朝ごはんを食べないとどうなる? 朝に摂りたい栄養素や手軽に用意するコツも紹介

朝ごはんを食べないとどうなる? 朝に摂りたい栄養素や手軽に用意するコツも紹介

「忙しくて朝ごはんを食べる時間がない」「朝、起きてすぐは食欲が湧かない」といった理由で、朝ごはんを食べないことが習慣になっていませんか? 最近では、「プチ断食」や「16時間ダイエット」といった、一定時間食べ物を口にしない健康法も登場しているため、「朝ごはんを食べないこと=良いこと」だと思っている方もいるのではないでしょうか。

しかし、朝ごはんを食べないことは、私たちにさまざまなデメリットをもたらすことがわかっています。本記事では、朝ごはんを食べないことによって起こる影響や、朝ごはんで摂るべき栄養素、忙しい朝でも手軽に朝ごはんを食べるためのコツについて解説していきます。

普段、朝ごはんを食べていないという方は、この記事を参考に朝ごはんを習慣化してみませんか。たったそれだけで、今よりも健康的で活動的な日々を送れるようになるかもしれません。
川島 隆太 先生

監修

川島 隆太 先生 (東北大学加齢医学研究所 教授)

朝ごはんを食べないとどうなる?

朝ごはんを食べないことには、どのようなデメリットがあるのでしょうか。実は、朝ごはんによって日中の活動に必要なエネルギーを補給できていないと、本来の集中力が発揮できないうえに、将来的に思わぬ病気を引き起こしかねません。

まずは、朝ごはんを食べないことによって起こる、代表的な以下の四つの影響を解説します。

  1. 集中力が続かなくなる
  2. 昼食後の血糖値が高い状態が長く続く
  3. 肥満や脂質異常症になりやすくなる
  4. 便秘になりやすくなる

影響①:集中力が続かなくなる

一つ目の影響は集中力の低下です。朝ごはんを抜いた日に、なぜかイライラしたり、集中力や記憶力が低下したりして、勉強や仕事に身が入らない経験をしたことがありませんか。これは、脳に栄養が行きわたらず、エネルギー不足の状態に陥り、機能が低下しているために起こります。

脳の主要なエネルギー源はブドウ糖です。脳は眠っている間も、エネルギーとなるブドウ糖を使い続けています。そのため、起床後に朝ごはんでエネルギーを再補給し、脳を活動できる状態に整える必要があります。

また、睡眠中は体温が通常よりも1℃ほど下がるため、脳や消化器官の活動が低下するといわれています。朝ごはんをよく噛んで、胃に食べ物を届けることは、お休みモードに入っていた脳や消化器官を働かせ、寝ている間に低下した体温を上昇させる役割があります。

このように、1日の活動を始める準備のために、朝ごはんが一役買っているのです。

【プチメモ】脳のエネルギー源となるのはブドウ糖

通常、脳はブドウ糖を主なエネルギー源として利用しています。このブドウ糖とは、炭水化物などの食べ物に含まれる糖質が、体内で消化吸収され最終的に分解されたもの。そして、ブドウ糖からエネルギーを作る際にはビタミンB1が必要となります。ビタミンB1自体がエネルギーになるわけではないものの、エネルギーを産生するうえで潤滑油のような役割を担う、必要不可欠な存在です。よって、脳にエネルギーを送るためには、ブドウ糖とビタミンB1を一緒に摂ることが重要です。

影響②:昼食後の血糖値が高い状態が長く続く

二つ目の影響は、昼食後の血糖値が高い状態が長く続くことです。朝ごはんを食べない日は、食べた日と比べて昼食後の血糖値の上昇幅が大きくなり、さらにその血糖値が上昇した状態が長く続くことがわかっています。

「血糖値」とは、血液中のブドウ糖の濃度(量)で、食前と食後でその値が変動します。通常、健康な人は、食後に上がった血糖値が、食後2時間以内に正常値に戻っていきます。しかし、食後2時間が過ぎても血糖値が高い状態が続くことを「食後高血糖」と呼び、これが糖尿病の予備軍や動脈硬化を引き起こす可能性を高めます。

栄養バランスや腹持ちの良い朝ごはんを食べることは、昼食後の高血糖を防いで、その先にある生活習慣病になりにくくするといえるでしょう。

影響③:肥満や脂質異常症になりやすくなる

三つ目の影響は、肥満や脂質異常症になってしまう可能性が高くなることです。アメリカで行われた研究のなかには、定期的に朝ごはんを食べない人は、定期的に朝ごはんを食べる人に比べて肥満のリスクが4.5倍にもなると報告されているものもあります。1)

