【ホモシステインとは?】妊娠中や産後の意欲低下の原因は?ビタミンと意欲や疲労の関係を解説します!

妊娠中の女性

妊娠中や産後の意欲低下は、ホルモンバランスの変動や、つわりなどに伴う体調不良、生活環境の変化などが重なって起こるものです。

妊娠中や産後に「何もする気が起きない」「以前は楽しめたことが楽しめない」と感じることは決して珍しいことではありませんので、自分を責めてしまわないよう、その状態を客観的に理解することが大切です。

また、妊娠・産後期は必要な栄養量が増えるため、ビタミンB12や葉酸といった栄養素が不足しやすい時期でもあります。

これらの栄養素の不足状態を反映する「ホモシステイン」という物質と、意欲や疲労との関係についての研究も報告されているように、妊娠中や産後の意欲低下にはビタミンB12や葉酸が関係している可能性もあります。

そこでこの記事では、妊娠中や産後の意欲低下の原因を整理したうえで、栄養素と意欲の関係、そしてそれを示唆するホモシステインについて詳しく解説していきます。

※意欲が低下した状態が長く続く場合には、我慢せず早めに専門家に相談することが大切です。

妊娠中や産後に意欲が低下するのはなぜ?

上を向いて頭をかかえている女性

妊娠中や産後の意欲低下には、体の変化と心の変化の両方が関わっていると考えられます。

加えて、生活習慣や環境の変化によって、心身に大きなストレスがかかっている可能性もあります。

つまり、妊娠中や産後の意欲の低下は、「気持ちの問題」や「甘え」といったものではありません。

妊娠中や産後に意欲が低下しやすくなるメカニズムを分かりやすく紹介します。

ホルモンバランスの急激な変化

妊娠によって、女性ホルモンの分泌量は短期間で大きく変化します。

ホルモンバランスの変化は、妊娠のためにも欠かせないものですが、同時に気分や自律神経のはたらきにも影響を与えます。

気持ちが落ち込みやすくなる、イライラしやすくなる、涙もろくなるといった変化が起こるのは、ホルモンバランスが影響している可能性も考えられます。

そのため、「やる気を出す」「気合を入れる」といった、自分の意思でコントロールできる部分ではないということを理解しておくことが大切です。

つわりや体調変化による疲れ

妊娠初期のつわりや、後期のお腹の重さ、頻尿による睡眠の中断など、妊娠期には心身にさまざまな負担が続きます。

つわりで思うように食べられない、気持ちよく眠れないという状態が続くことで、日中の意欲が低下してしまうのは自然な反応です。

やる気が出ないという感覚や、意欲の低下というのは、疲労のあらわれ方のひとつだとも考えられます。

妊娠による疲れや疲労が、こころ(精神)のエネルギー低下につながっていく可能性もありますので、なるべく疲れにくい生活を意識することも大切です。

生活や環境の変化による心の負担

妊娠期には、仕事の調整、出産や育児への不安、経済的な心配、家族との関係の変化など、考えるべきことが一気に増えます。

妊娠による身体的な負担(身体のつらさ)がある中で、環境の変化にも対応しなければならないため、心と身体には負荷がかかりやすくなります。

妊娠を「おめでたいこと」と考えすぎてしまうことで、つらさを口に出しにくくなってしまうという方もいます。

喜びと不安が同時に存在することは、少しも矛盾した考えではありませんので、環境の変化に不安や疲れを感じた場合には、早めに周囲や専門家に相談することが大切です。

【重要】意欲の低下が続くときは早めに相談を

妊娠中や産後の気分の変化は自然なものですが、それが長く続く場合には注意が必要です。

妊娠中や産後に発症する意欲の低下は決して珍しいものではありませんので、「もっとしっかりしなくてはいけない」など、自分を責めないようにしましょう。

特に、気分の落ち込みが続いている、これまで興味を持てていたことや楽しめていたことが楽しめなくなっている、という状態が続いている場合は、早めに専門家にご相談ください。

つらくて自分から行動できないときは、信頼できる誰かに打ち明けて、産科や保健センターに連れて行ってもらうとよいでしょう。

仕事や家事などの負担を減らす、なるべく休む、無理をしない、信頼できる人に相談する、といったことを心がけながら、早めに専門家につながることが大切です。

妊娠中や産後に不足しやすい「ビタミンB12」と「葉酸」

ビタミンB₁₂のイメージ

ここまでご紹介したように、妊娠中や産後の意欲低下の直接的な原因が栄養不足であるとは限りません。

しかし、妊娠期は胎児の発育のために必要な栄養量が増えるうえ、つわりで食事が十分に摂れないことも重なるため、栄養が不足しやすい時期であることは確かです。

なかでも、妊娠期に意識したい栄養素として知られているのが、ビタミンB12と葉酸です。

ビタミンB12は、「赤いビタミン」「抗貧血ビタミン」「神経のビタミン」とも呼ばれるビタミンです。

不足すると貧血になりやすくなり、その主な症状としては、疲れやすい、動悸や息切れ、頭痛などが挙げられるほか、顔色が良くない、食欲不振といった症状につながる可能性もあります。

