慢性的な疲労感に悩まされたり、目、肩、腰の痛みを感じたりしたときに有用なのが、エネルギー不足を補い、神経痛・筋肉痛・関節痛を緩和するビタミンB1。そして、そのビタミンB1を体内でより効果的に作用するように開発されたのが「フルスルチアミン」です。ここでは、そんなフルスルチアミンについて詳しく紹介します。
- ※当記事の内容は特定の製品の効能効果を示すものではありません。
疲労はメンタルヘルス疾患や病気のもと?
~抗疲労成分フルスルチアミンの可能性~
フルスルチアミンとは?
私たち人間は、細胞の中で三大栄養素(糖質、脂質、タンパク質)からエネルギーを生み出し、生命を維持しています。ビタミンB1は、糖質からエネルギーを生み出すために不可欠な栄養素。アルコールの代謝時やストレスを受けたときにも大量に消費されます。ただ、ビタミンB1は水溶性で、水に溶けやすく熱にも弱いため、食材からとる場合、調理時の水洗いや加熱などによって失われやすく、また一度にたくさん摂っても腸から吸収できる量に限りがあることが分かっています。
そんなビタミンB1の弱点を補い開発されたのが、ビタミンB1の構造を変えて腸から吸収しやすい形(これを誘導体といいます)にした「フルスルチアミン」です。フルスルチアミンは医薬品成分であり、医薬品(医薬部外品含む)にのみ配合が認められています。
【特徴1】腸管からの吸収率が高い
ビタミンB1に比べ、フルスルチアミンの吸収率が高いことは複数の臨床試験で報告されています1)。
では、なぜフルスルチアミンは腸管から吸収されやすいのでしょう。
水溶性(水に溶けやすい)であるビタミンB1は、脂質でできている細胞膜を直接通過することができません。運搬役となる“トランスポーター(輸送担体)”が必要です。これに対し、脂溶性(油に溶けやすい)であるフルスルチアミンは、トランスポーターがなくても細胞膜を通過して細胞内に入ることができます。そのため、ビタミンB1に比べて、腸管からより良く吸収され、組織内により多く行き届くのです。
- 1)糸川 嘉則ほか:ビタミン;66(1),35-42,1992
フルスルチアミンが腸管から吸収されやすい理由
ビタミンB1は腸管から吸収され、血流に乗って筋肉、臓器、神経へ移行するが、水溶性のためトランスポーターが必要なことから吸収や組織移行に限度がある。
※ここでのトランスポーターとは、小腸の細胞膜の内と外でビタミンB1などの物質を通過させるしくみのこと。
トランスポーターに依存しないフルスルチアミンは腸管からの吸収が良く、大量に血球を含む組織へ移行。そこで、細胞内で効果を発揮する形である「活性型ビタミンB1」を生成して作用する。
【特徴2】脳や心臓、筋肉に多く移行
フルスルチアミンが、脳や心臓、筋肉に取り込まれやすいことは動物試験で示されています(表①)。
(表①)/フルスルチアミンは脳や心臓、筋肉に多く移行
球の数が多いほど組織移行のよいことを示す。
出典/当社資料
放射線同位体(14C)で印をつけたフルスルチアミン、ビタミンB1をラットに経口投与し、30分後、360分後にラジオルミノグラムにより解析したときの各臓器の放射線分布を表した。
【特徴3】活性型ビタミンB1を多く生成
ビタミンB1は、細胞内に入ってから活性型ビタミンB1に変換されることで、エネルギーの産生を助け、神経などの働きを正常に保つ補酵素として働きます。吸収された後にフルスルチアミンから復元されたビタミンB1も活性型ビタミンB1に変換されて作用する点は同じです。しかし、フルスルチアミンはビタミンB1に比べ吸収がよいので、活性型ビタミンB1になる量が多いのが特徴です。
フルスルチアミンとビタミンB1それぞれ100mgを別の日に服用し、血中の活性型ビタミンB1の濃度を比較した研究があります。フルスルチアミン投与後の活性型ビタミンB1生成量は、1時間後でビタミンB1の約1.4倍、3時間後で約2.8倍でした2)。
- 2)日本臨牀;20(10), 1957-1966,1962
試験で確認されている「フルスルチアミン」の効能・効果
【効能・効果1】眼精疲労を軽減
