捻挫(ねんざ)
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捻挫(ねんざ)

捻挫(ねんざ)とは、日常生活中の転倒やスポーツ時の足をねじる動作により、関節に無理な力が加わって、関節内の骨と骨とをつなぐ靱帯が伸びたり切れたり、あるいは関節を包む関節包が損傷することをいいます。手首、指、膝、肘など全身のあらゆる部位で起こり得ますが、最も多くみられるのは足首です。
ここでは、捻挫の原因や症状、そして日常生活でできる予防法や対処法などを紹介します。

川上 洋平 先生

監修

川上 洋平 先生 (かわかみ整形外科クリニック 院長、医学博士、日本整形外科学会 専門医/認定スポーツ医/認定リハビリテーション医)

日常生活から考えられる捻挫の原因は、関節に無理な力がかかること

衝撃やねじれなど無理な力がかかる

何かの拍子にひねったり・くじいたり、関節に衝撃やねじれなどの無理な力がかかり、関節が平常的に動ける範囲を越えて曲がりすぎたり・伸ばされたりしたときに、捻挫が起こります。関節のケガのうち、X線で確認できるような骨折や脱臼がない場合、多くは捻挫の診断となります。最近ではエコー(超音波)検査を行い、靭帯の状態や皮下出血、組織の損傷の程度を評価して診察する事が多いです。
捻挫の漢字は、「捻る(ひねる)」と「挫く(くじく)」から成っています。「ひねる」は、単に関節を一定の角度や方向に曲げた状態をいいます。必ずしも異常な状態とは限らず、痛みもケガも伴わない場合もあります。「くじく」は、明らかに異常な角度に曲げた結果、その関節が損傷を受け、痛みが生じる事を意味します。

捻挫の症状には、Ⅰ度~Ⅲ度がある

軽度の靭帯(じんたい)損傷(捻挫 I 度)

靱帯が伸びているものの、断裂はしていない状態です。痛み、腫れや皮下出血などはそれほどひどくはありません。

靭帯の部分的な断裂(捻挫 II 度)

靱帯に部分的な断裂が起こった状態で、うずくような痛みや腫れがあります。捻挫Ⅰ度(軽度の靱帯損傷)に比べて、痛みは強く、腫れや皮下出血の範囲は広くなります。関節が不安定になることはありません。

靭帯が完全に切れた状態(捻挫 III 度)

重度の捻挫では、完全に靱帯が切れて、激しい痛み、ひどい腫れや大量の皮下出血がみられ、関節は不安定になります。足首の場合は、関節が不安定になるうえ、痛みのために体重をかけることができません。

捻挫をともなう疾患には、ぎっくり腰やむち打ち症もある

※以下の疾患は、医師の診断が必要です。
下記疾患が心配な場合には、早めに医師の診察を受けましょう。

腰椎捻挫(ようついねんざ)・ぎっくり腰

ぎっくり腰は、脊柱起立筋の肉離れや椎間板の軽度の損傷でも生じますが、腰椎捻挫も病態の1つです。顔を洗うときの中腰の姿勢や、重いものを持ち上げるときの腰を折り曲げた姿勢などが原因で起こります。腰にある椎間関節が捻挫を起こし、急激な痛みに襲われ、動けなくなります。腹筋や背筋が弱い人に起こりやすく、再発することも少なくありません。

この疾患・症状に関連する情報はこちら。 腰痛

頸椎捻挫(けいついねんざ)・むち打ち症

車の追突やスポーツでの激しい衝突などで、首がのけぞり、頸椎が捻挫している状態です。むち打ち症とも呼ばれます。首が動かしにくい、首や肩が痛むなどの症状が現われます。また、損傷がひどい場合には、頭痛や吐き気、耳鳴り、倦怠感に悩まされることも少なくありません。

