しみ・そばかす・日焼けとはメラニン色素の沈着による皮膚の変化

しみ・そばかす・日焼けとは? それぞれの違いやスキンケア方法を解説

しみ・そばかす・日焼けの発生には、いずれもメラニン色素がかかわっています。なかでもしみと日焼けは紫外線によるメラニン色素の沈着・蓄積が主な原因となり、そばかすは加えて遺伝にも大きく関連があります。本記事では、しみ・そばかす・日焼けの種類や原因、改善・治療方法などをご紹介します。
矢上 晶子 先生

監修

矢上 晶子 先生 (藤田医科大学 ばんたね病院 総合アレルギー科 教授)

しみ・そばかす・日焼けとはメラニン色素の沈着による皮膚の変化

しみ・そばかす・日焼けは、メラニン色素の蓄積によって引き起こされます。
一般的に、しみは顔などにできる茶色の斑点を指しますが、その種類はさまざまです。異なる皮膚病変が組み合わさっていることもあります。代表的なしみとしては、老人性色素斑、肝斑(かんぱん)、炎症後色素沈着、後天性真皮メラノサイトーシスなどがあります。
そばかすは雀卵斑 じゃくらんはんとも呼ばれ、鼻や両頬を中心に2〜3mmの小さな茶色い斑点が多数生じます。小学生など若年でできることが多い、遺伝的な要因がかかわっているといった特徴があります。
日焼けは、皮膚が紫外線に晒されることで赤く炎症を起こしたり、メラニン色素の蓄積により黒く変化したりすることです。前者を「サンバーン」、後者を「サンタン」と分けて呼ぶこともあります。

しみとそばかすの違いは発生の時期や遺伝的な要因

よく見られるしみである老人性色素斑や肝斑は、紫外線や加齢により主に中年以降の年齢で発症します。形状は種類によって異なり、老人性色素斑では円形もしくは楕円形で5mm〜1cm程度、肝斑では顔の左右両側に対照的にできる色素沈着であることなどが特徴です。
一方そばかすは、多くは小学生など子供のうちに生じる多数の小さな斑点です。発生や悪化には、紫外線のほか遺伝的な要因もかかわっていると考えられています。

しみとほくろの違いはメラニン色素か母斑細胞か

一般的なほくろは、色素性母斑と呼ばれる良性のできものです。しみはメラニン色素の沈着によって生じますが、ほくろは皮膚に母斑細胞が集まることで生じるという違いがあります。母斑細胞はメラニン色素を含むために色が濃く見え、黒色から茶色までさまざまです。形状も小さいものから大きめのもの、平らなものや盛り上がったものなど多岐にわたります。

日常生活におけるしみ・そばかす・日焼けの原因の多くは紫外線

しみ・そばかす・日焼けの原因として代表的なものは紫外線です。しかし、それ以外にもさまざまな要因が関連していることがあります。

しみの原因は紫外線、ターンオーバーの乱れなど

しみの主な原因は、長年にわたって紫外線を肌に浴び続けることです。通常、紫外線によりメラニン色素が発生しても、肌のターンオーバーによりメラニン色素は排出されます。しかし、年齢を重ねることで肌のターンオーバーが乱れると、メラニン色素が排出されずに皮膚に残り、しみとなって現れてしまうのです。
その他、女性ホルモンやストレス、摩擦の刺激による炎症、外傷による傷などもしみの原因になります。

そばかすの原因は紫外線と遺伝要素

そばかすは、しみと同様に皮膚が紫外線に晒されることの他、遺伝的な要因も関連して発生すると考えられています。血縁関係のある家族の間で発症することも多くあります。

日焼けの原因は日光に当たること

日焼けには2種類あり、日光に当たってからすぐに皮膚が赤くなる「サンバーン」と、しばらくしてから皮膚が黒っぽくなる「サンタン」に分けられます。日光に当たった時に赤くなりやすいか黒くなりやすいかには個人差があります。

