だるさ(倦怠感)を伴う疾患はさまざまです。急性疾患では風邪、インフルエンザ、急性肝炎などが代表的です。顔にむくみがある場合などは腎臓疾患や心臓疾患が、顔色が悪くてめまいを伴う場合は貧血や更年期障害、低血圧症などが疑われます。ほかにもうつ病や心身症などの精神疾患、慢性肝炎や肝硬変などの肝臓疾患、糖尿病、結核、慢性腎盂腎炎、さらには、がんなどが疑われる場合もあります。
※以下の疾患の中には、医師の診断が必要なものもあります。
症状が続くなど心配な場合には、早めに医師の診断を受けましょう。
貧血
鉄分の不足などによって、血液の中で酸素を運ぶヘモグロビンが減少すると、体のすみずみまで酸素が届けられなくなり、だるさ(倦怠感)、めまい、頭痛などが生じます。ヘモグロビンの数値が男性は13.0g/dL以下、女性は12.0g/dL以下になると貧血とされています。ヘモグロビンは赤い色素(酸素が付いたヘム鉄の色)のため、不足すると赤味が少なくなって顔が青白くなります。
風邪
風邪の原因となるウイルスや細菌などの微生物が体内に侵入すると、体がこれらを排除しようと免疫機能を活性化させます。免疫系の物質サイトカイン類の作用のため、発熱やだるさ(倦怠感)が起こります。発熱、頭痛、頭重感、鼻水、鼻づまり、咳などの呼吸器症状などもあらわれます。
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急性肝炎
肝炎の原因にはウイルス、薬剤、アルコールなどがありますが、多くはウイルスによるものです。急性肝炎を起こす肝炎ウイルスにはA型、B型、C型、D型、E型の5種類が知られており、肝炎ウイルスに感染後1~6ヵ月間の潜伏期間を経て発症します。急に発熱、頭痛、のどの痛みなどの風邪のような症状があらわれ、続いて褐色の尿が出るようになり、食欲不振、吐き気、嘔吐、全身倦怠感などの症状が黄疸(結膜や皮膚が黄色くなる)とともにあらわれます。
更年期障害
閉経の時期を挟んだ前後約10年間をさす更年期を迎えると、女性ホルモンの分泌が少なくなることに加え、社会的・心理的要因(子どもの独立、親の介護、老後不安など)などが複雑に絡み合い、疲れやだるさ(倦怠感)、不眠、肩こり、のぼせやほてり、イライラや気分の落ち込みなど、心や体にさまざまな症状があらわれます。また、男性にも更年期障害があることがわかっています。
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睡眠時無呼吸症候群(SAS)
10秒以上の無呼吸がひと晩(7時間程度の睡眠)に30回以上、あるいは1時間あたり5回以上起こります。寝ているときに大きないびきをかくのが特徴です。睡眠中に呼吸が止まったり、呼吸をしていても酸素を吸い込んで吐き出す換気量が半減したりすることから熟睡できず、十分な睡眠時間をとっても疲れがとれない、だるさ(倦怠感)が残るなど、日常生活に支障をきたすことがあります。放置すると高血圧や糖尿病、心臓病、脳卒中の原因になることもあります。
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筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)
日常生活に支障をきたすような原因不明の著しい倦怠感や微熱、頭痛、筋力低下などが、休んでも回復せず6カ月以上の長期にわたって続く状態をいいます。全身のだるさ(倦怠感)や睡眠障害、思考力の低下など、心と体の症状があらわれます。症状が似ているうつ病や更年期障害と間違えられることが少なくありません。
うつ病
憂うつ、気分が重い、気分が沈む、悲しい、不安などの自覚症状や、食欲がない、体がだるい、疲れやすい、性欲がない、頭痛、肩こりなどの身体症状があらわれます。また、周囲の人達からもわかる症状として、表情が暗い、涙もろい、反応が遅い、落ち着かない、飲酒量が増えるといったことがあります。気分の浮き沈みはだれにでもあることですが、うつ病では自分でコントロールできないほど倦怠感が強く長い間続き、体や日常生活、社会生活に影響するという特徴があります。
ビタミンB1欠乏症
ビタミンB1が欠乏することで起こる疾患が脚気です。脚気は末梢神経がおかされる病気で、体のだるさ(倦怠感)、手足のむくみ、動悸、息切れなどの症状があらわれます。ビタミンB1は偏食によって不足することもあれば、糖分の摂り過ぎや激しい運動によって消費されることで不足することもあります。また、ビタミンB1はアルコールの分解に多く使われるため、アルコールの常習によっても欠乏することがあります。
ウェルニッケ脳症
ウェルニッケ脳症とは、ビタミンB1が不足することから引き起こされる神経系の急性疾患です。典型的にはアルコールの大量摂取と関連して発症し、意識障害、眼球運動の異常、運動失調が生じます。ビタミンB1の補充が適切なタイミングで行われないと、続発症としてコルサコフ症候群と呼ばれる慢性疾患を引き起こすことがあります。コルサコフ症候群を発症すると神経学的な障害は不可逆的になるため、いかにウェルニッケ脳症を疑い、対処するかが重要です。
糖尿病
糖尿病はすい臓でつくられるインスリンの分泌や働きが低下し、血糖値が慢性的に高い状態になる生活習慣病です。腎臓や目、神経に対する障害をはじめさまざまな合併症を引き起こしますが、初期は自覚症状がないため、血液検査で血糖値およびHb(ヘモグロビン)A1cにより診断を受けて初めて糖尿病であることを知るケースが少なくありません。糖尿病が進行すると、だるさ(倦怠感)、多尿(のどが渇いてたくさん水分を摂るために尿の量が増える)、頻尿(トイレの回数が増える)などの症状があらわれます。
※上記の疾患の中には、医師の診断が必要なものもあります。
症状が続くなど心配な場合には、早めに医師の診断を受けましょう。