しみ・そばかす・日焼け
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しみ・そばかす・日焼け

しみは主に紫外線によるメラニンの蓄積、そばかすは多くが遺伝によってできると考えられています。日焼けは紫外線に皮膚が反応したものです。どれもメラニン色素の沈着がかかわっています。ここでは、しみ・そばかす・日焼けについて、原因や症状、予防法、対処法をご紹介します。

小林 智子 先生

監修

小林 智子 先生 (皮膚科専門医・医学博士)

しみ・そばかす・日焼けとは

しみは主に頬骨の部分にできる丸く茶色い斑点で、はじめは薄い茶色ですが、次第に濃くなっていきます。
そばかすは、三角形や四角形の淡い褐色や黒褐色の斑点です。数mm前後の小さな斑点が、顔の両頬から鼻筋に多くできます。
日焼けは、紫外線に人の皮膚(肌)が反応し、赤くヒリヒリとした炎症や褐色化などの変化を起こしたものです。

日常生活から考えられるしみ・そばかす・日焼けの原因

しみの原因は紫外線によるメラニンの蓄積とターンオーバーの乱れ

紫外線を浴びると皮膚は黒褐色のメラニン色素をつくり出します。メラニン色素は紫外線による害から私たちの体を守っているのですが、過剰になると皮膚に沈着して残り、しみになります。
メラニン色素は通常、肌のターンオーバー(皮膚の古い組織が表面に押し出されて、新しい細胞へと生まれかわること)によって排出されます。しかし、このターンオーバーの周期が乱れ、メラニン色素がうまく排出されず、いつまでも皮膚の中に残ってしまうことでしみになります。

しみについての詳しい情報はこちら しみ対策を解説!原因や予防方法、しみ消しにおすすめのスキンケアも紹介

そばかすの原因は遺伝による素因の影響と紫外線からの防御反応

そばかすは主に遺伝によってできると考えられています。色白の人にできることが多く、一般的に5~6歳頃から両頬に出始め、思春期頃に最も目立ち、年齢を重ねるとともに次第に薄れていきます。紫外線などの刺激を受けて、濃くなったりすることもあります。

日焼けの原因は太陽光線に含まれる紫外線

紫外線には、エネルギーの弱いUV-A波とエネルギーの強いUV-B波があり、これらが日焼けの原因になります。
エネルギーの弱いUV-A波が体内に侵入すると、皮膚細胞がダメージを受けないようメラニン色素が増え、その影響で皮膚の褐色化や黒ずみが起こります。
一方、エネルギーの強いUV-B波を浴びると、数時間後に皮膚が赤くなり、ヒリヒリとした痛みがあらわれます。熱が出たり、水ぶくれなどができたりすることもあります。

しみ・そばかすができる仕組み

皮膚は、表皮、真皮、皮下組織の3層構造になっており、体の表面を覆う約0.2mmの表皮は、表側から角層(かくそう)、顆粒層(かりゅうそう)、有棘層(ゆうきょくそう)、基底層(きていそう)の4つの層に分かれています。紫外線を浴びると、表皮の基底層にあるメラニン色素を産生する細胞・メラノサイトが活性化されます。メラノサイトがつくり出した黒色メラニン色素は紫外線を吸収して真皮に侵入するのを妨げ、細胞の構造がダメージを受けないように保護するのです。
メラニン色素は通常、肌のターンオーバーによって皮膚表面に押し出され、あかと共にはがれ落ちるため、肌の色は一定に保たれています。ところが、紫外線によるメラニンが過剰に産生され、肌のターンオーバーの周期が乱れたりすると、色素の生成と排出のバランスが崩れます。その結果メラニン色素が肌の内部に過剰に蓄積され、しみやそばかすの原因となるのです。

しみ・そばかすの種類(症状)

※以下の症状の中には、医師の診断が必要なものもあります。
症状が続くなど心配な場合には、早めに医師の診察を受けましょう。

老人性色素斑

比較的境界がはっきりした数mm~数cm大の褐色・濃褐色の色素斑のことです。顔や手の甲、腕などの紫外線が当たりやすい部分にできます。幼少期から浴び続けてきた紫外線や加齢による肌のターンオーバーのサイクルの乱れが原因と考えられています。

肝斑(かんぱん)

両頬や額、口のまわりに、左右対称にできる薄い褐色の色素斑です。かゆみはありません。20代後半~40代の女性に多く見られ、紫外線や女性ホルモンの乱れが原因と考えられています。

炎症後色素沈着

傷、やけど、ニキビ、化粧品によるかぶれなどから生じた炎症が原因で起こる色素沈着です。炎症が続かなければ時間の経過とともに消えますが、長期間残ってしまう場合もあり、紫外線の影響で濃くなることもあります。

後天性真皮メラノサイトーシス(ADM)

