痙攣(けいれん)
  • 全身 全身
  • 手
  • 皮膚(顔) 皮膚(顔)
  • 目
  • 足

痙攣(けいれん)

痙攣とは、自分の意志とは関係なくあらわれる筋肉の動きの一つで、筋肉の収縮が続く状態です。代表的な症状には、まぶたや顔の筋肉がピクピクと動いたり、てんかんの発作による全身の硬直などがありますが、足などの筋肉が「つる」とは、筋肉が痙攣して収縮したまま元に戻らない状態です。痙攣は全身痙攣発作の意味で使われることもよくあります。多くは、脳や運動神経系の異常によって起こると考えられています。

赤松 直樹 先生

監修

赤松 直樹 先生 (国際医療福祉大学医学部脳神経内科 教授)

筋肉がピクピク痙攣(けいれん)する原因は疲労や睡眠不足などが考えられる

過度の運動による筋肉の疲労

筋肉は通常、神経の命令によって収縮します。しかし、運動のしすぎで筋肉が疲労すると、命令の伝達に関係している筋肉内のカルシウムやマグネシウムなどのバランスが乱れ、自分の意志とは関係なく突然筋肉が収縮します。足がつることをこむらがえりともいいますが、指や腕、背中や腹筋などにも起こることがあり痛みをともないます。

パソコンなどによる目の酷使や睡眠不足

長時間のパソコン作業や睡眠不足などで目が疲れているときに、まぶたが一時的にピクピクと痙攣することがあります。目の周りの筋肉の疲労あるいは、末梢神経が筋肉のこりやむくみによって圧迫されることで痙攣が起きるのではないかと考えられています。一時的なものの場合は、目を休めたり、十分に睡眠をとることで治ります。

眼精疲労・疲れ目に関する記事はこちら 眼精疲労・疲れ目

睡眠不足に関する記事はこちら 侮れない睡眠不足。睡眠の重要性と解消法とは?

高熱によるもの

6ヵ月から5歳くらいの子どもは、風邪や突発性発疹などで熱が38℃を超えると、高い熱が引き金となって痙攣を起こすことがあります。熱性痙攣といい、全身に急に左右対称の激しい痙攣がみられますが、ほとんどは2-3分以内に治まります。 また、熱中症の重症な状態においても、全身の痙攣がおこることがあります。

高熱に関する記事はこちら 高熱

熱中症に関する記事はこちら 熱中症

痙攣の原因となる主な疾患

全身の痙攣を起こす疾患には、てんかんの他に、脳血管障害(脳出血・脳梗塞・クモ膜下出血など)、細菌性・ウイルス性脳炎や破傷風をはじめとした重い感染症、脳腫瘍、低カルシウム血症、薬物中毒、妊娠高血圧症候群、呼吸困難をともなう過換気症候群、アルコール離脱けいれんなどがあります。さらに精神・心理的な要因による非てんかん性心因発作があります。また、局所的に痙攣を起こす疾患には、顔やまぶた、首、肩などにかけてあらわれる片側顔面痙攣、眼瞼(がんけん)痙攣、チック、痙性斜頸(けいせいしゃけい)、字が書けなくなる書痙(しょけい)などがあります。

痙攣(けいれん)に加えて筋肉の違和感や痛みを伴う場合に考えられる疾患

※以下の疾患は、医師の診断が必要です。
下記疾患が心配な場合には、早めに医師の診察を受けましょう。

<疾患一覧>

疾患 主な症状
眼瞼(がんけん)痙攣 自分の意志と関係なくまばたきがうまくできない
以前にないまぶしさを感じる、目がゴロゴロする など
※まぶたがピクピクと痙攣している状態を眼瞼ミオキニアといいます。
痙性斜頸(けいせいしゃけい) 首の痛みや肩こり(初期症状)
頭が横に傾く、横を向く、前か後ろに倒れる、肩が上がる など
片側顔面痙攣 顔の片方の目の周り、頬や口もとがピクピク痙攣する
書痙(しょけい)、職業性ジストニー 字を書こうとすると腕が固まったり、手が震えて字が書けなくなるが、字を書く以外の動作では痙攣が起こらない
チック(トゥレット症候群) 自分ではコントロールできないまばたきを繰り返す、
顔をしかめる、首振り など
三叉(さんさ)神経痛 目、あご、頬を中心に突然痛みが発生。その痛みが出る瞬間に顔の筋肉が一瞬収縮し、ピクッと動く。
破傷風(はしょうふう) 傷から感染すると3日~3週間ほどで、首筋がはる、口を開けにくい、体が痛いなどが起こる
てんかん 突然意識がなくなり、全身の筋肉が緊張して棒のようになり、続いて体が大きくふるえる
妊娠高血圧症候群 むくみ、高血圧、たんぱく尿 など
脳疾患(脳腫瘍、脳出血・脳梗塞) 頭痛、嘔吐、手足の痙攣があらわれる

