監修
馬場 敦志 先生 (宮の沢スマイルレディースクリニック 院長)
避妊はなぜ重要なのでしょうか。ここでは現在の日本の避妊事情を交え、避妊が必要な理由を解説します。
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厚生労働省が2021年に実施した「第16回出生動向基本調査」によると、夫婦の約6割が避妊を実行しているとされており、 近代的避妊方法※が大半となっています 。
※近代的避妊方法:コンドーム、ピル(経口避妊薬)、IUD・リング、不妊手術、殺精子剤のいずれかを指し、比較的避妊率の高い方法
また厚生労働省の「衛生行政報告例」によると、令和6年度の人工妊娠中絶件数は 127,992 件で、前年度に比べ 1,258 件(1.0%)増加しています。人工妊娠中絶実施率(女子人口千対)は、年齢階級別にみると「20~24歳」 が最も高く、20歳未満の場合は19歳が最も高くなっています。
妊娠は女性の心身に大きな変化をもたらし、もし中絶となれば身体面・精神面の双方で大きな負担をともなううえ、経済的な負担も増加します。そのため妊娠を望まない場合には、確実な避妊を行うことが重要です。
ここでは日本で使用されている主な避妊方法を紹介します。
コンドームは日本でよく使用されている方法です。薄い袋状の避妊具で、陰茎(ペニス)にかぶせて使用します。
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また、コンドームは避妊だけでなく、性感染症の予防もできるのが特徴です。適切なタイミングで、正しく着脱した場合の妊娠率は2%、着脱ミスや破損があるなど一般的な使用をした場合の妊娠率は18%となっています。
コンドームといえば男性用のものが主流ですが、実は女性用のものもあります。女性用コンドームは、内側と外側にリングが付いた袋状の避妊具で、腟内に内側のリングを挿入して使用します。これによって、子宮内に精子が進入することを物理的に阻止できます。
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経口避妊薬(低用量ピル)を用いた避妊方法は、エストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲスチン(黄体ホルモンのような働きをする物質)が含まれているホルモン剤を服用し、排卵を抑制するか、受精卵の着床を防いで避妊する方法です。
一般的に、1日1錠、毎日同じ時間帯に服用します。
主な副作用として吐き気、頭痛、不正出血が現れることがあります。また服用によって静脈血栓塞栓症(じょうみゃくけっせんそくせんしょう)のリスクが上昇する可能性も報告されています。
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子宮内避妊器具(IUD)・子宮内避妊システム(IUS)は、プラスチック製のT字型の小さな器具で、産婦人科で子宮内に挿入して使用します。
子宮内避妊器具(IUD)は銅を放出し、受精や受精卵の着床を防ぎます。子宮内避妊システム(IUS)はレボノルゲストレルというホルモンを放出し、受精卵の着床を防ぎます。銅を付加した子宮内避妊器具(IUD)は、現在日本での流通が終了しています。
有効期間は種類によって異なりますが、一般的に5年が多いとされています。子宮内避妊器具(IUD)を正しく使用した場合の妊娠率は0.6%、一般的な使用をした場合の妊娠率は0.8%です。子宮内避妊システム(IUS)を使用した場合の妊娠率は理想的・一般的な使用ともに0.2%となっています。子宮内避妊器具(IUD)を使用している場合、月経量が増える可能性があります。
前述した避妊方法の特徴を表にまとめると、下記になります。それぞれに異なるメリットがあるため、自分の体の状態やライフスタイルをよく考慮して、自分に合った方法を選択しましょう。
| 避妊方法 | コンドーム | 経口避妊薬 (低用量ピル) |
IUD・IUS |
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| 方法の概要 |
・物理的に精子が子宮内に進入するのを防ぐ避妊具 ・男性用は陰茎に装着し、女性用は腟内にリング付きの袋を挿入して使用 |
・エストロゲン・プロゲスチンを含むホルモン剤を女性側が服用 ・排卵を抑制し、子宮内膜を薄くして着床しにくくすることで妊娠を防ぐ |
・子宮内にT字型の器具を挿入 ・IUDは銅イオンが受精を妨げ、IUSはレボノルゲストレルと呼ばれるホルモンを放出して受精・着床を妨げる |
| 費用 | ・男性用は1個あたり約50円程度(種類により差) | ・1か月あたり約2,000~3,000円(医療機関による) |
