中耳にあり、鼻やのどに繋がっている耳管は、ときどき開閉することで中耳と外の気圧を調整しています。この耳管が閉じたままになる状態が耳管狭窄症で、中耳の気圧が外の気圧より低くなるため、鼓膜が内側に引っ張られ、音の振動を十分に伝えられなくなることで低音の耳鳴りや耳に痛みが起こります。のどや鼻に炎症が起きたときや、飛行機に乗ったときの気圧の変化などで起こることがあります。
中耳炎
細菌やウイルスに感染し、中耳に炎症が起こる疾患です。風邪やインフルエンザなどの感染症の後、急な耳の痛みに襲われたときは中耳炎を疑う必要があります。中耳に膿が溜まり、その膿が出口を求めて鼓膜を押すために強い耳の痛みが生じ、発熱をともない、黄色っぽい膿のような耳だれが出たり、耳が聞こえにくくなることもあります。治療が不十分だと慢性化することもあります。
外耳(道)炎
耳の入り口に近い外耳道に炎症が起きる疾患で、ひっかき傷に細菌が感染したり、水が耳に入ることなどによって起こります。耳の入り口付近にかゆみや痛みが生じ、腫れによる異物感や詰まった感じとともに、耳鳴りや水のような耳だれがみられることもあります。口を動かしたときや、耳たぶを引っ張ったり押したりすると痛みが強くなるのが特徴です。
咽頭炎
ウイルスや細菌などによってのどの粘膜に炎症を起こす急性咽頭炎は、のどの粘膜が赤く腫れ、のどのつかえ感の他にのどの痛みや頭痛や発熱をともない、痛みが耳の奥に広がることがあります。急性咽頭炎を繰り返すと、慢性咽頭炎に進行することがあります。強い痛みや発熱はなくなりますが、のどに異物感が続き、物を飲み込むときに痛みを感じることもあります。
顎(がく)関節症
噛み合わせが悪かったり、食べ物を片側の歯だけで食べるくせがある、さらに、歯ぎしりや頬杖をつくくせなど、あごに負担がかかる要因が重なり合うことで発症します。また、ストレスなどであごの筋肉が緊張している人にも起こりやすいといわれています。症状が進行すると、口が大きく開けられず、無理に開けようとするとあごや耳の奥に痛みが広がるようになります。
おたふくかぜ(流行性耳下腺炎)
ムンプス(おたふくかぜ)ウイルスの感染によって、唾液腺の一つで耳の付け根にある耳下腺が炎症を起こす疾患です。耳の痛みから始まり、高熱、食欲不振、頭痛、嘔吐などがあらわれます。まれに難聴や脳炎などを併発することがあるので注意が必要です。大部分は15歳以下の小児がかかり、春から夏に流行する傾向があります。伝染力が強く、流行しやすいので流行性耳下腺炎とも呼ばれます。
三叉(さんさ)神経痛
顔のこめかみから目、あご、頬と三本に枝分かれした三叉神経が支配する領域に起こる痛みを三叉神経痛といいます。多くは、脳に流れる血管がこめかみで神経に触れたり、神経を圧迫することによって起こります。目、あご、頬を中心に、突然、ぴりぴりとした痛みがあらわれ、痛みは、耳の奥から頭に及ぶこともあります。
耳性帯状疱疹(ラムゼイ・ハント症候群)
帯状疱疹ウイルスが脳から耳に出ている聴神経や顔面神経に感染する疾患です。はじめに耳たぶの痛みや頭痛が起こり、次いで耳の入り口の近くに痛みをともなう小さな赤い発疹や水ぶくれが多くあらわれます。そして、めまいと耳鳴り、難聴が起こり、さらに、表情が乏しくなったり、目を開けたり閉じたりできなくなるなどの顔面神経まひがあらわれるのが特徴です。