監修
馬場 敦志 先生 (宮の沢スマイルレディースクリニック 院長)

「安全日」とは、一般的には「妊娠しにくいとされる日/時期」を指しますが、「全く妊娠しない日」ではありません。医学的に「絶対的な安全日」は存在しないため、誤解を招きやすい言葉となっています。
妊娠は、卵子と精子が出会って受精し、着床することで成立します。そのため、避妊の観点で排卵日に近い妊娠の可能性がある時期を「危険日」、それ以外を「安全日」と呼ぶことが多いです。
月経周期をもとに安全日を推定するリズム法(オギノ式)は、理想的な方法※で予測した場合でも妊娠率は0.4~5%あり、一般的な方法※で予測した場合は24%にまで上がります。排卵の時期や生理周期は体調などの影響で変わりやすく、正確に予測するのは困難です。
※理想的な方法:指示通り、常に正確かつ一貫してその方法を使用した場合の避妊効果。理論上の最大値。
※一般的な方法:日常生活で実際に使用した場合の避妊効果。たまに忘れたり、使い方が不適切だったりといった、現実的なミスを含んだ平均的な値。
「危険日」とは、「排卵日に近い妊娠しやすい日/時期」を指す言葉です。ただし、排卵日は予測からずれることも多く、体調などによって前後する場合があります。さらに、精子は性交後も女性の体内で通常2~3日、長い場合は5日程度生存するとされているため、排卵日当日だけでなく、その前後の一定期間は避妊が必要とされます。
一番妊娠しやすいとされている20代では、排卵時期の性交による妊娠率は1回につき約20%となっています。危険日とされる期間の中でも時期によって妊娠確率は異なり、特に排卵の1~2日前が最も妊娠率が高いとされています。
排卵日を予測することで、安全日や危険日を予測することができます。ここでは、排卵日を予測する代表的な方法を紹介します。
ただし、冒頭でご説明したように排卵周期には個人差があり、体調などによっても変動するため、「絶対な安全日」や「必ず妊娠する危険日」はありません。その点を理解したうえで、あくまで目安として予測することが大切です。
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過去の生理周期(約1年)から排卵日を計算することができます。一般的にリズム法として知られています。産婦人科医の荻野久作の研究によって、女性の排卵時期が生理予定日の12~16日前までの5日間であることが明らかになったため、オギノ式と呼ばれることもあります。
妊娠可能期間(危険日)の1日目は、最も短い生理周期で計算した生理の初日から18日を引き、最終日は、最も長い周期で計算した生理最終日から11日を引いて計算します。ただしこの方法は、月経周期が規則的な人のみに適しているため、周期のバラつきが多い場合は注意が必要です。
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生理周期は、大きく卵胞期・排卵期・黄体期・生理期の4つに分けられます。
卵胞期にはエストロゲン(卵胞ホルモン)が徐々に増え、卵巣が排卵の準備を進めます。その後、脳下垂体から分泌される黄体形成ホルモン(LH)によって卵巣が刺激され、排卵が起こります。
排卵後の卵胞は黄体に変化し、エストロゲンとプロゲステロン(黄体ホルモン)が分泌され、これらのホルモンの作用によって子宮内膜が厚くなり、受精卵が着床しやすい状態になります。
しかし、受精が起こらなかった場合は、厚くなった子宮内膜がはがれ落ち、腟から排出されます。これが月経(生理)です。生理が始まると、再び脳下垂体から卵胞刺激ホルモンが分泌され、同じサイクルが繰り返されます。
基礎体温とは、朝目が覚めてすぐ、まだ体を動かしていない安静な状態で測る体温のことです。基礎体温は卵巣から分泌されるプロゲステロンの影響によって変化します。
月経から排卵までの約2週間は「低温期」と呼ばれ、体温はおおよそ36.0~36.5℃の低い状態が続きますが、排卵が起こるとプロゲステロンの作用により体温が上昇し、36.5~37.0℃程度の「高温期」に移行します。
一般的に、低温期から高温期に入って最初の3日間は危険日と考えます。ただし、基礎体温は睡眠時間や体調、測定環境などの影響を受けやすく、誤差が生じやすいため注意が必要です。近年では、測定した基礎体温をスマートフォンで管理できるアプリや、排卵日や月経開始日の目安を表示してくれるツールもあるため、記録が苦手な人は活用するのも良いでしょう。
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1.毎朝同じ時間に測る
2.朝目覚めたら体を起こす前に、体温計(婦人体温計:普通の体温計よりも目盛が細かく、小数第2位まで測定可能)を舌の下に入れて測る
※舌の裏側の付け根(イラスト内の赤丸の箇所のどちらか)に体温計の先を当てる
3.測定が終わったら基礎体温表に記入する。前日の測定値と線でつなぎグラフにする
排卵日が近づくと、卵白のように透明で粘り気のあるおりものが増えます。生理後におりものが初めて現れてから量が最も多くなる4日目までは、妊娠しやすい時期と考えられます。
ただし、おりものの状態は体調や感染症の影響で変わることもあるため、注意が必要です。
産婦人科では、超音波を使って卵胞の大きさを確認し、妊娠しやすい時期を知ることができます。この検査は、一般的に不妊治療を目的として実施されます。
【プチメモ】排卵日予測検査薬
排卵は黄体形成ホルモン(LH)の分泌によって引き起こされます。排卵日予測検査薬は、尿中に含まれる黄体形成ホルモン(LH)の上昇を検出することで、排卵日を予測するものです。
排卵日予測検査薬は、2016年12月から薬局やドラッグストアで購入できるようになりました。使用の主な目的は、妊娠を望む人が、妊娠しやすい時期を事前に把握するためとなっています。検査結果が陰性であっても確実に避妊できるものではないため、避妊目的では使用することができません。
ドラッグストアで購入可能なアリナミン製薬の排卵日予測検査薬
何度もお伝えしている通り「安全日」という名前ではありますが、生理周期には個人差があり、ストレスや体調の変化によって排卵日がずれることも多いため、「絶対的な安全日」は存在しません。そのため妊娠を望まない場合は、安全日であっても効果の高い方法で避妊することが大切なのです。
近年では、性や健康に関する正しい知識を身につけ、将来の妊娠・出産も含めたライフプランや健康管理に役立てる「プレコンセプションケア」が注目されています。自分の体のリズムや状態を知るために、女性は日頃から基礎体温を記録しておくのもおすすめです。
<約2分でポイントを理解できるよう、内容をコンパクトにまとめた解説動画はこちら>
【ほぼ 2 分でわかる】プレコンセプションケアとは?

