ADHDの治し方は?ADHDに治療は必要?治療法や栄養療法、ビタミンとの関係を解説します!

悩んで頭をかいているビジネスマン

ADHD(注意欠如・多動症)には、風邪やインフルエンザのように、「治癒させる」といった治し方はありません。

ADHDの困りごとを軽減するには、その人の特性ごとに合った仕組みや工夫を見つけること、それぞれに合った薬物療法や心理的介入を試みること、なるべく早期に介入を開始することなどが重要とされています。

だからこそ、「ADHDの特性を完全になくすこと」「根治させること」ではなく、「特性を理解して、その人らしい生活を達成すること」を目標に治療(介入)を行うことが重要です。

そこでこの記事では、ADHDに対して現在行われている治療や支援、介入方法を紹介しながら、毎日の生活習慣の中でも重要となる、栄養やビタミンとの向き合い方について解説していきます。

ADHDの治し方(困りごとを軽減する方法)について正しい知識を得たいという方は、ぜひ最後までご覧ください。

ADHDは治療可能なのか?

ADHDは治療可能なのか考えている男性

ADHDの治療法を解説する前に、まずはADHDに対する基本的な考え方を整理しておきます。

ここを取り違えると、「治らないなら意味がない」と誤った判断をしてしまったり、逆に「治せる」といった怪しい情報に振り回されてしまうかもしれません。

そもそもADHDは、生まれ持った特性の影響を受けてあらわれるものであり、本人の努力不足や育て方の問題ではありません。

だからこそ、ADHDの特性を完全に消し去ること(根治させること)ではなく、日常生活での困りごとを少なくしていくという考え方が重要になります。

たとえば、ADHDのある子どもの特性を養育者や学校の先生、支援者に伝え、その子の特性に合った環境を整えるなど、個に応じた支援が円滑に進むような工夫を勧めるといったことも、重要なADHDの治療方法のひとつであり、薬物療法だけがADHDの治療ではないのです。

そして、こうした治療や取り組みを通して、日常生活でのさまざまな“困難”を最小化し、その人らしい生き方を達成できるよう支える、という考え方が大切です。

そもそもADHDは「治療」が必要なの?

ADHDの特性があるからといって、誰もが同じように治療や介入を受けるわけではありません。

必要な支援は一人ひとり異なりますので、治療の必要性を見極めることが、ADHDへの適切な対応の第一歩となります。

そして、判断の基準になるのは、「特性があるかどうか」ではなく「日常生活でどれだけ困っているか」です。

ADHDの特性を持っていても、困難や支障なく過ごせている方がいる一方、職場や学校の状況によって強い困難を感じている方もいます。

ADHDの特性のひとつである、「次々と周囲のものに関心を持ち、周囲のペースよりもエネルギッシュにさまざまなことに取り組める」という特性は、場面や環境によっては大きな強みとしてはたらきますので、特性そのものを「治療すべきもの」と捉える必要はありません。

一方で、「困っているのに何もしない」という選択も避けなければいけません。

根本治療はありませんが、症状の軽減に薬物療法や心理的介入が有効であること、早期発見・介入によって予後が改善することが分かっていますので、必要に応じた治療や介入は重要です。

困りごとを放置してしまうと、環境によっては自己否定感が強まったり、気分の落ち込みや不安といった二次的な不調につながることもあります。

早めに専門家に相談し、適切に治療を開始することには、こうした二次的な困難を防ぐという意味もあります。

周囲や環境が変わることも重要

ADHDの治療においてもうひとつ大切なのが、「本人に対する治療」だけがすべてではないという考え方です。

本人の特性を養育者や学校の先生、支援者などに適切に伝え、一人ひとりに応じた支援が円滑に進むよう工夫することも重要です。

つまり、本人が変わることだけでなく、周囲が特性を理解し、環境の側を調整していくことも大切な介入であり、ADHDの支援なのです。

医療機関での治療、職場や学校での配慮、家族の理解、相談窓口の活用など、これらを組み合わせながら、その人が過ごしやすい形を探していくことが、ADHDへの向き合い方の基本になります。

