コロナの初期症状を解説!よくみられる症状や受診の目安とは

コロナの初期症状を解説!よくみられる症状や受診の目安とは

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)(以下、新型コロナ)は、これまで多くの変異株が報告され、初期症状や経過も流行によって変化し続けています。

ワクチンや治療薬が実用化されたことで、当初みられたパンデミックの混乱はなくなりました。また、感染症法上、毎年流行するインフルエンザと同じ扱いになり、対策は個人に委ねられることになりましたが、ウイルスがこの世から消滅したわけではなく、今も変異を繰り返しながら流行は続いています。命に危険が及ぶ確率は低下したとはいえ、いまだ侮ってはいけない感染症であることには違いありません。

ここでは、現在報告されている新型コロナの初期症状を中心に解説し、そのような症状が現れた場合の対処法もお話しします。

※このページの情報は主に2023年11月時点の情報です。最新情報は公的機関のホームページなどでご確認ください。

2024年1月26日作成
2024年7月31日更新
(一部、最新情報に基づき、当社で追記更新を行っております)

山本 舜悟 先生

監修

山本 舜悟 先生 (大阪大学大学院医学系研究科 変革的感染制御システム開発学 寄附講座准教授)

新型コロナにおける初期症状とは

新型コロナにかかった際の症状として、パンデミック当初は嗅覚や味覚の障害が生じることが報告され、そのような障害の有無を確認することが、他の呼吸器感染症と見分ける手掛かりとして、医療従事者の間でも利用されていました。

ところが、新型コロナのウイルスは、武漢株に始まり、アルファ株、ベータ株、デルタ株、オミクロン株と大きく変異してきています。オミクロン株以降は、嗅覚や味覚障害の頻度は減少し、風邪症状でみられるのどの痛み・せき・鼻症状といった上気道症状や、インフルエンザに似た倦怠感・発熱・筋肉痛といった全身症状が生じることが多くなりました。

症状の出方はさまざまで、風邪症状のみが発症する人、インフルエンザに似た全身症状や消化器症状が現れる人、あるいはまったく無症状の人など、個人差が大きくなっています。

また、オミクロン株の流行以降は、感染力が上昇した一方で、ワクチンの普及も相まって重症化する人は少なくなってきています。

とはいえ、高齢であったり基礎疾患を有すること、ワクチン未接種であることは、重症化のリスク因子であることに変わりありません。したがって、オミクロン株以前と同様に、予防すること・初期症状をきちんと把握して対処することが大切です。

なお、2023年秋に、新型コロナのオミクロン株の新たな派生型としてEG.5株(通称:エリス)が発生しました。2024年春以降は、同じくオミクロン株から派生した変異ウイルスKP.3株の感染が増加傾向です。KP.3株は、感染力が強く、ワクチンや過去の感染による免疫を逃れる新しい傾向がみられます。デルタ株からオミクロン株に変異したときのような大きな変化の他にも、このような小さな変化はしばしば発生しており、新たな変異株の登場にともなって、今後も引き続き感染時の初期症状が変化していく可能性があります。

よくみられる初期症状

新型コロナ感染時の主な初期症状(オミクロン株流行以降)は、鼻からのどにかけての上気道の症状と、全身症状です。

上気道(鼻から咽頭)の症状として代表的なものは、鼻水鼻づまりのどの痛みせき、といった症状で、のどの痛みがひどい場合、食べ物や飲み物をのみ込めないこともあります。

全身症状としては、発熱、倦怠感、筋肉痛、頭痛が挙げられます。

新型コロナの初期症状と他の病気との違い

新型コロナの特徴的な症状として、嗅覚や味覚障害があります。パンデミック初期とオミクロン株流行期以降を比較した場合、この特徴的な症状が現れることが少なくなった印象はあるものの、数か月以上続く人もいます。流行株の違いだけでなく個人差も大きいものなので、初期症状からインフルエンザや風邪などの他の呼吸器感染症と新型コロナを区別することは、医師でも難しいとされています。

新型コロナ・インフルエンザ・風邪の初期症状の違い

新型コロナとインフルエンザを区別するのは難しいものの、あえて違いを挙げるならば、新型コロナよりもインフルエンザには「典型例」が多いといえるかもしれません。インフルエンザでは、突然の高熱、筋肉痛などが発症後の早期にみられやすく、経過を通してせきをともなう傾向がありますが、一方で、コロナの初期症状は非常に多彩です。

