意識障害
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意識障害

意識障害は、周囲のことや自分のこと、あるいは時間的なことについて判断できなくなった状態です。瞬間的に意識が飛んだり、短時間の意識消失の失神から、正常な反応ができなくなる昏迷、放っておくと寝てしまう傾眠、長く意識が回復しない昏睡までさまざまな状態があります。脳や臓器に重篤な異変が起こっていることが多く、その場合は緊急な治療が必要です。

井上修二 先生

監修

井上修二 先生 (いのうえしゅうじ) (共立女子大学名誉教授、医学博士)

意識障害とは?日常生活から考える意識障害の原因

体温の上昇による脱水症状

直射日光の下や閉め切った室内など高温多湿の環境に長くいると、多量の発汗によって脱水が起こります。この発汗による脱水と、高温による末端の血管の拡張が相まって、体全体の血液の循環量が減少し、突然意識を消失することがあります。感染症で高熱が出たときなどにも、同様の意識障害が起こることがあります。

一酸化炭素中毒による意識消失

屋内での木炭コンロの使用や、ガス湯沸かし器やストーブの不完全燃焼で一酸化炭素濃度が高まると、中毒症状を引き起こすことがあります。最初は、頭痛、耳鳴り、めまい、吐き気などが起こり、その後、体の自由が利かなくなり、意識がもうろうとしたり、昏睡状態に陥ります。

アルコールの過剰摂取による意識障害

アルコールは脳を麻痺させる性質を持っています。アルコールを大量に摂取すると、麻痺は意識をつかさどる大脳から呼吸や心臓の働きを制御する脳幹部にまで進み、意識を失ったり、呼吸機能や心拍機能を停止させて死に至ることもあります。

一過性の意識障害

急に立ち上がったり、長時間立っていたことで脳への血流が一時的に欠乏すると、脳貧血を起こし失神することがあります。また、過度の緊張から引き起こされる過換気(呼吸)症候群では、浅く早い呼吸を繰り返し、呼吸困難を起こして、ときには失神し、意識障害を起こすことがあります。

意識障害が起こる原因となる主な疾患

細菌やウイルスなどの感染症によって脳に炎症が起こる髄膜炎や脳炎をはじめ、脳への血流が途絶えてしまう脳卒中、心筋梗塞、頭部外傷、急性消化管出血などが原因になります。またてんかんや熱性けいれん、さらには腎臓や肝臓などの臓器不全、糖尿病や低血糖症などの代謝障害、自律神経失調症によっても意識障害が起こることがあります。

意識障害に加えて嘔吐や激痛を伴う場合に考えられる疾患

※以下の疾患は、医師の診断が必要です。
下記疾患が心配な場合には、早めに医師の診察を受けましょう。

熱性けいれん

発熱にともなうけいれんで、生後6カ月ぐらいから5〜6歳ぐらいまでの子どもによくみられます。脳の機能が未熟なため、高熱時は脳が刺激され、神経が興奮してけいれん発作が起こりやすくなるのが原因です。38℃以上の高熱にともなって、手足や唇、全身にけいれんが起こります。意識を失い、唇が紫色になることもありますが、通常、数分程度でおさまります。けいれん後は意識がはっきりしているのが特徴です。

てんかん

脳神経細胞の伝達システムに一時的な異常が起こるのがてんかんです。突然、体が突っ張り、筋肉が勝手に動く、口から泡を吹くといった、いわゆるてんかん症状が有名ですが、他にも突然意識を失う、記憶が飛ぶ、急に活動が止まって失神するといった症状が起こることがあります。多くは体質が原因となって起こりますが、外傷、中毒、脳卒中、脳腫瘍など種々の疾患が原因でも起こります。

この疾患・症状に関連する情報はこちら。 てんかん(全身)

糖尿病・低血糖症

糖尿病を患っている人の血糖値が800mg/dl以上もの極度に高い数値を示すようなことになると昏睡状態に陥ります。また、血糖降下剤が効きすぎたときに、低血糖が起こります。発汗、震え、動悸などが起こり、さらに血糖値が下がって50mg/dl以下になると意識が混濁し奇行や、集中力の欠如、眠気、発語困難、頭痛、複視、けいれんなどが起こり、40mg/dl以下になると昏睡状態に陥ります。飴や砂糖などで糖分を補って血糖値を上げる緊急処置を行わないと、死に至ります。