・IUDは約3~8万円(種類・医療機関による) ・IUSは約5~10万円(種類・医療機関による) |
| 有効期間 | 使用時のみ効果あり(使い捨て) | 服用期間中継続して避妊効果がある | 一般的には約5年(種類により異なる) |
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使用に |
・性感染症も予防できる ・入手が簡単 ・副作用がほぼない |
・高い避妊効果 ・女性主体で避妊できる ・生理痛の軽減、経血量の減少 ・生理周期の安定 |
・継続的に高い避妊効果 ・女性主体で避妊できる ・一度挿入すれば長期間効果が続く ・IUSは経血量減少や生理痛軽減に効果も |
| 使用時の注意 |
・装着ミスや破損・脱落の可能性がある ・男性用を用いる場合、避妊が男性任せになってしまう |
・のみ忘れで避妊効果が低下 ・吐き気、頭痛、不正出血などの副作用 ・血栓症リスクがわずかに上昇 |
・挿入時の痛み ・IUDは月経量が増える可能性 ・まれに器具の脱出や穿孔(せんこう)のリスク |
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入手・利用方法 |
・コンビニやドラッグストアなどで購入 | ・産婦人科の診療で処方 | ・産婦人科での処置が必要 |
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避妊 |
・理想的な使用:2% ・一般的な使用:18% |
・理想的な使用:0.3% ・一般的な使用:9% |
・IUS:理想的・一般的とも 0.2% ・IUD:理想的 0.6%、一般的 0.8% |
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世間的には避妊方法としていわれているものの、実際には効果が不十分なものもあります。ここでは効果がない避妊方法を紹介します。間違った知識で避妊を行うと、意図しない妊娠につながるため注意が必要です。
「安全日」とは、一般的には「妊娠しにくいとされる時期」を指す言葉で、一般的に月経周期や基礎体温から特定します。妊娠は卵子と精子が出会って起こるため、排卵日に近く妊娠の可能性がある時期を「危険日」、それ以外を「安全日」と呼ぶことが多いです。
ただし医学的に「確実に妊娠しない100%安全な日」は存在せず、安全日の性交は確実な避妊方法とはいえません。
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腟外射精とは、射精の直前に陰茎(ペニス)を腟から抜き、腟の外に精液を出す方法のことです。
しかし、射精する前にすでに精液を含む粘液が分泌されていることもあるため、避妊法と考えるのは適切ではありません。
コンドームは挿入する前に付けることが大切です。射精する前に精液を含む粘液が分泌されている可能性があるので、射精前だけ装着しても避妊の効果は不十分です。
射精後に、腟内に出された精液を洗い流す方法です。しかし精子は射精後すぐに子宮奥へ到達するため、腟内を洗っても間に合わず、さらに精子を完全に洗い流すことはできないため、避妊効果は得られません。
生理中であっても妊娠の可能性は否定できません。精子は体内で数日間生存することがある他、出血が生理ではない場合もあります。
特に若年層では月経周期が安定していないことが多く、排卵の時期が予測しにくいため注意が必要です。
コンドームは正しい使い方をすることが重要です。2枚を重ねて付けると破れやすくなるため、避けましょう。
緊急避妊薬とは、コンドームの破損・ピルののみ忘れなど避妊の失敗が起こったときや同意のない性交があったときなどに、妊娠を防止するために使用する薬です。薬に含まれる成分が排卵や受精、受精卵の着床を妨げることで妊娠を防ぎます。
日本で承認されている薬は レボノルゲストレルです。レボノルゲストレルはIUS(子宮内避妊システム)にも採用されているホルモンであり、妊娠阻止率は約80%とされています。性交後72時間以内に服用しなければならないため、できる限り早期に服用することが重要です。
▼服薬タイミングによる妊娠阻止率の変化
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⽇本産科婦⼈科学会『緊急避妊法の適正使⽤に関する指針(令和7年改訂版)』より作図
※本データはレボノルゲストレル1.5㎎(レソエル72 1錠と同量)を服用した成績です(海外臨床試験)。
緊急避妊薬は日常的な避妊ではなく、あくまで思わぬ避妊の失敗が起こった際の緊急時の選択肢ということをよく理解しておきましょう。
