妊娠中や産後の女性の抑うつの原因は?抑うつとビタミン・ホモシステインの関係を解説します!

ベッドに座っている妊娠中の女性

妊娠中や産後に、気分の落ち込みや寝つきの悪さ、何をするにもやる気が出ないといった、「抑うつ」の症状が出現することは珍しくありません。

妊娠中や産後には、ホルモンバランスの急激な変化、つわりや体調変化による負担、出産や育児への不安、周囲や生活環境の変化など、複数の要因が重なって、さまざまな抑うつ症状が生じる可能性があります。

とはいえ、妊娠中や産後に気分の落ち込みがあるからといって、それがすべて「うつ病」というわけでもありません。

「抑うつ(症状)」と「うつ病」は同じものではなく、混同されやすい言葉でもありますので、正しく理解しておくことが大切です。

加えて、妊娠・産後期はビタミンB12や葉酸といった栄養素が不足しやすい時期でもあり、これらの栄養素の不足を反映する「ホモシステイン」という物質と、女性の抑うつとの関係を示唆する研究も報告されているように、妊娠中や産後のビタミン不足が気分の変化に関与している可能性もあります。

そこでこの記事では、抑うつと「うつ病」との違いを整理したうえで、妊娠中や産後の抑うつの原因や、ビタミンB12や葉酸などの栄養素との関係についても解説していきます。

何より重要なこととして、妊娠中や産後に気分の落ち込みが続いている場合は、我慢せず早めに周囲や専門家に相談することが大切です。

「抑うつ」と「うつ病」は何が違う?

頭をかかえて悩んでいる妊娠中の女性

気分が落ち込んでいるときに使われる言葉として、「抑うつ」や「抑うつ状態」などがあります。

これらのふたつの言葉に明確な違いはなく、気分の落ち込みなどの憂うつな症状全般を指す用語として使用されます。

一方、「うつ病」というのは、抑うつ症状によって、日常生活に大きな支障が生じている際の疾患名です。

つまり、抑うつというのは状態であり、うつ病はそれによって生じた疾患の名前であるといえます。

そのため、気分の落ち込みをはじめとする抑うつ症状が出現しているからといって、それがうつ病とは限りません。

逆に、うつ病だけではなく、不安障害、統合失調症、適応障害、パーソナリティ障害などの精神疾患のほか、体調の変化や不調とあわせて、「やる気の低下」などの抑うつ症状が出現する可能性もありますので、抑うつとうつ病の違いを理解しておくことが大切です。

「うつ病」の診断基準

「うつ病」は、抑うつ気分(抑うつ)、興味や関心の欠如、不安・焦燥、食欲低下、不眠などが生じ、生活上の著しい苦痛や機能障害を引き起こす疾患の名前です。

うつ病の診断にあたっては、国際的な診断基準にもとづき、症状の数、続いている期間、生活への支障の程度などから総合的に判断されるため、専門家による診断が必要です。

なお、うつ病には「こころの症状」だけでなく「体の症状」が生じる場合もあります。

何もやる気が出ない(意欲低下)、悲しい気持ちになる(抑うつ気分)といったこころの症状に加えて、食欲がない、眠れない・起きられない、体がだるい、頭痛、動悸、めまいや耳鳴りといった体の症状が現れる可能性もあります。

特に、だるさ、眠れない、食欲がない、頭が働かないといった症状は、妊娠そのものによっても起こる可能性がありますので、抑うつによるものなのか、妊娠にともなう身体の変化なのかを、見分けることは簡単ではありません。

そのため、妊娠中や産後の気分の変化や抑うつ症状を感じた場合には、早めに主治医に相談するようにしましょう。

妊娠中や産後に抑うつが起こりやすい理由

妊娠期は、心身ともに大きな変化が短期間で起こる時期です。

ホルモンバランスの変化、身体的な負担、環境の変化など、心身にさまざまなストレスがかかります。

気分が落ち込みやすい条件が重なりやすく、将来への不安も感じやすい時期であり、妊娠中や産後に抑うつ症状が生じるのは決して珍しくありません。

「自分はダメだ」「こんなことではよい親になれない」「おめでたいことなのにつらい」など、自分を責めてしまわないようにすることが大切です。

また、気持ちが落ち込みやすくなる、イライラしやすくなる、涙もろくなるといった状態には、身体の内側の変化が関わっている可能性があります。

「やる気を出す」「気合を入れる」といった、自分の意思でコントロールできる部分ではない場合も少なくありませんので、つらいと感じたら、その気持ちを我慢せずに周りの人に伝えて良いということを忘れないようにしましょう。

