

インタビュー
つながって支える
自分らしい妊活
-妊活疲れにどう向き合う?経験者が語る対処法と乗り越え方-Vol.6
株式会社TGP
代表取締役 東尾 理子さん、
プロデューサー 森 瞳さん
ご自身の不妊治療の経験を通じ、治療で不安に、そして孤独になりがちな人たちをサポートしたいという思いから、東尾理子さんと森瞳さんがコミュニティー「妊活研究会」を立ち上げてから早3年。妊娠出産そのものだけでなく、「プレコンセプションケア(女性やカップルに将来の妊娠のための健康管理を提供すること)」に関わる問題にまで活動の幅を広げ、チャレンジを続けられるお二人に、妊活研究会の現在地と妊活中に多くの方が経験される「妊活疲れ」についてお話を伺いました。今回は妊活中、なかなか妊娠できない……という状況の中で多くの方が経験されるという「妊活疲れ」についてご紹介します。
妊活疲れは妊活中に多くの人が経験するもの。原因は人それぞれ。
ご自身の経験を含めて、妊活疲れを感じるタイミングやきっかけについて具体的に教えてください。
東尾妊活疲れについては、毎月生理が来てしまったという時もそうですが、流産をしてしまった時に特につらかったですね。実は流産率はとても高く、全妊娠の約15%が流産になってしまいます。さらに40歳を超えると、約半数が流産すると言われたりしますが、なかなか身の回りで聞いたことがないとなると、気軽に人に話せるトピックではないということと、いざ自分の身に起こると「どうして自分だけ」という気持ちになってしまいます。妊娠が分かって流産までの時間が長ければ長いほど、次の妊活までに時間を空けなければならないということもあり、心と体のモチベーションを保つことが大変だと思いました。
森私はそのかなり手前の採卵できないという状況の時に疲れを感じていました。
東尾自分を否定されているように感じてしまうのですよね。
森そうなのです。人生の底という感じでした。妊活疲れは、休んだら元気になるというようなものではなくて、休んでも疲れます。「治療をお休みしたら?」とか「そんなにつらいなら妊活をストップすればよいのでは?」とおっしゃる方もいますが、それで解決は難しいと思います。

メンタル不調やストレスから妊活に疲れたと感じてしまう方も多いようですね。
東尾人によると思います。かなり精神的に追い込まれてしまってしんどくはなりますけど、不妊治療にはお金がかかるので、金銭面で限界という方もいらっしゃいます。あとは、どうしても治療できない体質の方もいます。お金だったりメンタルだったり体力だったり、人によってそれぞれ悩む理由やその順序が異なると思います。
森私たちのお茶会に参加される方は、フリーランスの方を含め、何らかのお仕事に携わっている方が多くて、お仕事と治療の両立の難しさを抱えている方も多くいらっしゃいます。
東尾仕事と不妊治療の両立ができず、約16%の方が不妊治療中に離職してしまうといわれています。特に体外受精だとスケジュール的にも大変です。体力的にもつらいので会社を欠勤することが多くなってしまいますが、なかなか不妊治療のためとは言えないので、いろいろな理由をつけて会社を退職してしまう方が多いようです。辞める時にも本当の理由を伝えずに辞める方が大半なので、こうした問題は表面化しにくいです。
でも、会社を辞めて妊活に専念したからといって妊娠するとも限りません。専念すればするほど妊活のことしか考えられない上に、収入もなくなってしまい、それが新たなストレスにつながることもあります。
妊活期間が長くなっている方だと、焦りからストレスがたまるからと、1年くらいして仕事を再開する方も多いです。治療と仕事の両立の問題も、やはり社会で支えていかなければいけないところだと思います。

