睡眠の質を上げるために

睡眠の質を下げるのは、「ストレス」「生活習慣」「寝室環境」の3つと言われています。ストレスを溜めないよう心がけたいものですが、ストレスのすべてを自分の意思でコントロールできるものでもありません。でも、生活習慣や寝室環境の改善なら、できることがありそうだと思いませんか?そこで、睡眠の質を上げるために手軽にできることや、また注意すべきことをご紹介します。

眠りのカギは昼間の行動に

質の良い眠りには、規則正しい生活が大切。毎日同じくらいの時間に起きて寝ていれば、体内時計が作用して自然に良い眠りへの準備を整えてくれます。でも忙しい現代人にとって、規則正しく生活するのはなかなか難しいものです。少しでも良い睡眠を得るために、「起きている時間にできること」を意識してみてください。

<運動>

もし日頃から運動不足を感じていたら、できる範囲で運動を始めてみてはいかがでしょうか。運動には脳機能を活性化させる働きがあり、睡眠の質を上げてくれます。実際に、運動習慣のある人には不眠が少ないことがわかっています※1
たとえば早足での散歩や軽いランニング、水泳、ストレッチなど、軽く汗ばむ運動が目安。逆に激しい運動は、交感神経を優位にして脳と体を興奮状態にするため、睡眠直前に行うと睡眠を妨げてしまいます。眠りに大切なのは、軽めの運動を習慣的に続けることです。

<食事>

食事も睡眠に大きく影響します。よく言われているように、緑茶やコーヒー、チョコレートなどに含まれるカフェインには覚醒作用があります。寝つきにくくなるだけでなく、睡眠の途中で目が覚めやすくなるので、寝る前には控えることをおすすめします。
夜食の食べ過ぎも睡眠の質を低下させます。食べたものの消化が終わらないうちに眠ると、就寝中に胃腸が活発に動いてしまって睡眠を妨げることになります。とくに、タンパク質の多い食品にはこの傾向が強いので注意が必要です。もし遅い時間に食事を摂るなら、消化の良いものを選びましょう。

「これを食べると必ず眠れる」という食品はありませんが、体内時計に働きかけると注目されている成分があります。それが、「トリプトファン」。体内では合成できない必須アミノ酸のひとつです。トリプトファンが注目されている理由は、脳内の情報処理に大切な物質のひとつ「セロトニン」の材料だから。そして「セロトニン」は、眠りへ導くホルモンの「メラトニン」の材料になります。つまり「トリプトファン」を摂ることは、「メラトニン」の分泌につながっているのです。トリプトファンは、牛乳や乳製品、卵、大豆や大豆製品、バナナなどに多く含まれています。
また、トリプトファンからセロトニンを作るために必要なのが、「ビタミンB6」。にんにくやショウガ、豚肉、青魚などに豊富です。
ストレスを感じやすい方におすすめなのが、ビタミンB群やマグネシウム、カルシウムなど。ビタミンB群はストレスを受けることで失われやすく、玄米や豚肉、ナッツ類などに豊富です。同じくストレスで減少するマグネシウムは、魚や野菜、大豆などで摂れます。そして不足するとイライラしがちなカルシウムは、牛乳や小魚、豆腐などで補給しましょう。これらの栄養が十分に摂取できていないと睡眠の質に影響を及ぼす可能性があります。バランスのよい食事を心掛け、栄養が不足している場合には市販のビタミン剤やサプリメントも活用しましょう。

<飲酒>

お酒をたしなむ場合は、適量を守ることが大切です。アルコールは脳を興奮させる神経物質の働きを抑え、脳を落ち着かせる神経物質の働きを促すので、寝つきを良くしてくれます。「お酒を飲んだ日はよく眠れた」という人も多いでしょう。ただし、それはあくまでも適量の場合で、飲み過ぎはもちろん厳禁です。
大量のアルコールを摂取すると深いノンレム睡眠は現れず、レム睡眠も減少するなど、睡眠のリズムが乱れてしまいます。深酒すると気分がすぐれないのは、脳がきちんと休めてない証拠です。またアルコールは舌や喉の筋肉を麻痺させるため気道が狭くなりやすく、飲み過ぎるといびきや睡眠時無呼吸症候群の原因にもなると言われています。

[参照資料]

※1 e-ヘルスネット「快眠と生活習慣」

  • 睡眠障害の対応と治療ガイドライン(じほう)
  • 図解 睡眠の話(日本文芸社)
  • ニュートンムック 別冊Newton「睡眠の教科書」
  • 知っておきたい栄養学(学研)
  • キッチン栄養学(高橋書店)

