口内炎とは、口の中の粘膜に現れる炎症のことで、痛みを伴う口の中のただれや潰瘍(かいよう)のことをいいます。一言で口内炎といっても、栄養不足やストレスなどによる免疫機能の低下、誤って噛んでしまったり、口の中を切ったりした傷跡が原因のもの、膠原病など自己免疫に関わる疾患によるものなど、さまざまな種類があります。口内炎を早く治していつも通り食事を楽しむためにも、原因を適切に見極めてそれぞれの原因に合ったケアをすることが大切です。
監修
白土 秀樹 先生 (医療法人しらつち耳鼻咽喉科 理事長、九州大学医学部臨床教授)
口内炎の原因の一つに、ビタミン類の栄養不足があります。
例えば、ビタミンB2やビタミンB6やナイアシンは皮膚の構成に必要なタンパク質や皮膚の代謝を良くし、ビタミンAやCなどは、皮膚や粘膜の働きを正常に保つはたらきがあります。偏った食生活などで、栄養が不足すると口内炎になることがあります。
口内炎は、ストレスや睡眠不足、疲労の蓄積によって免疫機能が低下することが原因となる場合があります。
健康な人の体には、「常在菌」といって日常的に存在する菌がいて、普段は何もしないのですが、免疫機能の低下によって、常在菌が過剰に繁殖することによって口内炎になってしまうことがあります。
口内炎は、口の中に傷がついたり、刺激が加わって口の内側の粘膜が傷つくことが原因の場合もあります。
例えば、口の中を噛んだり、歯ブラシの力の入れすぎで、口の内側の粘膜が傷つくことなどが挙げられます。
また、義歯(入れ歯)の噛み合わせが悪く頬の内側や舌に擦れたりしていると、部分的に刺激が加わった場所が口内炎になることがあります。
口内炎には、ウイルスやカビの感染が原因で起こるものがあります。
例えば、痛みのある水疱を伴う「ヘルペスウイルス」や、「カンジダ」というカビ(真菌)が挙げられます。
口内炎にはいくつかの種類があります。種類によって原因も必要な対処法も異なりますので、チェックしてみましょう。
※以下の疾患は、医師の診断が必要です。下記疾患が心配な場合には、早めに医師の診察を受けましょう。
口内炎の中で、もっとも一般的なものはアフタ性口内炎です。触ると痛みのある、小さな円形のクレーターのような潰瘍ができ、中央は灰白色~黄白色、周囲は赤くなっているものをいいます。
栄養の不足や過労、ホルモンの影響などででき、通常は1〜2週間で治癒しますが、原因によっては繰り返す場合もあります。
カタル性口内炎は、物理的な刺激が原因で起こる口内炎のことです。
誤って口の中を噛んだときや、鋭利な歯や合わない入れ歯が当たるなど、物理的な刺激が原因によって起こります。
ヘルペスウイルスによる感染が原因で起こる口内炎です。
ヘルペスウイルスが皮膚や口、目などの粘膜や唇(口唇ヘルペス)、性器に感染すると、痛みのある小さな水疱が繰り返し発生します。子どもが初めて感染すると、風邪のような症状から始まり、発熱や激しい痛みが伴い、飲食が困難になって脱水などの症状が現れることがあります。
ヘルペスウイルスは、一度感染すると体内から消えないウイルスで、治癒した後も、体に潜伏しています。加齢やストレス、過労などによる免疫機能の低下をきっかけに再活性化し、口内炎などの皮膚症状となって現れるため、症状を繰り返しますが、2回目以降の発症の多くは軽症となります。
カンジダ性口内炎は、カンジダ・アルビカンスという真菌(カビの一種)が引き起こす感染症によって起きた口内炎のことです。
舌の表面に白い苔のようなブツブツがたくさん現れますが、痛みはほとんどありません。
カンジダ菌自体は皮膚や粘膜にいる常在菌で、健康な人には害のない真菌ですが、疲れが蓄積するなどして一時的に免疫機能が弱くなったときや、別の疾患の治療のために抗生物質を服用したときなど、何らかの理由で真菌が過剰に増殖することで口内炎ができることがあります。
そのため、免疫機能の弱い子どもや、糖尿病などで体の免疫機能が低下している人がかかりやすいといわれています。
アレルギーが原因で起こる口内炎もあります。
