神経痛
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神経痛

突発的な鋭く激しい痛みや、繰り返す痛みに悩まされる「神経痛」。代表的な神経痛として坐骨神経痛、三叉神経痛、肋間神経痛があります。ここでは専門家監修のもと、神経痛の原因や予防法・対処法をご紹介します。症状が悪化しないよう、すばやく適切に対処しましょう。

中村 格子 先生

監修

中村 格子 先生 (医療法人社団BODHI Dr.KAKUKO スポーツクリニック 院長)

神経痛とは?神経系の役割と神経痛が起きるメカニズム

どうして神経痛は起きるのでしょうか。それを知るために、まずは神経系の概要、そして神経痛が起きるメカニズム・原因について解説します。

神経系の分類と役割

体には隅々まで神経が張り巡らされ、神経系とよばれる系統をつくっています。神経系は「中枢神経系」と「末梢神経系」に大きく分かれます。

中枢神経系:

脳と脊髄で構成されていて、その名の通り、知覚、運動、自律機能など各種神経系の中枢となる部分です。その中枢神経系とつながっているのが、末梢神経系です。1,000億個以上の神経細胞(ニューロン)で構成されていて、体中に糸のように張り巡らされ、体が受けた刺激を中枢神経系に伝えています。

末梢神経系:

体性神経系・自律神経系にさらに分かれます。体性神経系には運動神経、感覚神経といった意識的にコントロール可能な神経系が含まれ、随意神経系と呼ばれることもあります。

一方、自律神経系は、末梢神経系のうち心拍数、心臓の収縮力、血圧、呼吸数などの自分ではコントロールができない体内プロセスの調整を司っています。主にリラックスした時に優位になる副交感神経、反対にストレスのかかる状況になった時に優位となる交感神経は自律神経系に含まれます。

末梢神経(感覚神経)が刺激を受けて生じる痛み

神経痛メカニズム

末梢神経(感覚神経)が圧迫されたり、炎症などの刺激を受けることで神経に沿って起こる発作性の痛みと、疾患による神経系の痛みを総称して神経痛といいます。鋭く激しい痛みが突発的に現れ、繰り返し痛むのが特徴です。

なお、神経痛のうち、外傷・圧迫・炎症・疾患など原因が明らかなものを症候性神経痛、反対に原因がよくわからないものを特発性神経痛とよんでいます。一般的には「神経痛」というと、坐骨神経痛、三叉神経痛のように原因が特定できているケースが多く、神経痛=症候性神経痛を指して用いられます。

神経痛は主に坐骨、肋間、三叉の3つの種類に分けられる

ここではまず、主な神経痛の種類と症状をご紹介します。

坐骨(ざこつ)神経痛

坐骨(ざこつ)神経痛

お尻から大腿、ふくらはぎ、足の裏に縦に走行している坐骨神経が支配する領域に起こる痛みを総称して、坐骨神経痛といいます。主に、椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症(せきちゅうかんきょうさくしょう)などによって神経が圧迫されて起こり、原因となる病気によって痛みの起きやすい部位や症状が異なります。

例えば腰椎椎間板ヘルニアが原因の場合、主に腰や臀部(でんぶ:お尻の部分)が痛み、それが下半身全体に広がって足に力が入りにくくなることがあります。前屈みになって動いたり重いものを持ったりすると痛みが強くなりやすいようですが、実際の痛みは、安静にしている時と動いている時とで、それほど差はないともいわれています。

肋間(ろっかん)神経痛

肋間(ろっかん)神経痛

背中から出て胸腹部の肋骨に沿って走っている肋間神経が支配する領域に起こる痛みが肋間神経痛です。突然鋭い痛みが生じ、比較的短時間で収まるものの、繰り返し生じることが多々あります。大声を出す、咳や深呼吸など、肋骨が動く時に痛みがひどくなる傾向があります。

原因はさまざまですが、帯状疱疹や肋骨の骨折などの外傷によって起こることが比較的多く見られます。

帯状疱疹(帯状ヘルペス)の詳しい情報はこちら

三叉(さんさ)神経痛

三叉(さんさ)神経痛

顔のこめかみから目、あご、頬と三本に枝分かれした三叉神経が支配する領域に起こる顔面の痛みを三叉神経痛といいます。脳への血管などが何らかの原因で神経を圧迫して起こることが多いです。

