風邪のひき始めの
正しい対処法とは

鼻水やのどの痛み、咳(せき)、微熱など、少し現れるだけでもわずらわしい風邪の症状。放っておくと悪化してしまい、食欲がなくなったり、起き上がるのもつらいほどの倦怠感など、生活に支障をきたすことはありませんか。

風邪をひいたときに重要なのは、ひき始めの対処。つまり風邪をひき起こすウイルスなどに感染して初期症状が現れたときすぐに対処しはじめることが大切です。ここでは風邪の症状とひき始めのうちの対処法について紹介します。

風邪のひき始め、どんな症状が出る?

風邪(かぜ)は別名「風邪症候群」とも呼ばれ、医学的には急性気道感染症の中に分類される疾患です。鼻からのどを経由し肺へ至る息の通り道(気道)の粘膜に、ウイルスなどの病原体が付着・侵入、そして炎症が引き起こされることで発症します。

風邪の自覚症状としては次のようなものがあります。

・のどの痛み、
・鼻水・鼻づまり、くしゃみ
・咳、たん
・発熱、悪寒(発熱によるさむけ)
・頭痛、筋肉や関節の痛み
・全身の倦怠感(だるさ)

風邪の発症は環境や患者自身のコンディションに左右されるため、ひき始めの症状(初期症状)として自覚されるものには個人差があります。

上記のデータは、市販の風邪薬を購入したことがある男女1,200名を対象に行ったアンケートの結果をまとめたものです。風邪のひき始めに出やすい症状としては、「のどからくるタイプ」と答えた方が約60%と最も多く、次いで「鼻からくるタイプ」「熱っぽさからくるタイプ」の順に多いという結果でした。

タイプ別に出る症状

回答が多かった3つのタイプ別に、どのような症状が多いかさらに具体的に聞いたところ、上記の結果が得られました。

例えば「鼻からくるタイプ」は鼻水やくしゃみなどの症状が中心だと感じていたり、「のどの痛み」についてはどのタイプでも自覚症状として認識する方が多く、各タイプ共通の症状として見られるようです。

なぜ、風邪はひき始めのうちに対処が必要なの?

かぜ薬はウイルスをやっつけるか

風邪薬に関するアンケートを実施したところ「風邪薬は風邪のウイルスをやっつけてくれる」と考えている方が半数以上いることがわかりました。

ですが実際には、一般に風邪への対処法として知られている市販の風邪薬は、病原体に直接作用するものではなく、症状として現れているのど症状・鼻症状・熱などをやわらげるための薬です。

風邪の原因(病原体)は80~90%がウイルスへの感染とされていますが、そのウイルスにも200以上の種類があるほか、細菌のようにウイルス以外のものも原因となる場合があります。「風邪ウイルス」というものはなく、そのうえ、病原体の特定も困難なことがほとんど。さらに、抗菌剤(いわゆる抗生物質)には効果はなく、風邪のウイルスを排除する薬は存在しません(インフルエンザウイルスにのみ治療薬が存在します)。

つまり、風邪を治すには自身の体力と免疫力でウイルスを排除するしかないのです。

そもそも風邪の症状というのは、体内に侵入した病原体に対して体が自らを守ろうとする防御反応の結果起こるものです。 例えば、発熱は体の免疫系を活性化させる号令であるとともに、体内を病原体が苦手とする温度の高い環境にしようとしているのです。また、くしゃみや咳、鼻水などは異物を外に排泄するためのしくみだと考えられます。そのため、本来は症状を無理に抑えることは望ましくありません。

しかし、症状を放っておくとつらいだけでなく、体力を消耗し、風邪が悪化したり、症状が長引いたりしてしまう可能性があります。
調査によると、初期症状が1~2個出た段階で「あれ?風邪かも?」と感じる方が多く、「本格的に具合が悪い」と感じる頃には5個以上もの症状を感じている方が多いことがわかりました。

風邪はひき始めの症状が少ないうちに、自分に合った早めの対処をすることが望ましいといえます。

風邪のひき始めにしたい対策5つ

風邪を治すためには、自分の体に備わっている免疫力でウイルスを排除するほかありません。そして、免疫力を十分に発揮するには、体力を確保して体のコンディションを整えておく必要があります。体力を保って風邪の悪化を予防するためにも、風邪のひき始め、初期症状の段階から以下のような対処を心がけるとよいでしょう。

十分な睡眠

風邪を治すために重要なことの一つが「安静」です。咳や発熱などといった風邪の症状は、私たちが想像しているよりもはるかに体力を消耗します。余計な体力の消耗を避けて体を疲弊させないためにも、十分な睡眠をとるようにしましょう。

水分補給

風邪をひいた時には、発熱に伴って汗をかいて水分不足になりがちです。水分を多めに摂ることで痰の粘り気も少なくなって排出されやすくなり、不快感の軽減や呼吸を楽にすることが期待できます。

消化しやすい食事での栄養補給

風邪の症状によって失った体力を補い、体が持つ本来の抵抗力を発揮するためにも、十分な栄養を摂取する必要があります。

食欲がない時には、胃に負担をかけにくいおかゆやスープなどで水分補給も兼ねるとよいでしょう。栄養についてはドリンク剤やサプリメントに頼るという方法もあります。例えば、ビタミンB1は体の中で、ブドウ糖からエネルギーを得るために必要な栄養素です。おかゆだけではビタミンB1が不足しがちなので、食欲不振・消化不良の際の栄養補助を考えるのもよいでしょう。

体を温める

前述のとおり、風邪をひいた時に体温が上がるのは体内を病原体が苦手な環境にするねらいがあると考えられています。しかし、発熱には激しい体力の消耗を伴います。そこで、外気に熱が奪われて余計に体温が下がったりしないよう体を保温しておくのもよいでしょう。
布団に入って安静にすることはもちろん、例えば温かい飲み物を飲むと水分補給と鼻づまりの軽減も期待できます。

症状に合った緩和の薬を服用する

鼻症状(鼻水など)やのどの痛み、発熱などといった風邪の症状は、病原体に対して体が抵抗しているサインです。しかし、体ががんばりすぎてしまうことで、かえって体力を消耗してしまい、風邪が長引いてしまうということも考えられます。
また、「かぜは万病のもと」といいますが、風邪をきっかけとして粘膜への細菌感染や炎症の悪化など、思わぬ合併症や重大な病気になる可能性も。

体の負担を軽減して十分に免疫能力を発揮するために、早い段階から症状を抑えることが重要です。風邪の症状に対して効果を発揮する薬を使うことで、効率的な対処が可能になります。

「鼻水」「のどの痛み」「発熱」風邪のひき始め、症状別の対処法

風邪の症状には人それぞれ差があります。風邪が長引いたり悪化したりするのを防ぐためには、症状が少ないひき始めのうちから、症状に合わせた適切な対処をしていくことが大切です。

風邪の初期症状として特に多い「鼻の症状(鼻水・鼻づまり)」「のどの症状(のどの痛み)」、「発熱などの症状」の3つについて、どのような対処法がよいのかをそれぞれ専門家の先生にうかがいました。