肥満
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肥満

摂取エネルギーが消費エネルギーを上回り、体脂肪が過剰になる状態が肥満です。内臓肥満を原因とするメタボリックシンドロームという考え方が広く浸透してから、肥満が注目されるようになりました。体脂肪の蓄積の度合いを判定するBMI(体重(kg)÷身長(cm)2)で評価するのが一般的で、25以上が肥満と判定されます。

井上修二 先生

監修

井上修二 先生 (いのうえしゅうじ) (共立女子大学名誉教授、医学博士)

日常生活から考えられる原因

エネルギーを溜め込む食生活

忙しく、仕事に追われる毎日は食生活が乱れがちです。朝食を抜く、外食、遅い夜食、まとめ食いなど、こんな脂質や糖分のとりすぎや不規則な食生活が続くと、摂取したエネルギーが消費エネルギーを上回り、貯蔵用として蓄積されます。これは食事が少なかったり、激しい運動などでエネルギーが不足したときに備えて蓄えられるのです。

エネルギーを消費できない運動不足

インターネットや車が多く使われるようになると、体を動かすために使うエネルギーが少なくなります。そのため摂取エネルギーが消費エネルギーを上回って、肥満につながります。

肥満の種類

過剰になると怖い体脂肪が蓄積した肥満

全身のいたるところに蓄積するのが「体脂肪」です。内臓脂肪に比べて軽視されがちですが、この「体脂肪」も過剰になると、糖尿病や高血圧症、脂質異常症など生活習慣病のリスクを高めます。体脂肪の蓄積の度合いは、BMIで評価します。標準は18.5〜25未満で、25以上は肥満と判定されます。

生活習慣病のリスクが高い上半身肥満

腹部から上に脂肪が溜まり、その体型から「リンゴ型肥満」とも呼ばれる上半身肥満は、生活習慣病のリスクが高くなります。腹囲を計って男性は85cm、女性は90cm以上が上半身肥満と判定されます。また、腰から下の下半身に脂肪が溜まる「洋ナシ型肥満」は中高年の女性に多く、生活習慣病のリスクは少ないとされています。

生活習慣病のリスクが最も高い内臓肥満

上半身肥満は、主に皮膚の下に脂肪が溜まる「皮下脂肪」と胃や腸など内臓の周りに脂肪が溜まる「内臓脂肪」に分けられます。このうち、内臓脂肪のほうが生活習慣病のリスクを高めると問題視されています。腹部をCTで検査し、脂肪が100cm2以上溜まっていると内臓肥満と判定されます。見た目やBMIの数値だけでは判断できないことも多いので、かくれ肥満とも呼ばれています。

疾患にともなう肥満

肥満には、疾患などを原因とするものがあります。代表的なものは、内分泌疾患(甲状腺機能低下症など)によるもの、遺伝(プラダー・ウィリー症候群など)によるものです。また、治療中の薬剤の副作用として、たとえばステロイド剤、精神病薬などによっても肥満が引き起こされることがあります。

肥満が引き起こす疾患・症状

生活習慣病

肥満は、高血圧や糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病を引き起こす原因となります。これら生活習慣病に引き続き、動脈の壁が厚くなって血液がスムーズに流れなくなる動脈硬化が進むと、心筋梗塞や狭心症などのリスクを高めます。生活習慣病が複数重なるようになると、そのリスクがより高まります。

メタボリックシンドローム

メタボリックシンドロームは、動脈硬化による脳梗塞、狭心症、心筋梗塞のリスクが非常に高い状態です。また、生活習慣病のリスクを高める大きな要因にもなります。メタボリックシンドロームは、上半身肥満(とくに内臓肥満)という危険因子があり、さらに血糖値や血中脂質値、血圧値の下記の異常が一つでもあればメタボリックシンドローム予備群、2つ以上あるとメタボリックシンドロームと診断されます。上半身肥満は、メタボ診断では腹囲を基準にしています。腹囲はへその高さで計り、男性は85cm、女性は90cm以上が上半身肥満と判定されます。また、喫煙も危険因子の一つです。


●空腹時血糖値が110mg/dl以上
●中性脂肪が150mg/dl以上
またはHDL(善玉)コレステロールが40mg/dl未満
●収縮期血圧(最高)が130mmHg以上
または拡張期血圧(最低)が85mmHg以上

