しびれ
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しびれ

ピリピリ、ジンジン、チクチクといった痛みや不快感をともなう感覚の異常がしびれです。しびれは、主に末梢神経の炎症、皮膚の血行障害や神経の圧迫による障害などで起こります。また、脊髄の疾患や脳卒中などの脳の疾患が原因となっていることもあります。

井上修二 先生

監修

井上修二 先生 (いのうえしゅうじ) (共立女子大学名誉教授、医学博士)

日常生活から考えられる原因

血行の悪化

肩こりがひどくなったり、腕や背中のあたりが冷たくなったりするとしびれを感じることがあります。これらの症状は、手足の先の血行不良によって起こります。

神経の圧迫

神経の長年の酷使や老化によって、神経の通っている管が細くなったり、背中の骨が変形して神経が圧迫されることで、ピリピリした痛みをともなうしびれを感じることがあります。

しびれの原因となる主な疾患

血管や骨などが神経に触れたり、神経を圧迫したりする三叉(さんさ)神経痛や坐骨神経痛によるしびれが多く見受けられます。脊柱管狭窄症(せきちゅうかんきょうさくしょう)や椎間板ヘルニアも下半身のしびれの原因になります。また、閉塞性下肢動脈硬化症といった血行不全によって起こるもの、帯状疱疹(帯状ヘルペス)の後遺症として起こるもの、脳卒中によるものや糖尿病による代謝障害などが考えられます。

しびれをともなう疾患

※以下の疾患は、医師の診断が必要です。
下記疾患が心配な場合には、早めに医師の診察を受けましょう。

頸椎捻挫(けいついねんざ・むち打ち症)

車の追突やスポーツでの激しい衝突などで、首に強い衝撃を受けて頸椎が捻挫している状態で、むち打ち症とも呼ばれます。首が動かしにくく、動かしたときにしびれや痛みを感じるなどの症状が現われます。また、損傷がひどい場合には、頭痛や吐き気、耳鳴り、倦怠感などに悩まされることも少なくありません。

脊柱管狭窄症(せきちゅうかんきょうさくしょう)

加齢や長年腰に負担をかけることによって脊柱管が狭くなり、神経を圧迫するために起こります。安静時は症状が軽い場合が多く、歩き続けると下肢にしびれや痛みが出て動けなくなることもあります。立ち止まると症状は改善し、歩き出すとまた悪化するといった間欠性跛行(かんけつせいはこう)という症状が出ることがあります。

腰椎すべり症

縦に連なっている脊椎が前後にずれて、神経を圧迫し、強い痛みとしびれをともなうこともあります。脊椎の一部が骨折して分離した分離すべり症と、加齢による椎間板の変形が原因の脊椎(変形)すべり症があります。いずれも40〜50代の中高年に多くみられます。

椎間板ヘルニア

首から腰にかけての、いわゆる背骨の骨と骨をつなぐ椎間板に亀裂ができて、中の椎間板組織の一部が飛び出し、神経を圧迫することでしびれや痛みが起こります。首から腰にかけての痛みや足の指のしびれがあります。また、坐骨神経痛と呼ばれる片側の足の後ろ側の痛みやしびれが代表的な症状です。

頸椎(けいつい)症

骨や軟骨の老化が原因で、頸椎の骨と骨をつなぐ椎間板がつぶれて椎間板組織が飛び出したり、靱帯がまるで骨のように固くなって神経や血管を圧迫し、肩や腕にしびれや痛みが起こります。肩こりや頭痛が起こることもあります。中高年に多く発症する疾患です。

脳梗塞、脳出血、脳腫瘍

脳の血管が詰まる脳梗塞や脳の血管が破裂して出血する脳出血は、前触れとして手足にしびれが起こることがあります。一方、脳出血や脳梗塞の後遺症として半身のしびれが起こることがよくあります。脳腫瘍では、腫瘍によって神経が圧迫され手足がしびれることがあります。

