眼精疲労・疲れ目
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眼精疲労・疲れ目

パソコンやスマートフォンの長時間にわたる使用をはじめ、現代社会ではとかく目を使い過ぎる傾向にあります。目に疲れを感じている方も多いのではないでしょうか。 しかし、ただの疲れ目と甘くみてはいけません。特に目の疲れやその他の症状が長く続くようであれば注意が必要です。 ここでは眼精疲労や疲れ目について正しく理解いただけるよう、その原因や対処法をご紹介します。

若倉 雅登 先生

監修

若倉 雅登 先生 (医療法人社団 済安堂 井上眼科病院 名誉院長)

眼精疲労とは?

目の構造・働き

目はカメラと同じような構造をしています。カメラのレンズに相当するのが角膜と水晶体で、角膜は光を眼球内に取り入れ屈折させる働きがあり、水晶体は周りの筋肉(毛様体筋)によって厚くなったり薄くなったりして、ピントを調節しています。眼球の内壁にある網膜はカメラのフィルムやデジタルカメラのセンサーの役割を果たし、この部分で像を結び、対象となるものの色具合や明暗を識別しています。

このような目の働きを助けているのが涙です。涙は1枚の膜のように目の表面を覆い(涙液膜)、目の乾燥を防ぐ、細菌やウイルスを殺菌する、角膜に栄養を補給するなど重要な役割を担っています。

疲れ目と眼精疲労の違い

誰にでも目の疲労は起こります。目の疲れが一時的なもので、休息や睡眠をとれば自然に改善するものを「疲れ目」といいます。「眼疲労」とも呼ばれ、体への影響はほとんどありません。
一方、休息をとるだけでは回復しないケースがあり、その状態を眼精疲労といいます。眼精疲労は通常であれば何も起こらない程度の目の使用で目にさまざまな症状が起こることに加え、体の他の部位にも影響が及びます。目の症状としては「目が疲れる、ぼやける」「目が痛い、充血する」「目が重い、ショボショボする」「まぶしい」「涙が出る」などが現れます。また視覚は目と脳の共同作業で実現しているので、負担が大きいと頭痛、めまい、吐き気、肩こり、倦怠感、疲労感など全身の症状としても現れやすくなります。
眼疲労、眼精疲労ともに病名ではなく症状名、状態名です。
・眼精疲労のセルフチェック症状セルフチェック

眼精疲労の原因

※原因となる疾患は、医師の診断が必要です。
 心配な場合には、早めに医師の診察を受けましょう。

目の酷使

遠視、近視、乱視などの屈折異常や老眼がある人が長時間目を
使い続けると、ピントを合わせるために絶えず水晶体を調整しなければなりません。すると、調整する筋肉の毛様体筋などに負担がかかり、それが眼精疲労の原因になります。例えば、度の合わない眼鏡やコンタクトレンズを使用して目を酷使していたり、老眼の初期に目と近い距離で無理に作業を行った場合などがそれにあたります。
また、現代社会ではパソコンやスマートフォンなどのディスプレイ画面VDT(Visual Display Terminal)を使った作業が欠かせません。このVDT作業を長時間続けると眼精疲労になりやすいといわれおり、VDT作業によって、目の症状に加え首や肩、腰、背中など全身にさまざまな良くない症状が現れることをVDT症候群といいます。特にスマートフォンのような画面と目の距離が短い作業では、上記のピント合わせと同時に両眼の位置を合わせるための高度な機能が必要なため、眼球と脳への負担が大きくなり、さまざまな眼精疲労に関連する症状につながります。

ドライアイ

ドライアイは、目の表面の涙の量が減ったり、涙の質が変わることによって眼球の表面をうるおす力が不足する状態をいいます。中年女性に多く、日本では約800万~2,200万人もの患者がいるといわれ、増加傾向が続いています。
ドライアイになると涙の働きが低下し、涙が蒸発しやすくなる、目の表面が傷つきやすくなるなど、さまざまな症状の原因になります。眼精疲労もその一つです。目の表面に障害がない場合も、涙液膜が不安定になることで目の周りの筋肉が緊張し眼精疲労を引き起こすことがあります。また、難治なドライアイでは、眼瞼(がんけん)けいれんも疑う必要があります。