ADHDの具体的な治療・支援の方法

交差点を歩いている人々

ADHDへの対応は、大きく分けて「心理社会的な治療・支援」と「薬物療法」のふたつに分類することができます。

いずれか一方だけを行うのではなく、環境や関わり方を整えることから始め、必要に応じて薬物療法を組み合わせるという順序が一般的です。

本人に合わせて、環境調整・行動療法・ソーシャルスキルトレーニング(SST)・ペアレントトレーニングといった、心理社会的治療を適切に実施することが大切です。

環境調整

ADHDと診断された際に、最初に取り組まれることが多いのが、環境調整です。

本人を変えようとするのではなく、周囲の環境や関わり方の側を、特性に合う形に整えていくという考え方になります。

子どもに関わる保護者や教師など関係者がその特徴を理解し、子どもが自分のとるべき行動を理解しやすいような対応ができるようにしていくことも、重要な環境調整のひとつです。

また、大人であれば、職場でのタスクの受け方や情報の共有方法を工夫する、集中しやすい席や時間帯を確保する、といった考え方が大切です。

心理社会的なアプローチ

環境調整とあわせて行われるのが、本人や周囲がスキルを身につけていくアプローチです。

たとえばペアレントトレーニングでは、保護者が子どもの望ましい行動を増やし、望ましくない行動を減らすための接し方や方法を学ぶことで、日常の困難を減少させていきます。

このほかにも、対人関係のコツを練習するソーシャルスキルトレーニングなどが実施される場合もあります。

このように、ADHDの治療の基本は、本人やその周囲の方々が特徴を理解し、状況に合った適切な行動が取れるようになることだといえます。

薬物療法

ADHDの薬物療法は、環境調整や行動療法など薬物療法以外の取り組みを行っても十分な効果を示さない場合に使用されることが基本になります。

ADHDの薬物治療としては、いずれもADHDに関連する脳のはたらきを整えるような薬剤が使用されます。

また、薬だけですべてが解決するわけではなく、あくまで環境調整や支援と組み合わせるものだという点は、押さえておきたいところです。

これらの薬は医師の診断のもとで処方されるものですので、自己判断ではなく、必ず医療機関で相談してください。

【ADHDの薬物療法で使用される主な薬剤】

  • メチルフェニデート塩酸塩
  • リスデキサンフェタミンメシル酸塩
  • アトモキセチン
  • グアンファシン

ADHDに「栄養療法」や「ビタミン」は効果があるの?

ビタミンB₆のイメージ

インターネット上では、「栄養療法でADHDが改善する」「特定のサプリメントがADHDに効く」といった情報を目にすることがあります。

しかし、明確な根拠がないものも多く、まだまだ研究途中であることを理解しておくことが重要です。

とはいえ、毎日の食事が心身の健康を支えている要因であることは言うまでもありません。

栄養やビタミンが直接的にADHDの特性に働きかけるわけでなくても、必要な栄養素を十分に摂取することは、日々の健康の土台となります。

栄養やビタミンは「健康の土台」として大切

栄養療法が直接的にADHDの治療になるわけではありません。

しかし、栄養そのものが不要ということでは、もちろんありません。

ADHDの特性の有無にかかわらず、脳と神経が本来のはたらきを発揮するには、エネルギーと栄養素が欠かせないからです。

たとえばビタミンB1(チアミン)は、糖質からエネルギーを生み出す過程に不可欠なビタミンです。

神経細胞の主要なエネルギー源になるのは糖質(ブドウ糖)であり、ビタミンB1は糖質からエネルギーを生み出す際に必要不可欠なため、神経のはたらきを支える重要な物質でもあります。

また、身体が動くためには、脳から発せられた「動け」という信号が、シナプスという接合部を通じて運動神経細胞から筋肉へ正しく伝達される必要があり、最近の研究では、ビタミンB1がシナプスの形成や維持に関与していることも分かってきています。

