生理痛
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生理痛

生理(月経)中に起こる下腹部、腰部の痛みのことです。受精卵の着床に備え増殖した子宮内膜が不要になってはがれ落ち、血液とともに体外に排出される際の子宮の収縮が痛みを生み出します。

井上修二 先生

監修

井上修二 先生 (いのうえしゅうじ) (共立女子大学名誉教授、医学博士)

日常生活から考えられる原因

子宮の発達の未熟

10歳代の若い女性は、子宮が未成熟で子宮頸部が狭く、月経血がスムーズに流れず子宮内部に溜まり、それを押し出すために子宮が強く収縮して痛みが起こることがあります。

思春期や更年期の女性ホルモンの分泌の変化

思春期には子宮の発育不全によって女性ホルモンが正常に分泌されないことがあり、それが原因で生理痛が起こります。また、更年期の頃になると女性ホルモンの分泌が減って、子宮収縮の他に、子宮内膜がはがれるときにも生理痛が起こることがあります。

体質的にホルモンの分泌が多い

子宮内膜でつくられ、子宮を収縮させて経血の排出を促すホルモン、プロスタグランディンの分泌が多いと、子宮の収縮が強くなり、生理痛が強くなります。

精神的なストレス

生理前や生理中に気分が落ち込んだり、イライラして八つ当たりしてしまったり、不眠や不安、怒りなどが強くあらわれ、自分でコントロールできなくなってしまう人がいます。これらは仕事での精神的なストレスや過労、生活環境などからきていることも多く、生理痛にも影響を及ぼし、生理痛を悪化させます。

冷えなどによる血流の悪化

体が冷えたり、慢性的な運動不足が続くと骨盤内の血流の悪化を招き、生理痛を引き起こすことがあります。また、締め付けのきつい洋服や下着の着用によって骨盤内の血流が悪化すると、生理痛が増すことがあります。

生理痛の原因となる主な疾患

子宮内膜症や子宮筋腫、子宮腺筋症のように、子宮やその周辺に腫瘍や細胞組織が発生する疾患が、生理痛の原因となります。精神的ストレスや冷えが原因で起こる子宮困難症でも、激しい生理痛に悩まされることも少なくありません。また、生理前にイライラやむくみなど心と体に不快な症状があらわれる月経前症候群(PMS)でも、痛みを感じることがあります。

生理に関係する疾患

※以下の疾患は、医師の診断が必要です。
下記疾患が心配な場合には、早めに医師の診察を受けましょう。

子宮内膜症

本来子宮の内側にしか存在しない子宮内膜に似た細胞組織が、腹膜、卵巣、直腸と子宮の間のダグラス窩など、さまざまな臓器に発生する疾患です。この組織は、子宮内膜と同様に周期的にはがれ落ちますが、周囲の臓器と癒着することで生理痛を悪化させます。女性の10人に1人は子宮内膜症があるといわれており、最近は10〜20歳代にも多くみられます。激しい生理痛や下腹部痛が特徴ですが、他に、腰痛や性交痛、肛門の奥や排便時の痛みや吐き気、嘔吐などの症状がみられ、不妊の原因になることもあります。

子宮筋腫

子宮にできる良性腫瘍。30〜40歳代に多く、成人女性の5人に1人は筋腫があるといわれています。初期の自覚症状はほとんどありませんが、筋腫が大きくなると生理痛が強くなり、経血の増加や期間の長期化がみられます。そのため、貧血やめまい、立ちくらみなどを引き起こします。また、周囲の臓器にも影響を与えて、頻尿や排尿、排便時の痛み、腰痛を起こすこともあります。不妊や流産の原因にもなります。

子宮腺筋症

少し前まで子宮内膜症の一種でしたが、発生の仕組みが異なるのでいまは子宮腺筋症として扱われています。子宮腺筋症とは子宮内膜組織が子宮の筋層に入り込んで増殖していく疾患です。症状としては激しい生理痛があり、経血が多くなるため慢性的な貧血になることがあります。これらの症状は子宮筋腫と似ており、見分けが難しいことがあります。また子宮筋腫と合併して起こることも多いといわれています。

月経困難症

生理がはじまり、日常生活に支障をきたすほどの生理痛になるのが月経困難症です。激しい生理痛や腰痛の他に、頭痛や吐き気、眠気やイライラ、気分の落ち込みなど、心と体の双方に症状がみられます。子宮内膜症や子宮筋腫が原因となる場合もあります。

この疾患・症状に関連する情報はこちら。 生理不順・生理困難

月経前症候群(PMS)

毎月生理前になると心と体に不快な症状があらわれ、日常生活に支障をきたす状態を月経前症候群といいます。下腹部が痛くなったり、重くなったりする他、胸の張りや痛み、顔や手足がむくむ、疲れやすい、肩こりやイライラ、ゆううつ感などの症状があらわれます。また、便秘や吹き出物などを訴える場合もあります。これは、女性ホルモンの分泌の変化によるものと考えられています。

※以上の疾患は、医師の診断が必要です。
上記疾患が心配な場合には、早めに医師の診察を受けましょう。

日常生活でできる予防法

年一回の婦人科健診

生理痛は、子宮内膜症や子宮筋腫などの疾患が原因でも起こることがあります。初期段階では自覚症状があらわれない病気も多くありますから、年に一回、定期的に婦人科健診を受けましょう。

下半身を温める

お腹に膝かけをかける、下腹部に使い捨てカイロをあてる。さらに足湯をするなどして下半身を温めて骨盤内の血行を良くすることで、生理痛をやわらげることができます。

血行を良くする食品をとる

ゴマやカボチャ、アーモンドなど、血行を良くするといわれるビタミンEを多く含んだ食品を積極的にとりましょう。

服装選びに注意する

生理痛は骨盤内の血流が悪くなると強くなります。締め付けの強い洋服や下着は避けましょう。

対処法

体を温める体操や足湯

生理痛をやわらげるには、「腰を回す」「椅子に座って足首の曲げ伸ばしをする」など、下半身の血行を良くする体操が効果的です。ぬるめのお湯に少し長めにつかるか、熱めのお湯で15〜20分ほど足を温める足湯も、血行が良くなり痛みがやわらぎます。

痛みに効くツボを押す

おへその下、指1〜2本分のところや、背骨の左右指2本分のところ(あばら骨の一番下で、おへその高さにある)、膝から指4本分ほど上の辺り、足の内側のくるぶしは、生理痛に効くツボがあるといわれています。指で押してジーンとなるところがツボ。このツボを探して親指で押すと、下腹部の痛みが和らぐことがありますので、試してみましょう。

膝を曲げて横になる

あおむけで膝を曲げて寝ると、腹筋がゆるんでお腹の緊張がとけ、骨盤内の血行が良くなって痛みがやわらぎます。膝かけなどをかけ、お腹周りを温かくしておきましょう。

市販の薬を使う

痛みを感じたら、我慢せずに、早めに鎮痛剤を服用してみましょう。鎮痛剤は早めに服用すればきちんと痛みをやわらげることができます。

病院で診察を受ける

生理痛は月経困難症や子宮内膜症、子宮筋腫など、子宮の病気が原因でも起こります。市販の鎮痛剤でも痛みが収まらない場合は、病院で診察を受けましょう。

プチメモ生理のときのおやつはプルーン

生理のときのおやつはプルーン

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