10代後半以降に主に両頬にできる、小さな点状の青アザのような色素斑のです。左右対称に額の外側、鼻の脇、下まぶたにも現れることがあります。メラノサイトは通常は表皮に存在するのですが、後天性真皮メラノサイトーシスは表皮だけでなく真皮においても増加するため、青く見えるのが特徴です。

雀卵斑(そばかす)

三角形や四角形の淡い褐色や黒褐色の斑点のことです。見た目がスズメの卵の模様と似ていることから「雀卵斑(じゃくらんはん)」と呼ばれます。顔の両頬から鼻筋に多くでき、主に遺伝によってできると考えられています。

日常生活でできるしみ・そばかす・日焼けの予防法

いつでも紫外線対策を行う

紫外線は季節にかかわらず降り注いでいます。ガラスや雲も通すので、日頃から日焼け止めを使うなどして、紫外線対策を行いましょう。
ビタミンAやC・E、L‐システイン、ポリフェノールなどには、紫外線から皮膚を保護する働きがあります。これらの栄養素が多く含まれているかぼちゃやトマトなどの緑黄色野菜、玄米、ココア、にんにく、タマネギなどを積極的に摂るとよいでしょう。
なお、ビタミンDは骨や歯の発育などに欠かせない栄養素として知られていますが、食事や医薬品から摂取する以外にも、紫外線があたることで皮膚の表面につくられ、体内に吸収されます。過度なUVケアによるビタミンD不足にも注意が必要ですが、顔についてはしっかりと紫外線から肌を守った方が良いでしょう。

日焼け後のケアについての詳しい情報はこちら 日焼けをしたら、その後のケアが重要!顔や体のおすすめ日焼けケア

肌のターンオーバーを促進する

メラニン色素が過剰につくり出されたとしても、通常は肌のターンオーバーによって排出されます。健やかな肌を目指すには、ターンオーバーの周期を乱さないように整えておくことが大切です。
周期が乱れる原因として、次のものが挙げられます。

  • 食生活の乱れ
  • 運動不足
  • 睡眠不足
  • 疲労
  • 就寝前の飲食 など

肌のターンオーバーの周期を整えるためには、生活習慣を改善するとともに、ターンオーバーを促す働きを持った、次のような栄養素を積極的に摂ることをおすすめします。

  • タンパク質:皮膚の材料となるコラーゲンのもとになる
  • ビタミンB群:皮膚や食事からの栄養の代謝を助ける
  • ビタミンC:コラーゲンの吸収を促進し、抗酸化作用を発揮する
  • 亜鉛:細胞の分裂や再生を助け、免疫力を向上させる
  • 食物繊維:腸内環境を整えて、老廃物を排出しやすくする

しみ・そばかす・日焼けができてしまった時の対処法

日焼けで赤く腫れたらまず冷やす

日焼けにより赤く腫れてヒリヒリと痛む、水ぶくれとなって皮がむけるなどの場合はなるべく早く冷やすことが大切です。水で濡らしたタオルを体に当てたり、水のシャワーを短時間浴びたりするとよいでしょう。

病院で診察を受ける

いつもより日焼けの状態がひどく、水ぶくれや皮膚の腫れ、皮がむけた部分の感染などの症状が見られる場合には医師の診察を受けるようにしましょう。
毎日のスキンケアや美白用医薬品などのホームケアでは解消できないメラニン色素の増加やしみに対するケアとしては、美容皮膚科や美容外科で行われるケミカルピーリングやレーザー治療などを受けるという方法もあります。
しかし、肝斑はレーザー治療によって悪化する場合があったり、反対に後天性真皮メラノサイトーシスはレーザーでないと改善できないなど、しみの種類によって治療方法は異なります。まずは皮膚科医に相談することをおすすめします。

市販の薬を使う

しみの緩和は市販のビタミン剤も効果が期待できます。下記のビタミン類が配合されたビタミン剤を活用してみましょう。

  • ビタミンC:メラニンの生成を抑え黒色メラニンの無色化を促進し、しみやそばかす、日焼けによる色素沈着を緩和する
  • ビタミンE:細胞膜の機能を損なう過酸化脂質の生成を抑え、メラニンの排出を助ける
  • ビタミンB2・B6:エネルギーをつくるのに必要なアミノ酸・脂質の代謝を助けることで肌のターンオーバーを助ける
  • L-システイン:アミノ酸の成分。皮膚代謝の正常化を助けることで肌のターンオーバーを助ける

参考

安田利顕「美容のヒフ科学」(南山堂)2021年
環境省「紫外線環境保健マニュアル 2020」(https://www.env.go.jp/content/900410650.pdf)
渡辺晋一「系統看護学講座 成人看護学12 皮膚」(医学書院)2020年
清佳浩「よくわかる最新医学 皮膚の病気」(主婦の友社)2018年
医療情報科学研究所「病気がみえる vol.14 皮膚科」 (メディックメディア)2020年