顔や唇、舌など特定の場所に触れた時や、歯磨きをしたり、食べ物を噛むといった動作が引き金となって痛みが生じます。刃物で切りつけられたかのような、鋭く強い痛みが、顔面の片側に短く何度も繰り返し生じるのが特徴です。主に顔の下半分、特に頬とあご周辺が痛みやすいといわれています。

神経痛の原因はストレスや加齢などが考えられる

体の冷えやストレスによる血流の悪化

冷えやストレスは筋肉を緊張させ、血流を妨げるので神経痛を引き起こしたり、助長して悪化の原因になることがあります。坐骨神経痛のある人にとって、冷えは大敵といえます。

加齢にともなう脊柱管の変形

加齢にともなう脊柱管の変形

腰背部にある脊髄の神経が通っている脊柱管が、老化によって変形したり、周囲の黄色靭帯などの靱帯が厚くなると、脊柱管の内部が狭くなり、神経が圧迫され神経痛が現れます。痛みは主に太ももやひざ下など、下肢の坐骨神経が支配する領域に生じます。

腰を曲げる時間が長いワークスタイル

いすに座って長時間デスクワークする人、自動車の運転時間が長い人やアイススケート選手など、腰を曲げる時間が長い人は神経痛が起こりやすく、注意が必要です。

特に椎骨の間のクッションの役割を果たしている椎間板の中のゼリー状の髄核という部分が後方の脊柱管にはみだし、末梢神経の根元である神経根を圧迫する神経痛には要注意。坐骨神経痛のように腰~下肢にしびれや痛みが現れたり、肋間神経痛のように背中や胸に痛みが生じることがあります。

神経痛の原因となる主な病気(疾患)・症状

※以下の疾患は、医師の診断が必要です。

下記疾患が心配な場合には、早めに医師の診察を受けましょう。

腰椎椎間板ヘルニア

腰椎椎間板ヘルニア

骨と骨をつなぐ椎間板に亀裂が生じて、中の椎間板組織の一部が飛び出し、神経を圧迫することで起こります。腰やお尻に痛み、下肢(足・足指)に痛みやしびれが出るのが特徴です。2040代に多く、腰や足のつっぱり、運動制限が現われることが多くあります。高齢者の場合、下肢痛が強く、歩行が困難になることも少なくありません。

椎間板ヘルニアは、坐骨神経痛を引き起こす主な原因のひとつです。下肢伸展挙上試験(SLRテスト:あおむけになって膝を伸ばしたまま足を持ち上げる試験)時に痛みが強くなったり、力が抜けたりすると、椎間板ヘルニアによる坐骨神経痛の可能性が高いです。また同時に下腿や足部の痺れや筋力低下を伴うことがあります。

脊柱管狭窄症(せきちゅうかんきょうさくしょう)

加齢や長年腰に負担をかけることによって脊柱管が狭くなり、神経を圧迫するために起こります。頸部や腰部で生じることがあり、頸部脊柱管狭窄症では上肢の神経痛や痺れ、筋力低下、痙性症状などが特徴的です。

また腰部脊柱管狭窄症では安静時は症状が軽い場合が多く、歩き続けると下肢にしびれや痛みが出て動けなくなることもあります。立ち止まると一旦症状が改善し、歩き出すとまた悪化するといった間欠性跛行(かんけつせいはこう)が特徴的な症状です。

腰部脊柱管狭窄症を原因とする坐骨神経痛は、比較的高齢者に多い傾向にあります。症状が軽いうちは姿勢を正したり、コルセットを着用したりすると改善することも少なくありません。ただ、進行して日常生活に支障が出てくるようになると、手術の必要が生じることも。早めの対処・治療を心がけてください。

帯状疱疹後神経痛

帯状疱疹は、体の中に潜伏していたみずぼうそうのウイルスが再び活性化して起こります。痛みをともなう小さな赤い水ぶくれが体の片側に帯のように現れます。水ぶくれは12週間で治まりますが、神経細胞が傷つけられることによって後遺症として神経痛が残ることが。