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ここでは主な避妊方法を紹介します。
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コンドームは日本で広く使われている避妊方法であり、コンビニやドラッグストアで入手することができます。避妊だけでなく、性感染症の予防もできるのが特徴です。男性用は薄い袋状の避妊具で、陰茎(ペニス)にかぶせて使用します。
理想的に使用した場合の妊娠率は約2%ですが、破損や着脱ミスの可能性を含む一般的な使用では約18%となります。
経口避妊薬(低用量ピル)を用いた避妊方法は、エストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲスチン(黄体ホルモンのような働きをする物質)が含まれているホルモン剤を服用し、排卵を抑制するか、受精卵の着床を防いで避妊する方法です。薬を処方してもらうには産婦人科の診療を受ける必要があります。
一般的に、1日1錠、毎日同じ時間帯に服用します。
副作用として、吐き気、頭痛、不正出血が現れることがあります。また、服用によって静脈血栓塞栓症(じょうみゃくけっせんそくせんしょう)のリスクが上昇する可能性が指摘されているため、場合によっては血液検査を行うことがあります。
子宮内避妊器具(IUD)・子宮内避妊システム(IUS)はプラスチック製でT字型の小さな器具で、産婦人科で子宮内に挿入して使用します。
子宮内避妊器具(IUD)は銅を放出し、受精や受精卵の着床を防ぐものですが、日本での流通は現在終了しています。子宮内避妊システム(IUS)はレボノルゲストレルというホルモンを放出し、受精卵の着床を防ぎます。有効期間は種類によって異なりますが、一般的に5年が多くなっています。
子宮内避妊器具(IUD)の理想的な使用をした場合の妊娠率は0.6%、一般的な使用をした場合の妊娠率は0.8%です。子宮内避妊システム(IUS)を使用した場合の妊娠率は理想的・一般的な使用ともに0.2%となっています。
緊急避妊薬とは、コンドームの破損・ピルののみ忘れなど避妊の失敗が起こったときや同意のない性交があったときなどに、妊娠を防止するために使用する薬です。薬の成分(日本では、IUSにも採用されているレボノルゲストレル)が排卵や受精、受精卵の着床を妨げ、妊娠を防ぎます。
緊急避妊薬は、性交後72時間以内に服用する必要があります。服薬が遅れると妊娠阻止率が低下するため、できる限り早期に服用することが重要です。
▼服薬タイミングによる妊娠阻止率の変化
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⽇本産科婦⼈科学会『緊急避妊法の適正使⽤に関する指針(令和7年改訂版)』より作図
※本データはレボノルゲストレル1.5㎎(レソエル72 1錠と同量)を服用した成績です(海外臨床試験)。
これまで日本では、緊急避妊薬を入手するためには医師の診察を受けて、薬を処方してもらう(処方箋を受け取る)必要がありました。しかし、薬局で購入できる「OTC化(処方箋なしで薬局で購入できる仕組み)」が、2025年8月に厚生労働省の専門部会で了承され、薬局で購入できるようになりました。
購入の際は適正な利用かを確認するためのチェックシートを記入する必要があります。緊急避妊薬に関する研修を修了した薬剤師がチェックシートを確認して服用可能と判断した場合、薬剤師の面前で服用します。服用を希望する本人以外は購入できないため、注意してください。
OTC化により、緊急避妊薬は医療機関を受診せずとも、緊急避妊薬についての研修を修了した薬剤師がいる薬局・ドラッグストアで購入・服用できるようなりました。しかし、緊急避妊薬を日常的な避妊手段として使用することは推奨されていません。あくまで思わぬ避妊の失敗が起こった緊急時の選択肢として、心に留めておくと良いでしょう。
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「安全日」や「危険日」は、生理周期や基礎体温などからある程度予測することができます。しかし、生理周期には個人差があり、ストレスや体調の変化によって排卵日がずれることもあるため、妊娠を避けたいときに安全日だけに頼る方法は適切ではありません。
避妊のためには、コンドームや経口避妊薬(低用量ピル)、子宮内避妊器具(IUD)・子宮内避妊システム(IUS)など、より効果の高い方法を採用することが大切です。また、避妊に失敗した場合の最終手段として、緊急避妊薬という選択肢があることも、知っておくようにしましょう。
近年は、こども家庭庁によって「プレコンセプションケア推進5か年計画」が公表されるなど、性や健康に関する正しい知識を身に付け、将来の妊娠・出産を含めたライフプランや健康管理に役立てる「プレコンセプションケア」も注目されています。自分の体の状態と向き合い、より安心して過ごせる毎日につなげていきましょう。
参考文献
・厚生労働省 女性の健康推進室 ヘルスケアラボ「避妊」