腰痛に効果的なツボは?

腰痛に効果的なツボは?イラストでツボの位置をわかりやすく解説

「腰痛」は男女関係なく、多くの人が一度は悩まされる健康上の悩みの一つです。腰痛の大半は、ご自身のセルフケアで症状が改善できますが、中には、血管や内臓の病気、がんによるものなどの「危険な腰痛」もあり、それらは専門的治療が必要です。しばらくしても症状が改善されない場合や、激しい痛み、手や足にしびれが生じる場合などは病院を受診しましょう。ここでは、腰痛対策としての効果的なツボ刺激の方法を紹介します。
泉 重樹 先生

監修

泉 重樹 先生 (いずみしげき) (法政大学 スポーツ健康学部 教授、博士(スポーツ医学)、鍼灸師・あん摩マッサージ指圧師、日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー)

なぜツボが腰痛に効果的なの?

ツボ刺激は、数千年の歴史のある東洋医学に基づく療法の一つです。全身にあるツボの数は、世界保健機関(WHO)が位置と名称を統一しているものとして361ヵ所あり、それに含まれないものも数えると、400を超えるとも言われます。

東洋医学では、体の中には心身機能を保つためのエネルギーが巡っていると考えます。そのエネルギーが巡る通路を「経絡(けいらく)」と言い、ツボとは、その経絡に沿って並んでいる体表面のポイントのことです。正式には「経穴(けいけつ)」と呼びます。

これらの経穴、つまりツボを刺激すると、経絡を流れるエネルギーが良くなって、さまざまな症状が改善すると考えられています。実際、皮膚に近い部分の神経と体内に広がっている神経はつながっているため、ツボを刺激することで体の中にまで作用が及ぶ可能性があり、その結果、血流が良くなって筋肉のはりや凝りが和らぐと理解されています。

なお、経絡上に並んでいないツボもいくつかあります。

ツボの探し方、押し方

ツボの探し方

ツボの位置は個人差があるため、書籍などで図示されたものは目安として考えれば良いでしょう。専門家が施術するときも、筋肉のしこりや押したときの感触などから微調整して施術しています。ご自身で押すときには、押してみてしこりに触れるところ、痛気持ち良いと感じるところを目安としてください。

ツボの押し方

ツボは指で押すのが基本です。それ以外に、爪楊枝を束ねてトントンと軽く刺激したり、ペットボトルの角で押したりするのも良いでしょう。ペットボトルの中にお湯を入れると、温かさも加わって気持ち良さがアップします。

強さについては、気持ち良いと感じる程度から、多少痛いと感じる程度の範囲が適切。押すタイミングは入浴後の血行が良くなっている時間帯や就寝前などがおすすめですが、隙間時間を利用して、1日何回かに分けて行っても構いません。

背中のツボを自分で押す方法

腰痛のツボは背中にも多くあります。背中のツボをしっかり押すには、他の人に押してもらうのが簡単ですが、ひと工夫すればご自身で押すこともできます。

その際、ツボの位置の正確さにこだわりすぎる必要はないでしょう。気持ち良いと感じる部分を押す、というくらいに意識してみてください。また、身近にある器具を活用するのも手です。

例えば、テニスボールやゴルフボールを背中に当てて、椅子の背もたれや床との間に挟んで押してみましょう。ラップの芯や缶飲料などを使っても良いかもしれません。

腰痛におすすめのツボ

委中(いちゅう)

委中(いちゅう)は、足腰から臀部にかけて痛みがあるときに効果的なツボです。膝関節の後ろ側の左右中央のあたりです。腰痛ではまずここを押してみると良いでしょう。腰痛のある人では、押すと強い痛みを感じることが多いです。一人で押すときは、床に座って片足を曲げ、ツボと反対側の手で膝の下を握るような感じで、親指で押します。

崑崙(こんろん)、太衝(たいしょう)

崑崙(こんろん)、太衝(たいしょう)いずれも足の血行を促進するツボです。崑崙は、ギックリ腰の急性期の痛みや、坐骨神経痛に有効と言われています。外側のくるぶしとアキレス腱の間の窪みのあたりです。

