薬に関する情報ガイド
健康増進や病気予防の一定の取り組みをし、一般用医薬品を購入すると、確定申告で税金を軽減できる「セルフメディケーション税制(医療費控除の特例)」。専門家監修のもと、制度や対象医薬品について解説します。
身近な薬の活用ガイド
2017年1月から「セルフメディケーション税制(医療費控除の特例)」が施行されています。日頃より健康増進や病気予防として一定の取り組みをしている方が一般用医薬品を購入した場合、確定申告で税金を軽減できる制度です。2022年1月から制度の内容や手続きが見直され、より利用しやすくなっています。
今回は専門家監修のもと、制度の詳しい内容や対象となるOTC医薬品、そして賢く利用するポイントについても解説します。
監修
高山 一恵さん(Money&You取締役 ファイナンシャルプランナー(CFP®️)・1級FP技能士)
セルフメディケーション税制は、医療費控除の特例で「特定の医薬品購入額の所得控除制度」ともいいます。毎日の生活の中で、健康を維持したり、病気予防に取り組んだりできるよう、2017年1月からスタートしました。
一言で言いますと、ドラッグストアなどでOTC医薬品という医薬品を購入した場合に所得控除を受けられる制度です。ただし、購入するOTC医薬品や購入金額には条件があります(後で詳しく説明します)。
当初は5年間の期間限定の制度でしたが、2022年1月より5年間(2026年12月末まで)延長されることになりました。同時に内容も見直され、アセトアミノフェンが配合された解熱鎮痛剤が新たに追加されるなど対象品目が拡大したり、手続きも簡素化し、より使いやすい制度になっています。
所得税を計算する際、納税者それぞれの事情を考慮し、所得金額から差し引くことができる控除です。所得税は課税所得の金額に対してかかるので、所得から控除できる金額が大きいと、税金が安くなります。
給与所得者の所得税額の決まり方
給与所得控除:所得税や住民税を計算する際に給与収入から差し引くことができる控除。会社員や公務員など給与所得者の必要経費に相当するもの。
セルフメディケーション税制同様、所得控除を受けられる制度の1つです。所得控除を受けたい年の1~12月の間に支払った医療費が、10万円(総所得が200万円以下の人は総所得の5%)を超えるときに、確定申告を行うと利用できます。控除の上限は200万円です。
住民税については所得によって税率が変わることがないため、概ね10%となっています。そのため、軽減できる税金は、控除できる金額によって変わるというシンプルな計算方法です。
しかし、所得税は、課税所得によって税率が変わり5〜45%となっています。課税所得が上がるほど、税率も高くなります。つまり、課税所得が高い人ほど、「セルフメディケーション税制」や「医療費控除」による、所得税の軽減効果が高いといえるでしょう。
所得税はその年に還付され、住民税は翌年の住民税が減税されます。
従来の医療費控除の条件には当てはまらないけれど、「セルフメディケーション税制なら利用できるかも?」という時、一体、どのような人がこの制度を使えるのでしょうか。チェックしていきましょう。
所得控除を受けられる条件 |
|
控除の対象となる品目 | ドラッグストアなどで購入できる特定の成分を含むOTC医薬品※2 |
申告方法 | 確定申告 |
※1 OTC医薬品の購入額は、生計を共有している家族の分は合算可。
学生寮で生活している子どもや単身赴任中の配偶者、遠隔地で扶養している親族など、離れて住んでいても生活費を共有していれば合算可。
※2 「租税特別措置法施行令第二十六条の二十七の二第二項の規定に基づき厚生労働大臣が定める一般用医薬品等」において定められた成分を含む一般用医薬品のこと。
厚生労働省ホームページに掲載されている有効成分リストが対象。
OTC医薬品のOTCは「Over The Counter」の頭文字を取ったもので、ドラッグストアなどで購入できる医薬品を指します。要指導医薬品、第1~3類医薬品と表示がされているものと考えても良いでしょう。
OTC医薬品の中で、以前は医師の処方(処方せん)が必要だった医薬品がドラッグストアなどで購入できるようになったものを「スイッチOTC医薬品」ともいいます。
サプリメントや健康食品は医薬品ではありません。
セルフメディケーション税制は医療費控除制度と同時に利用することはできません。どちらかを選ぶ必要があります。
確定申告する前に、いくらの医療費を、どこに支払ったのかを見直し、どちらの制度を使うとメリットが多いか確認しましょう。
同じ年収でも扶養する家族の有無・人数などにより適用になる所得控除は違い、その結果、課税所得は変わります。
具体的な収入や条件で見てみましょう。
年収600万円(課税所得が195万円超330万円以下)
※課税所得が195万円超330万円以下の人の税率は10%
従来の医療費控除を利用した場合
控除額=(医療費総額—保険金・公的給付)—10万円
※その年の所得金額が200万円未満の人は、総所得金額の5%
対象の医療費 110,000円-下限額:100,000円 = 10000円
所得税:1,000円(10,000円×10%) + 住民税:1,000円(10,000円×10%)= 2,000円お得
セルフメディケーション税制を利用した場合
控除額(最大88,000円)=医薬品代金 - 12,000円
対象の医薬品の購入金額 36,000円 - 下限額:12,000円 = 24,000円
所得税:2,400円(24,000円×10%) + 住民税:2,400円(24,000円×10%) = 4,800円お得
医療費控除を受けたい年の翌年2月16日から3月15日までの間に「税務署」に確定申告書を提出しましょう。
提出場所は都税事務所や市税事務所ではないので、注意してください。
作成した申告書の提出は窓口に持参するほか、インターネットで申告できる「e-Tax」や「郵送」でも可能です。
2017年分の医療費控除の申告から、領収書を添付するのではなく、作成した「セルフメディケーション税制の明細書(集計表)」を作成し、確定申告書に添付する方法に変わりました。領収書の添付は必要ありません。
明細書の作成は、申告書と同じく、パソコンやスマートフォンでも簡単に作成できます。また、健康に関する一定の取組を証明する書類の添付についても提出が不要になりました。
ただし、明細書の記入内容の確認のため、税務署から領収書について問い合わせを受ける場合があります。領収書は確定申告期限から「5年間」はしっかり保管しておきましょう。
申告を忘れていた場合は、5年間さかのぼって修正申告することができます。
セルフメディケーション税制を利用する場合には、対象となるOTC医薬品が定められています。ドラッグストアで購入したものが全て控除の対象となるわけではないので注意してください。
何を目印にするとよいのか、具体的な医薬品をご紹介します。
ドラッグストアで買い物をした時、レシートをじっくり見たことはありますか? 実は、セルフメディケーション税制の対象となるOTC医薬品には「※」や「★」のマークがついていて、対象とならない医薬品やサプリメントと区別されています。
また、控除の対象となる医薬品のパッケージにはマークが記されていることが多いので、購入前に確認してみましょう。
次でアリナミン製薬のセルフメディケーション税制の対象製品をご紹介します。
その他の具体的な品目は、厚生労働省ホームページ「対象品目一覧」を参考にしてください。
身近な薬の活用ガイド