そしてもうひとつ、重要なビタミンが「葉酸」です。

葉酸もビタミンB12と同様に、赤血球を作るために重要な役割を担っているビタミンです。

体の中でDNAが合成される際には、ビタミンB12と葉酸が共同してはたらきます。

ビタミンB12や葉酸の不足が著しいと、「巨赤芽球性貧血」と呼ばれる貧血が起きることがあるほど、私たちの身体には欠かせない大切な栄養素なのです。

さらに葉酸は、妊娠期において特に重要とされる栄養素のひとつです。

「日本人の食事摂取基準(2025年版)」には、妊娠を計画している女性、妊娠の可能性がある女性、および妊娠初期の妊婦は、胎児の神経管閉鎖障害のリスク低減のために、通常の食品以外の食品に含まれる葉酸を1日400µg摂取することが望まれるとされています。

ビタミンB12・葉酸の不足を映す「ホモシステイン」とは

近年、ビタミンB12と葉酸に関連して注目されているのが、「ホモシステイン」という物質です。

ビタミンB12や葉酸が不足すると、体内にホモシステインが蓄積しやすくなるため、このホモシステインの量が多いと、ビタミンB12や葉酸の欠乏を疑うことができます。

実際に、ホモシステインの量と女性の意欲や抑うつ感との関係を示唆する研究も報告されており、意欲低下というテーマを考えるうえで知っておきたい内容です。

ここでは、ビタミンB12と葉酸のホモシステインとの関係を分かりやすく解説していきます。

ホモシステインとは何か

ホモシステインは、体内での代謝過程で生成されてしまうアミノ酸であり、ビタミンB12や葉酸の不足状態を反映する指標にもなることから、「悪玉アミノ酸」と呼ばれることもあります。

具体的には、食事から摂取する必須アミノ酸であるメチオニンが、体内で代謝される過程で一時的に生成される物質がホモシステインです。

そして、ホモシステインは生成されたあと、通常は速やかに再びメチオニン、あるいはシステインへと代謝されますので、ホモシステインがどんどん蓄積されてしまうということはありません。

ホモシステインの代謝に必要となるのがビタミンB群であり、ホモシステインからメチオニンへの代謝にはビタミンB12と葉酸が、ホモシステインからシステインへの代謝にはビタミンB6が必要とされています。

そのため、ビタミンB12や葉酸が不足することで、ホモシステインの代謝が滞り、結果的に血中のホモシステイン量が増加してしまうことになります。

つまり、血中ホモシステイン濃度は、ビタミンB12や葉酸が足りているかどうかを評価するための大切な指標となるのです。

ホモシステインが増えると何が起こる?

血中ホモシステイン量の増加は、心血管疾患や認知症、骨折などのリスクとなることが知られており、「高ホモシステイン血症」と呼ばれる状態になる場合があります。

ホモシステインの過剰な蓄積によって、活性酸素を発生させて酸化ストレスを高め、それによって血管を傷つけてしまうことで、さまざまな疾患のリスク因子となると考えられます。

それだけではなく、妊娠中や産後の健康問題としては、「葉酸の摂取不足による胎児の神経管閉鎖障害の発生リスク」という課題も知られています。

女性の「意欲の低下」とホモシステインの関連

疲労や疲れの原因のひとつが「酸化ストレス」であることが知られており、血中ホモシステインの増加が酸化ストレスを高めるということは、ホモシステインと疲労が関係している可能性があります。

実際に、血中ホモシステイン濃度と疲労の自覚症状との関係を解析した研究が報告されています。

この研究の結果、血中ホモシステイン濃度が高いグループでは、男女ともにビタミンB12と葉酸の血中濃度が低いことが示されました。

そして、女性では、血中ホモシステイン濃度が高いグループにおいて、意欲のスコアが低いこと、また不安・抑うつや注意・認知機能に関するスコアがよくない数値を示していたことが確認されています。

血中ホモシステイン濃度の増加にともなって、性ホルモンバランスの乱れや神経伝達物質の合成低下などが関連し、結果的に意欲の低下や不安・抑うつといった自覚症状として表面化したのではないかと考察されています。

ビタミンB12と葉酸はホモシステイン濃度と関連、それが意欲の低下につながる可能性

ここまでの内容を、妊娠期に当てはめて整理してみましょう。

まず、妊娠期はビタミンB12や葉酸の必要量が増える時期です。

胎児の発育のために、さまざまな栄養素の必要量が増えるうえ、つわりによって食事が十分に摂れないことも重なりやすく、ビタミンB12や葉酸をはじめとする栄養素が不足しやすい状況が生まれます。

そして、ビタミンB12や葉酸が不足すると、ホモシステインの代謝が滞り、血中のホモシステイン濃度が高まることにつながります。

血中ホモシステイン濃度が高い女性では、意欲のスコアが低く、不安・抑うつや注意・認知機能に関するスコアもよくない数値を示していたことが報告されています。

つまり、妊娠中や産後には、ホルモンバランスの変化や体調の変化、環境の変化だけではなく、ビタミンB12や葉酸などの栄養素が欠乏しやすくなることで、意欲の低下が起こってしまう可能性があるということです。

だからこそ、日頃からビタミンB12や葉酸を十分に摂取して、ホモシステインが蓄積しない状態を維持していくことが大切です。

とはいえ、意欲低下が続いている場合には、栄養だけで対処しようとするのではなく、我慢せずに専門家に伝えることが何より大切です。

繰り返しますが、妊娠中や産後の意欲低下は、ホルモンの変化や体調の変化、環境の変化が重なって起こるもので、本人の性格や努力の問題ではありません。

気分の落ち込みや意欲の低下が続いているときは、早めに周囲や専門家に相談するようにしましょう。

TOP