貧血の中で最も多い疾患です。体に必要な鉄分が不足するために起こります。鉄分の足りない偏った食生活が続いたり、胃潰瘍などの胃腸疾患の出血でも起こります。鉄欠乏性貧血は圧倒的に女性に多いですが、それには無理なダイエットや、生理が大きく関係しています。主な症状として全身の倦怠感や頭痛、めまいや息切れなどがあらわれます。また、唇や爪の色が青白くなったり、爪が反りかえってスプーンのようになることもあります。
巨赤芽球性貧血
正常な血液をつくるために必要なビタミンB12や葉酸が不足して起こる貧血です。胃の切除手術を受けていたり、胃炎が進行して胃が委縮しているとこれらの栄養素が吸収できなくなります。また、妊娠やアルコール中毒、末期がんなどによってもビタミンが大量に消費されて、巨赤芽球性貧血を引き起こすことがあります。全身の倦怠感やめまいなど貧血の症状の他にも、足のしびれや知覚麻痺、食欲不振、下痢などが生じます。
再生不良性貧血
骨髄にある、血液をつくるための造血幹細胞に障害をきたし、赤血球や白血球、血小板のいずれも不足してしまう難病です。動悸、息切れ、倦怠感などの貧血症状の他に、白血球の減少によって体の抵抗力が低下し、気管支炎や肺炎などの感染症にかかりやすくなったり、血小板の減少によって血液が固まりにくくなり、出血が止まらなくなるなどの症状があらわれます。
胃潰瘍・十二指腸潰瘍
胃潰瘍・十二指腸潰瘍は、ピロリ菌や非ステロイド性鎮痛剤、ストレスなどが主な原因で起こると考えられています。強い胃酸と消化酵素によって胃や十二指腸の粘膜が局所的に欠損する疾患です。胃潰瘍は食事中から食後にかけてみぞおち周辺に重苦しい痛みが起こりますが、十二指腸潰瘍は早朝や空腹時にみぞおち周辺がシクシクと痛み、食事をとると治まるのが特徴です。潰瘍が悪化すると出血をきたして吐血や下血を起こし、それにともない貧血が起こることがあります。
胃がん
胃がんは、初期はまったくといっていいほど自覚症状がありません。しかし、さらに胃がんが進み、黒褐色の吐血や下血によって大量な出血が起こるようになると、貧血症状があらわれてきます。このような慢性的な出血から、貧血をよく起こす疾患といわれています。みぞおちの痛みや膨満感、食欲不振、吐き気が出てきたころには症状が進行している場合が多いのです。
子宮筋腫
子宮にできる良性の腫瘍で、30〜40代の女性5人に1人は筋腫があるといわれています。初期の自覚症状はほとんどありませんが、筋腫が大きくなると生理痛が強くなり、経血の増加や期間の長期化がみられ、貧血やめまい、立ちくらみなどを引き起こします。また、筋腫による周囲の臓器の圧迫などによって、頻尿、排尿や排便時の痛み、腰痛などを起こすこともあります。不妊や流産の原因にもなります。
子宮内膜症
本来子宮の内側にしか存在しない子宮内膜に似た細胞組織が、卵管、骨盤腹膜、直腸の表面など、さまざまな臓器に発生する疾患です。最近は10〜20歳代の若い世代にも多くみられます。激しい生理痛や下腹部痛が特徴ですが、さらに腰痛や性交痛、排便時の肛門の奥の痛み、生理時の大量出血による貧血、吐き気、嘔吐などの症状がみられます。
慢性腎不全
慢性糸球体腎炎や糖尿病性腎症が進行し、慢性腎不全になると吐き気、皮膚のかゆみ、頭が重い、貧血、食欲不振といった症状があらわれます。また、腎臓でつくられる、赤血球をつくり出すためのホルモンが欠乏して貧血が起こります。腎臓の機能が極度に低下すると、尿毒症を引き起こし、尿量が極端に減り、体がひどくむくみ、嘔吐、不眠、意識障害など、全身にさまざまな症状があらわれます。
白血病
骨髄で異常な白血球細胞が増殖し、正常な白血球をつくることができなくなる疾患です。異常な白血球細胞が増えるために、正常な赤血球や血を止める血小板も減少し、出血しやすくなり、動悸や息切れをともなった極度な貧血症状を引き起こすことがあります。また、正常な白血球の減少によって免疫力が低下し、呼吸器をはじめとするさまざまな感染症にかかりやすくなります。
多発性骨髄腫
多発性骨髄腫は、免疫機能を持つ形質細胞というリンパ球ががん化して骨髄中に増える疾患です。全身の倦怠感や腰痛などの症状の他に、造血機能に障害をきたすために貧血が起きたり、体の抵抗力が低下して呼吸器系の感染症にかかりやすくなります。また、がん化した細胞が近くの骨をおかすので骨がもろくなり、ちょっとしたはずみで腰椎骨の圧迫骨折を起こし、腰や背中に痛みが出ます。