監修
田中 雅之 先生 (KARADA内科クリニック渋谷 院長)
新型コロナウイルス感染症(正式名称:COVID-19)とは、ウイルス名「SARS-CoV-2」によって引き起こされる感染症です。
潜伏期間※1は1~14日(平均5~6日程度)とされており、感染が懸念される場合は14日間にわたり健康状態を観察することが推奨されています。
※1:感染してから体に症状が出るまでの期間
最もよくある症状 | 時折見られる症状 | 重篤な症状 |
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参考:WHO Coronavirus disease (COVID-19)
(https://www.who.int/health-topics/coronavirus#tab=tab_3)
新型コロナウイルス感染症では風邪と類似した症状が多くみられますが、以下のような特徴が挙げられます。
①インフルエンザの症状に似ており、筋肉痛・頭痛を伴う場合が多く、鼻症状を訴える人は少ない
②味覚または嗅覚(あるいは両者)異常を伴うことがある
③下痢や嘔吐などの消化器症状を伴うこともある(頻度は変異株によって異なる)
ただし、こうした特徴的な症状を伴わない場合もしばしばあり、自分で見分けること、発熱外来を実施していない医療機関で診療することも難しいといえます。体調に異変を感じたらまずは自己判断せず、かかりつけ医など身近な医療機関へ電話で相談するか、各都道府県が公表している受診・相談センターに連絡しましょう。
なお、以下の条件に当てはまる方は、すぐにご相談ください。
重症化しやすい人※2で、発熱や咳など比較的軽めの風邪の症状がある場合
※2:高齢者、糖尿病・心不全・呼吸器疾患(慢性閉塞性肺疾患等)などの基礎疾患がある人、透析を受けている人、免疫抑制剤や抗がん剤などを使用されている人を指します。妊娠中の方も念のため、上記の人と同様に早めの相談が必要です。
(症状が4日以上続く場合には必ず相談するようにしましょう。また、症状には個人差があるため、自分の判断で症状が強いと思う場合にも相談が必要です。加えて、解熱剤などを飲み続けていないと発熱がおさまらないという方も同様に相談が必要とされています)
3密とは、感染を拡大させるリスクが高い「3つの密」がある場を指します。
1.密閉空間(換気の悪い密閉空間)
2.密集場所(大人数の密集)
3.密接場面(互いに手を伸ばして届く距離での会話や行動)
日常生活での感染経路は主に飛沫感染や接触感染ですが、閉鎖空間においては近距離でのマスクなしの会話等、咳やくしゃみ等の症状がなくても感染を拡大させるリスクがあるとされているため、他の人とは互いに手を伸ばして届かない十分な距離(2メートル以上)を保つことが重要です。
新型コロナウイルスの拡大に伴い、マスクをする光景が日常になりましたが、マスクの着用は自分自身の感染防止以外に周りの人へのウイルス拡散を防ぐ意味もあります。東京大学医科学研究所の研究では、50センチの近距離で会話をした際に相手だけがマスクを着用するより、自分と相手の双方がマスクを着用することで、ウイルスの吸い込みを7割以上抑える研究結果も出ています。
マスクの素材は色々ありますが、ウイルス防止効果は不織布マスクが最も高く、次に布マスク、ウレタンマスクの順に効果があるとされています。しかしながら、不織布マスクなどフィルタ性能の高いマスクでも装着する際に隙間が発生することがあるため、素材と合わせて顔にフィットして隙間が少ないマスクを選ぶことが重要です。適切にマスクを装着できていない人も散見されます。今一度装着方法を確認しましょう。
・「マスク」に関連する情報はこちら
帰宅後や食事の前に手を洗うことでウイルスを洗い流すことができます。水での手洗いを15秒間するだけで、手に付着しているウイルス量を1/100に減らすことができますが、石けんで10秒間もみ洗いした後、流水で15秒すすぐと1/10,000に減らすことができるため、可能な限り石けんを利用すると良いでしょう。
手洗いの際は、汚れが残りやすい「指先、爪と皮膚の間、手首、手のしわ」を念入りに洗うことも大切なポイントです。
手を洗った後は十分に水で流し、清潔なタオルやペーパータオルでよく拭き取って乾かしましょう。
アルコール消毒液(手指消毒用)も手洗いと同様にウイルスの量を減らすことができます。手指消毒用のアルコール消毒液は濃度70~95%のエタノールが有効です。
身の回りのモノに消毒を行う場合は、次亜塩素酸ナトリウム(いわゆる塩素系漂白剤)、アルコール消毒液による消毒がおすすめです。
ウイルスを室外に排出するには、こまめな換気と空気の入れ換えが必要です。窓を使った換気を行う場合は風の流れができるよう、2方向の窓を1時間に2回以上、数分間程度を目安に全開にします。窓が1つしかない場合は、部屋のドアを開けて扇風機を窓の外に向けて運転させると良いでしょう。この際、室内の温度が急激に上がり下がりしないように注意してください。