妊娠中や産後に不足しやすいビタミンと「ホモシステイン」の関係

立ちながら悩んでいる妊娠中の女性

妊娠期は必要な栄養量が増える一方、つわりによって食事が十分に摂れないことも重なるため、栄養が不足しやすくなります。

また、ビタミンなどの栄養素の中には、女性の抑うつ感との関連が示唆されているものもありますので、気分の変化を抑えるためにも、妊娠中や産後の栄養不足には注意が必要です。

ここでは、妊娠中や産後に不足しやすいビタミンとして、ビタミンB12と葉酸を紹介しながら、それらの不足の指標となるホモシステインと、抑うつ症状との関連性について解説します。

妊娠期に意識したい「ビタミンB12」と「葉酸」

妊娠期に意識したい栄養素として知られているのが、ビタミンB12と葉酸です。

ビタミンB12と葉酸は、赤血球を作るために重要な役割を担っているビタミンとしても知られています。

体の中でDNAが合成される際には、ビタミンB12と葉酸が協力してはたらいており、これらビタミンの不足によって、倦怠感やたちくらみ、頭痛やめまいといった症状が出現する可能性もありますので、注意が必要です。

ビタミンB12と葉酸の不足を映す指標「ホモシステイン」

ホモシステインは、体内での代謝過程で生成される悪玉アミノ酸であり、通常は速やかにメチオニンやシステインへと代謝されるのですが、その代謝にはビタミンB群が必要になります。

つまり、ビタミンB12や葉酸などのビタミンB群が不足することで、悪玉アミノ酸であるホモシステインが蓄積しやすくなってしまうということです。

実際に、ビタミンB12や葉酸が不足するとホモシステインの代謝が滞り、結果的に血中のホモシステイン量が増加してしまうことが知られています。

血中ホモシステイン量と女性の「抑うつ感」との関連を示唆する研究

血中ホモシステイン濃度と疲労の自覚症状との関係を解析した研究が存在します。

この研究では、血中ホモシステイン濃度が高いグループにおいて、男女ともにビタミンB12と葉酸の血中濃度が低いことが示されました。

そして、この研究では、女性の血中ホモシステイン濃度が高いグループにおいて、意欲のスコアが低いこと、また不安・抑うつや注意・認知機能に関するスコアがよくない数値を示していたことが確認されています。

つまり、血中ホモシステイン濃度が高い(ビタミンB12や葉酸が低い)女性では、意欲の低下などの抑うつ症状が出現しやすくなっていたということです。

その背景としては、血中ホモシステイン濃度の増加にともなう性ホルモンバランスの乱れや、神経伝達物質の合成低下などが関連し、抑うつといった自覚症状として表面化したのではないかと考察されています。

ただし、この研究は横断研究であり、また妊婦を対象としたものではありません。

しかしながら、血中ホモシステイン濃度が増加しないように、ビタミンB12や葉酸といったビタミンB群を十分に摂取することは重要であり、特に妊娠期はもともとこれらの必要量が増える時期ですので、意識しておく意味は十分にあるといえるでしょう。

妊娠中や産後の抑うつの原因はさまざま!ひとりで抱え込まずに相談を!

「抑うつ」は状態を表す言葉であり、「うつ病」という診断名とは異なります。

その区別を自分でつけることは難しく、特に妊娠中や産後は、身体の変化による症状と重なるためさらに判断が難しくなります。

だからこそ、妊娠中や産後に気分の落ち込みが続いているときは、自己判断せずに早めに専門家に伝えることが大切です。

また、妊娠期はビタミンB12や葉酸が不足しやすい時期でもあります。

これらの不足を反映する血中ホモシステイン濃度と、女性の意欲低下や抑うつ感との関連を示唆する研究も報告されていますので、体調の土台を整えるためにも、しっかりと栄養補給を意識することが大切です。

妊娠中や産後の食事や栄養について気になることがあれば、健診の際に医師や助産師、管理栄養士に相談してみてください。

妊娠中や産後の抑うつは、本人の性格や努力の問題ではありません。

産科の医師や助産師、お住まいの市区町村の保健センターなど、相談できる場所はいくつもあります。

ひとりで抱え込まず、まずは気軽に相談してみましょう。

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