眼瞼(がんけん)痙攣

脳の神経回路の何らかの異常により、まばたきがうまくできない、眼を開けようとしてもうまく開けられず、意志に反して瞼が閉じてしまうという制御の異常が生じる疾患で、40〜50歳代の女性に多く発症します。脳のまばたきをつかさどる部分の異常が原因といわれ、目の酷使、ストレス、ドライアイ、先天的な異常などが関係していると考えられています。以前にないまぶしさを感じたり、目がしょぼしょぼしたりまばたきが増えるなどの症状がみられ、重症化すると目が開けられないために物が見えなくなることもあります。
薬の服用が必要となることがあるため、医療機関の受診が必要です。
一方で瞼にある眼輪筋という筋肉がピクピクする状態を眼瞼ミオキニアといい、睡眠不足や疲れなどで起こります。自然に軽快することが多く、休息や睡眠によって改善すると言われています。

関連する記事はこちら
目の乾燥(ドライアイ)

痙性斜頸(けいせいしゃけい)

首の周囲の筋肉に異常な収縮が起こり、首が一定の方向に曲がった状態になる疾患です。脳から筋肉に異常な命令が伝えられることが原因で、ストレスや疲労が関係していると考えられています。初期に首の痛みや肩こりがあらわれ、頭が横に傾いたり、横を向いたり、前か後ろに倒れたり、肩が上がるなどの症状が起こります。

関連する記事はこちら
首が回らない 首のこり 肩こり

片側顔面痙攣

顔の片方の目の周り、頬や口もとがピクピク痙攣する疾患です。目の周りから始まることが多く、徐々に頬や口の周りなどに範囲が広がり、進行すると一定時間目をつぶってしまったり、顔が引きつって歪むこともあります。顔の動きをつかさどる顔面神経が、主に血管の神経に圧迫されることで起こると考えられています。中高年の女性に多くみられます。

書痙(しょけい)

字を書こうとするときに腕が固まったり、手が震えて字が書けなくなる状態が書痙です。一日中、字を書いている人に多くみられ、字を書く以外の動作では痙攣が起こらないのが特徴です。書痙の他にも、ピアニストなど緊張しながら一定の動作を繰り返す人に起こりやすい痙攣を職業性ジストニーといいます。

チック(トゥレット症候群)

自分ではコントロールできないまばたきを繰り返す、顔をしかめる、首振り、肩のぴくつき、キック、ジャンプなどの運動チックと、咳払い、嬌声、意味不明な言葉を発するなどの音声チックがあります。遺伝的な素因や、脳内の神経伝達物質のアンバランスが関係しているという説があります。主に児童期~青年期の男児に発症しますが、その時期が過ぎると軽くなるケースや自然に治る場合もあります。

三叉(さんさ)神経痛

顔のこめかみから目、あご、頬と三本に枝分かれした三叉神経が支配する領域に起こる痛みを三叉神経痛といいます。多くは、脳に流れる血管がこめかみで神経に触れたり、神経を圧迫したりして起こります。目、あご、頬を中心に、突然ぴりぴりと痛みがあらわれます。その痛みが出る瞬間に顔の筋肉が一瞬収縮し、ピクッと動きます。鋭い痛みが間隔をおいて繰り返すたびに痙攣が起きるため、疼痛性チックと呼ばれています。

破傷風(はしょうふう)

