筋肉痛
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筋肉痛

腕や足の筋肉にうずくような痛みが現れる筋肉痛。体を使った翌日に起こり、強い痛みのために日常生活に支障が生じてしまうこともあります。「歳をとると筋肉痛が遅く現れる」ともいわれますが、実際はどうなのでしょうか?また、運動以外にも、例えばインフルエンザなどの病気で筋肉に痛みが現れることもあります。ここでは専門家監修のもと、筋肉痛の原因や対処方法をご紹介します。

増田 紘之 先生

監修

増田 紘之 先生 (新潟医療福祉大学 健康科学部 助教)

筋肉痛とは

多くの人が1度は経験したことがあるはずの「筋肉痛」。どうして症状は起きるのでしょうか。まずは筋肉の構造や、筋肉痛が起きるメカニズム・原因について解説します。

筋肉の構造

筋肉の構造

筋肉は、体重の4割前後を占めており、「筋線維(筋細胞)」が束になって成り立っています。筋線維の束の周囲は「筋膜」という膜で包まれています。11本の筋線維は0.040.1mmほどの細いものですが、負荷をかけると(トレーニングをすると)太くなり、筋力の強化につながります。

筋肉痛が起こる原因・メカニズム

運動によって生じる筋肉痛は、運動直後に起こる痛み(即発性筋痛)と、少し時間がたってから起こり始める痛み(遅発性筋痛)があります。一般的に「筋肉痛」といえば後者の「遅発性筋肉痛」のことを指すことが多く、ここでは後者の筋肉痛についてお話します。

かつて筋肉痛は、運動をした時に蓄積される「乳酸」が原因であると考えられていました。しかし現在、この考えはほぼ否定されています。その理由の一つとして、乳酸の値は確かに運動直後には高いものの、筋肉痛が現れるころには運動前のレベルに戻っているという事実が挙げられます。むしろ乳酸は、運動中に筋肉でよく産生し、エネルギー源として積極的に利用されています。

では、筋肉痛の本当の原因は何なのでしょうか。実は、筋肉痛の原因ははっきりわかっておらず、現時点では以下のように考えられています。

まず、運動によって筋肉の組織にわずかな傷ができ、それを修復するために炎症反応が起こります。その炎症にともない、発痛物質とも呼ばれる「ブラジキニン」等が血液中から放出され、痛み刺激を感じ取る神経を過敏にします。その結果、少し体を動かすだけでも、筋肉の痛みが生じてしまうのです。

筋肉痛が起こる仕組み

筋肉痛が遅れて起きやすい理由

運動した当日よりも翌日や翌々日のほうが、筋肉痛がひどくなるという体験を、多くの人がされているのではないでしょうか。このようなタイムラグには、先ほど解説した筋肉痛のメカニズムが関係しています。

痛みを感じるには、痛み刺激を感じ取る神経が役割を果たしますが、筋線維にはその神経はありません。一方で、筋線維の束を包んでいる筋膜にはその神経があります。つまり、炎症とともに放出された発痛物質が筋膜にまで広がってきた時に、初めて痛みを感じるようになるということです。

なお、「歳をとるほど運動と筋肉痛のタイムラグが大きくなる(筋肉痛が遅れて現れる)」とよくいわれますが、これを示す科学的データはありません。

筋肉痛をともなう病気(疾患)・症状

※以下の病気(疾患)は、医師の診断が必要です。病気(疾患)が心配な場合には、早めに医師の診察を受けましょう。

何かの病気の症状として筋肉痛が現れることも。ここでは緊急性が高い病気や、頻度の高い病気をご紹介します。

横紋筋融解症(おうもんきんゆうかいしょう)

筋肉には横紋筋と平滑筋の2種類があり、横紋筋とは横縞模様のある筋肉で、全身の骨に付いている骨格筋と心臓の筋肉が該当します。この横紋筋が破壊されてしまう、治療の緊急性が高い病気です。

横紋筋の破壊が進むと、筋肉の細胞内のさまざまな物質が大量に血液中に放出されます。それらは腎臓で集められて尿として排泄されるのですが、急激に処理すべき物質が増えるために急性腎障害が起こり、より深刻な状態になってしまうことも。