サンバーン

サンバーンは、日光により皮膚が炎症を起こすことで発生します。日光に当たってから数時間ほど経ってから赤くヒリヒリとした痛みを感じるようになり、日光が強い場合は水ぶくれや皮剥けが起こることもあります。通常、症状は数日で消失します。

サンタン

サンタンは、日光に含まれる紫外線によりメラニン色素が生成されることで生じます。皮膚の色の変化は数日ほど経ってから現れ、数週間から数ヶ月ほどで元に戻っていきます。
なお、日焼けサロンなどによる日焼けも含め、サンタンを得るために積極的に紫外線に当たることは皮膚にダメージを与えます。長期的に見て皮膚疾患のリスクを高めることにもなりますので、できる限り避けましょう。

紫外線から身を守るためにメラニン色素が産生され、しみ・そばかす・日焼けができる

日光に当たることはビタミンDの合成などの有益な作用ももたらしますが、浴びすぎると人体にさまざまな悪影響を及ぼします。例えば、日光に含まれる紫外線は細胞のDNAを傷つけ、長期間にわたって浴び続けることで皮膚がんなどのリスクを高めてしまいます。
人間には紫外線から身を守るためのさまざまな仕組みがありますが、メラニン色素の産生はその中でも最も強力な防御機能です。皮膚は日光から身を守るため、メラニン色素を作り出して紫外線や赤外線などを吸収します。このメラニン色素の産生により、しみやそばかす、日焼けなどが生じるのです。
皮膚などが日光に晒されることの悪影響は何十年も時間が経ってから現れるため、子供の頃から対策を行うことが重要です。

しみ・そばかすの症状や特徴は種類によりさまざま

顔にできる「しみ」にも、さまざまな種類があります。以下に、特徴をご紹介します。ただし、複数の病変が同時に発生しているなど見分けづらいこともあるため、正確に見分けたい場合は皮膚科医など専門の医師に相談してみるのがよいでしょう。

老人性色素斑

もっとも一般的なしみであり、発症は中高年以降であることが多いですが、若いうちから生じることもあります。
特徴としては、境界がはっきりしている、茶褐色、大きさや形はさまざまである、顔のどこにでも生じるといったことが挙げられます。主な原因は皮膚が紫外線に晒されることです。

肝斑

老人性色素斑同様、よく見られるしみです。中年女性に生じることが多いです。左右対称に現れることが特徴で、多くは両側の頬に逆三角の形で生じます。
発症リスク要因としては紫外線の他、女性ホルモン、ストレス、炎症による色素沈着などが挙げられます。スキンケアなどの際に擦り過ぎていると慢性的な炎症が起こり、色素が沈着することも、肝斑の発生につながると考えられています。

炎症後色素沈着(炎症性色素沈着)

皮膚に傷ができたり、やけどしたり、皮膚疾患にかかったりすると炎症が起こり、色素が沈着してしみのようになることがあります。アトピー性皮膚炎などでは、なかなか消えない色素沈着が起こることもあります。

後天性真皮メラノサイトーシス

思春期以降(特に20歳以上)に発生するしみで、他の種類のしみは主に表皮のメラニンが増えるのに対し、後天性真皮メラノサイトーシスは表皮の下の真皮にメラニンが増えるという特徴があります。普段は眠っている真皮メラノサイトが活性化することで真皮のメラニンが増殖すると考えられていますが、はっきりとした原因はわかっていません。
発生する部位にも特徴があり、頬骨の突き出た部分、目の下、鼻根、小鼻、こめかみから上瞼の外側の範囲、額の側面の6箇所のうち、いくつかが組み合わさって左右対称に現れます。

雀卵斑(そばかす)

雀卵斑は一般的にそばかすと呼ばれるもので、小学生など早い時期に出現すること、家族内発症が多いことが特徴です。2〜3mmほどの細かい斑点が多数発生します。
発症には紫外線の他に遺伝的な要因とも関連があると考えられており、完全に予防することや完治させることは難しいと考えられています。しかし、紫外線対策などにより悪化を防いだり、薄くしたりすることは可能です。

