耳鳴り
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耳鳴り

耳鳴りとは、実際には音がないのに、音を感じてしまう症状です。外耳から中耳、内耳、聴神経、脳までの音の伝わる経路のどこかに異常が起こることによって生じますが、多くは内耳の蝸牛(かぎゅう)という、空気振動を電気信号に変える器官の異常によって起こると考えられています。また、耳の疾患の他に、全身的な病気やストレスが原因となって起こることもあります。
ここでは、耳鳴りの原因や関連する疾患、そして日常生活でできる予防法や対処法などを紹介します。

井上修二 先生

監修

井上修二 先生 (いのうえしゅうじ) (共立女子大学名誉教授、医学博士)

耳鳴りの原因はストレスや騒音などが考えられる

精神的ストレスや身体的ストレス

仕事や人間関係などによる精神的ストレスや、睡眠不足などの生活習慣、騒音などの生活環境が体に与える身体的ストレスが長く続くと、自律神経が乱れやすくなり耳鳴りが起こることがあります。同時にめまいが起こることも多く、それらの症状がストレスとなり、さらに症状を悪化させる悪循環に陥ることがあります。

耳元で大きな音を聞く

耳元で爆発音がしたり、ヘッドホンで音楽を大音量にして聴いたときなどに、直後から強い耳鳴りが起こり、聞こえが悪くなったり耳が詰まった感じになることがあります。これは、内耳の蝸牛の感覚細胞が大きな音や衝撃により損傷を受けたことによって起こるもので、早期に治療を受ければ改善することもあります。

耳あかが溜まったり、水や異物が耳に入る

耳あかが溜まって外耳道をふさいでしまうと、耳が詰まったような感じがしたり、聞こえが悪くなったり、ガサガサ、コトコトなどといった耳鳴りが起こることがあります。また、耳に水が入ったり、ゴミ、ダニやカなどの小さな虫が耳に入ったときにも耳鳴りが起こることがありますが、原因を取り除けば治ります。

薬の副作用

結核の治療薬である抗菌薬をはじめ、解熱・鎮痛薬、さらに、抗うつ薬、糖尿病やリウマチの治療薬、利尿薬などの薬の中には、内耳を障害して耳鳴りを引き起こすものが数多くあります。とくに腎臓に疾患がある場合は薬が十分に排泄されず、薬の血中濃度が必要以上に高くなるので耳鳴りが起こりやすくなります。

耳鳴りに加えて、耳だれや難聴を伴う場合に考えられる疾患

耳鳴りの原因となる疾患には、突発性難聴のほか、内耳の異常によるメニエール病でもめまいとともに耳鳴りが起こることがあります。また、中耳炎や外耳炎などの中耳や外耳の疾患によって生じる場合もあります。その他にも、脳腫瘍などの脳の疾患、高血圧や糖尿病、貧血などの全身性の疾患、さらに、うつ病や不安神経症、自律神経失調症、更年期障害などによっても耳鳴りが起きることがあります。

※以下の疾患は、医師の診断が必要です。
下記疾患が心配な場合には、早めに医師の診察を受けましょう。

突発性難聴(片耳がキーンとする激しい耳鳴り)

突然、片方の耳に激しい耳鳴りと難聴が起こる疾患で、約半数がグルグルと回転するようなめまいをともないます。キーンという音や金属音、電子音のような耳鳴りが特徴で、重い場合は耳がまったく聞こえなくなります。突発性難聴は一度きりで繰り返すことはほとんどありません。残念ながら原因はまだ分かっていませんが、ウィルス感染や内耳の血流障害、過労やストレスが引き金になることが多いといわれています。

老人性難聴(両耳がキーンとする耳鳴り)

音を感じる器官である内耳の感覚細胞は、加齢とともに徐々に数が減っていきます。そのため、高齢になると聞こえにくくなるのが老人性難聴です。内耳の障害であることから、多くの場合、キーンというような音や金属音、電子音に似た耳鳴りが、両側の耳に起こります。

外耳(道)炎

耳の穴と呼ばれている外耳道に炎症が起きる疾患で、急性の場合は耳かきなどによるひっかき傷に細菌が感染したり、海やプールの水が耳に入ることなどによって起こります。耳の中にかゆみや痛みが生じ、腫れによる異物感や詰まった感じとともに、耳鳴りや耳だれがみられることもあります。この急性外耳炎が慢性化したり、糖尿病やアレルギー体質などによっても起こる慢性外耳炎の場合、強いかゆみがあらわれることがあります。

耳管狭窄(きょうさく)症

中耳にあり、鼻やのどに繋がっている耳管は、ときどき開閉することで中耳と外の気圧を調整しています。この耳管が閉じたままになる状態が耳管狭窄症で、中耳の気圧が外の気圧より低くなるため、鼓膜が内側に引っ張られ、音の振動を十分に伝えられなくなることで低音の耳鳴りが起こります。のどや鼻に炎症が起きたときや、飛行機に乗ったときの気圧の変化などで起こることがあります。

中耳炎

耳管が狭窄して中耳の気圧が低下した状態が続くと、中耳の鼓膜から滲出液が分泌されて、中耳腔という部分に溜まります。これを滲出性中耳炎といい、アデノイドや耳管狭窄症、風邪などの後やアレルギー体質の人に起こりやすく、耳が詰まった感じや耳鳴りの症状があらわれます。放置すると慢性化し、耳だれや難聴が続きます。また、鼓膜に開いた穴から皮膚組織が中耳に入り込み、骨を破壊しながら増殖する真珠腫性中耳炎を引き起こすこともあります。

