病気や老化の原因にもなる「酸化」を防ぐ、抗酸化とは?

病気や老化の原因にもなる「酸化」を防ぐ、抗酸化とは?

病気の原因になったり老化の原因にもなるとされる人体の「酸化」は、エネルギーをつくる際に発生する活性酸素が体の細胞を傷つけることで進みます。活性酸素が増え"酸化ストレス状態"になると、動脈硬化、がん、免疫機能の低下などさまざまな病気につながります。このような、人体の酸化を防ぐために重要なのが「抗酸化」です。 ここでは、活性酸素の働きを抑制する抗酸化能力や抗酸化物質、体の酸化を防ぐ方法について理解を深めていきましょう。
石神 昭人 先生

監修

石神 昭人 先生 (東京都健康長寿医療センター研究所 副所長、日本基礎老化学会 理事長、日本ビタミン学会 理事)

抗酸化とは

活性酸素の働き

私たちは呼吸によって空気中の酸素を体に取り入れ、それをもとに日々の生命活動を維持しています。体内に取り入れられた酸素の一部は、反応性の高い「活性酸素」と呼ばれる状態になり、細胞内での情報伝達や免疫機能の調節役として働きます。この活性酸素は、量が適切であれば人体に有用な働きをするのですが、大量につくられてしまうと細胞を傷つけ、がん、心血管疾患、糖尿病などの生活習慣病といった病気をもたらしたり、老化、免疫機能の低下などを引き起こす原因となります。

抗酸化能力

そこで、活性酸素が体内で増えすぎないように発生を抑えたり、取り除いたりすることが必要になります。この働きが「抗酸化」です。

人体にはもともと抗酸化能力が備わっています。抗酸化防御機構と呼ばれる内因性の抗酸化物質や酵素が存在し、活性酸素の産生を抑制したり、生じたダメージの修復・再生を促す働きをしています。しかし、その力は年齢を重ねるとともに弱まることがわかっています。したがって年々体内でつくられる抗酸化物質や酵素の量が減少し、活性酸素が増えやすい状態になってしまうのです 。

抗酸化物質とは

抗酸化物質の効果

抗酸化物質とは、活性酸素の発生やその働きを抑制したり、活性酸素そのものを取り除いたりする物質のことです。体内で合成される抗酸化物質や酵素の他にも、外から食事などを通じて摂取するビタミンやカロテノイドなどが抗酸化物質にあたります。中でも「抗酸化ビタミン」と呼ばれる、活性酸素の働きを抑えたり、細胞内に過酸化脂質がつくられるのを抑えたりする作用を持つビタミンが注目されています。

代表的な抗酸化物質

代表的な抗酸化物質について説明します。

ビタミン

ビタミンは、人体の機能を正常に保つため必要な有機化合物です。体内ではほとんど合成ができないため、食物などから摂取する必要があります。

・ビタミンC
ビタミンCは果物や野菜に多く含まれる水溶性ビタミンです。皮膚や粘膜の健康維持を助けるとともに、強い抗酸化作用を発揮します。しかし、水溶性ビタミンは熱で分解されやすい性質を持つため、調理時に洗ったり加熱したりすることで効力が失われやすく、調理損失が大きいという弱点があります。

・ビタミンE
ビタミンEは多くの食品に含まれる脂溶性のビタミンです。抗酸化作用が非常に強く、体内で脂質の酸化を防いで過酸化脂質の生成を抑制する作用があります。その他に血管拡張を促し、血管内で血液が凝固するのを防ぐ作用もあります。
また、「ビタミン様作用物質」と呼ばれるコエンザイムQ10のような、厳密にはビタミンとは違うものの、抗酸化作用を持つ栄養素もあります。

フィトケミカル

フィトケミカル(ファイトケミカル/phytochemical)とは、植物に含まれる化学成分のことです。紫外線や昆虫など、植物にとって有害なものから身を守るためにつくり出した成分で、その抗酸化力は人体の健康維持にも有効と期待されています。

・カロテノイド
強い抗酸化作用を持つといわれる、天然の色素です。緑黄色野菜や果物などに含まれるβ-カロテンやリコピン、えび・かにといった甲殻類などがもつアスタキサンチンが有名です。 なお、カロテノイドの一種のβ-カロテンは、体内で必要に応じてビタミンAに変わります。ビタミンAは目の正常な機能や、皮膚、粘膜の健康維持などに関わる栄養素です。

・ポリフェノール
ポリフェノールは植物由来の食品に含まれる、苦みや色素の成分です。ブルーベリーなどに含まれるアントシアニン、大豆に含まれるイソフラボンやサポニン、ゴマの成分が変化してできるセサミノール、そばに含まれるルチン、緑茶のカテキンと発酵茶(紅茶・ウーロン茶など)のテアフラビンの総称であるタンニンなど、さまざまな種類があります。

なお、大豆製品や高麗人参などに含まれるサポニンには抗酸化能力だけでなく、免疫力の向上、肥満予防、血流改善などのさまざまな効果が期待されています。

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抗酸化能力低下による悪影響

酸化ストレス

体内の抗酸化力と活性酸素産生のバランスが崩れ、活性酸素が多くつくられるようになった状態を、酸化ストレス状態といいます。

酸化ストレスは、紫外線、放射線、大気汚染、たばこ、薬剤、酸化された物質の摂取、過度な運動、ストレスなどが要因となり、普段は均衡を保っている抗酸化力と活性酸素産生のバランスが乱れて引き起こされます。