日本人のほとんどが持っているウイルスですが、高齢者のほか、若い人でもストレスや疲れが溜まっている人など、体の免疫が落ちてきた時に発症しやすくなります。

帯状疱疹が治った後も神経痛が続くことがあり、それを帯状疱疹後神経痛とよんでいます。顔面の三叉神経領域に生じることが多く、数カ月以上にわたって痛みが続くなど、慢性化しやすい傾向があります。

帯状疱疹(帯状ヘルペス)の詳しい情報はこちら

手根管症候群(しゅこんかんしょうこうぐん)

手根管症候群(しゅこんかんしょうこうぐん)

手の関節にある手根管はトンネルのようになっていて、その中を正中神経と腱が通っています。手根管の中で正中神経が慢性的に圧迫されると、親指から薬指の半分にかけてヒリヒリとする痛みやしびれが現れます。デスクワークでパソコンをよく使い、かつキーボードを打つ時の姿勢が悪い人によくみられます。また妊娠や出産時、更年期など女性ホルモンのバランスが変化する時期に起こることも多いといわれています。

手のしびれの詳しい情報はこちら

糖尿病神経障害

糖尿病は、すい臓でつくられるインスリンの分泌や作用が低下し、血糖値が慢性的に高い状態になる生活習慣病です。この糖尿病によって、長期間高血糖状態が続くことが原因となって起こるのが糖尿病性神経障害で、運動神経・知覚神経系が損なわれ、手足の先にしびれや痛みが起きます。

症状が進むと痛みが激しくなったり、感覚の麻痺が生じることも。体中に張り巡らされている、さまざまな神経が影響を受けるため、顔面をはじめ全身に痛みが出ることがあります。

軽い神経痛なら市販薬などで対処、生活に支障がある場合は病院へ

安静にして、つらい時は横になる

いすに座る時には適切な座板や腰あてを確認し、寝る時には横向きになったり腰枕を使ってみるなど、痛みをともなう姿勢や動作をなるべく避け、ゆったりとした気持ちで過ごすことが大切です。痛みが激しい時は、静かに横になって休みましょう。

慢性的に痛む時は温める

慢性的に痛む時は温める

温めることによって、血管を広げて神経に栄養を送る血液の流れを良くしましょう。坐骨神経痛は冷えが大敵なので、お風呂や温泉で全身を温めたり、保温性の高い下着を活用したり、痛む部分をカイロなどで温めると良いでしょう。

市販の薬を使う

市販の薬を使う

末梢神経の障害などによる神経痛の緩和に、ビタミンB1・B6・B12などの有効成分を配合したビタミン剤が効果を発揮することもあります。また、鎮痛消炎成分インドメタシンやフェルビナクなどを配合した外用鎮痛消炎薬や、消炎鎮痛成分イブプロフェンなどが配合された内服鎮痛薬も効果があります。

ビタミンB群が配合されたビタミン剤は市販薬が多く、薬局や通販などで入手できることから、軽度の神経痛に悩まされている人にとっては利用しやすいかもしれません。

ビタミンB群のうち、神経細胞の主要なエネルギー源であるブドウ糖をエネルギーに変えるビタミンB1は、神経の働きを支える重要な栄養素で、不足すると神経がうまく働かず神経痛が生じることがあります。またビタミンB12は、不足すると神経および血液細胞の健康が保たれなくなり、末梢神経障害などを起こす恐れがあります。

ビタミンB群は水に溶けやすい水溶性という性質から調理時などに失われやすく、不足しやすいビタミンです。無理なダイエットや偏食が続いた時にも不足しやすくなります。ビタミンの不足が気になる時や、ひどく疲れが溜まっている場合などはしっかりと補給を心がけましょう。

神経痛をサポートするアリナミン製薬の製品 アクテージHK錠 アリナミンEXプラス アリナミンEXプラスα アリナミンメディカルゴールド タイレノールA

病院で診察を受ける(整形外科・神経内科・脳神経外科・皮膚科など)

神経痛は、原因や部位によって得意とする診療科が違ってきます。頸部痛や腰痛をともなう神経痛であれば整形外科、三叉神経痛なら神経内科や脳神経外科、帯状疱疹後神経痛なら皮膚科や神経内科を受診しましょう。どこを受診していいかわからない時には、総合診療科に相談すると良いでしょう。