また、新型コロナはインフルエンザと比較して、症状が現れている期間が長い傾向があります。さらに、インフルエンザが冬季を中心に流行するのに対して、新型コロナは現在までのところ季節性がなく、年間を通して流行を繰り返しているという点も違いとして挙げられるでしょう。

一方で、風邪は微熱や倦怠感、のどの痛みなどで始まり、少し遅れて鼻水や鼻づまり、せき、たんなどが現れることが多い傾向があります。インフルエンザでは発熱などの症状が急に現れやすいのに対して、風邪ではゆるやかな経過をたどるイメージです。
そのため、新型コロナの初期症状と風邪のひき始めは、インフルエンザと新型コロナの違い以上に、区別がつきにくい場合があります。また、KP.3株のように、夏に流行の波が現れると、発熱・倦怠感・頭痛などは熱中症の症状とも類似をしているため、注意が必要です。

こちらの記事もチェック。
熱中症

ウイルスを排出する期間

一般的なウイルスを排出する期間ですが、風邪は発症から数日間、インフルエンザは発症前日から発症後3~7日間、新型コロナ(オミクロン株)は発症2日前から発症後7~10日間といわれています。インフルエンザと新型コロナは発症する前(潜伏期間)からウイルスを排出しています。

発症までや症状が続く期間の長さには個人差がありますので、せきやくしゃみなどの症状が続いている場合には、外出を控えたり不織布製マスクを着用するなど、周りの方へうつさないよう配慮をしましょう。

新型コロナの重症化・後遺症とは

重症化

オミクロン株以降少なくはなってきましたが、新型コロナでは重症化してしまうことがあります。特に、高齢者や基礎疾患のある方では重症化するリスクが高いことも報告されています。

例えば、呼吸器感染症自体が悪化して起きる肺炎が挙げられます。息苦しさを感じるような場合は、早めに医療機関にかかりましょう。

後遺症

新型コロナに感染すると、後遺症が生じてしまうことがあり、「long COVID」などと呼ばれています。

long COVIDは、感染性が消失したにもかかわらず、他に原因が明らかでなく、

  • 感染してすぐの時期から持続する症状
  • 回復した後に新たに出現する症状
  • 症状が消失した後に再び生じる症状

の全般をさしています。

long COVIDの症状は、疲労感・倦怠感、関節痛、筋肉痛、せき、息切れ、胸痛、脱毛、記憶障害、集中力低下、頭痛、抑うつ、嗅覚障害、味覚障害、動悸、下痢、腹痛、睡眠障害、筋力低下など、多岐にわたります。
新型コロナは初期症状だけでなく、後遺症が現れた場合のその症状にも、かなりの個人差があるのも特徴です。

また、long COVIDがみられる場合、他の人にうつさないか心配になる方もいるかと思います。新型コロナは、発症2日前から発症後7~10日は感染性のウイルスを排出しているといわれており、この期間以降に症状があったとしても、他の人に感染させることはありません。

受診の目安や医療機関への相談

厚生労働省が発信する緊急性の高い13の症状

新型コロナのような症状が現れた場合、感染拡大や医療現場の混乱を避けるために、パンデミック初期には、軽症の場合はまず自宅で療養して、症状が悪化した場合に医療機関を受診するようにというアナウンスが、国からなされていました。

その際に、治療の緊急性が高い状態を意味する症状として、以下のような緊急性の高い13の症状のリストがあわせて示されました(2020年4月)。

その後、ワクチンや治療薬が実用化され、状況が大きく変化してきましたが、現在でも以下のリストに当てはまるような緊急性が高い場合は、直ちに受診または救急要請すべき状態であることには、変わりありません。

<緊急性の高い症状> ※は同居者の観察により把握されること。

表情・外見
  • 顔色が明らかに悪い
  • 唇が紫色になっている
  • いつもと違う、様子がおかしい
息苦しさ等
  • 息が荒くなった(呼吸数が多くなった)
  • 急に息苦しくなった
  • 生活をしていて少し動くと息苦しい
  • 胸の痛みがある
  • 横になれない。座らないと息ができない
  • 肩で息をしている
  • 突然(2時間以内を目安)ゼーゼーしはじめた
意識障害等
  • ぼんやりしている(反応が弱い)
  • もうろうとしている(返事がない)
  • 脈がとぶ、脈のリズムが乱れる感じがする