酸化ストレスによる症状

酸化ストレスによって生じる主な症状や体への影響を紹介します。

がん、心血管疾患、糖尿病などの病気のリスク増

増えすぎた活性酸素は細胞を傷つけ、がんや血管の病気のリスクを高めます。特に、脳に酸化ストレスが蓄積すると、全身の代謝調節に重要な役割をもつ視床下部領域に影響が生じます。するとインスリンやレプチンといった血糖値や食欲の抑制に関わるホルモンの作用が弱まり、肥満や糖尿病を引き起こしやすくなることがあります。

老化

活性酸素は細胞を傷つけたり死滅させることによって、老化を促進することがあります。例えば皮膚の老化は、酸化ストレスの要因のひとつ、紫外線による細胞の損傷が主な原因です。紫外線は肌の細胞を傷つけて弾力を失わせるとともに、しみ・しわ・肌荒れなどを引き起こします。これは光老化とも呼ばれます。

酸化ストレスに対する予防・対策

紫外線を防ぐ

紫外線を防ぐことで、体内の抗酸化力と活性酸素の産生とのバランスが崩れるのを防ぐことができます。紫外線を予防するには日中、とりわけ正午前後の紫外線の強い時間帯を避ける、日陰を歩く、日傘や帽子、衣服、サングラスで防ぐ、日焼け止めを塗るといった工夫が有効です。

適度な運動を行う

運動のし過ぎは酸化ストレスの要因のひとつですが、一方で適度な運動習慣は酸化ストレス予防に効果的といわれています。負担が少なく長続きするような有酸素運動、例えば早足の散歩や軽いランニングなどを習慣的に行ってみましょう。

運動に加えて、バランスの良い食事と十分な睡眠をとることも、酸化ストレス防止に重要です。

お酒・たばこは控える

「お酒やたばこが日々のストレス発散になっている」という人もいるでしょう。しかし、酸化ストレスの予防や対策を考えると、これらを避けることをおすすめします。過度な飲酒はしない、禁煙を心がけるといった努力を少しずつ進め、酸化ストレスを引き起こさないように努めていきましょう。

抗酸化物質を取り入れる

食事から日常的に取り入れる

体内の抗酸化能力は、年齢を重ねるにつれて弱まってくるため、食材から抗酸化物質を補給していくことが重要になってきます。

・ビタミン
抗酸化作用をもつビタミンのうち、ビタミンCは野菜・果物・芋類に多く含まれています。体内ではつくることができず、また溜めておくこともできないので、毎日欠かさず摂取することが必要です。
ビタミンEは植物性油脂やナッツ類、かぼちゃなどに多く含まれます。ビタミンAやビタミンCと一緒に摂取することで、相乗効果も得られます。

・フィトケミカル
植物に含まれる抗酸化物質・フィトケミカルのうち、カロテノイドは主に緑黄色野菜に多く含まれています。緑黄色野菜にはビタミンAのもとになるβ-カロテンを含むものも多いですが、β-カロテンはそのままでは吸収されにくいので、油と一緒に摂るのがおすすめです。吸収率がアップします。
ポリフェノールは大豆やゴマ、タマネギなどの食べ物からだけでなく、飲み物からも摂取が可能です。豆乳にはサポニンやイソフラボン、赤ワインにはアントシアニン、緑茶にはカテキン、紅茶にはタンニン、コーヒーにはクロロゲン酸類といったポリフェノールが含まれています。特に豆乳などに含まれるサポニンには抗酸化作用に加えて肥満予防の効果もあるため、食事の前に飲んで満腹中枢を刺激し、食べすぎを防止するのも良いでしょう。
日々の食事から抗酸化物質を取り入れることを意識していきましょう。

効果的に抗酸化物質を補う方法

年齢を重ねていくと抗酸化能力が弱まるため、抗酸化物質を食事から積極的に取り入れていても、酸化を防ぐことが難しくなってきます。
そこで、不足した抗酸化物質を補うために効果的なのが「一般用医薬品や医薬部外品」の活用です。例えば、ビタミンCEが配合されたビタミン剤を取り入れると良いでしょう。取り入れることによって食事だけでは摂取しきれない抗酸化物質の不足分を補うことができると同時に、疲労の回復・予防など抗酸化以外の作用も期待できます。服用する際には用法・用量を守り、その他の薬との飲み合わせにも留意してください。
食事以外からも意識して抗酸化物質を取り入れていくことで酸化を防ぎましょう。

抗酸化物質を適度に摂取して、老化を予防しよう

抗酸化能力と活性酸素産生のバランスが崩れ、体内に活性酸素が溜まりすぎた「酸化」の状態は細胞を傷つけ、病気や老化、免疫機能の低下などの原因となります。年々弱まる抗酸化能力を補いつつ酸化を防ぐには、抗酸化物質を積極的に摂取することが重要です。日々の食事の他、一般用医薬品なども使って効率よく抗酸化物質を取り入れ、元気な体を維持していきましょう。

<参考>
厚生労働省「生活習慣病予防のための健康情報サイト」e-ヘルスネット
(https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/)
厚生労働省『「統合医療」に係る 情報発信等推進事業』eJIMサイト
(https://www.ejim.ncgg.go.jp/public/index.html)
独立行政法人 農畜産業振興機構 野菜情報(2019.9)「骨格筋でのビタミンC不足は筋萎縮や身体能力の低下をもたらす」
(https://www.alic.go.jp/content/001168066.pdf)