朝食分の食事量の不足を埋めるために、昼食や夕食で一度にたくさん食べてしまったり、多量のおやつや夜食を食べてしまうなど、不規則な食生活になることが要因の一つとして考えられます。これにより、朝ごはんを食べた日に比べて、食べない日の1日の総食事量・摂取カロリーが増えてしまっている可能性があります。

また、朝食を取ることによって作られたエネルギーは、日中に私たちが活動するためのエネルギー源として消費されますが、食後から睡眠までの活動時間が短い夕食は、エネルギーが消費しきれず余ってしまいます。余剰のエネルギーは体脂肪として溜められてしまい、肥満の原因につながります。

朝食の欠食は、血清コレステロールや中性脂肪の増加を招き、肥満の他、脂質異常症の原因にもなるのです。

※血液中の脂質の値が基準値から外れた状態

さらに、朝ごはんを食べないと睡眠中に下がった体温が元に戻りにくく、基礎代謝量が減少して脂肪を燃焼しにくい身体になることも、肥満の要因と考えられます。

1) Yunsheng Ma, Elizabeth R. Bertone, Edward J. Stanek, III, …Ira S. Ockene. Association between Eating Patterns and Obesity in a Free-living US Adult Population. American Journal of Epidemiology, 2003 Jul 1;158(1):85–92

影響④:便秘になりやすくなる

四つ目の影響は便秘になりやすくなる点です。健康的な生活を支える三原則は、快食、快眠、そして快便。しかし、朝ごはんを食べずに不規則な食生活や栄養バランスの偏った食事をしていると便秘の要因になります。「便秘症」の治療において基本とされるのも生活習慣の改善です。

便秘を予防・改善するためには、まずは1日3食を規則正しく取るよう心がけましょう。特に朝ごはんは起床後の空っぽの胃や腸を刺激し、排便を促してくれます。毎朝できるだけ同じ時間に朝ごはんを食べることで、体内リズムが整えられ、朝食後にトイレに座る習慣を身につけると排便習慣が整えられやすくなります。そのため、朝は仕事や学校の準備・家事などで忙しいかもしれませんが、トイレに座る時間を作るためにも、早起きできると良いでしょう。

また、水分摂取も忘れてはいけません。朝にしっかり水分を摂ると、便が柔らかくなり、排便しやすくなります。

<関連記事> 便秘解消におすすめの食べ物とは?腸活食材を使用したレシピや飲み物もご紹介

バランスの良い朝ごはんに必要な栄養素・食材を紹介

朝ごはんは、朝に太陽の光を浴びるのと同じように、目覚めを促し、体内時計のリズムにメリハリをつけてくれるもの。朝から元気に過ごすために、栄養バランスの取れた朝ごはんを心がけましょう。

ここからは、朝ごはんに摂りたい栄養素やおすすめの食材を紹介します。

エネルギー源になる炭水化物

炭水化物は、体内に吸収されてエネルギー源になる「糖質」と、消化吸収されない「食物繊維」の大きく二つに分けられます。このうち、脳のエネルギー源・ブドウ糖になるのは「糖質」です。糖質は摂り過ぎれば肥満につながる一方、不足すると身体を動かす力が出なかったり、痩せ過ぎたりするため、自分にとっての適量を摂取することが大切です。摂取すべき糖質の目安量は、厚生労働省が発信する「食事バランスガイド(https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/eiyou-syokuji.html)」を参考にしましょう。

糖質が多く含まれている食材は、ごはん、パン、麺類などの穀類、じゃがいもやさつまいもなどのいも類。なかでもごはんはゆっくりと消化・吸収されるため、脳にとって非常に安定したブドウ糖の供給源となります。また、朝食にパンを食べるなら、米粉でできたパンを選ぶのがおすすめ。小麦粉のパンよりもデンプンが豊富で、腹持ちが良いという特徴があります。

一方、便秘改善に役立つのが「食物繊維」。食物繊維は、水に溶ける水溶性食物繊維と、水に溶けにくい不溶性食物繊維に大別されます。水溶性食物繊維は、腸内の善玉菌を増やし、便を柔らかくする働きをするもの。わかめや昆布などの海藻類に多く含まれます。

不溶性食物繊維は、便の量を増やして腸を活発化させ、便通を整える作用があり、ごぼうやれんこんなどの根菜類やきのこ類、豆腐などに含まれます。これらの食材は、朝ごはんだけでなく、毎食取り入れられると理想的です。

エネルギー産生を助けるビタミンB群

ビタミン類のなかでも、体内のさまざまな代謝に関わるのがビタミンB群(ビタミンB1・B2・B6など)。特にビタミンB1は糖質からエネルギーを作り出す際に深く関わるため、重要な栄養素です。朝食はもちろん、昼食や夕食でも、糖質と一緒にビタミンB1を摂るよう心がけましょう。