土の中の破傷風菌に感染して発病する疾患です。傷から感染すると3日~3週間ほどで、首筋がはる、口がこわばって食べ物が飲み込みづらくなる、舌がもつれるなどの症状があらわれます。さらに、筋肉が硬直し、体をのけぞらせる痙攣発作を繰り返して呼吸困難に陥り、死亡することもあります。錆びた釘を踏んだり、動物に噛まれた場合などで傷ついたときは破傷風感染の恐れがあるので、注意が必要です。

てんかん

てんかんは脳の電気活動に異常が起こり、痙攣や意識消失などの発作を繰り返す疾患です。てんかんには全般発作と焦点発作と呼ばれるものがあり、焦点発作は手や顔の一部がピクピク動いたり、体の一部がしびれたり、光がみえたり、言葉が出なくなるなどの症状があらわれます。

こちらの記事もチェック てんかん(全身)

妊娠高血圧症候群

妊娠中毒症と呼ばれていた疾患で、むくみ、高血圧、たんぱく尿が特徴です。妊娠後期に起こることが多く、胎児の発育障害や脳出血などを引き起こすことがあって、母子ともに危険な状態になる場合があります。重症の場合は、全身の痙攣発作と昏睡をともなうことがあり、発作の前ぶれとして目のちらつきや吐き気、頭痛、めまいなどがあらわれます。

こちらの記事もチェック
血圧が高めである

脳疾患(脳腫瘍、脳出血・脳梗塞、頭部外傷、脳炎)

脳の組織に腫瘍ができると頭の一部に鈍痛や重さを感じ、嘔吐や神経を刺激することで痙攣発作があらわれます。また、脳梗塞は脳の血管に血液の塊が詰まることによって脳の組織が破壊される疾患ですが、脳梗塞を起こした人が急に手足のふるえやガクガクとするけいれん発作がみられたり、ろれつが回らなくなったりすることがあります。

※以上の疾患は、医師の診断が必要です。
上記疾患が心配な場合には、早めに医師の診察を受けましょう。

スポーツ前の準備運動やマッサージ、上手なストレス発散などで筋肉の痙攣(けいれん)を予防しよう

準備運動やマッサージを行い、ミネラルを補給する

急に運動を開始したときや、立ち仕事の場合には足がつりやすくなります。スポーツなどを始める前にはウォーミングアップをして筋肉を温め、終了後や帰宅後はマッサージ、ストレッチ、入浴などで筋肉の疲労を取り除きましょう。また、カルシウムの多い牛乳や緑黄色野菜、マグネシウムの多い海藻類や大豆、貝類などを積極的にとりましょう。

目を休め,室内の乾燥を防ぐ

長時間にわたって目を酷使するときは、1時間ごとに約15分は目を休めましょう。目の疲れをとるマッサージをしたり、蒸しタオルをまぶたにのせて目の周りの筋肉を温めると効果的です。また、目が乾燥しないように、加湿器などで室内の湿度を調節しましょう。目の健康に良いとされる、ビタミンA、C、E、B群をとることも大切です。

ストレスを溜めない、生活習慣を見直す

痙攣の多くはストレスが引き金になったり、悪化の要因になったりすると考えられるため、趣味を見つけるなどストレスを上手に発散することが大切です。また、食事内容や栄養バランスに気をつけたり、適度な運動を習慣づけるなど、生活習慣を見直しましょう。

全身性の痙攣(けいれん)が起こったら病院へ

全身的な痙攣は、脳の病気や内臓の重い病気で起こる場合もありますので、発作がおさまっても早期に内科や神経内科あるいは脳外科を受診しましょう。また、足などの筋肉がつる症状が繰り返し起こる場合、疾患が隠れていることがありますので、早めに検査を受けましょう。

プチメモ子どもは痙攣を起こしやすい

子どもは痙攣を起こしやすい

子どもは発熱とともに起こる熱性痙攣の他、憤怒(ふんぬ)痙攣といって激しく泣いたときに呼吸が止まり、顔が紫色(チアノーゼ色)または蒼白になって痙攣を起こすことがあります。これは泣き入りひきつけとも呼ばれ、脳が酸素不足になることで起こります。子どもがよく痙攣を起こすのは脳が未熟なためと考えられ、多くの場合、3歳を過ぎると自然に起こらなくなります。回数が多い場合や発作の程度が強い場合は、小児科に相談しましょう。