市民公開講座  女性とこころとからだの健康

[ 専門家に聞く ]女性とこころとからだの健康/東京足立病院院長 内山 真 先生

睡眠は私たちにとってとても大切なものですが、理想の睡眠とはどの程度の時間を言うのでしょうか?女性が気になる不眠の現状、また、すこやかな眠りの工夫などについても紹介します。

ほどほどの睡眠が長生き/睡眠は長ければ長いほどよいのでしょうか? その疑問に答えるデータが発表されています。アメリカで110万人を対象にした6年間の調査によれば、睡眠時間6.5〜7.5時間の人が、6年後の死亡リスクが最も低いという結果でした。それより睡眠時間が短い人たちはこのリスクが高くなり、8時間を越える長い睡眠時間の人もリスクが高くなっています。つまり、人間にはほどほどの睡眠時間があって、短くても長くてもよくないということです。これまでは、休養は長ければ長いほど体にとってプラスだと思われていましたが、実はそうではないことがこの10年あまりの研究でわかってきました。

睡眠時間と死亡率の関係

年齢と睡眠時間の関係/では、どんな人も6.5〜7.5時間が健康のためには理想的なのでしょうか? 2004年に、ひとつも病気がなく、血液検査にも異常が見られない厳密な健康人(超健康人)の脳波で測定した睡眠時間(実際に眠っている時間)は次のような結果でした。

超健康人の脳波で測定した睡眠時間

よく「睡眠時間は8時間」と言われますが、8時間の睡眠時間をとっているのは14〜15歳であり、成人してからは20年で30分ずつくらい短くなっています。これは寝床に入っている時間(就床時間)とは異なるものです。年をとると就床時間は長くても実際に眠っている時間はこのくらいになるということです。人間は人種を問わずだいたい7時間前後の睡眠時間の人がほとんどです。個人差・年齢差はありますが、健康にはほどほどの睡眠時間がいいのです。

不眠は女性に多い/不眠は実は女性に多いことが調査で明らかになっています。特に寝つきの悪さが女性で目立つということが言われています。

日本人における不眠の有病率

女性の不眠の理由/なぜ女性に不眠が多いのでしょうか?理由の1例をあげてみます。数年前にヨーロッパの大規模な研究からも示されていますが、男性は50歳を過ぎると急速に朝型化して、早寝早起きになり、休日でも早く起きて夜も早く寝てしまいます。

女性は、歳をとってもあまり変化しないために男性に合わせて早寝すると、体は眠る準備ができていないのに寝床に入るので、それが寝つきの悪さを助長してしまうのです。女性の朝型化は男性に比べて10〜15年遅いので、睡眠時間帯が夫婦で合わなくなったという人は結構いるようですが、夫に合わせているうちにいつのまにか自分でなんとか早く寝ようと努力しかえって寝つけなくなる場合が多いようです。これは男女の体質的な差ですので、無理に付き合って就寝しないで、むしろ夜の時間帯を自分で楽しむ工夫をすることが大切です。

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