痔
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肛門部と、その周辺部分の疾患をまとめて痔といいます。裂肛、痔核、痔ろうの3種類が9割をしめます。痛み、出血、腫れ、脱肛、かゆみなどさまざまな症状があり、ときには化膿して便が漏れることもあります。痔の発症には生活習慣が大きく関わっていますので、痔を治すためには生活習慣、なかでも便秘と下痢の改善が何より大切です。

井上修二 先生

監修

井上修二 先生 (いのうえしゅうじ) (共立女子大学名誉教授、医学博士)

日常生活から考えられる原因

きっかけは排便異常

痔のほとんどは便秘や下痢がきっかけです。便秘のときの便は硬くなります。この硬い便を無理やり出そうとして強く力むと、肛門の皮膚が切れる裂肛やうっ血を起こしてイボができる痔核の原因になります。また下痢が原因になることも多く、勢いよく出る便や排便の回数が増えることで痔を悪化させたり、細菌に感染して痔ろうを引き起こすことがあります。

同じ姿勢を続けたり、力むことの多い仕事

クルマのドライバーやパソコン作業のデスクワークのように、座ったままでいるような仕事はお尻に負担がかかります。また美容師や販売員、板前のように立ったままの仕事も腹圧をかけることが多く、お尻がうっ血しやすくなります。重いものを持ち上げたり、運ぶような仕事も同様で注意が必要です。

食べすぎ飲みすぎ、刺激物のとりすぎ

お酒の飲みすぎは下痢を招きやすくするとともに、生活のリズムも乱します。食べすぎや偏食はもちろん、刺激の強い香辛料のとりすぎも肛門部のうっ血の原因となり、痔を誘発することになります。

運動不足や冷え、ストレスによる血行不良や肛門部の不潔

運動不足や冷えは下腹部の血行不良を招き、肛門に負担をかけます。また、ストレスによって自律神経が乱れることでも肛門の血行不良が起こり、痔を引き起こしたり、悪化させることがあります。また、肛門部を不潔にしていると、肛門に炎症が起こりやすくなり、痔を誘発することがあります。

妊娠や出産による肛門の圧迫

妊娠によって子宮が大きくなると、肛門の圧迫や骨盤内のうっ血によって血行が悪くなり痔の原因になります。さらに出産の際にも強く力むので、痔を発生させたり悪化させたりすることになります。

痔の種類

裂肛(切れ痔、裂け痔)

肛門の皮膚が硬い便との摩擦で傷つき、それが続くと傷が深くなって強い痛みと出血を引き起こします。排便のたびに激しく痛むために、排便を我慢し便秘となって再び肛門を傷つけるという悪循環に陥りがちです。

痔核(イボ痔)

肛門と直腸の境界周辺の粘膜の下には血管が密集しています。その血管がうっ血を起こし、それが膨らんでイボ状の塊になるのが痔核です。この塊が直腸の内側にできるのが内痔核で、痛みを感じることは少なく、排便時に大量の血が出ることもあります。そして肛門の外側にできるのが外痔核です。ある日突然、しこりのような塊ができて激しい痛みをともないます。

肛門周囲膿瘍

主に下痢が原因となって直腸から肛門の周囲の粘膜に傷がつき、大腸菌などの細菌が侵入して、炎症が起こり、膿が溜まります。膿は自然に皮膚をやぶって外に流れだします。痔ろうの初期段階です。肛門の周囲にしこりや腫れがあらわれ、同時に肛門周囲の灼熱感や痛みを感じます。また高熱や寒気、吐き気などの症状をともない、ときには40℃以上の高熱になることもあります。

痔ろう(穴痔)

肛門周囲膿瘍を放置していると、膿が自然に皮膚を破って外に流れだします。この膿が流れ出た通り道が肛門の周りに残るのが痔ろうです。溜まった膿が外に出ると症状は楽になりますが、常に膿が出たりするため、下着が汚れて不快感があります。放っておくと段々とひどくなり、自然に治ることはありません。

肛門そう痒症(こうもんそうようしょう)

肛門部がかゆい状態を肛門そう痒症といいます。便の付着などの肛門周囲の不潔が大きな原因です。しかし、糖尿病や肝臓病などの全身的な疾患や、精神的なストレスが原因となることもあります。

日常生活でできる予防法

排便のリズムをつくる

便秘は痔の一番の原因です。お通じが定期的にないのは自分のライフスタイルに問題があるのかもしれません。とくに朝は便意を感じやすい時間帯ですが、このときに支度が忙しくて便意を我慢するような生活をしていては便秘を招きます。早めに寝て生活にメリハリをつけ排便のリズムをつくりましょう。