ただし、これはあくまで「誰にとっても栄養が土台として大切」という一般的な話です。

ビタミンB1を摂ればADHDの特性が変わる、という意味ではありません。

さらに、ビタミンB6も、神経機能を支えるうえで欠かせない栄養素のひとつです。

ビタミンB6は、脳や神経の中で情報のやり取りを担う「神経伝達物質」がつくられる過程に関与しています。

たとえば、意欲や報酬に関わるドーパミン、気分の安定に関わるセロトニン、ストレス時の反応に関わるノルアドレナリン、神経の過剰な興奮を抑えるGABA(γ-アミノ酪酸)なども、神経伝達物質の一種です。

このように、ビタミンB1だけではなく、ビタミンB6も、さまざまな神経伝達物質の産生を支えることで、脳や神経が正常にはたらくための基盤となる栄養素だと考えられています。

そのため、まずは1日3食のリズムを整え、主食・主菜・副菜をそろえ、しっかりとバランスよく栄養素を摂取することが重要です。

ADHDの特性の有無にかかわらず、より健康的な毎日を過ごすためにも、栄養やビタミンの摂取を意識することが大切です。

疲れをためない生活習慣を整えることも大切

ADHDの特性がある方は、その特性ゆえに「疲れ」を感じやすい場面も少なくありません。

気が散りやすいぶん集中を保つのに人一倍エネルギーを使う、過集中で休憩を取り損ねる、段取りやマルチタスクで脳が休まらない、といった負荷が積み重なりやすい傾向があります。

そして、疲れがたまると注意力はさらに保ちにくくなり、ミスが増えて気疲れが重なるという悪循環にも陥りやすくなります。

だからこそ、心身の余裕をもって過ごせるように、日々の疲れをためこまない工夫をすることも大切です。

ビタミンB1誘導体「フルスルチアミン」と神経伝達物質「ドーパミン」の関係

栄養に関連して、近年研究が進められているのが、ビタミンB1誘導体である「フルスルチアミン」という成分と、脳内の神経伝達物質であるドーパミンとの関わりです。

フルスルチアミンは、これまで主にエネルギー代謝を改善して抗疲労効果を発揮すると考えられてきた成分なのですが、近年では、脳への作用についても研究が進められています。

実際に、ラットにフルスルチアミンを投与した際の行動を観察した研究があり、研究の結果、ラットの身体活動性が高まり、輪回し運動器でよく走行したり、自由に動き回れる環境で活発に動き回ったりと、運動量が増えることが確認されました。

さらに、そのときの脳内(前頭前皮質)の神経伝達物質を解析したところ、ドーパミンの放出が亢進していることが明らかとなっています。

また、ドーパミン放出が高まった直後に運動量が増加していたことも確認されており、フルスルチアミンが脳内のドーパミン放出を高め、運動量を増やしたのではないか、と考察されています。

このほか、フルスルチアミンの脳への作用に関連する情報として、海外では、幼若マウスにフルスルチアミンを投与して自閉症やADHDに関連する行動特性を評価する研究なども実施されています。

ADHDの正しい「治し方」や「付き合い方」を理解することが重要です

ADHDには根治させる方法はありませんが、ADHDの特性による困りごとを減らすための治療方法や介入方法は複数あります。

まずは環境調整と心理社会的なアプローチから始め、必要に応じて医療機関で薬物療法を検討するなど、一人ひとりの特性や置かれている環境に合わせたアプローチが重要になります。

そのうえで、バランスのよい食事や十分な睡眠といった生活の土台を整えることは、特性の有無にかかわらず誰にとっても大切です。

特に、ADHDの特性ゆえに疲れがたまりやすいと感じている方は、食事のリズムを整えることから始めてみましょう。

ビタミンB1やB6は神経機能の維持等に重要な成分であり、またビタミンB1誘導体であるフルスルチアミンは、脳への作用が期待される成分のひとつです。

ADHDの特性によって困りごとが続くときは、ひとりで抱え込まず、医療機関や各都道府県の発達障害者支援センターなどに相談してみてください。

特性を正しく理解し、適切な支援につなげることが、ADHDの治し方を考える上で重要といえます。

TOP