血圧が高めである
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血圧が高めである

血圧とは、血液が動脈の壁を押す力のことです。心臓が収縮して血液を押し出すときの圧力を収縮期(最高)血圧、心臓が拡張して全身の静脈や肺などから血液を吸い込むときの圧力を拡張期(最低)血圧といいます。最高血圧または最低血圧が、正常とされる基準値を慢性的に超えている状態が高血圧です。

井上修二 先生

監修

井上修二 先生 (いのうえしゅうじ) (共立女子大学名誉教授、医学博士)

日常生活から考えられる原因

塩分や動物性脂肪のとりすぎ

塩分のとりすぎは、血圧を上昇させる大きな原因となります。さらに、動物性脂肪や糖分のとりすぎは肥満や動脈が硬くなって内腔が狭くなる動脈硬化を招き、高血圧を引き起こす原因となります。

カリウム、カルシウムの不足

野菜などに含まれるカリウムは塩分を排出する働きをもっているため、野菜が不足しても高血圧になりやすくなります。また、カルシウムには血圧を下げる作用がありますので、不足すると血圧の上昇を招きます。

加齢、体質

65歳以上の3人に2人が高血圧といわれています。これは、加齢にともない動脈硬化が進むことによって血液が流れにくくなったり、血圧をコントロールする自律神経が正常に働かなくなることが原因です。また、両親や祖父母に高血圧の人がいる場合や、塩分の影響を受けやすい体質の場合も高血圧になりやすく、20〜30歳代で血圧が高めになる人の多くは、体質の影響を強く受けていると考えられています。

運動不足

適度な運動をすると血圧を下げる働きをするホルモンの分泌が増え、逆に血圧を上げるホルモンの分泌が減るため、血圧の上昇を防ぐことができます。また、運動不足は肥満に繋がりますが、肥満の人は血液中のインスリン濃度が高くなりやすく、この状態が交感神経を刺激して血圧を上げると考えられています。

ストレス、緊張、疲労の蓄積

ストレスがかかると自律神経の交感神経が強く働き、血管を収縮させるホルモンが分泌されるために、血圧が上がります。緊張をしたときにも血圧が上がり、病院で血圧を測ると普段より高くなってしまう状態を白衣性高血圧と呼んでいます。また、疲労や睡眠不足が続くと自律神経が乱れるため、血圧の上昇を招くことがあります。

飲酒、喫煙の習慣

アルコールには血管拡張作用があるので血圧を一時的に下げることもありますが、過度の飲酒は交感神経を刺激して心拍数を増やすので、血圧を上げる原因となります。また、タバコに含まれるニコチンは血管を収縮させたり、血管内に血栓を作りやすくして動脈硬化を促進させるので、喫煙習慣は高血圧を招きやすくなります。

急激な温度差

皮膚が冷たい空気にふれると、体温を逃がさないように血管が収縮するため、血圧が上がります。とくに、冬に暖かい室内から急に寒いトイレに入ったり、屋外に出るなど、温度が大きく変化すると血圧が急激に上がり、脳卒中や狭心症、心筋梗塞などの発作を起こすこともあります。また、夏の冷房による冷気の刺激も、血圧を上げる引き金になります。

高血圧を引き起こす主な疾患

別な疾患が原因となって、二次的に起きる高血圧はわずか5%ほどにすぎないといわれてます。その中でも多いのが腎臓の障害で、腎臓にダメージを与える糖尿病や痛風なども高血圧を招きます。その他、副腎から分泌されるホルモンの量が多すぎて血圧の上昇を招く場合や、妊娠中毒症も高血圧を引き起こします。二次性高血圧は原因となる疾患の治療を行えば、多くの場合、血圧は下がります。

高血圧が引き起こす疾患

※以下の疾患は、医師の診断が必要です。
下記疾患が心配な場合には、早めに医師の診察を受けましょう。

高血圧症

遺伝や肥満、塩分のとりすぎなどの生活習慣が原因で、収縮期(最高)血圧140mmHg以上、または拡張期(最低)血圧90mmHg以上が続く状態です。頭痛やめまいなどをともなうこともありますが、特徴的な自覚症状はほとんどなく、放置すると動脈硬化が進んで、心筋梗塞や脳卒中などの合併症を引き起こします。日本では患者数が現在約4000万人といわれ、子どもの高血圧も増えています。