この疾患・症状に関連する情報はこちら。 便秘

食生活を改善する

朝食を抜くと、痔の大きな原因である便秘になりやすくなります。しっかり朝食をとれば胃が動き出し、大腸も活動しますので、毎日排便のある生活ができます。また食事は食物繊維を意識して食べましょう。食物繊維は消化されず、大腸の運動を刺激して、排便をスムーズにします。暴飲暴食や多量のアルコールは下痢の元になりますので、控えるようにしましょう。

同じ姿勢を長く続けない

痔の予防には同じ姿勢を長時間続けないことが大事です。座りっぱなし、立ちっぱなしのときは、少しでも休憩タイムを作って体を伸ばしたり、肩を上下、足の屈伸などを心がけましょう。座ったまま動けないようなときは、ちょっと腰を浮かせてみるだけでも、お尻にかかる体重から解放され血行が戻ります。

腰周りを冷やさない

痔を助長する原因の一つに冷えがあります。冷えは血行を悪くして肛門部のうっ血を促すので、肛門の大敵です。とくに女性は下半身を冷やすような服装と冷房による冷えにも注意が必要です。

適度な運動とストレスの解消を心がける

運動不足やストレスは、肛門部の血行不良を招くことがあります。軽い運動を習慣にしましょう。とくに、便秘の解消にも効果的な腹筋運動がおすすめです。また、平日は読書やテレビ観賞、お風呂など手軽にできることで、休日は外出などで気分転換を図って日々のストレスを溜めこまない工夫をしてみましょう。

温水洗浄便座を使う

排便後、トイレットペーパーで拭いただけでは、肛門部の便はなかなか取り除けません。また、トイレットペーパーで強く拭くことで肛門の皮膚を傷つけることもあります。温水洗浄便座があるときは、ぜひ活用しましょう。

対処法

裂肛を悪化させないためのケアをする

日常生活のポイントは便秘を改善することです。排便のときの痛みを考えると躊躇しがちですが、便意があったらすぐにトイレに行き、5分以上力まない習慣をつけましょう。排便後も痛みが消えないときは、楽な姿勢で肛門を中心に温めると痛みが緩和されます。

痔核を悪化させないためのケアをする

症状が緩和したら日常生活に適度な運動を取り入れることです。また買物などでもクルマやエスカレーター、エレベーターをなるべく使わないで歩き、体を積極的に動かす習慣をつけることが大切です。またできる限り毎日入浴か座浴で肛門の清潔を保ち、血行を良くしておくと効果的です。

痔ろうを悪化させないためのケアをする

肛門に炎症や痛みがあるときは安静にして、お尻に氷や冷却シートなどをあてて冷やすと痛みが緩和します。排便後は温水洗浄便座を使ったり、入浴をして肛門の汚れを取り除いておき、清潔に保つようにしましょう。入浴の他に肛門の清潔を保つ方法として座浴があります。ぬるま湯をはった洗面器にお尻をつけ、ガーゼなどの柔らかい布でお尻をやさしく洗いましょう。またアルコールも適量にして、十分な睡眠をとり過労を避けましょう。下痢をしないような食生活を心がけることも重要です。

市販の薬を使う

痛みがあってもすぐに受診できないときは、市販の薬が役に立ちます。痔の主な市販薬には、坐剤や軟膏、注入軟膏など患部に直接塗るタイプや痔核を小さくし、硬い便を柔らかくする効果のある内服薬などがあります。ただし、肛門周囲膿瘍や痔ろうは市販の薬で治療することはできませんので、必ず肛門科で診察を受けましょう。

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病院で診察を受ける

痔の痛みが長く続いたり、出血が多い場合や肛門周囲膿瘍、痔ろうが疑われるときは肛門科で診察を受けましょう。

プチメモ痔は国民病!?

痔は国民病!?

日本人の成人のうち、なんと3人に1人が痔持ちという報告もあるくらい多い病気です。とくに近年は、女性の痔が増えています。痔の中で発症頻度が一番高いのは痔核で、半数以上をしめています。この痔核は比較的男性に多く飲酒や仕事上の過労が原因となり、女性は妊娠や出産が悪化の原因と考えられます。裂肛はやや女性に多く、それには便秘が関係しているようです。一方、痔ろうは男性に多くみられます。