太衝は足の甲にあって、足の親指の骨と人差し指の骨が分かれるあたり。指の方からなぞっていって、少し高くなっているところです。

復溜(ふくりゅう)

復溜(ふくりゅう)は、足腰の血行を改善することで、慢性の腰痛を和らげるように働くツボです。背中が張っているときや、むくみをとるのにも良いと言われます。

内側のくるぶしの最も高く膨らんでいる場所から、親指の最も太い部分の幅の2倍ほど上の少し後ろ側にあり、アキレス腱の縁のあたりです。

腰腿点(ようたいてん)

腰腿点(ようたいてん)は手の甲にあるため、例えば電車の中などでもあまりひと目を気にすることなく、いつでも刺激できる便利なツボです。位置は、手の甲の人差し指と中指、および、薬指と小指の間の2点です。反対の手の指先で、骨の間を手首に向かってなぞっていくと、上記のそれぞれ2本の指の骨が分かれている場所で、指がひっかかって止まります。その2点が腰腿点。ギックリ腰といった痛みが突然生じる急性腰痛症の痛みにも効くと言われています。

帯脈(たいみゃく)、関元(かんげん)

帯脈(たいみゃく)と関元(かんげん)は、お腹にあるツボです。

痛みが腹部にまで響くようなときには、脇腹にある帯脈を押してみましょう。肋骨の一番下の縁のさらにやや下にあたり、ちょうどおへその高さの水平線と交わる点が帯脈です。親指で、やや強めに押してください。ギックリ腰にも効果があるとされています。

関元は「へそ下三寸」にあるツボで、体の中心線上の、おへそから親指の幅3本分下あたりです。なお、ツボの位置を示す際に使う「寸」とは、親指の最も太い部分の幅のことです。関元を自分で押すときは、中指を使うと良いでしょう。痛みをかばう姿勢などのために緊張している腹筋を、解きほぐす働きがあります。

腎兪(じんゆ)、志室(ししつ)

腎兪(じんゆ)と志室(ししつ)は、背中にあるツボです。

腎兪は腎機能に関連した症状に効果があるとされていますが、それ以外にも多くの効用があり、腰痛に対しても、慢性腰痛と急性腰痛の双方に有効とされています。ツボの位置はウエストのくびれの高さで、背骨から親指の幅1本半分ほど離れた左右両側です。

志室も腰痛に対して効果的なツボで、腎兪よりもやや外側の左右両側にあります。背骨から親指の幅3本分ほど離れた所です。

どちらも背中のツボなので、ご自身で刺激するときには、ボールをツボの位置に当てて椅子の背もたれに押し当てたりすると良いでしょう。

ツボ押しの効果を高めるポイントと注意点

ツボ押しは指で行うのが基本です。ただし、指の力が足りず十分刺激できなかったり、腕が疲れてしまうこともあります。そのようなときには、前にもお話ししたように、ゴルフボールやツボ押しグッズなどを使うと良いでしょう。また、温かい缶飲料やお湯を入れたペットボトルを当てると、温熱作用がプラスされて血行改善効果が高まります。

一方、注意点としては、ツボ押しをする前に爪を手入れしておくこと、背中やお腹を押す場合は食直後を避けることなどが挙げられます。また、温かい缶飲料やお湯を使うときには、ヤケドに気を付けてください。

ツボ押し以外の腰痛を和らげるセルフケア

冷やして炎症を抑える

痛みが突然生じた急性の腰痛、いわゆる「ぎっくり腰」では、炎症が起きている可能性があるため、冷やしたほうが良いと言われています。冷やす方法としては、タオルを水や氷水で濡らしたものを当てたり、コールドパック(冷却剤の入ったパックを冷蔵庫で冷やしたもの)を使うのがお手軽で簡単です。ただし、長時間冷やし過ぎるのは良くありません。