動脈硬化症

血液中のLDL(悪玉)コレステロールが増えると、コレステロールが動脈の血管に沈着しやすくなり、血管の弾力性が失われて動脈硬化を引き起こします。同様に高血圧も動脈硬化を促進する大きな原因の一つです。高血圧は動脈壁の一番内側の内皮細胞を傷つけ、血管壁にコレステロールが取り込まれやすい状態にします。高血圧と動脈硬化は互いの症状を悪化させていき、ある日突然、心筋梗塞や脳梗塞のような疾患となってあらわれます。

脳出血

脳の中の細い動脈が高い圧力を受け続けることでもろくなり、破れて出血する疾患です。脳の中に大きな血液の塊ができ、脳の組織を圧迫してダメージを与えます。50歳代以上の高血圧の人に起こりやすく、運動や仕事をしているときに急に発病することが多いのが特徴です。片側の麻痺や手足のしびれ、頭痛、吐き気、嘔吐、頭痛、めまいなどの症状などを起こします。出血の範囲が広いと、意識障害があらわれ、死に至ることもあります。

脳梗塞

動脈硬化によって脳動脈の血管が狭くなっている部分に、血液が固まってできる血栓が詰まることで、血流が完全に止まる状態が脳梗塞です。高血圧は、脳動脈の動脈硬化を促進する大きな原因となります。脳梗塞は起こった場所によって、半身不随や言語障害、また最悪の場合、心停止や呼吸停止などを起こし、死亡に至ることもあります。

心肥大症

高血圧が長く続いたり動脈硬化が進行すると、心臓はより強い力で血液を送り出さなくてはならないため、心臓の筋肉が大きくなり、心臓の壁が基準以上に厚くなるのが心肥大です。心肥大になると、心筋が酸素と栄養不足になりやすく、機能が低下し、放置すると心不全を引き起こすこともあります。主な症状は動悸や息切れで、進行すると呼吸困難を起こします。

狭心症

狭心症は、心臓の筋肉に血液を送り込む血管の動脈硬化が進行して、血管内腔が狭くなり、血流が不足して心臓が一時的に酸素欠乏状態に陥る疾患です。胸の中央からのどにかけて圧迫痛や呼吸困難、動悸といった発作が起こります。とくに坂道や階段を上ったときなどに痛みや呼吸困難が起こりやすくなり、このような痛みは1〜2分から、長くても15分以内におさまることがほとんどです。

心筋梗塞

心臓の筋肉に血液を送り込むのが冠動脈です。その冠動脈が動脈硬化を起こして狭くなっている部分に、血液が固まってできる血栓が詰まり、血流が完全に止まってしまうのが心筋梗塞です。突然、胸に激痛が起こり、心筋の壊死が始まります。痛みは30分から数時間続くことが多いといわれています。心筋の壊死の範囲が広がると、血圧が低下して顔面が蒼白になるとともに、吐き気や冷や汗などがみられたり、意識を失って死に至ることもあります。主な原因は動脈硬化ですが、これに高血圧や糖尿病、肥満、喫煙などが重なるとリスクが高まります。

腎硬化症

高血圧が続くと腎臓の中の細い動脈にも動脈硬化が起こります。腎臓に流れる血液の量が減り、腎臓の血管の壁がだんだんと萎縮して弾力が失われガラス様物質がつまり、機能が低下する状態が腎硬化症で、まったく自覚症状のないまま進行する場合も少なくありません。高血圧を治療しないで放置していると腎臓の機能が著しく低下し、透析治療が必要になる場合もあります。

※以上の疾患は、医師の診断が必要です。
上記疾患が心配な場合には、早めに医師の診察を受けましょう。

日常生活でできる予防法

塩分を控えた野菜中心の食生活を心がける

予防のためには、1日の塩分摂取量を10g未満にし、調理の仕方で薄味でもおいしく食べられるように工夫しましょう。また、塩分を排出する働きのあるカリウムや食物繊維の豊富な野菜、動脈硬化を予防する効果の高いいわしなどの背の青い魚やカルシウムを積極的にとり、動物性脂肪や糖分の摂取を減らしましょう。

