ドライマウス
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ドライマウス

ドライマウスとは、口の中の唾液の量が減少するなどによって起こる口の中の乾燥感で、口腔乾燥症ともいいます。女性に多い症状です。唾液はとても大切な働きをしています。これが、何らかの原因で減少したり唾液分泌機能が低下すると、口の中が乾燥したり、口臭や舌のひび割れ・痛みなどのトラブルが起こることがあります。「喉の渇きがなかなかとまらない」「舌が痛く、ざらざらする」「口の中がネバネバする」「食べ物を飲み込みにくい」……もしかしたらそれはドライマウスかもしれません。ここでは、ドライマウスの原因、症状、治療、対処法、薬などをご紹介します。

※「ドライマウスセルフチェック」は、井上修二先生(共立女子大学名誉教授、医学博士)のご監修です。

岩渕 博史 先生

監修

岩渕 博史 先生 (国際医療福祉大学病院 歯科口腔外科 部長 教授)

ドライマウスってどういう状態?

ドライマウスの症状

ドライマウス(口腔乾燥症)とは、
さまざまな要因で口の中の唾液の量が減少したりすることによる、口の中の乾燥をいいます。
一時的な口の渇きは誰もが経験することですが、ドライマウスは口の中が乾燥した状態が続きます。

主な症状には、舌が痛い・ざらざらする、口の中が激しく渇く、口の中がネバネバする、乾いた物が食べにくくなる、食べ物の味が分からなくなる、舌が貼り付くようで話しづらいなどがあります。さらに、口臭の悪化、舌のひび割れなどが現れることがあり、虫歯の原因になるばかりか、唾液が持っている免疫力が発揮できなくなります。

日常から考えられるドライマウスの原因

精神的な緊張やストレスの多い日常生活

人前で緊張すると口の中が乾くように、ストレスも唾液量を減らす原因となります。これは、交感神経の刺激で唾液の分泌量が少なくなるためです。緊張やストレスが解消されると唾液の量も正常に戻りますが、緊張やストレスの多い生活が続くとドライマウスの症状が定着することがあります。

加齢による唾液腺の萎縮

加齢によって唾液腺が委縮をすると、唾液が出にくくなり、ドライマウスを引き起こすことがあります。ただし、一般的には加齢のみでドライマウスになることはほとんどありません。

口呼吸

風邪やアレルギー疾患で鼻が詰まり、口で呼吸をする「口呼吸」が続くと口の中が乾き、ドライマウスを起こしやすくなります。夜間に口が乾く人には多くみられる原因です。
口呼吸によるドライマウスは、唾液の分泌は正常ですが、唾液の蒸発が亢進してしまうことにより起こります。

薬の副作用

薬の副作用でドライマウスが起きることがあります。たとえば、花粉症の治療に使われる抗アレルギー薬は唾液をつくる働きを抑えます。その他、うつ、めまい、不安、不眠などの軽減に使用する精神科の薬、利尿、降圧などの目的で使う循環器の薬、咳をしずめたり気管支拡張などを行う呼吸器の薬など、ドライマウス(口腔乾燥症)の原因となる薬はさまざまです。
薬の添付文書に記載されている副作用で「口渇」とあるのが、これにあたります。

ドライマウスの原因と考えられる疾病

※以下の疾患は、医師の診断が必要です。
下記疾患が心配な場合には、早めに医師の診察を受けましょう。

糖尿病(特に血糖コントロールが不良の場合)

糖尿病は、血糖値が慢性的に高い状態(高血糖状態)になる生活習慣病です。高血糖状態が続くと、糖を含んだ尿が大量に排出されるため体内が脱水状態になり、口の中が渇きやすくなります。すると、唾液の分泌量の低下により口の中が汚れやすくなり、口臭がきつくなります。また、免疫力が低下するので歯周病にもなりやすいといわれています。
糖尿病によるドライマウスは、唾液腺機能が正常で、体内の水分量の減少により唾液分泌量が減少することによります。しかし、高血糖状態が長く続くと唾液腺の働きも障害されます。また、血糖値が良好にコントロールされている方では口の中が渇くことは少ないようです。

くも膜下出血、脳出血、脳梗塞などの脳血管障害

くも膜の内側の動脈が破裂して起きるくも膜下出血、脳内の血管が破れる脳出血、脳内の血管が詰まり脳細胞が壊死する脳梗塞。
これらの脳血管障害は生命に危険が及ぶ場合がありますが、生還したときでも運動麻痺などの後遺症が残ることが少なくありません。唾液の分泌をつかさどる中枢神経が障害を受けることによります。

シェーグレン症候群

体を守る免疫の異常によって起こる疾患で、唾液を分泌したり、涙を流したりする組織を自分の細胞が攻撃してしまう病気です。唾液腺の破壊により唾液が分泌できなくなり、口の中の乾燥症状が起こります。

発症の男女比は1:14と圧倒的に女性に多く、発症は40〜60代に集中し、50代にピークがあります。なお、ドライマウスの原因がシェーグレン症候群によるものか、それ以外の原因によるものかで治療薬が異なるので、ドライマウスの診断ではシェーグレン症候群か否かの検査を行います。