解熱剤や抗菌薬、風邪薬などの薬物によって起こる薬物アレルギーや、歯科治療で使用する入れ歯や詰め物による金属アレルギーなどが代表的です。
口内炎の原因がアレルギーの場合は、全身の皮膚症状が出たり、高熱を伴ったりして重篤な症状になる場合があるため、原因となる物質を取り除くなど早めの治療が必要です。
ニコチン性口内炎は、タバコが原因となって現れる口内炎で、口蓋ニコチン性白色角化症とも呼ばれます。長期的に喫煙を続けると、口の中の上の部分の粘膜に赤い発疹ができた後、次第に白っぽく分厚くなっていくのが特徴です。
症状としては、痛みはないものの食べ物が染みることがあります。
また、ニコチン性口内炎が白斑を伴い治りが悪くなると、ガンに進行する危険性も指摘されているため、一日の喫煙本数が多いヘビースモーカーの方や、日常的に喫煙している方は注意が必要です。長く続く口内炎は自己判断で放置せず、医療機関を必ず受診してください。
アフタ性口内炎やウイルス性口内炎が起こるということは、過労や免疫機能が低下して体が弱っているサインです。疲れが溜まっている、睡眠が不足しているなど、心当たりがある場合は、風邪を引いたときと同じように、まずはよく休み、免疫機能を回復させることが大切になります。
炭水化物、脂質、タンパク質を中心に、バランスの取れた食事をすることが大切です。
皮膚の材料となるタンパク質や、皮膚の代謝を良くする働きをするビタミンB2、ナイアシン、ビタミンB6、皮膚や粘膜の働きを正常に保つビタミンAやCなどがおすすめです。以下のような食材に多く含まれています。
ビタミンA:うなぎ、にんじんなど
ビタミンB2:牛レバー、鶏卵など
ナイアシン:たらこ、まぐろなど
ビタミンB6:サンマ、バナナなど
ビタミンC:ジャガイモ、レモンなど
また、熱いもの、冷たいもの、香辛料などの刺激の強いものは痛みを増幅させてしまうので、痛みがつらいときはゼリーやおかゆなどの柔らかいものを食べるのがおすすめです。
口内を清潔に保つために、市販の洗口液や薬などのアイテムを使うのも効果的といえます。痛みがあるからといって口の中が不潔なまま放置するのは良くありません。以下のような口腔ケアをしてみましょう。
たかが口内炎と思わず、耳鼻咽喉科や口腔外科などの病院で診察を受けることも大切です。口内炎の強い痛みのせいで食事に支障をきたすと栄養状態が悪くなって、健康に影響する可能性もあります。
噛み合わせや入れ歯、詰め物などが原因でできた口内炎の場合は、かかりつけの歯科で早めに調整をするようにしましょう。軽い口内炎であれば、歯科で塗り薬の処方もしてもらえます。
以下のような症状があるときは、早めに医療機関の受診をしましょう。
炭水化物、脂質、タンパク質の三大栄養素を中心に、栄養バランスの取れた食事を心がけることが大切です。
皮膚の代謝を良くするビタミンB2やB6やナイアシン、皮膚や粘膜の働きを正常に保つビタミンAやCを意識的に摂るようにしましょう。
口内炎をできにくくするには、免疫機能を低下させないことが大切です。具体的にはしっかりと睡眠をとり、十分な休息をとるようにしましょう。
質の良い睡眠のためには、以下のような工夫 が効果的です。
皮膚疾患 最新の治療2019-2020 日本皮膚科学会
オーラルヘルスケア事典 学建書院 松田裕子 編
レビューブック 管理栄養士2023 メディックメディア
日本口腔外科学会HP https://www.jsoms.or.jp/public/
口の中にできた水疱状の口内炎を、潰すと治りが早くなるという説がありますが、実はNGです。口の中にできた口内炎は、潰してしまうと、傷口から細菌が入ってしまい、かえって炎症を悪化させる原因になってしまいます。口の中を清潔に保ち、水分や栄養をとるなど、生活習慣を整えるようにして回復を待ちましょう。
口内炎で悩む人は思いのほか多いものです。
口内炎がよくできる人や、再発するという人は口内炎になりやすい生活習慣を送っているかもしれませんので、以下の症状セルフチェックで確認してみてはいかがでしょうか?