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これまで日本では、緊急避妊薬を入手するためには医師の診察を受け、薬を処方してもらう(処方箋を受け取る)必要がありました。しかし、「OTC化(処方箋なしで薬局で購入できる仕組み)」が、2025年8月に厚生労働省の専門部会で了承され、薬局で購入できるようになりました。
ただし、購入の際は適正な利用かを確認するためのチェックシートに記入する必要があります。緊急避妊薬に関する研修を修了した薬剤師がチェックシートを確認して服用可能と判断した場合、薬剤師の面前で薬を服用します。本人以外は服用できないため、注意しましょう。
緊急避妊薬のOTC化により、医療機関を受診せずとも、緊急避妊薬に関する研修を修了した薬剤師がいる薬局・ドラッグストアで購入・服用できるようになりました。避妊に失敗したときの緊急時の対応方法として、心に留めておきましょう。
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プレコンセプションケアとは、性別を問わず、適切な時期に、性や健康に関する正しい知識を持ち、妊娠・出産を含めたライフデザイン(将来設計)や将来の健康を考えて健康管理を行う取り組みです。プレ(pre)は「~の前の」、コンセプション(conception)は「受精・懐妊」を意味しており、プレコンセプションケアは「妊娠前の健康管理」という意味の言葉です。
WHOはプレコンセプションケアについて、2012年に「妊娠前の女性とカップルに医学的・行動学的・社会的な保健介入を行うこと」と定義しています。
日本では、こども家庭庁が、若い世代に性や健康・妊娠に関する正しい知識を得る方法や、相談する場所・手段が十分浸透していない現状をふまえて、「プレコンセプションケア推進5か年計画」を2025年5月に公表しました。
この計画では、「性や健康に関する正しい知識の普及と情報提供」「プレコンセプションケアに関する相談支援の充実(一般相談)」「プレコンセプションケアに関する医療機関等における相談支援の充実 (専門相談)」の3つの項目が設けられています。
こうした取り組みが重視される背景には、日々の生活習慣や健康状態が、将来の妊娠・出産だけでなく子どもの健康にも影響し得るという考え方があります。
例えば、適正体重(BMI値18.5~24.9)よりも痩せている(BMI値18.5未満)と、低出生体重児などの原因になります。一方で、肥満は妊娠糖尿病や妊娠高血圧症候群などにつながるため、自分が希望する選択をするためにも、性や健康に関する正しい知識を持つことが大切です。
また将来の妊娠・出産を希望しない場合も、自分とパートナーを守るために性や妊娠・出産について科学的に正しい知識を持っておく必要があります。
<約2分でポイントを理解できるよう、内容をコンパクトにまとめた解説動画はこちら>
【ほぼ 2 分でわかる】プレコンセプションケアとは?今からできるケアを知って長期的な健康を維持しよう

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望まない妊娠を防ぐためには、避妊の知識を身に付け、信頼できる方法を選ぶことが大切です。コンドームやピル、子宮内避妊具の使用など、自分に合った方法を正しく取り入れましょう。安全日や生理中の性交、腟外射精などは避妊方法としては適切ではなく、望まない妊娠につながる可能性があるため、避けてください。また、「避妊に失敗したかもしれない」と感じた場合には、緊急避妊薬という選択肢もあります。緊急避妊薬は日常的な避妊方法としては適していませんが、緊急時の最終手段として必要な場面で使用することで、妊娠のリスクを減らすことができます。お互いに安心できるように、避妊方法について、日頃からパートナーと話し合ってみてください。
【プチメモ】海外で使用されている避妊法
フランスやドイツなどでは、経口避妊薬(低用量ピル)での避妊が主流となっています。また世界で使用される避妊方法には、日本では普及していないものもあります。避妊インプラント、避妊パッチ、腟リングなどは海外で使用されていますが、厚生労働省の認可が下りていないため、日本では自由診療となっています。
・避妊用インプラント:マッチ棒くらいの大きさの棒にプロゲスチンが入ったもので、医療機関で女性の上腕に埋め込んで使用。インプラントから徐々にプロゲスチンが放出され、血流に入ることで避妊効果を発揮する。
・避妊用皮膚パッチ:エストロゲンとプロゲスチンが含まれるパッチを皮膚に貼って使用するもの。
・腟リング:エストロゲンとプロゲスチンが含まれる柔らかい器具で、腟内に入れて使用。
自由診療の避妊法については、必ず専門医と相談のうえで使用するようにしてください。また、日本で認可されていない製品の個人輸入は、健康被害や副作用などのリスクがあるため避けるようにしましょう。
参考文献
・厚生労働省 女性の健康推進室 ヘルスケアラボ「避妊」