5類移行後の医療機関へのかかり方

新型コロナは2023年5月7日まで、「2類感染症」と位置づけられていたため、発熱外来などのある医療機関で診療を行っていました。その後、2023年5月8日に「5類感染症」という位置づけになり、今では一般の医療機関で診療を受けられるようになっています。

現状において感染拡大抑止のため、以下のような手順で受診することが推奨されています。

まずはあわてずに、ご自身で症状を観察して、家庭の常備薬をチェックしてみてください。家にかぜ薬・せき止め薬・解熱鎮痛薬などがあった場合、効能を確認し、症状に合わせて服用することができます。新型コロナ陽性か陰性かどうかは、国が承認した検査キットを使い確認することができます。結果が陽性の場合、症状が軽ければ引き続き自宅で療養を続けます。症状が重くて受診を希望する場合や、重症化リスクの高い人(高齢者、基礎疾患がある方、妊婦など)は、医療機関へ連絡をとって指示を受けましょう。

家庭でのキット検査で陽性、または検査はしていないけれども新型コロナではないかとの疑いがあって受診する場合は、他者へ感染させてしまうリスクを抑えるために、受診しようとする医療機関に受診の仕方を事前に相談しましょう。状況によっては、別の医療機関を紹介されることもあるかもしれません。

なお、受診時には、他者へうつさないようにするため、マスクの着用を推奨しています。

また、オンライン診療を行っている医療機関に相談するという方法もあります。

外出自粛期間について

新型コロナが5類感染症になったことで、政府から外出自粛が求められることはなくなり、個人の判断に委ねられるようになりました。

ただし、引き続き次のような推奨が呼びかけられています。
新型コロナを発症した場合は発症後5日経過するまで(発症日を0日としてカウント)、検査キットで陽性ではあるものの無症状の場合は、検査日を発症日とみなして5日間経過するまで、外出を控えてください。

また、症状が軽快しても発症後10日間が経過するまではウイルスが排出されているといわれています。マスクの着用など、他者へ感染させないように配慮するようにしましょう。なお、5類感染症に移行後、濃厚接触者の外出自粛は求められなくなりました。

新型コロナになったかも…?自宅でできるセルフケア

新型コロナは、約8割の方は軽症で経過し、治癒する例も多いことが報告されています。症状によっては、必要に応じてせき止めや解熱剤などの対症療法の市販薬を服用することも検討してみてください。市販薬を服用する際には、医師や薬剤師に相談をすると安心です。

新型コロナ感染時は、発熱などのために体力を消耗していたり、食欲が落ちてしまうことがあります。そのような場合には、栄養ドリンクやゼリー飲料などで不足しがちな栄養素を補うのも良いでしょう。

なお、高齢者や基礎疾患のある方、子ども、妊娠している方などは、特別な配慮が必要なことが多いので、かかりつけ医や外来対応医療機関に電話などで相談してみてください。

関連する製品

家族が感染した場合

家族が新型コロナに感染した場合は、家庭内感染のリスクを下げるために、感染した本人と家族がマスクを着用するようにしましょう。

生活スペースをできるだけ分けることも大切です。換気や手洗いも家族全員でこまめに行いましょう。

感染から7日程度は、家族内で新たに感染者が発生する可能性があり、特に、初めの5日間はウイルスの排出量が多いため、より注意が必要です。

新型コロナ5類移行後も予防対策を万全に

新型コロナの初期症状は、さまざまな変異株が発生している影響で、他の感染症との区別がかなり難しくなってきています。

感染症法上の扱いは、インフルエンザなどと同じ5類感染症となり、既にコロナにかかったという人も、珍しくなくなってきました。

しかし、新型コロナに感染した際に、症状が持続または悪化するような場合は、危険な状態に近づいている可能性があります。また、高齢者や基礎疾患のある方にとっては、依然として重症化リスクのある病気です。

そのような人たちにうつさないために、必要な場面においては、手洗い、マスク、うがいなど、感染予防対策を心がけていきましょう。

参考文献