めまい
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めまい

体がバランスを保つための機能を平衡感覚といいます。人の平衡感覚は、目、耳の奥の内耳、手足の皮膚や筋肉、関節から集められた情報を脳が整理、統合し、体の各器官に指令を出すことによって保たれています。この平衡感覚を維持するシステムに障害が起きると、うまくバランスがとれなくなり、めまいが起こります。めまいを引き起こす原因として一番多いのが、耳の奥の内耳の障害です。

井上修二 先生

監修

井上修二 先生 (いのうえしゅうじ) (共立女子大学名誉教授、医学博士)

クラクラする、ふわふわするなどめまいの種類による違い

グルグル目が回るめまい

急に自分がグルグルと回っているように感じたり、景色や天井など周囲が回って見えたりするため、回転性めまいと呼ばれています。急な激しい発作の場合が多く、まっすぐに立っていられなくなったり、三半規管が不安定になるために嘔吐をともなうこともあります。主に内耳の異常が原因と考えられています。

フワフワ、フラフラするめまい

地に足が着かないようなフワフワした浮動性めまいや、足元がフラフラして地面が揺れるような動揺性めまいは、両側の内耳や脳の障害によって起きることが多くあります。立っていられないほどではなく、症状そのものは軽度ですが、長時間続く傾向があります。

立ちくらみのようなめまい

耳や脳には異常がみられないのに、急に立ち上がったときや湯船から出ようとしたときに頭がクラクラしたり、一瞬目の前が真っ暗になることがあります。これは、耳や脳の異常ではなく、脳に送られる血液の量が一時的に不足することで起こるのです。貧血やストレス、過労などで自律神経のバランスが乱れると症状が出やすくなります。

クラクラ、ふわふわするなどめまいをともなう主な疾患

良性発作性頭位めまい症や内耳炎、慢性中耳炎、メニエール病、前庭神経炎、突発性難聴など、めまいを引き起こす疾患の多くは、内耳の障害や炎症が原因になります。その他、降圧剤によって急激に血圧が変動することがある高血圧、脳に血液が十分に供給されなくなる低血圧症、脳梗塞、脳腫瘍、そして、血液中のヘモグロビン濃度が薄くなる貧血もめまいの原因として知られています。また、更年期障害でもめまいが起きることがあります。

※以下の疾患は、医師の診断が必要です。
下記疾患が心配な場合には、早めに医師の診察を受けましょう。

良性発作性頭位めまい症

起き上がろうとしたときや寝返りを打ったとき、上または下を向いたときなど、頭の位置を変えたときにグルグルと目が回るようなめまいやフワフワと浮くようなめまいが起きます。内耳の耳石の障害が原因と考えられ、頭部の外傷や慢性中耳炎の後などに起こることがあります。めまいの中で一番多く、中年の女性によくみられますが、危険なめまいではなく、慣れることによってめまいは起こらなくなります。

内耳炎・慢性中耳炎

平衡感覚をつかさどる内耳に炎症が起きると、耳鳴りや難聴とともに、グルグルと目が回るようなめまいや吐き気、嘔吐などが起きます。また、慢性中耳炎が進行し炎症が内耳に及んだときにも同様のめまいが起き、さらに顔面神経まひをともなう場合もあります。

メニエール病

自分や周囲がぐるぐる回るめまいと、どちらか一方の耳にだけ起きる耳鳴り、そして難聴の3つが同時に起き、多くの場合、強い吐き気や嘔吐をともないます。過労やストレスが引き金になることがあります。危険な疾患ではありませんが、放置すると耳鳴り・難聴が進行します。

突発性難聴

突然、片方の耳に強い耳鳴りと難聴が起こり、その約半数がグルグルと回転するめまいをともないます。重い場合は、耳がまったく聞こえなくなります。発作は一度きりで繰り返すことはほとんどありません。ウイルス感染や内耳の血流障害が原因と考えられ、過労やストレスが引き金になることが多いといわれています。