症状は筋肉痛のほかに、手足のしびれや力が入らない状態、赤茶色の尿が挙げられます。これらの症状が現れたら、早急に診察を受けてください。

横紋筋融解症の原因はさまざまで、大量のアルコール摂取、激しい長時間の運動、熱中症、さらにコレステロールや中性脂肪を下げる薬や抗菌薬の副作用などもあります。

肉離れ

急に全力で走り出すなど、限界を超えて筋肉が引っ張られた時に、筋肉の一部が断裂し、損傷を起こした状態が肉離れです。ブチッという切れたような音とともに強い痛みが生じます。また、筋肉の一部が出血し、筋肉の腫れと皮膚の下に紫色のあざが現われます。ふくらはぎや太ももの裏側の筋肉で起こりやすく、痛みのために歩けなくなります。

一度肉離れが起きると、組織の一部に瘢痕(はんこん:傷あと)が残ったり、再生した部分と周囲の組織とのバランスが悪くなる影響で再発しやすくなるので、注意が必要です。

腰椎捻挫(ようついねんざ・ぎっくり腰)

ぎっくり腰は、腰の骨と骨をつなぐ小さな関節が捻挫した状態と考えられています。顔を洗おうとした時の中腰の姿勢や、重いものを持ち上げようとして腰を折り曲げた時などに起こり、動けないほどの急激な痛みに襲われます。もともと腹筋や背筋が弱い人ほど起こりやすく、再発することも少なくありません。

こむらがえり

太ももやふくらはぎ、土踏まずの筋肉が引きつり、痙攣(けいれん)を起こし強い痛みが生じる、いわゆる「足をつった状態」がこむらがえりです。

疲れていたり、冷たい水に長く浸かるなどで筋肉の血行が悪くなっている時に起こりやすくなります。また、ミネラルバランスの崩れによっても起こると考えられています。運動との関係では、筋肉の疲労や発汗による脱水が、こむらがえりを起こしやすくすると考えられます。

その他、糖尿病患者や妊娠中の女性、高齢者も起こりやすいといわれています。

インフルエンザ

インフルエンザウイルスによる影響で、全身の筋肉痛、高熱、頭痛、鼻水、くしゃみ、のどの痛みなどが現れます。風邪と違い、急に39℃前後の高熱とともに筋肉痛などの全身症状が出るのが特徴です。発熱は時に40℃以上になることも。

インフルエンザで筋肉痛が起きる理由は、体内の免疫細胞からウイルスに対抗する物質(サイトカイン)の分泌が増えるためだと考えられています。ウイルスに対抗する一方で、発熱や筋肉痛などの症状も引き起こしてしまいます。つまり、インフルエンザの症状はウイルスと戦っている証拠ともいえるでしょう。

インフルエンザの詳しい情報はこちら>インフルエンザ

筋肉痛の予防法

普段から運動習慣をつける

筋肉に負荷がかかると、筋線維内でのタンパク質合成が高まり、筋線維は太くなります。太い筋線維で構成されている筋肉は負荷に対して強く、筋肉痛になりにくい筋肉です。反対に筋肉を使っていないと筋線維は細くなり、少しの負荷で筋肉痛が起きてしまいます。

つまり、日頃から筋肉を鍛えておくと、筋肉痛になりにくくなります。健康のためのジョギングやウォーキング、ストレッチに加えて、腕立て伏せや腹筋運動、ダンベル上げなどの筋力トレーニングも普段から習慣化してみましょう。

運動前の準備運動と運動後の整理運動

運動の前には準備運動(ウォーミングアップ)を行い、血行の良い状態にしておくことが大切です。筋肉の柔軟性を高めるストレッチは、怪我や肉離れのリスクを抑えることも期待できます。運動前のストレッチは、筋肉を使いながら行う「動的ストレッチ」が向いています。

運動後にも、筋肉の血流を促して疲労からの回復を早めるようにするため、整理運動(クールダウン)をしましょう。運動後のストレッチは運動前とは反対に、ゆっくりと筋肉を伸ばす「静的ストレッチ」が向いています。