目を使う作業を続けることにより、眼痛や目のかすみ、充血などの目の症状や、頭痛、肩こり、吐き気などの全身の症状が現れ、睡眠や休養をとっても回復しにくい状態を眼精疲労といいます。目の疲れの原因には、ピントを合わせる目の筋肉の機能低下や、視神経の機能低下などがあります。フルスルチアミンはエネルギー産生をサポートするほか、過労等で機能が低下した目の神経や筋肉の回復を助けると考えられています。
フルスルチアミンが眼精疲労を軽減することは、臨床試験で報告されています3)。
- 3)日本眼科紀要;41(8),1473-1478,1990
【効能・効果2】肩こりや腰の痛みが和らぐ
肩こりの原因の多くは肩の筋肉の疲れです。筋肉が常に緊張していると収縮し硬くなり、血管が圧迫され血行が悪化すると、末端まで酸素や栄養が運ばれにくくなり、エネルギーが作られにくくなります。すると、肩の筋肉の代謝が阻害され疲労物質が蓄積されて神経を刺激するために、こりや痛みが生じます。また、一般に腰痛は腰の筋肉や関節などの神経が刺激され、痛みが起こります。
フルスルチアミンは傷ついた神経を修復し、神経や筋肉の機能低下を回復することで、肩こりや腰痛などの症状を和らげることが認められています。
- ※ 一般用医薬品でのフルスルチアミンの1日服用量は成人で最大100mgです。
【効能・効果3】疲労感を減らす
肉体労働や激しい運動などの際には安静時よりも多くのエネルギーを必要とし、エネルギー産生が十分に行えないことが疲れの原因となります。フルスルチアミンはエネルギー産生を高めることで疲労感を軽減します。
激しい運動後などの疲労感に対するフルスルチアミンの効果についても報告があります4)。
- 4)防衛衛生;19(4),123~127,1972
【効能・効果4】疲労状態からの回復を促す
疲れの原因の一つが「細胞のエネルギー不足」です。細胞は自らエネルギーを生み出していますが、その際に生じる活性酸素によって細胞はさびつき(酸化され)、機能が低下します。細胞機能が低下した状態のまま無理をして活動し続けると、細胞を修復するためのエネルギーも不足してしまい、修復が間に合わず疲れが出てきてしまいます。ビタミンB1は細胞内で糖質からエネルギーを生み出す「潤滑油」の働きをしていますが、フルスルチアミンはより効率的にエネルギー産生をサポートするので、疲労回復に役立ちます。
動物実験でも抗疲労効果が確認されています5)。
- 5)日下幸則: ビタミン;78(3),185,2004
「フルスルチアミン」の秘められた働き
傷んだ神経を修復する
ビタミンB1は神経の情報伝達などの働きにも関与します。神経細胞の主要なエネルギー源になるのが糖質(ブドウ糖)です。冒頭述べたようにビタミンB1は、糖質からエネルギーを生み出す際に必要不可欠なため、神経の働きを支える重要な物質でもあります。これはフルスルチアミンも同様です。
動物実験でもフルスルチアミンを投与すると、神経機能の回復が促進されるという報告があります6)。
- 6)中沢恒幸ほか: ビタミン;32(5),434-447,1965
風邪などの病後の回復を早める
風邪にかかったとき、熱などの症状が治まった後にもだるさや倦怠感、疲労感がとれないことがあります。これらの症状は、風邪ウイルスを抑えるために体内で作られる炎症性サイトカイン(免疫物質の一種)によってもたらされる反応です。このつらい症状からの回復をフルスルチアミンが促進する可能性があります。
風邪のような症状を生じさせる物質を投与した動物試験で、症状が出る前からフルスルチアミンを投与したところ、行動量の低下からの回復を促す傾向が認められました7)。
- 7)片岡洋祐ほか: 医学のあゆみ;228(6),728-732,2009
腸のぜん動運動を活発にし、便秘を改善
小腸は脳からの自律神経の支配によってその活動が細かく調整されています。しかし一方で、脳からの指令がなくても(自律神経が切断されても)、独立して腸粘膜の活動を促すローカル神経ネットワーク(アウエルバッハ神経叢など)が存在することが動物実験で確認されています。
フルスルチアミンは腸壁内に特有のこの神経ネットワークに働きかけ、ぜん動運動を促し、便秘を改善すると考えられています。
「フルスルチアミン」の可能性-最新の研究
ここでは、フルスルチアミンの可能性を示すものを最新の研究から紹介しましょう。
脳の神経伝達物質「ドーパミン」が増え、意欲が高まり、活動性が上がる!?
