遺伝や肥満、塩分のとりすぎなどの生活習慣が原因で、収縮期(最高)血圧140mmHg以上、または拡張期(最低)血圧90mmHg以上が続く状態です。頭痛やめまいなどをともなうこともありますが、特徴的な自覚症状はほとんどなく、放置すると動脈硬化が進んで、心筋梗塞や脳卒中などの合併症を引き起こします。日本では患者数が現在約4000万人といわれ、子どもの高血圧も増えています。
動脈硬化症
血液中のLDL(悪玉)コレステロールが増えると、コレステロールが動脈の血管に沈着しやすくなり、血管の弾力性が失われて動脈硬化を引き起こします。同様に高血圧も動脈硬化を促進する大きな原因の一つです。高血圧は動脈壁の一番内側の内皮細胞を傷つけ、血管壁にコレステロールが取り込まれやすい状態にします。高血圧と動脈硬化は互いの症状を悪化させていき、ある日突然、心筋梗塞や脳梗塞のような疾患となってあらわれます。
脳出血
脳の中の細い動脈が高い圧力を受け続けることでもろくなり、破れて出血する疾患です。脳の中に大きな血液の塊ができ、脳の組織を圧迫してダメージを与えます。50歳代以上の高血圧の人に起こりやすく、運動や仕事をしているときに急に発病することが多いのが特徴です。片側の麻痺や手足のしびれ、頭痛、吐き気、嘔吐、頭痛、めまいなどの症状などを起こします。出血の範囲が広いと、意識障害があらわれ、死に至ることもあります。
脳梗塞
動脈硬化によって脳動脈の血管が狭くなっている部分に、血液が固まってできる血栓が詰まることで、血流が完全に止まる状態が脳梗塞です。高血圧は、脳動脈の動脈硬化を促進する大きな原因となります。脳梗塞は起こった場所によって、半身不随や言語障害、また最悪の場合、心停止や呼吸停止などを起こし、死亡に至ることもあります。
心肥大症
高血圧が長く続いたり動脈硬化が進行すると、心臓はより強い力で血液を送り出さなくてはならないため、心臓の筋肉が大きくなり、心臓の壁が基準以上に厚くなるのが心肥大です。心肥大になると、心筋が酸素と栄養不足になりやすく、機能が低下し、放置すると心不全を引き起こすこともあります。主な症状は動悸や息切れで、進行すると呼吸困難を起こします。
狭心症
狭心症は、心臓の筋肉に血液を送り込む血管の動脈硬化が進行して、血管内腔が狭くなり、血流が不足して心臓が一時的に酸素欠乏状態に陥る疾患です。胸の中央からのどにかけて圧迫痛や呼吸困難、動悸といった発作が起こります。とくに坂道や階段を上ったときなどに痛みや呼吸困難が起こりやすくなり、このような痛みは1〜2分から、長くても15分以内におさまることがほとんどです。
心筋梗塞
心臓の筋肉に血液を送り込むのが冠動脈です。その冠動脈が動脈硬化を起こして狭くなっている部分に、血液が固まってできる血栓が詰まり、血流が完全に止まってしまうのが心筋梗塞です。突然、胸に激痛が起こり、心筋の壊死が始まります。痛みは30分から数時間続くことが多いといわれています。心筋の壊死の範囲が広がると、血圧が低下して顔面が蒼白になるとともに、吐き気や冷や汗などがみられたり、意識を失って死に至ることもあります。主な原因は動脈硬化ですが、これに高血圧や糖尿病、肥満、喫煙などが重なるとリスクが高まります。
腎硬化症
高血圧が続くと腎臓の中の細い動脈にも動脈硬化が起こります。腎臓に流れる血液の量が減り、腎臓の血管の壁がだんだんと萎縮して弾力が失われガラス様物質がつまり、機能が低下する状態が腎硬化症で、まったく自覚症状のないまま進行する場合も少なくありません。高血圧を治療しないで放置していると腎臓の機能が著しく低下し、透析治療が必要になる場合もあります。