高血圧症

遺伝や肥満、塩分のとりすぎなどの生活習慣が原因で最高血圧140mmHg以上、最低血圧90mmHg以上が続く状態です。高血圧は放置しておくと、脳梗塞や脳出血によってフワフワとする危険なめまいを起こしやすくなります。また、降圧剤が効きすぎて急激に血圧が下がると、激しく目の前が回るクラクラするめまいが起きます。

この疾患・症状に関連する情報はこちら。 血圧が高めである

低血圧症

遺伝や自律神経の乱れなどが原因で起こるといわれ、最高血圧が常に100mmHg未満の状態です。脳に血液が十分に供給されないため、クラクラとするめまいを起こすことがあります。また、立ち上がったときに最高血圧が急激に下がったときに起こる「起立性低血圧」でも、クラクラするようなめまいや立ちくらみが起こります。心臓機能の低下や足の筋力の衰えなども原因となることもあります。

この疾患・症状に関連する情報はこちら。 血圧が低めである

貧血

鉄分の不足などが原因で、酸素と結合して酸素を体のすみずみまで運ぶヘモグロビンが減少し、血液中の濃度が薄くなった状態です。ヘモグロビンの数値が男性は13.0g/dl以下、女性は12.0g/dl以下になると、貧血とされています。フワフワと浮遊するようなめまいや目の前がクラクラするようなめまいが起こり、さらに冷え、倦怠感、立ちくらみ、耳鳴り、頭痛などの症状が起こります。

この疾患・症状に関連する情報はこちら。 貧血

更年期障害

閉経の前後、約10年間をさす更年期を迎えると、女性ホルモンのバランスが急激に変化し、心や体にさまざまなトラブルを引き起こします。疲れやだるさ、肩こり、のぼせやほてり、イライラや不安感などの症状の他、フワフワとするめまいやクラクラと回るようなめまい、耳鳴りが起こることもあります。

この疾患・症状に関連する情報はこちら。 更年期障害

脳梗塞

脳梗塞は脳の血管内腔の動脈硬化が進行し、血管が狭くなっているところに血液の塊が詰まることによって血流が止まり、脳の組織が破壊される疾患です。グルグルと回るめまいが起こり、つまづきや転倒が起きやすくなります。手足のしびれや、意識障害をともなうこともあります。

脳出血

脳内の血管が破れて出血するのが脳出血です。その血管下部への血流がなくなったり、脳の中に出血した血液の塊ができ、それが周囲の組織を圧迫して脳の組織の破壊や障害が進みます。小脳や脳幹部にこれらの障害が起きると、激しいめまいや頭痛、吐き気・嘔吐、手足のまひなどの症状があらわれます。めまいは、フワフワめまいがほとんどですが、クラクラめまいのときもあります。

前庭神経炎

平衡感覚を脳に伝える前庭神経に障害が起きると、グルグルと回る激しいめまいが起きます。多くは吐き気や嘔吐をともないますが、耳鳴りや難聴はありません。発作中は眼球が不自然に動く眼振という症状がみられます。風邪をひいた後に起こりやすく、発作は数時間から数日間続きますが、危険なめまいではありません。

めまいは血圧低下やストレス、自律神経の乱れなど様々な原因が考えられる

急に立ち上がったときなどに起きる血圧の低下

立ち上がるときは、自律神経が血管と心臓に作用して血圧の変動を調節しています。この自律神経が十分に機能していないと、急に立ち上がったときに血圧が下がり、脳に送られる血液の量が一時的に少なくなることでクラクラとするめまいが起きます。

ストレスや過労による自律神経の乱れ

過労や睡眠不足、緊張状態や精神的なストレスなどが続いたときは自律神経が乱れやすくなり、フワフワとするめまいやクラクラとするめまいが起こることがあります。めまいの他に、耳鳴りや頭痛、肩こり、不眠、冷や汗といった症状があらわれることも少なくありません。

耳の奥の異常

耳の奥の内耳という部分は、聴覚とともに平衡感覚をつかさどっています。めまいの原因はこの内耳の異常によって起こることが多く、周囲や自分がグルグルと回っているようなめまいに襲われます。めまいと同時に耳鳴りが起こることが多く、耳の閉塞感や難聴をともなうこともあります。