※上記疾患が心配な場合には、早めに医師の診察を受けましょう。

日常生活でできる予防法

ストレス対策をする

「ストレス食い」という現象があるように、ストレスは食べすぎの大きな原因になります。気分転換や質の良い睡眠を心がけて、なるべくストレスを解消していきましょう。また、食事以外のストレス解消方法を見つけることも大切です。没頭できる趣味を作りましょう。

食べ方に注意をする

まず、食べすぎないように気をつけましょう。食べすぎでなくとも、テレビや新聞を見ながら食事をしたり、早食い、まとめ食い、夜食、朝食を抜くなどは肥満になりやすい原因といわれています。間食や甘いものを控え、1日3食規則正しい時間に食事をとるようにしましょう。また、肥満を予防、解消するには日々の食事を見直すことが一番です。丼ものなどの単品メニューは避けて、野菜や魚、海草類、豆類をバランス良くとりましょう。

飲酒や喫煙を控える

アルコールというと、それ自体よりも一緒にとるおつまみのほうが問題視されがちですが、アルコール自体も高カロリーです。さらに、アルコールは肝臓内で脂肪がつきやすく、脂肪肝の原因になります。タバコは、直接肥満の原因にはなりませんが、タバコに含まれる有害物質が血管自体を傷つけ、脳梗塞や心筋梗塞などの動脈硬化性疾患を招きます。アルコールとタバコを控えましょう。

脂肪のつきにくい体をつくる

脂肪を燃やし、持久力をつけるウォーキングや水泳などの有酸素運動、全身の血行を良くするストレッチを毎日10分以上続ける習慣をつけましょう。運動習慣をつけることで、血液の循環や内臓を動かしたりするために使われる基礎代謝が上昇し、脂肪がつきにくい体になります。

メタボリック健診(特定健診・特定保健健診)を受ける

現在では、40〜74歳の人を対象に、メタボリック健診が義務化されています。通常の健診の項目に、腹囲の測定が加わります。メタボリックシンドロームか、その予備軍と判定されると、保健師や管理栄養士から、食事や運動の指導を受けることになります。メタボ対策の目標は、体重3kg減、ウエスト3cm減です。

対処法

1日に1万歩歩く

肥満の解消には、なんといっても運動が不可欠です。運動の中でも、普段の生活の中でできるウォーキングがおすすめです。ウォーキングをするときは、背筋をまっすぐに膝を伸ばして歩くと脂肪を燃やす効果が高まります。目標は1日1万歩ですが、10分のウォーキングを3回、合計30分の運動でも十分に内臓肥満を減らす効果がありますので、最初から1万歩歩こうと思わずに、少しずつ歩数を増やしていきましょう。

適切なカロリー制限をする

一般的な成人の摂取カロリーの目安は、だいたい1800kcal〜2200kcal前後です。この数値を超えることがないように、カロリーを制限しましょう。ただし、摂取カロリーを下げようとして朝食を抜くのは逆効果。1食抜くと、その次に食べたものが脂肪として蓄えられやすくなります。また極端な食事制限でカロリーを減らしすぎると、基礎代謝が減ってリバウンドを起こしやすい体になる上、筋肉や骨が衰え、体重は減っても脂肪が落ちないので注意しましょう。

毎日体重計に乗る

ウエイトコントロールで一番怖いのがリバウンド。このリバウンドを防ぐには、まずはコントロール成功後も運動を続けることが大切です。そして、目標体重に達した後も、毎日体重を計り続けましょう。さらに記録しておけばベストです。生活習慣病の予防には、減量した体重を維持することが大切なので、ちょっとでも体重が増えていたら3日以内に調整するようにしましょう。

病院で診察を受ける

肥満はメタボリックシンドロームや生活習慣病などの原因になります。BMIや腹囲で肥満と判定されたときや、血液検査値で2つ以上異常があるようなときは、まずは近くの医療機関で診察を受けましょう。

プチメモ脂肪肝に注意!

脂肪肝に注意!

肝臓に脂肪が溜まりすぎた状態を脂肪肝といいます。脂肪肝の半数以上はBMIが25未満のかくれ肥満の人といわれています。脂肪肝を放置すると、肝臓の機能が低下し、慢性肝炎となり、やがて脂肪性肝硬変や肝がんといった、重大な病気へと進行してしまうこともあります。肝臓は「沈黙の臓器」とも呼ばれ、自覚症状があらわれにくいので注意が必要です。