢は「半夏瀉心湯 はんげしゃしんとう」でおさえましょう。

がっちりとした外見で体力もあり、疲れを感じにくいタイプなのに、なぜか大事な会議になるとキューとかコロコロとお腹が鳴って困ってしまう・・・このような症状の原因は、緊張や不安といったストレスにあることも少なくありません。

この場合は、単なる下痢止めではなく、胃腸の調子も整えてくれる「半夏瀉心湯」という漢方薬がおすすめです。

こうした症状に加え、みぞおちあたりを押したときに、独特の硬さがある方は一度試されてみてはどうでしょうか。

漢方では、こころと体は一つにつながっていると考えます。ストレス性の症状には、不調を感じている部分だけではなく、心身を同時に治療する漢方薬が適しています。

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Q6.

子育てのストレスでついつい暴飲暴食に…
この胃もたれ、漢方でなんとかできませんか?

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A.暴飲暴食+ストレスのときは、「香砂平胃散 こうしゃへいいさん」でケアをしましょう。

食べすぎや飲みすぎによる胃もたれは、消化不良をおこしている可能性があります。

このような暴飲暴食による胃の不調には、「香砂平胃散」を飲むとスッキリします。胃の機能を助ける平胃散に加え、コウブシやシュクシャが入っていますので、消化剤としての役割だけでなく、気分を落ち着かせる効能も持っています。

そのため、ちょっと食べすぎたかなと思うときに服用すると、胃の不快感がスッキリとし、さらにストレスによるモヤモヤとした気分も落ち着かせることができますよ。

また、胃痛には、更にシャクヤクが配合されたものが効果的です。

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Q7.

年齢のせいか、疲れやすくてどうも元気が出ません。トイレも近いので、最近は外出を避けて家にこもりがちです。

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A.加齢にともなう体力の低下などには、「八味地黄丸(八味丸) はちみじおうがん(はちみがん)」を上手に利用しましょう。

加齢にともなう諸症状としてみられる足腰の痛みや疲れ、頻尿などでお困りの方は、「八味丸」という漢方薬を試してみてはいかがでしょうか。

八味丸は老化にともなう諸症状を緩和します。文字通り、8つの生薬ががっちりとコンビネーションを組んで働きかけてくれるお薬で、鎮痛作用と体力増強作用をあわせ持っています。

ただし、八味丸にはジオウが含まれているため、胃腸の弱い方には食欲不振などの症状がみられる場合もあります。ですので、胃腸機能に不安がある方は、更に胃腸機能を高めるヤクヨウニンジンを配合したものだと、ジオウによる食欲不振や胃のもたれが軽減されます。

また、ヤクヨウニンジンには強壮作用もありますので、倦怠感が強いという方にもおすすめですね。