過剰な精神的ストレスが引き金となって、突然浅く速い呼吸を繰り返す疾患です。動悸や酸欠状態のような息苦しさがあります。呼吸の回数が増えることによって血液中の二酸化炭素が過度に減少し、めまい、手足のしびれや筋肉のこわばりなどが生じます。息苦しさやこのまま死んでしまうのではないかという不安感から呼吸をしようとして、さらに呼吸のスピードが速まる悪循環に陥ることもあります。早まった呼吸を低下させるためには、紙袋で口と鼻を覆い、呼吸をするペーパーバック法が有効です。
慢性閉塞性肺疾患(COPD)
COPDは気管支に慢性的な炎症が起こる慢性気管支炎と、酸素と二酸化炭素を交換する肺胞が壊れて呼吸ができなくなる肺気腫の総称で、長年の喫煙習慣が原因の90%をしめる疾患です。近年増加しており、現在では世界の死亡原因の第4位となっています。喫煙によって慢性気管支炎になり、せきやたん、息切れが続くようになります。30〜40年近くかけてゆっくりと肺の機能が低下して徐々に呼吸が苦しくなり、呼吸困難を起こします。完全に回復することはなく、最終的には呼吸不全になります。
気管支喘息
アレルギーなどによって気管支が炎症を起こして狭くなり、息が苦しくなる発作を繰り返します。喘息の発作時には、のどが詰まる感じがあらわれ、次いでせき、たん、ゼイゼイ、ヒューヒューという呼吸音(喘鳴・ぜんめい)、呼吸困難が続きます。息を吸うときより吐き出すときの方が苦しくなるのが特徴です。
肺結核
結核菌という細菌に肺が感染して起こり、せき、たんや肉眼では確認できない微量の血が混じったたん、微熱などの症状が2週間以上続きます。その他、発汗、呼吸困難、食欲不振などの症状があらわれます。結核菌は、せきなどによって感染が広がる可能性がありますが、初期症状が軽いため、感染に気付かないこともあります。感染者数は一時減少したものの、最近では療養施設等でのお年寄りの集団感染や、新しい結核菌の登場によって再び増加しています。
間質性肺炎
鼻から入った空気は気道を通過して最終的には肺胞にたどりつきます。ぶどうの房のような肺胞は、酸素を取り込み、体の中でできた二酸化炭素を交換する役割をしています。この肺胞の壁(間質)に何らかの原因で炎症が起こり、壁がだんだん分厚くなり、ガス交換の機能が低下する疾患です。息苦しさや呼吸困難を引き起こし、さらに乾いた咳がみられ、進行すると呼吸不全に陥るので危険です。原因が不明なものもありますが、抗生物質や漢方薬などの薬の服用によっても起こる場合があります。
自然気胸
胸腔内に空気がたまり、肺が虚脱した状態です。肺内の嚢胞(のうほう)という大きな空気の袋の破裂が原因で、タイヤがパンクしたときのように肺が急速にしぼむ疾患です。その際に激しい胸の痛みが起こり、せきが出て呼吸が困難になり、呼吸不全で死に至ることもあります。片方の肺にだけ起こることがほとんどですが、両方の肺に同時に起こることもあります。20代前後、60歳代のやせ型の人に多くみられます。
肺塞栓症
血の固まりである血栓が肺動脈に流れ込み、詰まった状態です。足の静脈にできた血栓がはがれ、肺動脈に流れ込むことによって起きます。この疾患は肥満や加齢とともに、長時間同じ姿勢で座っていたり、点滴時の大量の空気混入が原因となって起こる場合もあります。急激な呼吸困難や胸の痛み、せき、血たんなどの症状があらわれたり、血圧が低下してショック状態になり、突然死することもあります。
心不全
心筋梗塞や不整脈などのさまざまな心疾患が原因で、心臓の機能が低下し、体に十分な血液を送り出すことができなくなった状態です。全身の血液循環が悪くなるために肺に血液が溜まって急激にうっ血が増すと、肺水腫による重度の呼吸困難やショック症状が起こることがあります。胃腸や肝臓にうっ血が起こると、食欲不振や嘔吐、腹部膨満感などもみられるようになります。
心臓弁膜症
心臓にある4つの弁の中で全身血流に影響の大きい2つのいずれかの弁が十分に開かなかったり、弁がきちんと閉じなくなり、血液が逆流したり、一部が漏れでたりする疾患です。弁が狭まり血液を押し出すために高い圧力が必要になったり、せっかく押し出した血液が押し戻され、効率よく血液を送り出すことができず、心臓に負担がかかり心不全となります。息切れ、動悸、むくみ、脈の乱れや胸痛などの症状があらわれます。
心筋炎(特発性心筋炎)
心臓の筋肉(心筋)が、風邪の原因となるウイルスなどに感染して、炎症を起こす病気です。リウマチなどでも起こることもあります。風邪と似た、発熱や頭痛、だるさ、咳などの症状が1〜2週間続きます。さらに息切れ、息苦しさ、動悸、むくみ、脈の乱れや胸痛などの症状があらわれます。
心嚢(膜)炎
心臓を外側から包む心嚢(膜)に炎症が起こります。細菌やウイルス感染、心筋梗塞や膠原病(こうげんびょう)の合併症として起こることが多くあります。心臓前面の胸骨に沿って、痛みが起こり、息を深く吸ったり横向きに寝たりすると痛みが強まります。心膜腔内に溜まった液が、気管や肺を圧迫するため、呼吸困難やせきなどの症状が出ます。