なお、後ほど解説しますが、急性の腰痛が、血管や内臓などの病気の急性症状である可能性もあります。そのような「危険な腰痛」の場合には、ツボ押しではなく、早急な受診が必要です。「危険な腰痛」ではないギックリ腰などの場合は、正しい方法でのツボ押しを試してみても良いでしょう。

温めて血行を良くする

慢性の腰痛や、ギックリ腰の急性期を過ぎた後には、冷やすのではなく、温めたほうが良いと言われています。温めることで血行が良くなり、筋肉の凝りをとるように働きます。温水を入れたペットボトルを当てたり、ゆっくりお風呂に入ると良いでしょう。

市販薬を活用する

腰痛に対して、市販の外用薬や内服薬を使うという方法もあります。

外用薬は、貼るタイプのものでは、主に痛みを止める成分であるNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)に加えて、冷感や温感を与える補助成分が含まれているものがあります。前の項目でお話ししたように、急性期には冷感タイプが向いていますが、慢性期には貼って気持ち良いと感じるほうを使えば良いでしょう。急性期か慢性期かわからない場合は、冷感タイプのほうが無難と言えます。

また、筋肉のこわばりが強い場合は、消炎鎮痛成分に加えて、ビタミンEなどの血行促進成分が配合されているものを使ってみましょう。サイズについては、腰痛の場合、大きめのタイプが向いています。

腰痛に加え、全身の疲労や倦怠感もある場合は、エネルギー産生を促す作用のあるビタミンB群を含む内服薬が役立ちます。また、腰が凝っているときには、ビタミンB群に加え、血行改善に関与するビタミンEも含む内服薬を試してみると良いでしょう。

姿勢や動作をチェックする

普段の生活の中で、腰に負担をかける動作や姿勢をしていないか、チェックしてみましょう。例えば、掃除機をかけるときに前かがみになっていませんか?物を拾ったり持ち上げるときは、面倒でもその都度しゃがむようにしてください。炊事などの立ち仕事が続く場合は、踏み台に片足を交互に乗せると良いでしょう。また、長時間同じ姿勢が続くのを避け、こまめに柔軟体操をしましょう。寝るときは、仰向けやうつ伏せではなく横向きで寝ると、腰への負担が少なくおすすめです。

腰痛体操やストレッチを行う

腰痛に関係の深い筋肉である背筋と腹筋を鍛えたり、凝りをとるための腰痛体操やストレッチを続けましょう。腰痛体操にはいくつかのパターンがあり、例えば仰向けになって片方の足を両手で抱え、膝をできるだけ胸に近づけるといった動きがあります。

また、体重管理を兼ねて、ウォーキングを習慣的に続けるのも良いでしょう。痛みが強くて長く歩けないようなら、プールでの水中ウォーキングから始めてみましょう。

医師の診察を受ける

腰痛の大半は、ツボ押しなどのセルフケアで症状が改善できますが、物を持ち上げたり急な身動きをしたわけでもないのに突然、背中に張り裂けるような激しい痛みが生じた場合は、治療に一刻を争う「危険な腰痛」の可能性があります。また、腰を動かさないときにも痛みのある腰痛や、腰痛以外の症状、例えば発熱や腹痛、足のしびれ、便秘、排尿障害、吐き気などもあるとき、またはセルフケアをしばらく行っても症状が良くならない場合も同様です。早めに医師の診察を受けてください。

【参考文献】

・主婦と生活社「最新版 よくわかるツボ健康百科」

・永岡書店「腰痛をすっきり治すコツがわかる本」

・東洋療法学校協会/医道の日本社「あん摩マッサージ指圧理論(第3版)」

・秀和システム「現場で役立つ!登録販売者サポートBOOK 成分の違いで選ぶOTC薬ガイド」

・ナツメ社「痛み・鎮痛の教科書」

・マガジンハウス「Tarzan特別編集 肩こり腰痛撃退BOOK完全版」

・マガジンハウス「クロワッサン特別編集 体のツボの大地図帖」

NHK出版「別冊NHKきょうの健康 腰痛 なぜ治らない あなたの痛み」

・厚労省「2019年 国民生活基礎調査」

 https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa19/dl/04.pdf

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