緑内障や白内障

緑内障は視神経に障害が起こることで見えない場所(暗点)が出現する、あるいは見える範囲(視野)が狭くなる病気です。また、白内障はレンズの役割を果たす水晶体が白く濁ってきて、視力の低下、ぼやけ、かすみなどが生じます。
緑内障も白内障も最初はあまり自覚症状がなく、徐々に進行して見え方に不具合が出てきます。緑内障では知らず知らずのうちに視野の不具合を補おうと目に負担をかけることにより眼精疲労になりやすくなるといわれています。白内障では視力の低下や明るさや光の加減でまぶしかったり、ものがぼやけて見えたりすることなどが眼精疲労を起こします。

眼瞼下垂(がんけんかすい)

眼瞼とはまぶたのことで、眼瞼下垂は上のまぶたが下がってきて目が開けにくくなる状態をいいます。原因は、加齢などで上まぶたを上げる筋肉の力が弱くなったり、コンタクトレンズを長期装用したりすることによるものが多いですが、ほかにも重症筋無力症、脳梗塞、脳動脈瘤、脳腫瘍、動眼神経麻痺といった重篤な病気によっても生じます。
眼瞼下垂になると、「上方の視野が狭く感じる」「目が小さくなる」といった不都合が生じるほか、肩こり、頭痛、疲労などが生じることがあります。まゆ毛を上げて目を開こうとするため、おでこにシワを寄せるようになり、眼精疲労の原因にもなります。

眼瞼(がんけん)けいれんや身体疾患

眼瞼けいれんを「けいれん」という語感から想像しがちな、まぶたがピクピクする病気だとイメージされがちですが、実際は異なります。瞬きが多くなったり、目を開けているのが辛くなる症状のほか、しばしば持続する高度な眩しさ、眼痛、疲労感、乾燥感を伴います。時に加齢性の眼瞼下垂やドライアイなどと診断されがちですが、その治療では改善しません。睡眠導入薬など神経系に作用する薬物を続けて使用している場合でも起こることがあり、原因不明の高度な眼精疲労や心因性などとされるケースも。脳の底にある基底核を含む神経系の誤作動ですが、現在の脳の画像診断では変化がみられません。このような難治で高度な諸症状がある場合には眼科の中でも神経眼科の専門家に相談しましょう。
眼精疲労は目の疾患だけでなく、更年期障害、アレルギー性鼻炎、片頭痛、甲状腺疾患といった種々の身体の不調からも生じることがあります。日常のストレスは疲労感を強くすることが知られています。ストレスによって自律神経が乱れると筋肉が緊張したり、涙の分泌が抑えられるなどが原因とされます。

眼精疲労の主な症状

よくある目の症状

眼精疲労では目に次のような症状が現れます。

  • 目が疲れる、目が痛い
  • 目やまぶたが重い感じや腫れぼったさがある
  • ショボショボする、乾燥感や不快感がある
  • 目がかすむ、ぼやける (視力低下を含む)
  • まぶしい
  • 充血する
  • 涙が出る
  • 目を開け続けられない

よくある体の症状

眼精疲労で体によく現れる身体症状は次のようなものです。

  • 首や肩のこり、痛み
  • 疲労感、倦怠感
  • 頭痛、頭重感
  • めまい、浮遊感
  • 吐き気、嘔吐
  • イライラ感、抑うつ感
  • 不眠

眼精疲労の対策

※以下の対策を講じても改善が見られない場合、眼精疲労の原因がセルフケアで対処できない目の病気や、脳の不調の可能性があるので、医学的対応が必要になります。

眼鏡やコンタクトの度数の矯正

遠視や乱視などの屈折異常や老眼の場合は、眼鏡やコンタクトで適切に矯正していく必要があります。近年はVDT関連の眼精疲労が増えていることから、VDT作業者が矯正を行う際は、連続作業時間や家庭でのスマートフォン等の使用時間を医師に伝えて適切に検査を受けるようにしましょう。
また、目の老化は40歳代で始まり年齢とともに進んでいきます。老眼鏡の度数は定期的に変えていくことも重要です。

