PMS(月経前症候群)はいつから起こる?
生理前にみられる症状や期間、緩和方法をご紹介
生理※前になるとちょっとしたことでイライラしたり落ち込みやすくなったり。頭痛や疲れやすさもあって、いつものように過ごせないことはありませんか? 胸やお腹の張り・痛みが生理の予兆だと心得ている人は多いかもしれませんが、いつも悩んでいるその他の症状も、もしかしたらPMS(月経前症候群)のせいかもしれません。生理前にみられるPMSの症状やいつ起こりやすいのか、その緩和方法についてご紹介します。
※「生理」のことを医学的には「月経」といいますが、このページでは分かりやすく「生理」と表現しています。
監修:窪 麻由美 先生(フィーカレディースクリニック 副院長)
PMSとは?
PMSは生理前に心と体の両方にさまざまな症状が起こる疾患です。原因ははっきりとは分かっていませんが、排卵から生理が起こるまでの期間(黄体期)に多く分泌される卵胞ホルモン(エストロゲン)と黄体ホルモン(プロゲステロン)が、関与していると考えられています。
また、PMSになりうるリスク因子として、過去の精神的なトラウマや、精神疾患の既往、ストレス、肥満、喫煙や飲酒などの生活習慣、家族歴などがあるとされており、ホルモンだけではない他の要因も影響を及ぼしていると考えられています。
PMSはいつから起こる? いつまで起こる?
PMSの症状が起こる時期は「排卵を過ぎて生理が起こるまでの時期」に限られています。つまり、28日周期であれば生理が起こる14日前から起こりうるわけですが、生理前の3~10日間に多くみられます(図)。
その後生理が始まると、PMSの症状は数日以内に軽くなるか、なくなりますが、症状が強いほど長く続きます。
図 生理周期(28日周期の場合)<イメージ図>
PMSが起こりやすい年代は?
初経を迎える10代から閉経を迎える50歳前後まで、生理のある女性であればいつでも発症する可能性がありますが、20代から30代に比較的多いとされています。
PMSの症状
PMSの症状はさまざまで200種類以上あるといわれています。以下が主な精神的な症状と身体的な症状です。たくさんの症状が同時に起こることもありますし、イライラや不眠のみなど症状の種類が少ない場合もあります。人によっても症状の出方が異なるため、PMSによるものだと分からない場合も少なくありません。
○精神的な症状
- 気分の浮き沈みがある
- 気分が落ち込む、憂鬱な気分になる
- 怒りを感じる、イライラする
- 不安になる
- 気持ちが混乱する
- 気力がなくなる
- 家に引きこもる
- 集中力・判断力が低下する
○身体的な症状
- 胸が張る・痛む
- お腹が張る・痛む、便秘・下痢が起こる
- 腰痛がある
- 頭痛・肩こりがある
- 関節痛・筋肉痛がある
- 体重が増加する
- 手足の腫れ・むくみがある
- 気持ちが悪い
- だるさ・疲れが取れない
- のぼせ・めまい・動悸がある
- 眠気がある、眠れない
<PMSセルフチェック>
生理前に以下のような症状はありませんか?
- 気分が落ち込む、憂鬱な気分になる
- 怒り・イライラする
- 不安になる
- 気持ちが混乱する
- 引きこもる
- 乳房が張る
- お腹が張る
- 頭痛・肩こりがある
- 関節痛・筋肉痛がある
- 体重が増える
- 手足のむくみがある
- 過去3ヵ月連続して、生理開始前5日間に上記のうち1つ以上の症状がある。
- その症状は生理開始後4日以内に解消し、少なくとも13日目まで再発しない。
- その症状は薬やアルコールによるものではない。
- その症状により仕事や学校、日常生活、人間関係に明らかに支障が出ている。
4つすべてあてはまる場合はPMSかもしれません。
気になる方は婦人科に相談してみましょう。
American College of Obstetricians and Gynecologists: Premenstrual Syndrome. Guidelines for Women's Health Care. A Resource Manual, Fourth Edition. 2014; 607-613.
日本産科婦人科学会/日本産婦人科医会 編・監:産婦人科診療ガイドライン 婦人科外来編2023. 2023.
