胃痛とは、みぞおち周辺に起こる症状です。生活習慣からくる胃酸の過剰分泌で胃粘膜がただれて起きる痛みと、粘膜が欠損して潰瘍を起こしているときの痛みがあります。これらの胃痛、いわゆる腹痛は痛みの場所が異なるとさまざまな胃腸などの疾患が疑われることがあります。
このページでは、胃痛の原因や関連する疾患、そして日常生活でできる予防法や対処法などを紹介します。
監修
大橋 博樹 先生 (おおはしひろき) (医療法人社団家族の森 多摩ファミリークリニック 院長)
ストレスを受け続けると胃や十二指腸の働きをコントロールしている自律神経が乱れて、胃酸が過剰に分泌され、多すぎる胃酸が胃の粘膜を傷つけ胃痛を引き起こします。
暴飲暴食、にんにく、唐辛子などの刺激の強い食べ物や濃度の高いアルコールを過剰にとることで、胃痛が起こることがあります。また習慣性のあるアルコールやタバコ、香辛料、果汁、炭酸飲料も胃酸の分泌を促進し、胃の粘膜に炎症を起こし、胃痛の原因になります。
ヘリコバクター・ピロリ菌は胃の強い酸の中で生息する細菌です。このピロリ菌は胃酸から身を守るために常にアンモニアを出し続けています。ピロリ菌が粘膜を傷つけるメカニズムには多くの説があり、複数のメカニズムが絡んでいます。例えば、ピロリ菌が出すアンモニアや毒素が胃の粘膜を繰り返し傷つけ、胃炎などを引き起こしたり悪化させたりすると考えられています。また、粘膜が直接胃から分泌される胃酸と消化酵素にさらされ、胃潰瘍に進行していくと考えられています。
※以下の疾患は、医師の診断が必要です。
下記疾患が心配な場合には、早めに医師の診察を受けましょう。
食べすぎ飲みすぎやストレス、ウイルスによる感染、食中毒、アレルギーなどが原因で胃の粘膜がただれ、みぞおちがキリキリと痛むような胃痛をおこすことがあります。吐き気や下痢をともなうこともあり、ひどい場合は嘔吐や吐血、下血を起こすこともあります。軽い症状であれば安静にしていれば2~3日で治まりますが、長引く場合や症状が強い場合は医療機関を受診しましょう。
この疾患・症状に関連する情報はこちら。 胃炎
主にピロリ菌の感染が原因で、胃の粘膜が弱まり炎症が起こっている状態です。症状がないこともありますが、胃痛や吐き気などの症状が生じたり胃潰瘍に進行したりすることもあります。
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ピロリ菌や強いストレス、非ステロイド性消炎鎮痛剤などが胃粘膜に傷をつけ、さらに消化作用を持つ胃酸・消化酵素が胃粘膜や胃壁を溶かすことにより起こります。特徴的な症状は、みぞおち周辺のズキズキとした重苦しい痛みです。胃潰瘍は胃に入った食べ物が潰瘍を刺激して痛むので、食事中から食後の痛みが多くなります。人によってはあまり痛みを感じないこともある他、胸やけや吐き気をともなうこともあります。
胃潰瘍と同様にピロリ菌やストレス、非ステロイド性消炎鎮痛剤などが十二指腸の粘膜に傷をつけ、さらに消化作用を持つ胃酸・消化酵素が粘膜や壁を溶かすことにより起こります。十二指腸潰瘍では、空腹時に痛みが生じ食事をすると痛みが和らぐことが多いです。
内視鏡などの検査で異常が見つからないにもかかわらず、胃痛や胃もたれ、すぐにお腹が一杯になるなどの症状が続く状態が機能性ディスペプシアです。不規則な食事や睡眠不足などの生活習慣の乱れ、過労、ストレスなど様々な要因が関連して、胃が食べ物を消化する際の運動に乱れが生じたり、胃に知覚過敏が生じたりすることで症状が起こると考えられています。
※以上の疾患は、医師の診断が必要です。
上記疾患が心配な場合には、早めに医師の診察を受けましょう。
自律神経のバランスを整える呼吸法でリラックスして、ストレスを遠ざけましょう。おへその下に意識を集中させて、お腹に空気を入れる感覚でゆっくりと鼻から息を吸います。空気がお腹に入りきったら数秒息を止め、おへその下に力を入れたまま鼻から息を吐きます。これを5〜10分程度繰り返しましょう。
不規則な時間に食事をとることは胃に負担がかかり胃痛の原因になるため、規則正しい時間に食事をとるようにしましょう。食事の際は脂っこいものや辛いもの、甘いものをとりすぎないように注意し、ゆっくり食べることや腹八分目にすることを心がけましょう。また胃酸を過剰に分泌し、胃の粘膜を痛める強いアルコールやタバコはなるべく控えましょう。
食べ物を消化するためには消化器への多くの血液が必要です。食後すぐに仕事をしたり、外出したり、お風呂に入るなど体を動かしてしまうと、消化に必要な血液が手足に流れてしまいます。食後30分はゆっくりと休む習慣をつけましょう。
病院でピロリ菌検査を受けると、ピロリ菌感染の有無がわかります。いくつか検査方法がありますが、吐いた息で検査するなど、比較的どれも簡単なものです。そして、このピロリ菌は病院で処方された薬を服用するだけで痛みもなく除菌することができます。除菌をすることにより、慢性胃炎や胃潰瘍、十二指腸潰瘍、さらには胃がんを予防することや、潰瘍の再発を抑える効果も認められています。
胃痛があるときに、いつもと同じように食事をしていては、弱った胃に負担を与えることになります。急性胃炎を起こしたら食事の量を抑えるか、場合によっては1〜2食程度絶食し、水分補給も少量のお湯に留めましょう。食事をとる場合はおかゆ、うどん、野菜スープ、白身魚などの消化の良いもので徐々に胃の調子を整えていくようにしましょう。
胃痛に対する市販薬には、胃液の分泌を促す・胃の運動を活発にするなど胃の働きが弱まっている場合に適しているものと、胃酸の分泌量を減らす・中和する、胃の粘膜を保護するなど胃の働きが過剰な場合に適しているものがあります。薬選びを誤ると効果が出にくかったり逆効果になったりするため、自身の症状に合った薬を使用することが重要です。薬局やドラッグストアの薬剤師や登録販売者に相談するのもよいでしょう。また、胃痛を緩和する漢方も販売されています。
体力中等度以下で、腹部は力がなくて、胃痛または腹痛があって、ときに胸やけや、げっぷ、胃もたれ、食欲不振、はきけ、嘔吐などを伴うものの次の諸症
胃痛が長期間続くときや、激しい痛みがあるときは、重い疾患が隠れている場合がありますので、かかりつけ医や内科、消化器科、胃腸科の診察を受けましょう。ストレスによる胃痛の場合は、心療内科も相談の対象になります。
人前で突然お腹が鳴ってしまい、恥ずかしい思いをした…なんてことは誰でも一度や二度はあるものです。お腹が鳴る原因は、胃や腸の中でガスと胃液などの液体が動くこと。とくに早食いをすると、食べ物と一緒に空気をたくさんとりこんでいるため鳴りやすくなるといわれています。よく噛んでゆっくり食べると空腹でも鳴りにくく、消化もしやすいので一石二鳥です。
胃痛、胃もたれ、胸やけは、ストレスや食生活が原因であることがほとんどです。
いつもの習慣が、実は原因になっていることも…
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