二日酔いとは、過度の飲酒により、翌日まで頭痛やめまい、吐き気などの症状があり、気分の悪い状態が続くことで、宿酔(しゅくすい)ともいいます。アルコールを代謝する過程で出る有害物質、アセトアルデヒドが血液中に残留していることが原因で二日酔いは起こります。ここでは、二日酔いの原因や症状、対処法などを紹介します。
監修
松井 敏史 先生 (医療法人社団弥生会 旭神経内科リハビリテーション病院 院長)
お酒を飲む方の多くが二日酔いを経験したことがあるのではないでしょうか。二日酔いは過量のアルコール摂取が原因であることは明らかです。飲酒後、胃や腸で吸収されたアルコールは、肝臓で分解酵素のはたらきにより、アセトアルデヒドという物質に、さらに別の酵素のはたらきにより酢酸に代謝されます。しかし、過量の飲酒でアセトアルデヒドが十分に代謝されずに体内に残ると頭痛やめまい、吐き気などの二日酔い特有の不快な症状があらわれることがあります。その他にも、アルコールの利尿作用による脱水やミネラルの喪失、ホルモン分泌の乱れ、肝臓のブドウ糖放出の阻害による低血糖(アルコール性低血糖)、酸塩基平衡(酸性とアルカリ性のバランス)の乱れによる体液の酸性化など、複合的な要因が考えられています。
二日酔いになると、頭痛、吐き気、嘔吐や胃もたれの他、食欲不振やのどの渇き、疲労感などの不快な症状があらわれます。また、アルコールが体内に残っている場合は、ふらつきやろれつが回らないなど、酒酔いの症状が残ることもあります。
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食欲不振(食欲がない)
果汁100%のジュースは、アルコールの代謝によって不足している水分と、肝臓がはたらくためのエネルギーとなる糖分を手軽に補うことができます。スポーツドリンクのようなナトリウム、カリウムなどのミネラルも一緒に摂れるものも有効です。水分を補給することで、代謝されたアセトアルデヒドなどが尿として排出されますので、水分は多めに摂るようにするといいでしょう。また、お酒を飲み過ぎたときは、アルコール代謝時にビタミンB群、特にビタミンB1が多く消費されています。糖質からエネルギーを産生するにはビタミンB1が必要ですので、ビタミン剤などの服用も検討しましょう。コーヒーに含まれるカフェインは、二日酔いの頭痛を和らげ、肝機能を高めるはたらきをもっています。お茶にはカフェインに加えて、タンニンによるアルコールの吸収を抑える効果もあります。コーヒーやお茶にも利尿作用があるので、同時に脱水やミネラルが不足しないよう注意しましょう。
お酒をよく飲む方にはしじみのお味噌汁がよいといわれることがありますが、これは肝臓で作られる胆汁の分泌を促し、アルコールの代謝機能を助けるアミノ酸のオルニチンやビタミンB12が豊富で二日酔いの回復を早めるといわれています。ただし実際に効果を実証したデータはないようです。その他、まいたけやお酢を使った料理も肝機能を高め、アルコールの代謝を促すはたらきがあります。
二日酔いがつらいときは、水分をしっかり摂り、体を休ませることが大切です。体を横にするだけでも常に働いている肝臓の負担を抑え、十分な血液を全身に行き渡らせることができます。
二日酔いを緩和するためにさらに飲酒をする「迎え酒」という風習がありますが、アセトアルデヒドの量を増やすことに繋がり、結果として二日酔いを長引かせることになるのでおすすめしません。
二日酔いによるむかつきなどの胃腸症状には、胃腸の機能を調整する塩化カルニチンなどが配合された胃腸薬を、吐き気がつらい時には吐き気止めの効能を持つ漢方薬などを用いるのもよいでしょう。
頭が痛いときにはイブプロフェン、ロキソプロフェン(ナトリウム水和物)などの鎮痛薬の服用も検討しましょう。ただし、これらの鎮痛薬には胃の防御機能を抑えてしまうものもありますので注意が必要です。また、胃腸障害が少ないとされるアセトアミノフェンは、肝障害の恐れがあるため、二日酔いの時にはおすすめしません。購入の際には、薬剤師や登録販売者によく相談しましょう。また、体内で多量のアルコールが代謝される際には、ビタミンB1が多く消費されますので、体内のビタミンB1が足りなくなり、疲れを感じることがあります。二日酔いで疲労感がある場合は、ビタミンB1が配合されたビタミン剤を服用してみるのもよいでしょう。つらい時には無理をせず安静にして過ごす、寝不足の場合は十分に睡眠をとることも大切です。
栄養ドリンクやサプリメントなどに含まれるタウリンなどの成分は、肝機能を高めアセトアルデヒドの代謝を促進するといわれています。また、タンパク質にも肝機能を高める効果があるため、牛乳などの乳製品を事前に摂ると二日酔い予防に役立ちます。アルコールの代謝にはビタミンB群が必要ですので、お酒を飲む機会が多い方は普段からビタミンB群を含む栄養ドリンクやサプリメントの使用も検討してはいかがでしょうか。
アルコールは胃で約2割、小腸で約8割が吸収されるといわれています。空腹のままの飲酒は、アルコールの吸収速度が速くなるので避けましょう。また、チーズやヨーグルトなどの乳製品は胃腸の粘膜を保護し、アルコールの吸収を緩やかにするのでお酒を飲む前に摂るのがおすすめです。
上述のとおり、二日酔いの予防にはタンパク質やビタミンB群、ミネラルの補給が大切です。また、ビタミンCは肝臓の酵素のはたらきを活性化させアセトアルデヒドの代謝を促進するといわれています。おつまみの定番の枝豆にはタンパク質やビタミンB1・B2・Cなどが多く含まれているためおすすめです。また、卵もタンパク質やビタミンB2・B12、亜鉛などのミネラルを豊富に含むため、アルコールの代謝の促進やミネラルの補給にはおすすめの食材です。
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二日酔いの予防や症状緩和におすすめの食べ物・飲み物は?
二日酔い対策のなかでも特に水分やミネラルの補給は重要です。肝臓でのアルコールの分解や、代謝された物質を体外へ排出するのには水分が必要です。また、ミネラルの不足はアルコールの分解を阻害し、体液バランスが崩れて二日酔い症状を助長してしまいます。アルコールには利尿作用があるため水分補給が不足すると脱水状態になる恐れがありますが、水分だけを摂っているとミネラルが不足することもありますので、塩分などの摂取も合わせて行うとよいでしょう。
二日酔いの一番の対策は、お酒を飲み過ぎないことです。自分の適量に合わせたお酒の範囲内で楽しむようにしましょう。
お酒に強いか弱いかは、アルコールの分解時に必要な酵素の遺伝子構造によって決まり、実は、日本人の約4割は「お酒に弱い」体質とされています。そして、愛煙家に多い、お酒とタバコの組み合わせは二日酔いのモトにもなります。タバコはアルコールの分解を助けるビタミンCを破壊します。さらにニコチンの作用により内臓全般のはたらきが鈍るため、胃腸への負担も大きくなり、翌朝に胸やけや吐き気などの症状が起こりやすくなるのです。
二日酔いの原因の多くは、「飲み方」にあります。
飲み方によっては、アルコール依存症などにも繋がりかねません。
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