運動は健康に良く、生活習慣病の予防にも重要であることは誰もが知っていることでしょう。それでも「運動する気が起こらない」という人に運動に取り組んでもらうには、意欲を高める脳内の神経伝達物質「ドーパミン」の分泌を促すことが有効とされています。ドーパミンは、意欲や運動、快楽などに関わる神経伝達物質で、私たちが何かをしようとする意欲を持ったときにドーパミンの分泌が高まり、それが「楽しい」という心地良さにもつながるのです。
フルスルチアミンは、疲労をケアしながら、脳においてドーパミンの分泌を高め、前向きな気持ちや運動する意欲を高める可能性があります。
動物実験ではフルスルチアミンを投与すると、自発的な行動量が増加し、ドーパミンの分泌が高まったという報告があります8)。
- 8)Masato Saiki et al.: Sci Rep.;8,10469,2018
「フルスルチアミン」の用法・用量
フルスルチアミンは医薬品成分であり、医薬品(医薬部外品含む)にのみ配合が認められています。
一般用医薬品でのフルスルチアミンの1日服用量は15歳以上で最大100mgです。他のビタミンB群なども配合したビタミン剤が市販されています。
服用できる年齢は必ず各ビタミン剤の添付文書等を確認のうえ、用法・用量は厳守してください。わからないことがある場合は医師、薬剤師または登録販売者に相談しましょう。
「フルスルチアミン」の副作用・依存性
副作用
フルスルチアミンが配合されているビタミン剤の用法・用量を守ったうえで服用後に、皮膚の発疹・発赤やかゆみ、吐き気・嘔吐、口内炎などの症状があらわれた場合は、副作用の可能性があります。直ちに服用を中止し、医師、薬剤師または登録販売者に相談してください。
また、フルスルチアミンが配合されているビタミン剤の用法・用量を守った上で服用後に軟便や下痢の症状があらわれることがありますが、これらの症状の持続または増強が見受けられた場合には、服用を中止し、医師、薬剤師または登録販売者に相談してください。
依存性
フルスルチアミンに依存性(やめたくても、やめられない状態になること)はありません。また、耐性(くり返し使用することで薬が効かなくなること)もないため、肩こりや腰痛の症状が緩和したり、疲労への効果を実感いただけるのであれば、継続して服用することができます。用法・用量、使用上の注意を守って服用するようにしてください。
元気な毎日を送るために。フルスルチアミンを上手に取り入れよう
糖質中心の食生活を続けたり、アルコール摂取量が増えたり、ストレスの負荷が大きくなったりすると、ビタミンB1は大量に消費されます。フルスルチアミンを摂取し、あらかじめ体内に適切な量のビタミンB1を保持しておくことは、ビタミンB1不足を防ぐことにも繋がります。
市販されている製品には、フルスルチアミンをはじめとするビタミンB群のみを配合している製品に加え、栄養素を体のすみずみまで届けてくれるように血液循環に関与するビタミンEも組み合わせた製品などもありますので、自分に合ったタイプを選び、心身共に活力あふれる毎日を送りましょう。
- 参考
- ・日本臨牀;20(10), 1957-1966,1962
- ・日本眼科学会「一般の皆さまへ」
https://www.nichigan.or.jp/public/ - ・日本眼科紀要;41(8),1473-1478,1990
- ・阿部達夫ほか: 臨床と研究;60(3),263-278,1983
- ・防衛衛生;19(4),123~127,1972
- ・糸川 嘉則ほか:ビタミン;66(1),35-42,1992
- ・中沢恒幸ほか: ビタミン;32(5),434-447,1965
- ・日下幸則: ビタミン;78(3),185,2004
- ・片岡洋祐ほか: 医学のあゆみ;228(6),728-732,2009
- ・福原武ほか: ビタミン,31(6),494-499,1965
- ・福原武: 日平滑筋誌 5,1-8,1969.
- ・Masato Saiki et al.: Sci Rep.;8,10469,2018
- 「フルスルチアミン」に関連するリンク
- ・多くの人が、仕事環境の変化などで、疲れを感じています!
https://alinamin-kenko.jp/fursultiamine/fact/01.html - ・現代人の共通悩み目の疲れ・肩や腰の痛み、疲れを軽くする
https://alinamin-kenko.jp/fursultiamine/fact/02.html - ・疲れに抗疲労物質フルスルチアミン
https://alinamin-kenko.jp/fursultiamine/core-mechanism/03.html