肘部管(ちゅうぶかん)症候群・手根幹(しゅこんかん)症候群

肘(ひじ)部分や手首を通り、指へと繋がる腱を酷使すると炎症を引き起こします。それが指に繋がる神経を圧迫するために、しびれや痛みが起こります。
肘部管症候群は、小指側に繋がっている神経が圧迫され薬指から小指にかけてしびれや痛みの症状が出ます。
手根幹症候群では、親指から中指に広がっている神経が圧迫され親指から薬指の半分にしびれや痛みがあらわれます。

胸郭(きょうかく)出口症候群

鎖骨のあたりを走る腕や手指に繋がる末梢神経の束や、血管(動脈や静脈)が、胸部の鎖骨と肋骨の間で圧迫されて、肩や腕にしびれや痛み、血行障害が起こります。20〜30代のなで肩や首の長い女性に多くみられ、無理な姿勢や動きが加わることでさらに起こりやすくなります。

帯状疱疹(帯状ヘルペス)

体内に潜伏していた水痘帯状疱疹ウイルスが再び活性化して起こるのが帯状疱疹です。痛みをともなう小さな赤い水ぶくれが体の片側に帯のようにあらわれます。水ぶくれは1〜2週間で治まりますが、神経細胞が傷つけられることによって後遺症として神経痛が残ることがあります。日本人のほとんどが持っているウイルスですが、お年寄りや疲れが溜まっている人など、体の免疫が落ちてきたときに発症しやすくなります。

この疾患・症状に関連する情報はこちら。 帯状疱疹(帯状ヘルペス)

閉塞性下肢動脈硬化症

動脈硬化によって、足への血流が極端に減り、足の筋肉の組織が酸素不足になっている状態です。そのために足に冷感をともなうしびれが生じることがあります。糖尿病や喫煙が誘因となることが多く、進行すると足の指の壊疽(えそ)を引き起こすことがあります。歩いているとふくらはぎが痛くなって歩けなくなり、しばらく休めばまた歩けるという間欠性跛行(はこう)という症状があらわれることがあります。

糖尿病性神経症

糖尿病はすい臓でつくられるインスリンの分泌や作用が低下し、血糖値が慢性的に高い状態になる生活習慣病です。この糖尿病によって、長期間高血糖状態が続くことが原因となって起こるのが糖尿病性神経障害で、運動神経・知覚神経系が損なわれ、手足の先にしびれや痛みが起きます。症状が進むと足の筋肉が萎縮し、力が入らなくなります。また、顔面神経麻痺が起きることもあります。

※以上の疾患は、医師の診断が必要です。
上記疾患が心配な場合には、早めに医師の診察を受けましょう。

対処法

安静にして、患部を温める

軽いしびれが生じたときは、まず安静を心がけることが大切です。無理に動かすことで症状が悪化することもありますので、注意しましょう。急なしびれがおさまったら、患部を蒸しタオルなどで温めて血行を良くすると症状を緩和することができます。

すぐに受診すべきしびれを判断する

最も緊急を要するのは、脳梗塞や脳出血の可能性がある場合です。これらの疾患は、治療が遅れると重い後遺症が残ったり、命に係わることもあります。おかしいと感じたら、すぐに主治医を受診するようにしましょう。

病院で診察を受ける

肩こりなどの血行不良からくるしびれは、それほど深刻ではないことが多いのですが、本人にとってはつらいものです。しびれが強い場合や長引くとき、または段々と痛みが強くなるようなときは、整形外科や神経内科を受診しましょう。その他の疾患が疑われるときには、主治医に相談してみましょう。

プチメモひじをぶつけたときのしびれは神経痛?!

ひじをぶつけたときのしびれは神経痛?!

ひじをぶつけたときに、手の先までピーンとしびれが走ることがあります。実は、これは典型的な神経痛の痛みなのです。ひじの後ろ側には末梢神経が通っており、この神経に刺激が加わることでしびれが起こります。一方、血行の悪化が原因で起こるしびれの代表例は、正座したときの足のしびれです。これは、足が一時的に血行不良となることが原因で起こります。