ビタミンB1が豊富な食材は豚肉や赤身魚、大豆製品などです。ビタミンB2は白身魚やレバー、乳製品などに多く含まれ、ビタミンB6は緑黄色野菜やごまなどの種実類に多く含まれています。フルーツはビタミンに加え、水分も補給できるので、朝ごはんにおすすめの食材です。

【プチメモ】ビタミンB1の弱点を改善した注目の成分「フルスルチアミン」

エネルギーを作り出す際に重要なビタミンB1ですが、水溶性ビタミンであるため調理の際に食材から流れ出やすいうえ、体内に吸収できる量に限度があるという弱点も。そんなビタミンB1の性質を改善したのが、「フルスルチアミン」です。ビタミンB1に比べてより多く体内に吸収され、筋肉や細胞などの組織に多く届きます。また、抗疲労成分であるため、疲労回復にも有効です。薬局やドラッグストアなどで一般の人が買える「OTC医薬品」のなかには、フルスルチアミンが配合されている商品もあります。朝ごはんを食べたけど、疲れやすく栄養を補給したいときや疲労を回復したいときに手に取ってみてはいかがでしょうか。

<関連記事> ビタミンB1が豊富な食べ物とは? ビタミンB1の働きやおすすめレシピも紹介!

身体を構成するタンパク質

人の身体は数万種類ものタンパク質で構成され、それぞれが異なる役割を果たしています。これらのタンパク質は、酵素やホルモンとして代謝や身体の機能を調節するもの、免疫に関与するもの、筋肉や臓器など身体を構成するものなど、どれも生きていくためには欠かすことのできない非常に重要な要素です。

体内に摂り入れられたタンパク質は、アミノ酸に分解され、吸収された後、身体に必要なタンパク質に再合成されます。特にアミノ酸の一つであるトリプトファンは、日中は脳内で“幸せを感じさせるホルモン”とも呼ばれる「セロトニン」に変化し、夜になると睡眠を促すホルモン「メラトニン」に時間をかけて変化します。メラトニンは体内時計を調節する働きもあるので、朝にトリプトファンを摂取しておくと良いでしょう。

タンパク質を含む食材には、肉類、魚介類、卵類、乳製品などの動物性食品の他、豆類や穀類といった植物性食品などが挙げられます。そのなかでも豆腐や納豆などの大豆製品、チーズや牛乳などの乳製品、ごま、ピーナッツ、バナナなどの食材はトリプトファンが豊富です。

体内で作ることができないミネラル

ミネラルは身体の臓器や組織をスムーズに働かせ、エネルギーを作り出す際に必要な栄養素。必要な量はわずかですが、体内で生成できないため、食事から摂る必要があります。主なミネラルの種類として、カルシウム、リン、カリウム、マグネシウム、鉄などが挙げられます。

ミネラルが豊富に含まれる食材は、小魚、わかめや海苔などの海藻類、豆類、乳製品など。これらの食材を朝ごはんにプラスするのがおすすめです。

朝ごはんには、上記で述べたような栄養素をバランスよく摂れるメニューを選びましょう。1日に必要な栄養素や食材、摂取量については、前述の「食事バランスガイド(https://www.maff.go.jp/j/balance_guide/)」が役立ちます。健康的な食生活をサポートするための情報がまとめられているので、食生活の参考にしてみてくださいね。

朝ごはんを手軽に用意するコツ

朝ごはんを食べる習慣がない人は、そもそも用意するところからハードルが高いかもしれません。無理に気負わず、簡単に準備できるもので構わないので、まずは毎日朝ごはんを食べることから始めてみましょう。ここでは、忙しい朝でも時短で手軽に準備できる朝ごはんのアイデアを紹介します。

便利な食品を使う

最近では、食事の準備や片づけの手間がかからず、家事の負担を軽減できる食品が数多く販売されています。そういった便利な食品を活用すると、ラクに美味しく朝ごはんを楽しむことができるでしょう。

例えば野菜なら、カット野菜や冷凍野菜、乾燥野菜などの下ごしらえを省ける商品が便利。洗うだけで食べられるミニトマトやレタスなどの野菜も朝食向きですね。

また、納豆やヨーグルトなどの冷蔵庫から出してそのまま食べられる食品、インスタントスープやリゾットなど、お湯を注ぐだけで食べられるフリーズドライ食品を常備しておくと、ササッと手軽に食事を済ませられます。

もちろん、コンビニやスーパーなどで購入するのも一手。おにぎりとサラダ、サンドイッチと牛乳など、朝ごはんを選ぶときにはなるべく栄養バランスも意識してみてくださいね。