盛り上がったしみ

盛り上がったしみは、脂漏性角化症というしみであることが多いです。脂漏性角化症は老人性色素斑の一種ですが、盛り上がったものを特に脂漏性角化症と呼びます。老人性色素斑と同様に、主に中高年以上で生じます。
ただし、盛り上がったしみやほくろの中には、実は皮膚がんの一種であるメラノーマだったという場合も稀にあります。盛り上がったしみが大きくなっている、色や形が変わっているなど、気になることがある場合は皮膚科などの医療機関の受診も検討しましょう。

※メラノーマは医師の診断が必要です。心配な場合には、早めに医師の診察を受けましょう。

適切なケアを行えばしみを消す・薄くすることも

しみを消すことができるか、どの程度薄くすることができるかはしみの種類により異なり、個人差もあります。しかし、適切なケアを行うことで改善させることは可能です。
ただし、しみの種類によって適切な対処方法は異なり、間違ったケアを行うとしみを悪化させてしまうこともあるため注意が必要です。

しみ・そばかす・日焼けは対策・改善できる? 発生や悪化を防ぐには

しみ・そばかすの対策

しみやそばかすの発生には、多くの場合紫外線がかかわっています。そのため、普段から適切な紫外線対策をすることで悪化を防ぎましょう。また、内服薬(のみ薬)や外用薬(塗り薬)、医療機関でのレーザー治療といった方法もありますが、しみ・そばかすの種類によって適した方法は異なります。

日焼けの対策

日焼けも皮膚が日光に晒されることにより生じますので、衣類・帽子や日焼け止めなどで普段から対策を行いましょう。レジャーなどで日光を大量に浴びた場合は、できるだけ速やかに冷やすとサンバーンを軽減することができます。

日常生活でできるしみ・そばかす・日焼けには紫外線対策や日々のスキンケア

紫外線対策

季節を問わず、日常的に対策を行いましょう。紫外線による悪影響は長年の蓄積により生じますので、子供のうちから適切な対策をすることが重要です。対策方法としては、日焼け止めクリームやUVケア効果がある化粧品の活用、つばの広い帽子や長袖の服装などが挙げられます。
日焼け止めはムラができないように塗り、耳の後ろや首、手足の甲なども忘れないようにしましょう。汗をかいた場合などは、こまめに塗り直すことも重要です。
また、日光が強い時期に屋外での活動をする場合は、できるだけ紫外線の少ない時間帯を選びましょう。ニュースなどの紫外線情報も参考になります。

スキンケア

しみ対策のためには、メラニン色素の産生を抑制することと、皮膚のターンオーバーを低下させないことが重要です。皮膚でメラニン色素が生成されても、肌のターンオーバーが正常であればメラニン色素を排出し、沈着を防ぐことができます。
ターンオーバーは加齢によって低下していきますが、禁煙や適度な運動、栄養バランスの良い食事などの生活習慣で維持しやすくすることができます。ただし遺伝的な要素も関連するため、ターンオーバーの低下しやすさ・維持しやすさには個人差がある点には注意しましょう。また、メラニン色素の合成を抑制するには、有効成分を含んだ医薬品・化粧品の使用やビタミンCの摂取が効果的です。

その他

洗顔などの際に強く擦ると肌が炎症を起こし、しみの発生や悪化につながります。石鹸をよく泡立てて、できるだけ擦らないように優しく洗いましょう。
外傷をきっかけとして色素沈着が発生することもあるため、かみそりや毛抜きによる傷、虫刺され、ヘアアイロンが誤って皮膚に触れることによるやけどなどにも注意しましょう。
また、肝斑の発生リスクの一つにストレスが挙げられます。そのため、十分に睡眠を取る、適度に運動するなどストレスを溜めない生活習慣も重要です。

できてしまったしみは市販薬や化粧品で改善できることも

すでにしみができてしまっている場合でも、自宅でのケアによってある程度改善できることがあります。以下では、しみのセルフケア方法をご紹介します。

内服薬(のみ薬)でしみを改善させるには?