内耳炎

中耳炎が治り切らず炎症が強い場合、内耳にも炎症がおよび、内耳炎が起こります。内耳炎になると、耳鳴りや難聴の症状が悪化するだけでなく、めまいや吐き気、嘔吐なども起こります。真珠腫性中耳炎の進行が内耳におよぶと、顔面神経まひが起きることもあります。

メニエール病

どちらか一方の耳にだけに起き、強くなったり、弱くなったりを繰り返す耳鳴り、そして自分や周囲がぐるぐる回るようなめまい、さらに難聴の3つが同時に起こります。耳鳴りは、ブーン、ゴーッというような低音が特徴で、多くの場合、強い吐き気や嘔吐をともないます。過労やストレスが引き金になることがあります。危険な疾患ではありませんが、放置すると耳鳴り、難聴が進行します。

聴神経腫瘍

脳から耳に出ている聴神経に発生する良性の腫瘍で、脳腫瘍の約10%をしめます。はじめは軽い耳鳴りが次第に強くなる場合は、聴神経腫瘍の可能性があります。腫瘍が大きくなると、腫瘍を切除しても聴力がおとろえたり、顔面神経に障害をきたすことがあります。

外リンパ瘻(ろう)

中耳と内耳の境にある膜が破れ、内耳のリンパ液が漏れだすことがあります。これが外リンパ瘻で、ポンと膜が破裂する音が聞こえることがあり、耳が詰まった感じや難聴、キーンという音や金属音、電子音のような耳鳴り、めまいなどが生じます。多くは、くしゃみやせきをしたとき、重いものを持ち上げたとき、鼻を強くかんだとき、飛行機に乗っているときなどに起こります。

耳性帯状疱疹(ラムゼイ・ハント症候群)

帯状疱疹ウイルスが内耳や顔面神経に感染する疾患です。はじめに耳痛や頭痛が起こり、次いで耳の穴の近くに痛みをともなう小さな赤い発疹や水疱が多くあらわれます。そして、回転性の激しいめまいと耳鳴り、難聴が起こり、さらに、顔がこわばったり、目を開けたり閉じたりできなくなるなどの顔面神経まひがあらわれるのが特徴です。

高血圧症

遺伝や肥満、塩分のとりすぎなどの生活習慣が原因で、最高血圧140mmHg以上、最低血圧90mmHg以上が続く状態です。高血圧症になると耳鳴りが起こることがあり、降圧剤が効きすぎて急激に血圧が下がった場合にも、激しく目の前が回るクラクラするめまいをともなう耳鳴りが起きることがあります。高血圧を放置すると、脳梗塞や脳出血が発症しやすくなり、耳鳴りとともにフワフワとする危険なめまいを起こすことがあります。

この疾患・症状に関連する情報はこちら。 血圧が高めである

※以上の疾患は、医師の診断が必要です。
上記疾患が心配な場合には、早めに医師の診察を受けましょう。

軽い耳鳴りは心を落ち着かせて対処、長引く場合は病院へ

深呼吸をし、リラックスする

心身の緊張が強いと、耳鳴りの症状をより強く感じやすくなります。耳鳴りが起きたときは深呼吸をし、心身をリラックスさせましょう。また、何かに夢中になっているときは耳鳴りが気にならない場合が多いので、症状を忘れていられる時間を増やすことも耳鳴りの苦痛の軽減に繋がります。

病院で診察を受ける

耳鳴りの症状が長引く場合や、めまい、難聴をともなう場合は早期に治療が必要な疾患や命にかかわる危険な疾患が隠れていることがありますので、自己判断は禁物です。耳鳴りが主な症状の場合は、耳鼻咽喉科を受診しましょう。激しい頭痛や物が二重に見える、しびれる、舌がもつれるなどの症状がある場合は、脳梗塞や脳出血などの疑いがありますので、すぐに脳神経外科を受診する必要があります。また、糖尿病や高血圧などの持病がある場合は、主治医や内科医に相談しましょう。

ストレスケアや規則正しい生活習慣を心がけて耳鳴りの予防を

ストレスを溜めない

ストレスが原因となって耳鳴りが起こるケースは少なくありません。問題を1人で抱えこまず、普段から気軽に相談できる人をもつことや、趣味やスポーツ、旅行など、楽しむ機会を多くもつことが大切です。また、一日の中で少しでも心身をリラックスさせる時間をつくり、ストレスを溜め込まないようにしましょう。

規則正しい生活を送る

不規則な生活は自律神経の乱れを引き起こし、耳鳴りの原因となります。1日3食の規則正しい食事と、十分な睡眠、休息で体と心のバランスを整えましょう。また、ウォーキングや軽いランニングなどの運動も、自律神経のバランスを整えるのに効果があります。

プチメモなぜ耳鳴りと難聴は合併しやすいの?

なぜ耳鳴りと難聴は合併しやすいの?

耳鳴りを訴える患者さんの70〜80%が難聴をともない、難聴を訴える患者さんの約30%に耳鳴りが起こっています。難聴には、音の振動を伝える外耳や中耳の異常から起こる伝音難聴と、音を感じる内耳や聴神経、脳の異常から起こる感音難聴の2つがありますが、感音難聴のほうが多くみられ、突発性難聴や老人性難聴では高い割合で耳鳴りが起こります。感音難聴は内耳の感覚細胞が障害されて起こることが最も多く、音がないのに電気信号が発せられると同時に聞こえも悪くなるため、耳鳴りと難聴が合併しやすくなるのです。