作り置きをする

朝、イチから調理するのは手間がかかり、朝ごはんを食べるのが面倒になってしまうかもしれません。そこで、時間のあるときに作り置きをして、朝は冷蔵庫から取り出して電子レンジで温めるだけの状態にしておくのが継続のコツです。

作り置きといっても凝ったものではなく、前日の夕食を少し多めに作る程度の気軽なもので大丈夫。簡単なおかずを用意しておけば、冷凍ごはんやパンなどと組み合わせて、あっという間に朝食ができます。慣れてきたら、前日に翌朝のごはんを作る、または、休日などに数日分の作り置きをするなど、自分なりに工夫してみましょう。

作り置きにおすすめのレシピ

【動画】美味しく低カロリー!ストレスと脳の疲れに役立つ!「炊き込みごはん」

一度に大量に作れて、具材も多く栄養満点の炊き込みごはんは作り置きにピッタリです。お夕飯に作っておにぎりにして冷蔵、もしくは冷凍保存しておくと、温めるだけで手軽に食事ができます。

今回はそんな炊き込みごはんのなかでも、書籍『おいしく食べて疲れをとる―JAPANESE FOOD「ああ疲れた」にこの1冊!』から、ストレスと脳の疲れに役立つレシピをご紹介します。

材料(4~5人前)

・米
2合
・だし汁
360㏄
・淡口(うすくち)醤油
小さじ2
・みりん
小さじ2
・鶏もも肉
30g
・枝豆(茹で)
50g
・とうもろこし(コーン缶でも可)
50g
・梅干し
1個

■作り方

  1. 鶏もも肉を1㎝角に切る
  2. 米を洗う
  3. 炊飯器に米、だし汁、淡口醤油、みりん、鶏もも肉、とうもろこしを入れ、通常炊飯のモードで炊く
  4. 梅干しを細かく刻み、刻んだ梅干しと茹でた枝豆を蒸らし終わったごはんと混ぜ合わせる

飲食店を利用する

飲食店の朝食メニューは、栄養バランスの取れたさまざまな食事が揃います。手頃な値段で、手間なく美味しい朝ごはんが食べられるため、一つの手段として取り入れてみてはいかがでしょうか。

パンに卵やサラダがついたモーニングセットや、ごはんと味噌汁、焼き鮭、おひたし、納豆などが並ぶ和定食など、好みに応じて主食、主菜、副菜のバランスが取れた朝ごはんが楽しめますね。

ただし、外食では栄養バランスが偏るメニューや塩分が多いこともある点に注意。炭水化物に偏っていたらタンパク質やビタミンを補うなど、足りない栄養素をチェックして、意識的に追加注文してみたり、塩分控えめなメニューを選択するといった工夫も大切です。

食欲がないときの栄養補給方法

十分な栄養補給のためには、規則正しいリズムで食事を取ることが重要です。とはいえ、「朝ごはんを食べたくても、食欲がない…」といった場合は、手軽に口にできて栄養も補える栄養補助食品もうまく活用しましょう。

栄養補助食品には、午前中の活動に欠かせない栄養素がバランスよく配合された商品が多数あります。また、栄養補給だけでなく、疲労の回復や予防、集中力の改善といった効能を持つ医薬部外品もあります。上手に活用していきましょう。

ただし、理想は朝からお腹が空く健康なリズムを維持すること。食欲低下の状態が続く場合は、その他の病気などの可能性もあるので、医療機関を受診するようにしましょう。

<関連記事> 食欲がないときの栄養補給の方法とは?食欲不振時に摂りたい栄養や食べ物を紹介

朝ごはんで健康的な1日のスタートを切ろう

朝ごはんは身体や脳にエネルギーを補充し、1日の好スタートを切るために大切な食事。集中力を改善し、勉強や仕事のパフォーマンスの向上や、健康維持にも大切です。朝ごはんの準備が難しい場合には、糖質やビタミン、ミネラルなどを手軽に摂取できる栄養補助食品や医薬部外品を活用するのも一手。まずはご自身でできるところから、毎日朝ごはんを食べる習慣を身につけ、午前中からベストなパフォーマンスができるようにしましょう。

【動画】3分でわかる からだの中でエネルギーができるしくみ

<参考文献>

文部科学省(令和2年度)「できることからはじめてみよう 早ね早おき朝ごはん」
https://www.mext.go.jp/a_menu/shougai/asagohan/__icsFiles/afieldfile/2020/1324879_1.pdf
農林水産省 みんなの食育 若者単身者編 「朝ごはんを食べていますか」
https://www.maff.go.jp/j/syokuiku/minna_navi/topics/topics2_02.html
農林水産省「朝ごはんを食べないと?」
https://www.maff.go.jp/j/seisan/kakou/mezamasi/about/about.html