更年期障害

唾液は女性ホルモンのコントロールを受けて分泌されています。女性ホルモンのバランスが乱れると唾液の分泌が減少し、口の渇きを感じることがあります。
また、更年期障害の症状をやわらげるための薬の副作用で唾液が減少することもあります。

この疾患・症状に関連する情報はこちら。 更年期障害

日常でできるドライマウスの予防法

こまめに適度な水分補給を行い、口の中の潤いを保つ

日常的にこまめな水分補給を心がけ、規則正しい生活を送りましょう。冬など乾燥しやすい季節は、加湿器などを使用して、適度な湿度を保つことも効果的です。

お茶やコーヒーなどカフェインの摂りすぎを控える

カフェインには利尿作用があるため、濃いお茶やブラックコーヒーなどカフェインを過剰に摂取すると水分が減少し、ドライマウスを招きます。過度なカフェインの摂取には注意が必要です。

過度な緊張やストレスを解消する

過度な緊張やストレスがあるときは交感神経が刺激され唾液が出にくくなり、ネバネバした唾液になります。逆にリラックスすれば副交感神経が働いて唾液が出やすくなり、サラリとした唾液になります。日頃からストレスを溜めない生活を心がけましょう。また、ストレスに強い心身をつくるには運動が効果的です。1日5分のストレッチからでも習慣づけるようにしましょう。

ドライマウスの対処法

自宅でのセルフケア

ドライマウスになる原因は、糖尿病やシェーグレン症候群などの原因疾患、薬の副作用、ストレス、加齢、更年期障害(女性ホルモンの低下)などです。そうした原因を取り除いたり、適切な治療により症状を緩和したりすることが何よりも大切です。そのうえで、自宅で行うことができるセルフケアの例を紹介します。

部屋の湿度を調整し、水分を持ち歩く
エアコンなどで乾燥した部屋にいると鼻が乾き、口呼吸の原因となります。空気が乾き過ぎないよう常に部屋の湿度に気を配りましょう。電気毛布や電気あんかの長時間使用も、口腔の乾燥につながる場合があるので、夜に口の渇きを感じる方は注意が必要です。

また、外出する際は、水筒やペットボトルを持ち歩き、口の中を潤すようにします。虫歯予防のために、水やお茶が良いでしょう。

酸味のある食品やシュガーレスのアメで唾液の分泌を促す
レモン、梅干し、酢の物など、すっぱい食品は唾液の分泌を促します。しかし、重度のドライマウスに悩む人には刺激が強すぎて痛みをともなうことがあるので注意が必要です。

また、昆布を噛むこともお勧めです。噛む力が鍛えられるとともに、昆布に含まれているアルギン酸には唾液の分泌を促す作用があるといわれています。

入れ歯が合っているか確認する
「噛む」という行為がしっかりできていれば、唾液はきちんと分泌されます。ところが、入れ歯が合っていない場合は痛みを生じたり、かみ合わせが悪かったりするので、咀嚼回数が減ってしまうことも考えられます。そうした場合は歯科医を受診し、自分に合った義歯をつくってもらいましょう。

口の周りの筋力を鍛える
唾液の分泌を促すためには、口の周りの筋肉を活発に動かすことが大切です。しかし、お口から食事をされていない方や普段あまり会話をする機会の少ない方は口まわりの筋力が低下してきます。そのリハビリとしてパタカラ体操(「パ」「タ」「カ」「ラ」と発音することによる、口の周りや舌の筋力トレーニング)がよく行われています。

また、顔の筋肉のマッサージを含めた唾液腺マッサージも一部で効果があります。

①耳下マッサージ…上の奥歯あたりの頬に指数本を当てて円を描くようにする
②顎下マッサージ…顎のえらの内側のくぼみを親指で押す
③舌下マッサージ…顎の中心あたりの柔らかい部分を両手の親指で押す

ただし、糖尿病で脱水の方やシェーグレン症候群のように唾液腺が破壊されている方への効果は限定的です。

保湿剤やうがい薬などで口の潤いを保つ

唾液の働きを補うのが保湿剤です。ざらつきや痛みがある場合はジェルタイプの保湿剤を適宜口の中に塗ることで、症状を和らげることができます。保湿成分配合のスプレータイプやヒアルロン酸配合のマウスウォッシュは加湿効果があり、即効性もあるので乾燥感を和らげるのに効果的でしょう。

医療機関の受診

長期間にわたって口の渇きを感じる場合は、糖尿病や脳卒中、シェーグレン症候群などの疾患が隠れていることもあります。まずはかかりつけ医の診察を受けましょう。

かかりつけの歯科医をもつことも大切です。歯科医は歯周病や虫歯の治療だけではなく、口の健康状態をチェックしてくれます。かかりつけの歯科医をもつことは、特に高齢者の場合、発症や死亡率が高い誤嚥性肺炎の予防にもつながります。
また、口臭外来やドライマウス専門外来といった専門の歯科外来もあります。

※画像はイメージです