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快眠へ導く寝室づくり

寝室が暑過ぎたり寒過ぎたりすると、なかなか寝つけないものです。心地良い温度は人によって、また季節によっても異なりますが、布団の中は33度くらい、そして湿度は50%くらいが睡眠には最適だと言われています。
もし、朝起きた時に首や肩に凝りを感じているなら、枕が体型に合ってないかもしれません。今はさまざまな素材や形状の枕がありますが、選ぶポイントがあります。
まずは体に合った高さ。枕と首の間にすき間があったり、逆に圧迫感があったりすると、首や肩に負担がかかってしまいます。次に通気性の良さ。脳の温度は就寝中に下がるので、通気性の良い枕で頭をほどよく冷やすことで眠りの質が保たれます。そして、寝返りしやすい形状。1回の睡眠中で、多い人は20~30回も寝返りをうつので、楽に寝返りできる形状か確かめて選ぶと良いでしょう。

ベッドマットや敷布団の硬さは好みが分かれますが、眠りの質を考えるなら、「背骨のS字カーブ」をバランスよく支えられる適度な硬さで、かつ通気性の良いものがおすすめです。

また、カーテン選びも眠りに重要です。スッキリ目覚めるためには、光を通す素材のものが良いでしょう。目が覚める前に朝の光を浴びると、浅めのノンレム睡眠が続き、爽快に目覚められることが知られています。

[参照資料]

  • e-ヘルスネット「快眠のためのテクニック」
    https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/heart/k-01-003.html
  • 睡眠障害の対応と治療ガイドライン(じほう)
  • Newton 増刊vol.9(2021年11月増刊)「睡眠」
  • ニュートンムック 別冊Newton「睡眠の教科書」
  • 図解 睡眠の話(日本文芸社)

夜の光にはご注意を

朝の光は体内時計をリセットして心地良く目覚めさせてくれますが、夜の光は眠りを妨げます。通常、夜になると脳からメラトニンというホルモンが分泌され、睡眠が促されます。ところが、強い光を浴びると脳が「朝だ」と判断してしまい、メラトニンの分泌が抑えられてしまうのです。
なかでもとくに気をつけたいのが、ブルーライト。身近なものではパソコンやスマートフォン、ゲーム機などの液晶画面のバックライトや蛍光灯、LED電球にも含まれている強い光です。
寝つけないからとスマートフォンを眺めていると、ブルーライトの刺激でますます眠れなくなるという悪循環に陥りかねません。できる限り、寝室にはスマートフォンは持ち込まないようにしたいものです。

また寝室には、まぶしい蛍光灯ではなく暖色系の明かりがおすすめです。真っ暗だと眠れないという場合は、なるべく目に光が入らないよう足元にやさしい暖色系の明かりを置くと良いでしょう。

[参照資料]

  • e-ヘルスネット「快眠と生活習慣」
  • 睡眠障害の対応と治療ガイドライン(じほう)
  • Newton 増刊vol.9(2021年11月増刊)「睡眠」
  • ニュートンムック 別冊Newton「睡眠の教科書」
  • 図解 睡眠の話(日本文芸社)

コラム眠くなると手が温かくなる!?

体温には、表面の「皮膚体温」と、脳や内臓など体の内部の「深部体温」があります。
日中の深部体温は皮膚温度より最大3~5度ほど高く、体内時計と連動して夜9時くらいをピークにどんどん低下。2つの体温の差が小さくなると眠くなり、眠りにつく時には手足から熱が放出されます。眠くなった赤ちゃんの手足がポカポカするのはこのためです。
質の良い睡眠のためには、深部体温を上手に下げることが大切です。寒い日に熱いお風呂に入ってすぐに寝ようとしても、寝つけなかったことはありませんか?これは、深部体温がなかなか下がらないからです。就寝直前に入浴する場合は、ぬるめのお湯がおすすめ。また靴下も寝る前にはぬいで、体温を上手に逃がすようにしましょう。

[参照資料]

  • 睡眠障害の対応と治療ガイドライン(じほう)
  • Newton 増刊vol.9(2021年11月増刊)「睡眠」
  • ニュートンムック 別冊Newton「睡眠の教科書」
  • 図解 睡眠の話(日本文芸社)
  • 快眠習慣のススメ(マイウェイムック)