頚椎(けいつい)とは首のことです。頚椎の中には、脊髄(せきずい)という太い神経が走っています。加齢などにより、この頚椎の骨と骨をつなぐ椎間板がつぶれて椎間板組織が飛び出したり、椎骨の縁に骨の棘が生じたりして神経を圧迫し、肩や腕にしびれや痛みが起こる状態を「頚椎症」といいます。
頚椎症はさらに、脊髄そのものに障害が出ることで起こる「頚椎症性脊髄症」と、脊髄の枝・神経根(しんけいこん)の障害によって起こる「頚椎症性神経根症」とに分かれます。
頚椎症性脊髄症
頚椎症性脊髄症とは、加齢などによる頚椎の変化によって、頚椎の脊柱管(せきちゅうかん)内部を通る脊髄の前方部分が圧迫され、症状が出る疾患です。手足のしびれの他、ボタンの掛け外し、箸の使用、文字を書くことなどが難しくなる、歩くときに脚がもつれやすくなるなどの症状が現れます。日本人は脊柱管の大きさが欧米人と比較して小さいため、脊髄に影響が生じやすいといわれています。比較的若年層であれば、生じた異常を自覚しやすいですが、高齢者では気付くのが遅れてしまうケースがあります。
頚椎症性神経根症
頚椎症性神経根症とは脊髄症と同じく、加齢による頚椎の変化(頚椎症)によって、脊髄から左右に枝分かれする「神経根」という細い神経が圧迫されて、腕や手にしびれ、痛みなどの症状が生じる疾患です。例えば遠近両用眼鏡でパソコンの画面などを見るとき、無意識に首を反らせて見ることがありますが、そうした動きを長期にわたって続けると、頚椎症性神経根症を患うことがあります。