より作成
PMSと似ている疾患
PMDD(月経前不快気分障害)
PMSと症状が似ている疾患としてPMDD(月経前不快気分障害)があります。PMDDはPMSの特殊型(重症型)とみなされており、特に精神神経症状が強くあらわれます。ささいなことで怒りが爆発して感情がコントロールできなくなったり、集中力が低下して仕事ができなかったり、悲しくて泣きたくなったり。こうした症状が出ているときは人との関わり合いが苦痛になるので、家にひきこもりがちになります。自分の感情を抑えられず、周囲の人とも上手くやっていけないために孤独感や絶望感に襲われ、中には自殺願望まで抱いてしまう人もいます。
月経困難症
生理中に下腹部痛、腰痛、頭痛、下痢、イライラなどの症状が起こることがありますが、それはPMSではなく生理時特有の症状です。骨盤の痛みを中心とした症状が起こり、それにより日常生活に影響が出ているようであれば月経困難症と診断されます。月経困難症とPMSが両方起こることもあります。
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プロゲステロン過敏症
非常にまれですが、体がプロゲステロンやプロゲステロンと似た物質を異物として認識してしまい、それに対する抗体を作ることで症状が引き起こされる疾患です。経口避妊薬などのホルモン製剤を使用したことがきっかけとなり発症します。まれに、体内で分泌されるプロゲステロンにアレルギー反応が起こることがあり、PMSと同じ時期に発症するため、混同されやすい疾患です。プロゲステロン過敏症では、湿疹や蕁麻疹、むくみ、点状出血、紅斑、かゆみなどの皮膚症状が起こることが多いです。
PMSを緩和する方法
女性の多くが生理前にイライラや不安、憂鬱な気分などを経験したことがあるでしょう。それは卵巣が正常に機能しているためで、決して異常なことではありません。PMSの症状は心理的なものが大きく影響するといわれており、生活習慣の改善による症状の軽減が期待できます。
ただし症状が強くなり、日常生活や社会生活に影響が及ぶ場合は治療の対象となります。
○症状を軽くするための生活習慣
- まずは症状について記録しましょう。
PMSが起こった時期や症状の強さなどを記録することで、PMSが生じるリズムを把握することができます。 - ストレスを軽くする方法を身につけましょう。
PMSの症状はストレスで悪化するため、職場や家庭でのストレスをなるべく減らすようにすることが大切です。ヨガや水泳、ランニングなどの運動は、脳内の神経伝達物質の産生を高めることでストレスや不安を軽くし、気分を明るくする効果が期待できます。運動以外にも、深呼吸したり、マッサージを受けたり、趣味に関心を向けたり、友人と話したりすることで気分転換を図り、リラックスするのも効果的です。 - 適度に運動しましょう。
適度な運動をすることでストレスが軽減するだけではなく、脳内のエンドルフィンという物質の分泌が高まり、痛みを感じにくくなったり、不安が減ったりします。また、黄体期のエストロゲンやプロゲステロンの分泌を低下させることでPMSの症状を改善する効果が期待できます。 - バランスの取れた食生活を心がけましょう。
カルシウムやビタミンB6、マグネシウムを摂ることも、症状軽減に効果があるとされています。ただし、特定のミネラルやビタミンを摂れば必ず効果が期待できるわけではなく、バランスの取れた健康的な食生活を送ることが大切です。 - カフェイン、アルコール、喫煙、過度な糖質は控えましょう。
PMSが生じているとき、睡眠のリズムは乱れがちです。カフェイン、アルコールは控えめにし、規則的な睡眠を習慣づけましょう。喫煙はPMSを助長するため、禁煙しましょう。また、PMSで悩む女性は生理前に糖質を含む食品(キャンディーやチョコレート、スナック、炭水化物など)を欲する傾向にあります。摂りすぎに注意が必要です。
○市販薬で対処する
市販薬でそれぞれのつらい症状に対処する方法もあります。頭痛がつらいときには対症療法として鎮痛薬、便秘には便秘薬などを一時的に使用するのもよいでしょう。また、むくみ、めまい、動悸、疲労倦怠感などに効き目のある漢方薬もありますので、試してみるのもよい方法です。
店頭で薬剤師や登録販売者に相談するのもおすすめです。
体力虚弱で胃腸が弱く、冷え症で貧血の傾向があり、疲労しやすく、ときに下腹部痛がある方のむくみ、疲労倦怠感、めまい・立ちくらみ、腰痛などに
○医療機関(婦人科)に相談する
生活習慣を改善し、市販薬で対処しても症状が抑えられない場合や症状がひどい場合は、婦人科に相談しましょう。あなたの症状に合わせて下記のような治療法が行われます。
※これらの治療薬は自由診療となる場合があります。
- 排卵を抑える治療法(排卵抑制療法)
排卵により分泌される女性ホルモンがPMSに関わっていると考えられているため、排卵を止めて症状を改善しようというのがこの治療法です。低用量経口避妊薬(低用量ピル)や低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬が使用されます。服用している期間だけ排卵を止められる薬なので、服用を止めた後の妊娠には影響を与えることなく、治療をすることができます。 - 症状を抑える治療法
むくみや胸の張りに対して利尿薬、痛みに対して鎮痛薬、精神的な症状に対して精神安定剤や抗うつ薬が使われることがあります。
また、多様な症状に対して漢方薬が処方されることもあります。
まとめ
生理のある女性なら誰にでも起こりうるPMS。その症状は多彩で、どのような症状が起こるのか、その強さも人それぞれ、そのときによって起こる症状が異なるので、それがPMSによるものだと自覚していない人が多いといわれています。家族や職場の人間関係によるストレスのせいだと思っている人もいるかもしれません。ポイントは、生理の前になると決まって同じような症状があらわれ、生理が始まると症状が軽くなったり、なくなったりすることです。PMSは症状の強さによっては、家族やパートナー、友人などとの人間関係に支障をきたしてしまうこともあります。周囲の人たちにこの疾患とあなたの症状のことを知ってもらうことで、気持ちが少し落ち着いたり、関係の改善に役立ったりするかもしれません。生理前の困った症状でお悩みの場合は、一度婦人科に相談してみませんか。いつでも自分らしく過ごすために、上手にPMSと付き合っていきましょう。
参考資料
- 公益社団法人 日本産科婦人科学会(https://www.jsog.or.jp/modules/diseases/index.php?content_id=13):月経前症候群(premenstrual syndrome : PMS)
- 日本産科婦人科学会/日本産婦人科医会 編・監:産婦人科診療ガイドライン 婦人科外来編2023. 2023.
- 武谷 雄二:PMS月経前症候群 正しい知識をもつために. メジカルレビュー社. 2020.
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