しみは内服薬(のみ薬)で改善することも可能です。トラネキサム酸やビタミンC(アスコルビン酸)、 ビタミンE、L-システインなどの成分には、しみを薄くするなどの作用があります。これらを配合した内服薬を使用してみるのも良いでしょう。

ビタミンC(アスコルビン酸)

メラニン色素を作り出す酵素である「チロシナーゼ」の働きを抑制し、メラニン色素の生成を抑えます。L-システインやビタミンEを同時に摂取することで色素沈着の抑制効果がさらに高まるという報告もあります。
野菜や果物などの食物にも含まれていますが、熱に弱く調理で失われやすいため、市販薬などを上手に活用することで効率よく摂取することができます。

L-システイン

L-システインには、メラニン色素の合成を抑制し、肌の色を整え色素沈着を防ぐ働きがあります。

ビタミンE

ビタミンEには抗酸化作用があり、皮膚を紫外線から守ります。また、メラニン色素の合成を抑制する働きもあります。

トラネキサム酸

メラニン色素を合成する「メラノサイト」の働きを阻害する働きがあります。特に、肝斑や老人性色素斑の改善に有効な成分です。

しみ・そばかすを緩和するアリナミン製薬の製品

外用薬(塗り薬)や化粧品でしみを改善させるには?

しみ対策の外用薬(塗り薬)や化粧品にはさまざまなものがありますが、市販されている製品に含まれる有効成分としてはビタミンCやトラネキサム酸、ナイアシンアミドなどが挙げられます。

ビタミンC(アスコルビン酸)

内服した場合と同様、外用薬として使用した場合もチロシナーゼの働きを抑制する作用があります。ただし皮膚にビタミンC自体を直接塗っても安定性に欠けるため、外用薬や化粧品には「L-アスコルビン酸 2-グルコシド」などのビタミンC誘導体として配合されることが一般的です。

トラネキサム酸

肝斑などのしみに対して、内服薬としても外用薬としても用いられます。外用薬としては美白を目的として使用され、化粧品にもトラネキサム酸を配合した製品があります。

ナイアシンアミド

ビタミンB群の一つで、メラニン色素の表面化を防ぐことによる美白効果をもたらします。抗酸化作用や抗炎症作用も持っており、肌荒れやしわの改善効果も認められています。

化粧品を用いたしみケアの例

石鹸などでの洗顔後、有効成分を含む化粧水・美容液・保湿クリームなどでケアを行いましょう。特に気になるしみがある場合はスポット使いの美白クリーム、しみのケアだけでなく集中的に保湿を行いたい場合はフェイスマスクを併用するのもよいでしょう。

しみは医療機関でも処方薬やレーザーなどで治療できる

セルフケアで十分な効果が得られない場合、医療機関でしみの治療を受けることも選択肢の一つです。診療科としては、皮膚科や美容皮膚科が適しています。

医療用医薬品

医師の診察を経て処方される医療用医薬品には、市販薬よりも効果の強い成分が含まれています。しみに対する医療用医薬品の成分としては、ハイドロキノンやトレチノインなどが代表的です。肝斑に対しては、トラネキサム酸の内服薬も使用されます。
ただし処方薬は副作用も強いため、必ず医師の指示に従って使用しましょう。

レーザー治療

レーザー治療の中にも、ロングパルスレーザー、炭酸ガスレーザー、ピコ秒レーザーなど様々な種類があります。しみの種類により、レーザー治療が適しているか、またどのレーザー治療が適しているかは異なります。

ケミカルピーリング

皮膚に薬剤を塗って表皮や真皮を剥がし、皮膚が自然に治癒する力を利用して皮膚を若返らせる治療です。

自身に適したしみ・そばかす・日焼け対策をしよう

しみ・そばかす・日焼けができる原因の大部分は紫外線によるダメージです。普段から適切な紫外線対策を行いましょう。また、しみ・そばかす・日焼けができてしまった後にも、改善方法には様々な選択肢があります。どのような方法があるのか知り、ご自身に適した方法で対策を行うことが重要です。