のどの痛み、どう対処するのがいいの?
~早いタイミングが鍵?回復との関係~

<監修> 加地 正英 Masahide Kaji
(函館五稜郭病院 総合診療科 診療部長)

かぜのひき始めに「のどの症状」を感じる人が多くみられます。
特に初期には、のどではどのようなことが起こり、悪化させないためにはどのタイミングでどんな対処をすることが望ましいのか。さらに、かぜをひいてしまったら症状をがまんせずに快適に過ごすことが、回復にどんなメリットをもたらすのかについて加地正英先生に解説いただきました。

かぜのひき始めにのどの違和感や痛みを感じるのはなぜ?

かぜのひき始めにのどの症状を訴える人が多いですが、それはなぜでしょうか。
かぜは原因となるウイルスが、のどや鼻の粘膜に付着・感染し、増殖することから始まります。かぜのウイルスには様々な種類があり、ウイルスによってでやすい症状に特徴があります。
主にのどに症状がでやすいウイルスをアデノウイルスといいますが、「アデノイド(のどの奥にあるリンパ組織)」から命名されたウイルスです。また、鼻症状が特徴のライノウイルスもギリシャ語で「鼻」という意味を持つ「ライノ」が由来です。
のどや鼻は、口を通して直接、外部と接するところなので、感染しやすく最初に症状を感じやすいといえます。最初にのどの粘膜にウイルスが付いた頃には、まだ違和感を感じる人は少なく、ウイルスが活発に増殖し始めると痛みや腫れが出てきて、それから違和感を自覚することが多いといえます。
これは体の防御反応によって炎症が起こり炎症性物質が出てきたからです。
のどの症状だけでなく、かぜの症状はすべて炎症によるもので、主にウイルスに対して防御するために作られる炎症物質によって引き起こされるのです。

のどの痛みにはいつどんな方法で対処するのがよい?

のどの痛みで食事が摂りにくかったり、睡眠の妨げになったりした経験のある人もいるのではないでしょうか。そうなると体力は消耗してしまうばかりです。
のどの痛みには、手軽にのど飴やうがいなどでなんとかしようとする人も多いですが、それは必ずしも効果的な対処法とはいえません。
のど飴はのどを潤し、清涼感もあるのでのどがすっきりした感じがしますが、そのように感じるのはなめている間のわずかな時間のみです。だからといって1日中のど飴をなめている人もいますが、それは糖分の摂りすぎにつながります。
また、外出から帰宅後にうがいをすることは大変有効ですが、のどが痛いからといってうがい薬で過度にうがいをしてしまうと、粘膜障害や口腔内の常在細菌まで殺してしまう可能性もあります。
一番よいのは痛みや炎症を抑えてくれる成分の入った薬を服用することです。
市販のかぜ薬の中には、のどの症状を考えた成分が入っているものもあります。
そういったものをひき始めにのむことで、つらい期間を短くすることができます。
また、のどにはいろんな細菌がいて、免疫である程度抑え込まれているので普段は感染しませんが、かぜのウイルスの炎症などで抵抗力が弱って力関係が逆転してしまうことで細菌感染を引き起こし、かぜはさらに悪化してしまいます。
細菌感染の場合、医療機関で処方される抗生物質が必要となってくることもあります。
かぜの症状に早めに対処することは、つらい期間を短くすることでもあり、かぜを不快に感じることなく過ごすコツでもありますが、そればかりでなく、細菌感染を起こして悪化し長引くのを防ぐためにも大切なのです。

のど症状は発熱につながることも

のどには咽頭をぐるっと取り囲んでいる発達したリンパ組織があります。のどにかぜのウイルスが感染すると、そこから全身に感染のシグナルが行きわたるので、全身症状として発熱なども起こってきます。
特にのどに感染するアデノウイルスなどは発熱が起こりやすいといえます。
最初はのどの症状だけでも、進行すると発熱も起こりやすいことを考えると、初期のうちにのどの症状に対処しておくことは悪化させないためにとても重要なのです。
また、発熱は体温を上げてウイルスを増殖しにくくするための防御反応ですが、そのためには40℃程度の体温が必要になるともいわれています。
普通のかぜでここまでの高熱が出ることは少ないですから、熱がそれほど高くないけどつらいと感じる場合には、体力消耗を防ぐためにがまんはせずにかぜ薬で解熱する方がよいこともあります。

のどの痛みに関連する症状と気をつけたい痛みについて

かぜの時にのどの痛みを悪化させるものとして、鼻づまりなどによる口呼吸があります。鼻には外気を加温したり加湿したりといった機能がありますが、口呼吸は、外界の冷えて乾燥した空気がダイレクトにのどに入ってくることになります。
これによってのどへの刺激が増して、痛みの感覚が強くなったり、ウイルスを防御する力が弱くなる可能性もあります。
そんな時は口呼吸の原因である鼻づまりなどを改善する必要があります。
また、炎症によってのどがイガイガしてせきがでることもあります。
これはのどの炎症が刺激となってでるせきで、かぜの初期でも起こってきます。
気をつけなければいけないのはかぜとは違う原因で起こっているのどの痛みです。
多くみられるのが、溶連菌感染症です。
子供にもよく見られ、激しいのどの痛み、高熱、手足に発疹が出たりします。
腎炎を起こす可能性もあるので注意が必要です。
伝染性単核球症もよく見られるものですが、これはEBウイルス等によるもので、のどの痛み、高熱、リンパ節が腫れるといった症状が特徴です。
いずれにしてもかぜの時よりも激しい痛みと、扁桃腺が赤く腫れて膿をもっているような場合には、医療機関を受診することをおすすめします。

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