新型コロナワクチンは重症化を防いだり、発熱や咳などの症状が出ること(発症)を防ぐ効果があるとされています。効果が期待できる一方で、接種後の副反応として、接種部位の痛み、頭痛・倦怠感、筋肉痛などが報告されています。接種の前には解熱鎮痛剤や飲み物、額に貼るタイプの保冷剤などの準備や休日取得の検討などを行っておくと安心です。
新型コロナワクチンの接種状況は以下の通りです。
引用:政府CIOポータル -新型コロナワクチンの接種状況(一般接種(高齢者含む))より 2022年1月17日時点
ワクチンを接種した後に感染することを「ブレークスルー感染」と呼びます。新型コロナワクチンでは、2回目の接種を受けてから2週間程度で十分な免疫の獲得が期待されますが、それ以降に感染した場合はこの「ブレークスルー感染」に該当します。
どの感染症に対するワクチンでも、効果は100%ではないため、ワクチンを接種した後でも感染する可能性がありますが、ワクチン接種をすることで、ブレークスルー感染が起こってもほとんどの場合、重症化を免れることができます。
また、追加(3回目)接種には、追加接種を行わなかった場合と比較して、低下した感染予防効果や重症化予防効果等を高める効果があることが、臨床試験や様々な疫学研究等で報告されています。
変異とは、生物やウイルスの遺伝子情報が変化することです。ウイルスが増殖する際、ウイルスの遺伝情報(新型コロナウイルスの場合はRNA) が書き換わることがあり、これをウイルスの変異といいます。一般的にウイルスは増殖・流行を繰り返す中で少しずつ変異していきます。この変異したウイルスを変異株と呼びます。新型コロナウイルスも約2週間で一箇所程度の速度で変異していると考えられています。ウイルスは変異を繰り返し、何か自分に有利な変化を遂げたものがやがては主流のウイルスになります。
国立感染症研究所による国内における変異株の分類
分類※3 | 定義 | 該当変異株 |
懸念される変異株 (VOC; Variants of Concern) |
主に感染性や重篤度が増す・ ワクチン効果が減弱するなど 性質が変化した可能性が明らかな株 |
ベータ株 ガンマ株 デルタ株 オミクロン株 |
注目すべき変異株 (VOI; Variants of Interest) |
主に感染性や重篤度・ワクチン効果などに 影響を与える可能性が示唆される かつ国内侵入・増加するリスク等がある株 |
該当なし |
監視下の変異株 (VUM; Variants Under Monitoring) |
主に感染性や重篤度・ワクチン効果などに 影響を与える可能性が示唆される 又はVOC/VOIに分類されたもので 世界的に検出数が著しく減少等している株 |
アルファ株 (旧)カッパ株 ラムダ株 ミュー株 デルタ株(亜系統) |
出典:第67回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(2022年1月13日)資料
※3:国立感染症研究所では、WHO等の分類方法を参考に、変異株をVOC、VOI、VUMに分類している。国内での検出状況等を加味することから、分類は各国によって異なる。
新型コロナウイルス感染症の原因ウイルスであるSARSコロナウイルス2 (SARS-CoV-2) の変異株の一つデルタ株(ギリシャ文字δの呼称をつけたもの)は、インドから広がり、懸念される変異株(VOC)に指定されています。感染性は、アルファ株の1.5倍高い可能性、重篤度は入院リスクが高い可能性が示唆されています※4。
前述の通り、変異株であるデルタ株に対する新型コロナワクチンの効果について、重症化予防の効果は変わらないものの、感染及び発症予防効果については従来株と比較して若干減弱している可能性が指摘されています※5。
※4:感染性・重篤度は、国立感染症研究所等による日本国内症例の疫学的分析結果に基づくものであり、重篤度について、本結果のみから結論づけることは困難とされています。
※5:ワクチンの効果はワクチンの導⼊が先⾏した欧⽶やイスラエルにおける知⾒であることから、免疫の減衰や感染対策の緩和などウイルスの持つ特徴以外の複合的な要因もあると考えられています。
新型コロナウイルス感染症の原因ウイルスであるSARSコロナウイルス2 (SARS-CoV-2) の変異株の一つラムダ株(ギリシャ文字λの呼称をつけたもの)は、2020年8月にペルーで最初に検出されました。監視下の変異株(VUM)に指定されており、感染性の増加が示唆されています。
オミクロン株は、2021年11月に南アフリカ等で検出された変異株です。国外における情報と国内のリスク評価の更新に基づき、懸念される変異株(VOC)に指定されています。