アルコールの飲みすぎやタバコの吸いすぎ

アルコールを飲みすぎると、平衡感覚を維持する脳や内耳の三半規管に一時的に障害を与えることになります。そのため、フワフワとするめまいや周囲がグルグルと回るめまいが起こります。また、タバコに含まれるニコチンは血管を収縮させ、一酸化炭素は血液の酸素を運ぶ能力を低下させて酸素不足を引き起こします。この酸欠状態が脳や内耳の働きに影響を与え、フワフワと浮くようなめまいやグルグル回るめまいの引き金となります。

クラクラする、ふわふわするなどめまいの症状が起こったときの対処法

めまいが起きたらあわてず安静にする

めまいの発作が起きたときは、あわてないことが大切です。転倒しないよう注意しながら、座れる場所や横になれる場所へ移動し、楽な姿勢でしばらく休みます。また、車を運転しているときは、路肩に駐車し、できればシートを倒して休みましょう。

ビタミンB群をしっかりとる

めまいを軽くするのに役立つのがビタミンB群です。なかでもビタミンB12は神経の代謝を促す作用があり、めまいの治療薬にも使われています。レバー、豚肉、サンマ、アサリ、カキなどに多く含まれ、睡眠と覚醒のリズムを整える働きもあります。豚肉などに豊富に含まれるビタミンB1も、脳の働きを正常に保つ働きがありますので、めまいの予防に効果的です。

カフェインや香辛料を控える

カフェインや香辛料は神経を刺激して興奮させる作用があるため、めまいを引き起こしたり悪化させたりすることがあります。カフェインはコーヒーや紅茶、緑茶だけでなく、コーラや栄養ドリンク剤にも含まれていることも多いので、注意が必要です。

病院で診察を受ける

グルグルと回るような激しいめまいや耳鳴りが起こる場合は耳鼻咽喉科、あるいは脳神経外科か神経内科を受診しましょう。最近では、専門のめまい外来を設けている病院もあります。また、めまいには脳の疾患が原因で起こる危険なめまいもありますので、激しい頭痛や舌のもつれ、物が二重に見える、手足のしびれなどをともなう場合は、救急車を呼び一刻も早く病院へ行きましょう。

日常生活でめまいを防ぐ方法

生活のリズムを整える

夜ふかしをしたり、朝食を抜いたりすると体本来のリズムが狂い、自律神経のバランスが乱れてめまいが起きやすくなります。食事はできるだけ決まった時間に3食とり、早寝早起きの習慣をつけて十分な睡眠時間をとるようにして、生活のリズムを整えましょう。また、適度な運動は体の血流を促します。ウォーキングなど、無理のない運動を続けましょう。

ストレスを溜めない

心身のストレスによって自律神経のバランスが崩れると、めまいを起こしたりめまいが悪化したりすることがあります。疲れを感じたときは、いつもより早めに眠り、休日に好きなことをしてリフレッシュし、ストレスを溜め込まないようにしましょう。

アルコール、タバコを控える

一度にアルコールを飲みすぎると、平衡感覚が低下して、めまいを誘発します。適量を守り、めまいがするときは控えましょう。また、タバコに含まれるニコチンは血管を収縮させ、一酸化炭素は血液中の酸素を奪います。脳や内耳の血行が悪くなったり酸素不足になるとめまいが起きやすくなるので、タバコは控えましょう。

体をゆっくり動かす習慣を身につける

高血圧や低血圧、貧血の人や、日常的にめまいが起こるという人は、日々の動作をなるべくゆっくりと行うように心がけてみましょう。とくに起き上がるときや立ち上がるときはゆっくりと動くように意識し、めまいを予防しましょう。

プチメモ平衡訓練に役立つ日常生活の工夫

平衡訓練に役立つ日常生活の工夫

めまいの治療の一環として平衡訓練というものがありますが、朝起きてから夜寝るまでの日常生活の動作が、全て平衡訓練に繋がっています。例えば、洗顔時に目を閉じて直立したり、片足だけで立つ練習をしてみてください。またズボンやスカート、靴下を立ったままはいてみたり、階段の上がり下りを積極的に行うなど、生活の中で平衡機能を鍛えることができます。毎日続けることが大切ですが、気分が悪いときは中止しましょう。