日常的なストレスケアやストレッチで神経痛を予防しよう

ストレスを溜めない

ストレスや寝不足による体調不良も筋肉が緊張しやすく、血行が悪くなりやすいので、痛みやしびれを感じやすくなります。気持ちが落ち込むような抑うつ状態になると、神経痛は悪化することが多いともいわれています。生活のリズムを整え、気持ちを明るく持つように心がけることが大切です。

ストレッチや運動で筋肉や靭帯を鍛える

ストレッチによって筋肉をほぐすことで、一部の神経痛が和らぐことがあります。ストレッチには、血行を促進して痛みを和らげる、筋肉や関節を柔軟にして動きやすくするなどの効果が期待できます。特に坐骨神経痛の原因のひとつである腰椎椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症には、ストレッチが有効といわれています。

ここでは腰痛の予防に効果的なストレッチを2つ紹介します。やってみて痛みが出たり、強くなったりする場合はすぐに中止してください。

太もも裏のストレッチ

太もも裏のストレッチ:

①片方の足を椅子やソファに乗せ、膝をまっすぐ伸ばし、足首を立てます。

②体をひねらないよう、まっすぐ倒していきます。

 背筋を伸ばし、伸ばしている足の側のお尻をしっかり後ろに引くことがポイントです。

③太ももの裏が伸びていることを感じながら、呼吸を続け5秒程度伸ばします。

 無理のない範囲で行いましょう。

4の字ストレッチ

4の字ストレッチ:

①仰向けになって、両膝を立てます。

②伸ばす方の足の足首を、反対側の膝にのせます。

 この時、なるべくスネは地面と平行、足首は軽く立てます。

③息を吐きながら、反対側(下側)の足の太ももを体に引き寄せていきます。

 息を吸って戻し、また息を吐きながら体に引き寄せることを繰り返し行います。

 伸ばす方のおしりが伸びていることを感じながら、無理のない範囲で伸ばしていきましょう。

正しい姿勢で過ごす

坐骨神経痛は、日常生活で正しい姿勢をとることが大切です。歩く時や、いすに座る時は骨盤を立ててできるだけ背筋を伸ばし、脊椎のゆるやかなS字状カーブを維持することを心がけましょう。

前屈みにならないような高さの机を選ぶといった工夫も大切です。脚を組む癖のあるひとは、長時間同じ方に脚を組まないよう気をつけたり、脚を組み替えるなど工夫しましょう。正しい姿勢で過ごすことは坐骨神経痛のほか、肋間神経痛の予防にも役立つ可能性があります。

また、正しい姿勢をとるだけでなく、腰や背中に負担がかかる姿勢を避けることも心がけましょう。例えば低い位置のものをとる場合は中腰になるのではなく、片ひざをついてとるようにすると体への負担が軽減され、神経痛の予防にもつながります。

体を冷やさない

冷えると筋肉が緊張し、血行が悪くなるので、少しの痛みでも強い痛みと感じるようになります。特に坐骨神経痛で悩んでいる人は、冬の寒い日や夏の冷えすぎるエアコンには十分に注意しましょう。ストレッチやぬるめのお風呂などで体を温めるのも良いでしょう。

参考文献

  • 神経障害性疼痛薬物療法ガイドライン 改訂第2
  • 腰痛診療ガイドライン 2019 改定第2
  • 日本神経治療学会ガイドライン・標準的神経治療:三叉神経痛
  • 公益社団法人 日本整形外科学会(https://www.joa.or.jp/public/index.html
  • 公益社団法人 日本皮膚科学会(https://www.dermatol.or.jp/modules/public/index.php?content_id=1

プチメモ痛みが三叉神経痛かどうかを確かめる方法

痛みが三叉神経痛かどうかを確かめる方法

指で押さえると痛みが出る点を「圧痛点」といいます。医師の診察でも圧痛点を調べますが、自分で押さえることで、神経痛が出ているかを確かめることができます。とくに調べやすいのは三叉神経痛。眉毛の内側、頬骨の少し下、口角の真下のあごの骨の部分の圧痛点を押さえたときの痛みの有無で、三叉神経痛かどうかがわかります。