全国の新規感染者は急増しており、あわせてオミクロン株による感染例も増加して、すでにデルタ株からオミクロン株への置き換わりが進みつつあること、その急速な置換から伝播性の高さが懸念されるとされています(国立感染症研究所 新型コロナウイルス感染症の直近の感染状況等(2022年1月13日現在))。
感染性は高い可能性があり、重篤度は十分な疫学情報が無く不明とされています※6。また、再感染リスク増加の可能性やワクチンの効果を弱める可能性も示唆されています。
一内科医の現場の意見としてですが、感染力の強さはこれまで以上であると肌で感じているところです。今後のまとまった報告を待ちたいところです。
※6:感染性・重篤度は、国立感染症研究所等による日本国内症例の疫学的分析結果に基づくものであり、重篤度について、本結果のみから結論づけることは困難とされています。
多くの感染事例が従来株やデルタ株と同様の機会(例えば、換気が不十分な屋内や飲食の機会等)で起こっていたとされており、基本的な感染対策(マスク着用、手指衛生、換気の徹底等)は有効であることが観察されています。
これまでと同様、マスクの正しい着用や手洗い、うがい、三密の回避、換気といった基本的な対策の徹底、そしてワクチンの接種など、引き続き、感染予防を継続していきましょう。
感染予防対策についてはこちら
日本国内の感染者数は2021年8月の1ヵ月で50万人以上となりました。2022年1月13日現在、まん延防止等重点措置が適用されている沖縄県、山口県及び広島県を始め、東京都や大阪府など関東や関西地方などの都市部のみならず、その他の地域でもこれまで経験したことのない速さで新規感染者数が急速に増加しています。引き続き、感染対策をしながらの生活を続けていきましょう。
引用:厚生労働省 データからわかる-新型コロナウイルス感染症情報-感染者動向 新規陽性者数 2022年1月18日時点
WHOに報告されている全世界の累積感染者数は2022年1月2日時点で約2億8,886 万人となりました。全ての地域で新規感染者数が増加しており、前週と比較してアメリカ地域100%、東南アジア地域78%、ヨーロッパ地域65%、東地中海地域40%、西太平洋地域38%、アフリカ地域7%の増加が報告されています。
日本で接種が進められているワクチンは、デルタ株等に対して、高い発症予防効果等がある一方、感染予防効果や、高齢者においては重症化予防効果についても、時間の経過に伴い、徐々に低下していくことが示唆されています。このため、感染拡大防止及び重症化予防の観点から、初回(1回目・2回目)接種を完了したすべての方に対して、追加接種の機会を提供することが望ましいとされています。
追加接種を行う期間は、2021年12月1日から2022年9月30日までの予定とされています。
追加接種(3回目接種)についての情報は、厚生労働省の下記サイトにまとめられていますので、活用してみてください。
日本では2022年1月以降、新規感染者数が急増しています。今後新規感染者数を増加させないためにも、引き続き感染対策を行うことが大切です。
オミクロン株とこれまでの新型コロナウイルスとの違いをまとめると
・潜伏期間が短い
・鼻水やのどの痛みなどの「かぜ症状」が多い
・ワクチン接種をしている人も感染しやすい
・重症化リスクは低い
ということです。これを踏まえたとしても、私たちが日常的に実施する感染対策には大きな変化はないといえます。
新しい生活様式を皆さんが継続的に実践され、それらに適応している姿を一医療者としてコロナの流行開始とともに見届けてきました。マスクの適切な装着や手洗いの徹底など感染対策として大変素晴らしい行動を目の当たりにしています。皆さんが実践している感染対策はコロナのみならず当然あらゆる感染症の対策の基本です。新型コロナウイルスの流行が収まった状態が続いたとしても、多くの細菌やウイルスが世の中には存在しています。
オミクロン株に対して不安を感じる方もいれば、新型コロナウイルス感染症のニュースに耐性がつき何も感じない方もいるかもしれません。感染症医の観点からすれば、「感染経路が変わらないかどうか」が問題なのかと思います。要は、新しい株になり、感染経路が変わるのであれば対策も変わりますが、感染経路が変わらなければいくら致死率や感染力が高くなる傾向にあっても、行うべき対策(3密を避けるなど日々の感染症対策)は不変だからです。
この点から、現時点で新たな株であるオミクロン株の新たな感染経路の報告はなく、日々の生活を大きく変えることなく、これまで実践してきた感染対策を引き続き適切に継続していきましょう。
※最新情報は各Webサイトでご確認ください。
参考
「新型コロナウイルス変異株(オミクロン株など)や感染状況に関する情報まとめ」の関連情報