段階的に運動負荷を上げていく

いきなり激しい運動をすると、筋肉へ急激な負荷がかかって筋肉が傷つき、筋肉痛が起きやすくなってしまいます。同程度の負荷の運動を2週間間隔で行うと、初回よりも2回目のほうが年齢に関わらず、筋肉痛の程度が軽かったという研究データも報告されています。

まずは軽い運動強度から開始して少しずつ負荷を上げていくと良いでしょう。

栄養バランスのとれた食事と休養

筋肉痛の予防、そして日頃から体の疲労回復力を高めておくためには、バランスの良い食事と十分な休養が大切です。

食事では、筋肉をつくる主要な栄養素であるタンパク質や、効率的にエネルギーを生み出すために欠かせない糖質とビタミンB1B2B6をしっかり摂りましょう。なかでもビタミンB1は体内に蓄えられにくい特性があり、さらに運動によるエネルギー消費量が高まると、不足しがちです。不足すると運動能力の低下にもつながるので、意識的に摂るよう心がけてください。また、体の調子を整える働きがあるミネラルも合わせて摂取しておきたいところです。

効率良く筋肉をつけるには、運動前にバナナや米などの糖質で血糖値を上げ、運動後にタンパク質を摂るのがおすすめです。ビタミンB群は運動前のエネルギー産生にも運動後の疲労回復にも重要なので、運動前後を問わずしっかり摂取しましょう。なお、運動をすると汗によって水分と塩分が減ってしまうので、ナトリウムなどが含まれたスポーツドリンクで水分補給も忘れずに。

筋肉痛を和らげる対処法

血行促進

ぬるめのお湯にゆったり浸かり、その後はストレッチによって血行を良くすることで、炎症からの回復を早められると考えられます。ただし、炎症が強い急性期のときは、まずは温めず、患部をしっかりと氷や冷湿布などで冷やすことが先決です。

市販薬の活用

筋肉痛の緩和に有効な市販薬は大きく分けて、外用薬と内服薬があり、状況に応じて使い分けましょう。

外用薬の主成分は、いわゆる“痛み止め”と呼ばれる鎮痛消炎成分(インドメタシンやフェルビナク、ジクロフェナクナトリウムなど)で、それに冷感や温感を与える成分が配合されています。また、血行を促す成分を含むものもあります。

内服薬には、ビタミンB1B6B12、パントテン酸などのエネルギー代謝をサポートする成分や、抗酸化作用や血行促進作用のあるビタミンEなどが配合されていて、体の中から筋肉痛を緩和するように働きます。

アイシング(冷却)

筋力を高める目的で強度の高いトレーニングを行ったあとには、まずはアイシング(冷却)をすることで、その後の筋肉痛の抑制が期待できます。トレーニングの負荷で生じた炎症と、それに伴う浮腫(むくみ)が、アイシングにより軽減されるためと考えられています。

負荷の高い運動の直後は、冷たいタオルやスプレーなどで筋肉を冷やしたり、軽くもむのも良いでしょう。

病院で診察を受ける

痛みが長期間続く場合や、足腰や肩の激しい痛みで体を動かすことが苦痛な時、または痛み以外の症状、例えば発熱や尿の色の変化なども見られる時は、病気が隠れている可能性が。医療機関へ早めに相談しましょう。

参考

・井樋 栄二ら:標準整形外科学 第14版(医学書院),2020

・病気がみえる vol.11 運動器・整形外科(メディックメディア),2017

・松原 英俊ら:日本病院総合診療医学会雑誌17(2),2021

・吉澤 靖之:日本胸部臨床75(9),2016

・笠原 政志ら:国際武道大 武道・スポーツ研究 1,2019

・一般社団法人 日本神経学会(https://www.neurology-jp.org/index.html

・一般社団法人 日本救急医学会(https://www.jaam.jp/index.html

・公益社団法人 日本整形外科学会(https://www.joa.or.jp/public/sick/index.html

・公益社団法人 日本薬学会(https://www.pharm.or.jp/