脳梗塞

動脈硬化によって脳動脈の血管が狭くなっている部分に、血液が固まってできる血栓が詰まることで、血流が完全に止まる状態が脳梗塞です。脳梗塞が起きた部位によって、半身不随や言語障害、意識障害、また最悪の場合、心停止や呼吸停止などを起こし、死亡に至ることもあります。

くも膜下出血・脳出血

脳のくも膜の内側の動脈が破裂するくも膜下出血が起きると、突然激しい頭痛と吐き気、嘔吐を生じ、意識を失って危険な状態に陥ることがあります。血圧の急上昇によって脳の中の細い動脈が破れる脳出血では、激しい頭痛や吐き気、嘔吐、手足の片マヒ(半身不随)などがあらわれたり、意識障害から死に至ることもあります。

心筋梗塞

心臓の筋肉に血液を送り込むのが冠動脈です。その冠動脈が動脈硬化を起こして内腔が狭くなると、血液が固まってできる血栓が詰まり、血流が完全に止まってしまうのが心筋梗塞です。突然、胸に激痛が起こり、痛みは30分から数時間続くことがあります。血流が止まると心筋の壊死がはじまり、その範囲が広がると、血圧が低下して顔面が蒼白になるとともに、吐き気や冷や汗などがみられたり、意識を失って死に至ることもあります。

腎不全・尿毒症

腎臓の著しい機能低下によって、尿として排泄されるはずの水分や電解質、有害物質が血液中に増加するのが腎不全です。さらに腎不全のために臓器や脳に障害が発生すると尿毒症の症状を引き起こします。尿毒症に進行すると、吐き気、嘔吐、下痢、むくみ、頭痛、けいれん、幻覚、昏睡などの症状が起こります。

感染症による脳炎・髄膜炎

脳と脊髄を包む脳脊髄膜という膜に、細菌やウイルス、真菌などが感染して起こる髄膜炎や、脳細胞に細菌やウイルスが感染したり、寄生虫などが寄生して起こる脳炎では、意識障害や昏睡が起きることがあります。髄膜炎では、急に高熱を発し、強い頭痛や嘔吐、首のすじが張るなどの症状があり、けいれんをともなうこともあります。脳炎は、はしかやインフルエンザなどのウイルス感染によるものが最も多く、髄膜炎よりも症状が重く、髄膜炎を合併することも少なくありません。けいれん発作や手足の麻痺、錯乱や妄想などの精神症状を起こすことや、進行すると昏睡に陥ることもあります。

肝硬変、肝不全

慢性肝炎などで肝臓の炎症が続くと、肝臓が硬くなり、肝臓の機能が低下していきます。その肝機能低下がさらに進行すると、肝不全になります。肝硬変では全身の倦怠感、微熱、食欲不振などの症状があらわれますが、軽度の肝硬変では自覚症状がない場合も多くあります。肝不全では、全身の強いむくみ、お腹に水が溜まる腹水、黄疸などが起こり、さらに脳症状として錯乱や昏睡などの意識障害を起こします。

※以上の疾患は、医師の診断が必要です。
上記疾患が心配な場合には、早めに医師の診察を受けましょう。

意識障害が見られる場合は救急車を呼んで早めの対処を

意識がもうろうとしていたり、呼びかけに応じなかったりした場合は、救急車を呼び一刻も早く病院へ搬送するようにしましょう。意識障害の時間が長く、けいれんをともなうときも重度の疾患が疑われますので、救急病院へ搬送する緊急コールの対象です。また、一過性のもので、すぐに意識が戻ったケースでも、必ず医師の診察を受けて、原因をはっきりさせるようにしましょう。

プチメモ救急車を呼んだ方がいいのか迷ったら救急相談に電話!

救急車を呼んだ方がいいのか迷ったら救急相談に電話!

周囲の人が急に意識を失ったときや体の痛みに苦しんでいるようなとき、どのように対応したらいいのかすぐには判断できないものです。そんなときは、♯7119か、子どもの場合は♯8000に電話をしましょう。この番号は、緊急性や受診の必要性の判断やアドバイスをくれる救急相談センターです。覚えておくと、いざというときに役立つはずです。