妊活疲れの原因は、他にどんなものがあるとお考えですか?
森パートナーなどの身内が理解してくれないことからの疲れもあると思います。社会が理解してくれていない上にパートナーも理解していなかった、ということに気づいた時の絶望感は大きいです。
東尾一番同じ方向を向いていてほしい人なのですが、よくあることでもあります。
森みんな、パートナーと一緒に妊活に取り組んでいきたいと思っているはずなのに、パートナーにそう言えないのです。どうせ理解してもらえないだろうと思っているから言えない、否定されるのが嫌で言えない、恥ずかしいから言えない、理由はさまざまなようです。
妊活疲れとどう向き合い、乗り越えていくのか――?
お二人は妊活に疲れた時、どのようにご自身の気持ちと向き合ったのでしょうか。
森妊活疲れに関しては、本当の解決というのは、妊娠するまで難しいかもしれません。
東尾根本はそうかもしれないですね。
森でも、理子さんは一回落ち込んだ後、前向きな気持ちに変えていくきっかけをつかむのが 上手ですよね。どんな風にしていましたか?
東尾本当にありきたりなことです。不妊治療が長くなってくると、なかなか旅行に行けなくなりますが、私はわりと腹を括って、ここは旅行に行くと決めたら、採卵なんかもお休みしてちゃんとリフレッシュするようにしていました。
とはいえ友達と韓国旅行に行った時も、結局そこで妊活にもつながる「よもぎ蒸し」をやったりはしているのですが(笑)。何か楽しみを持って生活することがやはり大切だと思います。治療を続けていると嫌なことや大変なことが多い中、「何カ月後に〇〇に旅行に行く」という楽しみがあると、そこに向かって頑張ろうと思えたりします。私は「落ち込む時にはとことん落ち込む派」で、無理して這い上がろうとはしないです。時間が経ったり何かきっかけがあったりすれば自然と上がってくるかな、と考えています。森さんはどうですか?
森私はもう、とにかく友達と美味しいものを食べに行って話をする、ですね。あれは食べちゃいけない、これをやってはいけないと結構ストイックに小さな我慢を積み重ねていたので、それらをいったんリリースするようにしていました。好きなことをして、好きなものを食べるということを定期的にやっていました。リフレッシュは大切だと思います。

リフレッシュする以外に、妊活疲れへの対処法はありますか?
森栄養ドリンクやサプリメントも取り入れていました。
森妊活をしていた当時は夜が遅く、朝は10時に出社するという働き方をしていたので、採卵で朝7時半に病院に行くために6時に起きるのがとてもつらかったです。滋養強壮系のサプリメントやマルチビタミン、妊活にいいといわれるサプリメントはたくさん摂って乗り越えました。
東尾私はどちらかというと、疲れたら動いて汗を出して、日に当たる―というシンプルな対処法です。ストレスで寝られないという場合、体が疲れていないからということもあると思います。もちろん私も頭が冴えて眠れない経験もありますが、体を動かして、栄養のあるものをしっかりと食べることを基本にしています。その上で、葉酸など摂らなきゃいけないものはサプリメントで摂るようにしていました。
森心の面で言うと、やはり自分を理解してくれる人が近くにいてくれることが、自分の安心感につながる気がしています。それがパートナーでもいいし、仲がいいのならお姑さんだっていいかもしれない。それですべてが解決するわけではないけれど、自分の安心、安全な場所を1つでもいいから作ってほしいな、と思います。
パートナーとのコミュニケーションも大切ということですね。
東尾もちろんです。不妊治療の保険適用が始まって、保険を使うためには初回は男女二人で病院またはクリニックに行かなければいけないというルールができました。それによって女性も一緒に病院に行こうと言いやすくはなってはいるのですが、パートナーとのコミュニケーションの難しさは変わっていないような気がします。妊活に関しては、夫が妻に「協力する」というスタンスも違う、と私は思います。

森そうですね。「協力」ではないですよね。不妊治療を進めていく上で、自分には何ができるか、お互いにそれぞれ考えることが大切です。お二人の妊活ですから。でも、どうしてもパートナーに言えないことがある、そんな時はぜひ、私たちのような第三者やお茶会などの機会を利用してほしいなと思います。

(取材日時:2025年1月28日 取材場所:LATTE GRAPHIC 自由が丘店)