インタビュー つながって支える
自分らしい妊活
-進化を続ける、妊活研究会のいま-Vol.4 株式会社TGP
代表取締役 東尾 理子さん、
プロデューサー 森 瞳さん

ご自身の不妊治療の経験を通じ、治療で不安に、そして孤独になりがちな人たちをサポートしたいという思いから、東尾理子さんと森瞳さんがコミュニティー「妊活研究会」を立ち上げてから早3年。妊娠出産そのものだけでなく、「プレコンセプションケア(女性やカップルに将来の妊娠のための健康管理を提供すること)」に関わる問題にまで活動の幅を広げ、チャレンジを続けられるお二人に、妊活研究会の現在地と妊活中に多くの方が経験される「妊活疲れ」についてお話を伺いました。今回は進化を続ける妊活研究会の「いま」についてご紹介します。

活動の根本にあるのは、「妊娠出産に関する正しい知識を伝えたい」という思い

昨年、ポータルサイト『妊活の歩み方』をリリースされたのですね。

妊活に関する情報サイトを立ち上げたいという思いは、妊活研究会の発足当初から強く持っていました。

東尾妊活を始めて最初に悩むのは病院選びであることが多いため、施設検索に関しては特にこだわって作りました。日本の各クリニックのウェブサイトに掲載されている治療実績は、実はその物差しが一定ではありません。「妊娠率」という言葉ひとつとっても、着床確認できたのが妊娠というクリニックもあれば、胎嚢(たいのう)確認ができて初めて妊娠というクリニックもあります※。ところがアメリカではCDC(疾病対策予防センター)が、イギリスではHFEAがデータを持っていて、同じ物差しで比較した治療成績を見ることができます。そんな風に誰もが同じ物差しでクリニックを選ぶことができるコンテンツを作りたいという思いが強くありました。

※着床しても胎嚢(着床後に作られる胎児を包む袋)が形成されない場合があるため、着床後に超音波エコー検査により目視で胎嚢が確認できた時に、妊娠成立と判断するクリニックもあります。

施設検索ページを作るにあたっては、全国約600のクリニックにアンケートをとりました。日本生殖医学会に登録されている日本全国のクリニック情報を掲載しています。サイトには施設検索の他にも、理子さんのクリニック取材動画、助産師さんや栄養カウンセラーさんなどの妊活のスペシャリストによる講座のコンテンツなどがあります。コンテンツ数は2,200ぐらいあります。体外受精に取り組んでいる方を対象にした情報が充実しています。今後は「これから妊活を始めたい」とか「今タイミング法を試している」といったもう少し手前の段階の方を対象とした情報を手厚くしていきたいと考えています。

たくさんのクリニックや病院を取材されていますね。

2021~2023年にかけて、24件のクリニックを取材し、動画を公開しています。

東尾伝わりづらい病院の方針であるとか、院長先生をはじめとした医師の方々の雰囲気など、文字では伝わらない魅力をお届けしたいと思っています。不妊治療のクリニックに直接伺って、対談させていただいています。

クリニックの取材を始めた当初は、動画の編集は一切せずに、取材時に撮影した動画を撮りっぱなしの状態でアップしていましたが、『妊活の歩み方』をリリースしてからは少し短く編集するなど、ご視聴いただく方の見やすさを考慮しながら制作しています。

東尾みなさんの病院・クリニック選びのヒントになれば幸いです。取材は今後も続けていきます。

妊活研究会発足のきっかけとなった「お茶会」は、今も続いているのですか?

東尾はい、お茶会は変わらず続けています。

お茶会の様子

現在も熱量高く熱く続けています。オンラインでは週1回、リアル開催は月1回です。都内だけではなく地方で開催することもあり、3月はつくば市に行く予定です。

東尾お茶会に参加される方は、初めはすごく暗い顔をしていらっしゃいます。ところが2時間もおしゃべりしていると、とても明るく元気な顔をして帰っていかれます。不妊治療は、気さくに話せる相手が身近にいるとは限らないトピックなので、まず自分と同じ立場の人がいることを知り、思い切り話をしたり、相談したりできるというプロセスがよいのかなと考えています。

お茶会の様子

ご夫婦で参加される方々もいらっしゃるのですが、そんな時理子さんは、ご主人の妊活への取り組み方について結構踏み込んでコミュニケーションを取ります(笑)。そうすると、それを横で見ている奥様が泣いてしまうということも少なくありません。なかなか夫に言えなかった気持ちを、理子さんが代弁してくれたとおっしゃるのです。妊活はそんな風に代弁者、第三者が入ることで話がぐっと進むこともあるので、お茶会をそういう場にも使ってほしいと思っています。

東尾妊活の当事者ではなくなった私たちにも、まだまだできることがあるのではないかととても感じています。

不妊治療は制度や治療法など変化が大きい領域です。どのように情報収集されているのでしょうか?

私は昨年、生殖系のさまざまな学会に足を運びました。先ほどお話しした『妊活の歩み方』を運営することになった時に、医師と患者さんの橋渡しをするにあたっては、新しい情報、また、偏りのない情報を入手したいと考えるようになったためです。

日本卵子学会へ参加

東尾私は学会で講演させていただく機会もあるのですが、その時に先生方から「患者さんがどう思っているのかを知りたい」というリクエストをいただくことが多いです。そこで私は患者さんの気持ちを代弁するつもりで、「患者としてはこう思っています」という風にお話しさせていただきます。いろいろな先生方と交流を持つことで、ポータルサイト運営にとって重要な「治療の最前線」のお話を伺うことにもつながっています。

学会に行くといろいろな先生方が一堂に会しているので、お茶会のメンバーやオンラインサロンの会員さんが通っている病院やクリニックの先生にお会いすることもあります。「先生、この前先生のクリニックに通っている患者さんがこんなことをお話しされていたのですが」と質問させていただくこともあります。先生のお話を聞いてみると「ああ、そうなんだ」と腑に落ちて、疑問に思っていたことが一気に解決してしまったということもありました。そこで伺ったお話はお茶会などの場で、できるだけメンバーや会員さんに還元することを心がけています。

会員制のオンラインサロンについては、引き続き運営されるのですか?

コロナ禍に妊活研究会のオンラインサロンを始めて3年経ちますが、おかげさまで日本全国、多くの方々とお話をさせていただくことができました。その間、本当にたくさんの方が妊娠され、卒業していかれました。コロナの状況が落ち着いたこともあり、オンラインサロンという仕組みが私たちの活動にそぐわなくなってきたため、一旦閉じることにしました。私たちの交流の場として、とても大切に育ててきたサロンだったため、断腸の思いでしたが、新しいステップに進むことを決断しました。そして、より多くの方に無料で気軽にご参加いただけるLINEのオープンチャットを開始し、個人的なお悩みやご相談にこたえています。

東尾もちろん情報提供のほうは、引き続きポータルサイトの『妊活の歩み方』で続けて行く予定です。

妊活研究会は2024年の1月で3周年を迎えられました。今後の展望をお聞かせください。

東尾今後も妊活当事者のサポートはもちろん続けていきます。ただ、活動を続ける中で「妊活についてもっと早く知りたかった」「病院に通えばどうにかなると思っていたけど、まさか自分が(妊娠しないなんて)」というお声をいただくことがとても多いです。当事者だけをサポートしていても、日本の妊活を取り巻く環境の改善には至らないと強く感じるようになりました。これからは、学生さんや20代の方たちなど、若い世代へのアプローチも積極的に進めていきたいなと考えています。(Vol.5に続く)

(取材日時:2025年1月28日 取材場所:LATTE GRAPHIC 自由が丘店)