運動を習慣化して肥満を防ぐ

余分な摂取カロリーを運動によって消費すれば、肥満が予防できます。また、運動を習慣化することで血圧を下げる体内物質などが増えます。さらに、血液中のHDL(善玉)コレステロールが増え、LDL(悪玉)コレステロールが減るため、動脈硬化の予防にも繋がります。

ゆとりのある生活を送り、ストレスを溜めない

時間に追われる緊迫感や仕事のプレッシャーなどのストレスは、血圧を上げる原因となります。疲労やストレスが蓄積しないように、無理のないスケジュールを立て、つねに時間のゆとりをもって行動しましょう。また、少しでも好きなことをする時間をもつこと、十分に睡眠をとることも大切です。

温度差のない生活をする

急激な温度変化があると、急に血管が収縮して血圧が上昇し、脳卒中や心筋梗塞などを引き起こすことがあります。暖房の効いた室内から外に出るときは、暖かくして出かけましょう。室内でも、トイレや脱衣所・浴室などには暖房器具を設置したほうがいいでしょう。夏に暑い戸外から冷房の効いた室内に入るときにも、注意が必要です。

飲酒、喫煙を控える

アルコールの飲みすぎは血圧に悪影響を与えるばかりでなく、肥満や動脈硬化に繋がることから、適量を守ることが大切です。コーヒーも飲みすぎれば興奮を招き、血圧を上げる原因となりますので、1日2〜3杯程度にしましょう。また、タバコは血圧だけでなく体全体に悪影響を及ぼしますので、できるだけ喫煙は控えましょう。

対処法

食事の仕方で血圧をコントロールする

高血圧症の人の場合、一日の塩分摂取量は6g未満とされています。だしを濃いめにしたり、酸味や香辛料を上手に使って、薄味でもおいしく食べられる工夫をしましょう。また、油を減らすには、ゆでる、蒸す調理法がおすすめです。カリウムが豊富ないも類、トマト、ホウレンソウ、バナナなどの野菜や果物類、カルシウムの豊富な牛乳、小魚、ひじきなどを積極的にとりましょう。

生活の中に適度な運動を組み込む

ウォーキングなどの軽く汗ばむ程度の運動を習慣にすることは、血圧を下げる体内物質を増やす作用があります。さらに、代謝が良くなるとともに、筋肉がつくことで体脂肪が燃えやすくなり、肥満の解消に繋がります。通勤のときに一つの駅まで歩いたり、エスカレーターやエレベーターを使わず階段を利用して運動を無理なく生活の中に組み入れましょう。ただし、急激な運動は血圧の変動を招きますので注意しましょう。

リラックスする時間を持つ

血圧が高い人は、一日の中で趣味を楽しむなど、ゆったりした時間を持つことが大切です。夕食の2〜3時間後に40℃以下のぬるま湯にじっくりとつかり、入浴後は暖かい部屋でストレッチをしたり、好きな音楽や香りを楽しんだり、読書をするなど、就寝までの時間をリラックスして過ごしましょう。

病院で診察を受ける

高血圧を放置すると危険な合併症を招くことがありますので、できるだけ軽いうちに発見して対処することが大切です。定期的に健康診断や人間ドックなどを受けて高血圧と診断された場合や、家庭で朝晩血圧を測り、収縮期(最高)血圧140mmHg以上、または拡張期(最低)血圧90mmHg以上の場合、まずは主治医を受診しましょう。

プチメモ近年増えている早朝高血圧って?

近年増えている早朝高血圧って?

最近増えているのが、病院で測ると正常なのに、家庭で測ると血圧が上がる仮面高血圧です。なかでも、昼間の血圧は正常なのに、早朝に血圧が異常に高くなるのが早朝高血圧で、知らないうちに高血圧によるダメージが進行し、脳卒中や心筋梗塞など危険な疾患に見舞われる可能性があります。お年寄りや動脈硬化症をもつ人はとくになりやすいと考えられますので、注意が必要です。心配な場合は、朝起きて30分以内に血圧を測ってみましょう。また、高血圧の投薬治療を受けている人は、主治医に相談し、投薬の見直しをしてもらう必要があります。