環境改善

パソコンの画像は画素という小さな点の集まりが非常に速く点滅することでつくられています。そのため、目はチラチラした細かな光の刺激に常にさらされることになり、パソコンの画面を見続けると負担がかかります。また、まばたきも減少するので、目の疲れが生じやすくなるのです。さらに、キーボードを長時間同じ姿勢で打ち続けると、首や肩の筋肉が疲労し、腰にも負担がかかります。
パソコン作業による疲れ目や、首や肩、腰の疲労を防ぐには、画面を見やすい高さにする、姿勢を正して目と画面との距離を適度に取るなどの工夫が必要です。また、室内の照明などを調整したり、外からの光がパソコン画面に映り込まないようにブラインドやカーテンをかけたりするのも効果的。
光に対する感度は個人差が非常に大きいものです。仕事場や自室では自分にとって快適な照明環境を得ることが重要です。
また、目の乾燥を和らげるために、エアコンの風が直接顔に当たらないようにする、部屋用、あるいは個人用加湿器を活用するのもよいでしょう。

生活習慣

目の疲れにも、十分な睡眠と適度な休養、そして栄養バランスのとれた食生活が大切です。

例えばパソコン作業であれば、1時間作業をしたら15分くらいは休みを取りたいものです(この休憩時間の目安は厚生労働省の勧める基準ですが、健常者のためのもので、目の病気などがある方は休息をもっと小まめにとりたいものです)。しかし、難しい場合はコピーを取るなど他の仕事をはさんだり、時々窓の外など遠くを眺めたり、目薬の点眼などの時間を設けて目を休める工夫をしましょう。また、作業中は意識的にまばたきの回数を増やすなど、目を乾燥させないよう心がけてください。
疲れ目には、こめかみや首筋などにあるツボをマッサージしたり、蒸しタオルなどを利用して目の周りを温め、筋肉の血流を促すことなども効果的です。

食事・栄養面ではビタミンB群、ビタミンC、ビタミンAを積極的に摂りましょう。
ビタミンB1は目の周りの筋肉疲労に効果的で、さらに目の機能維持にも関わっています。目の粘膜の健康維持に役立つビタミンB2や、神経の機能維持に関わるビタミンB6・B12も一緒に摂取しておきたいところです。また、結膜や角膜の正常な働きを補助するビタミンAは目にとって欠かせない栄養素。網膜で光を感じる細胞の材料となり、角膜の機能に関わっています。
そして、ビタミンCは水晶体に多く含まれており、ビタミンB群と合わせて目の疲れを取るうえで重要です。

<ビタミンB群が多く含まれる食材>豚肉、カツオ、鰻、レバー
<ビタミンAが多く含まれる食材>レバー、チーズ、バター、鶏卵、モロヘイヤ、緑黄色野菜
<ビタミンCが多く含まれる食材>レモン・オレンジなどの柑橘類やキウイフルーツ、イチゴ

市販薬の活用

眼精疲労に特効薬はありませんが、ビタミンの配合された点眼薬や内服薬は有用です。目の疲れには点眼薬は主成分としてビタミンB2・B6・B12が含有されているものを選ぶとよいでしょう。例えば、仕事中に定期的に点眼薬をさす習慣ができれば、同じ作業の継続によって過剰な負担がかかる目を休める休息時間をとることにもつながります。また、内服薬には眼精疲労の効能をもつビタミンB1、ビタミンB6,ビタミンB12が配合されたものもあります。ドライアイが原因となっている場合は、目の表面をうるおすために、人工涙液タイプの目薬を1日数回さすのもおすすめです。

医療機関を受診する

疲れ目だけでなく、痛みや目の乾き、見にくさなど違和感がある場合は放っておかず、眼科を受診するようにしましょう。特に眼精疲労はドライアイや緑内障など他の重大な目の疾患を伴っていることがあります。早めに受診して、眼精疲労の症状や合併症を重症化させないことが大切です。
また、多くの現代人は目を酷使しています。ですから、特に症状がなくても半年に1回くらいは眼科を受診し、視力検査・眼圧検査・眼底検査・視野検査などの基本的な検査を受けるといいでしょう。

参考
・若倉雅登 監「病気を見きわめる 目のしくみ事典」(技術評論社)
・若倉雅登「健康は<眼>にきけ―名医が教える眼と心のSOS」(春秋社)
・若倉雅登「その目の不調は脳が原因」(集英社)
・主婦の友社編「家庭の医学」(主婦の友社)
・「病気がみえる vol.12 眼科」(メディックメディア)
・黒川清、武谷雄二、松尾宣武 監「大安心 健康の医学大事典」(講談社)
・坪田一男、大鹿哲郎「TEXT眼科学」(南江堂)
・日本眼科学会 目の病気
https://www.nichigan.or.jp/public/disease/
・日本眼科医会 目についての健康情報
https://www.gankaikai.or.jp/health/