※以上の疾患は、医師の診断が必要です。
上記疾患が心配な場合には、早めに医師の診察を受けましょう。

捻挫の予防法は、ウォーミングアップやサポーター・テーピングの活用

運動前にウォーミングアップをする

体の筋肉や関節がほぐれていないまま急に激しい運動を始めると、捻挫の危険性が高くなります。運動を行う前には、必ず十分なウォーミングアップを行いましょう。また日頃から、ストレッチングを行い、筋肉や関節の柔軟性を高めるとより効果的です。

サポーターやテーピングで関節を保護する

足首や手首を捻挫しやすい人は、予防のためにサポーターやテーピングを活用し、関節を安定させるといいでしょう。

日常生活でできる捻挫の対処法は、RICE処置と市販薬の活用

応急処置を行う

捻挫したときは、「RICE(ライス)処置」と呼ばれる4つの応急処置をするのが基本です。応急処置後は病院で診察を受けましょう。

(1)安静にする(Rest)

捻挫した部位を動かさないようにしましょう。患部が足の場合は杖やステッキを使うなどして体重がかからないように、患部が腕の場合は三角巾やタオルなどで吊って動かさないようにします。

(2)冷却する(Ice)

捻挫した部位を中心に少し広めの範囲を、氷を入れたビニール袋や冷却パックで冷やし、炎症を抑えて痛みを緩和します。15〜20分が目安です。再び痛むようなときは救急処置だけでなく、その後も何度か繰り返します。また、捻挫した直後は冷却が原則ですが、数日後、炎症がおさまってきたら、患部を含めた全身を入浴などでしっかりと温め、血流を促進して回復を促すことも効果的です。

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(3)圧迫する(Compression)

腫れや内出血を抑えるために、伸縮性のある弾力包帯やテーピングで、捻挫した部位を適度に圧迫しながら巻いて固定します。強く巻きすぎると局部的に血流が低下することがあるので、しびれや変色が生じない強さで行います。

(4)高く挙げる(Elevation)

捻挫した部位を心臓よりも高い位置に保つことで、内出血を防いで痛みを抑えます。椅子やクッションなどを活用しましょう。

市販薬を活用する

受傷後の痛みや炎症を抑えるには、鎮痛薬や鎮痛消炎薬が効果的です。内服薬としては、鎮痛成分であるアセトアミノフェン、鎮痛消炎成分であるイブプロフェンやロキソプロフェン(ナトリウム水和物)などが配合された製品、外用薬としては、鎮痛消炎成分であるケトプロフェンやインドメタシンなどが配合された製品が市販されています。
また、くじいてしまったあと、急性期を過ぎていれば、温めることで症状が緩和されることもあります。入浴剤を活用し、しっかりとお風呂で温まることも効果的です。

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病院で診察を受ける

捻挫というと、軽傷と思いがちですが、骨折や脱臼が生じてしまっている場合もあります。また、適切な処置を行わなければ、治りが悪くなり、靭帯が緩んでしまったり、捻挫を繰り返しやすくもなります。とくに、捻挫 III 度で靭帯断裂してしまっているときは、数週間のギプス固定が必要になることが多く、それでも不安定感が強い場合には手術が必要になることもありますので、早めに病院で診察を受けましょう。

参考:

  • 公益社団法人 日本整形外科学会
    (https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/sprain.html)
  • 日本スポーツ整形外科学会
    パンフレット スポーツ損傷シリーズ 「2.足首の捻挫」「3.スポーツ外傷の応急処置」
    (https://jsoa.or.jp/pamphlet/sports-injury/)

プチメモO脚の人は捻挫をしやすい?

O脚の人は捻挫をしやすい?

O脚の人の足関節は、関節面が内側に向いて傾斜していて、靴のかかとが外側からすり減っていきます。このような足関節では、外側の靱帯が緩くなり、関節がぐらつきやすく、捻挫を起こしやすくなります。O脚の人は、日頃から足関節を柔軟に保つようにストレッチを行ったり、スポーツ前には念入りにウォーミングアップをするようにしましょう。