ふらつき・平衡感覚の乱れ
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ふらつき・平衡感覚の乱れ

ふらつきは、平衡感覚を失って足取りがおぼつかなくなる状態です。乗り物酔いや二日酔いでふらついたり、体調不良で一瞬ふらつくようなことは日常でもみられますが、頻繁に起こるようなときは平衡感覚に関係する神経や運動のバランスを調節する脳領域に障害を起こす疾患を疑う必要があります。

赤松 直樹 先生

監修

赤松 直樹 先生 (国際医療福祉大学医学部脳神経内科 教授)

ふらつきの原因はさまざまで、体調不良や飲みすぎなどによる場合も

体調不良

ふらふらする原因にはいろいろありますが、例えば朝食を抜いたり、栄養バランスが偏ったりした食生活や、疲れ、睡眠不足によって、起こることがあります。これは十分な栄養の補給、休息で治まる一時的なものです。

アルコールの飲みすぎ

アルコールを飲みすぎると、脳内のアルコール濃度が高くなって、ふらつきや吐き気、嘔吐などの酔いの症状があらわれます。次の日になっても、アルコールが体内に残っている場合は、二日酔いの症状としてふらつきが起きることがあります。

乗り物酔い

車や電車、船などに乗ったとき、乗り物酔いを起こすことがあります。これは乗り物の揺れやスピードの刺激が耳の奥にある内耳や脳に伝わり、胃や腸や心臓、血液などをコントロールしている自律神経に変調をきたすことによるものです。ふらつき、吐き気などの症状とともに頭重感、生つばやあくび、冷や汗が出て、顔色が蒼白になり嘔吐を引き起こすこともあります。

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急に立ち上がったときに起きる血圧の変化

立ち上がるときは、自律神経が血管と心臓に作用して血圧の変動を調節しています。この自律神経が十分に機能していないと、急に立ち上がったときに血圧が下がり、脳に送られる血液の量が一時的に少なくなることでふらつきが起きます。

関連する記事はこちら。 血圧が低めである(低血圧)

薬の服用による副作用

血圧を下げるための降圧薬やうつ症状などを抑えるための精神安定薬、ときには総合かぜ薬や鼻炎薬でも体調によっては副作用として、ふらつきやめまいなどを起こすことがあります。

ふらつき、めまいの原因となる主な疾患

脳卒中に分類される脳梗塞や脳出血では、ふらつき、めまいなどの前触れが起こることがあります。脳梗塞も脳出血も、死に至る危険のある疾患です。脳のどの部分にダメージを受けたかにより症状が違ってきますが、いずれもふらつき、めまい以外に運動麻痺や言葉が出づらいなどの症状が起こることもあります。その他、ふらつき、めまいは内耳の障害であるメニエール病でもみられます。

平衡感覚の異変に加えて、その他の症状を伴うときに考えられる病気・疾患

※以下の疾患は、医師の診断が必要です。
下記疾患が心配な場合には、早めに医師の診察を受けましょう。

<疾患一覧>

疾患 主な症状
脳梗塞・脳出血 ふらついてまっすぐ歩けない、意識障害、手足の片方の麻痺、ろれつが回らない、頭痛 など
脳腫瘍 頭痛と吐き気、嘔吐
物が二重に見える、手足の麻痺、けいれん、ふらつき など
メニエール病 自分や周囲がぐるぐる回るめまいによるふらつき・どちらか一方の耳にだけ起きる耳鳴り・難聴が同時に起こる
多くの場合、強い吐き気、嘔吐をともなう
起立性低血圧症 急に立ち上がったり起き上がったときの立ちくらみ、目の前が暗くなる
自律神経失調症 吐き気、多汗、全身の倦怠感、食欲不振、不眠 など
あらわれる症状は人によって大きく違うのが特徴
更年期障害 ほてり、のぼせ、イライラ、息切れ、動悸、めまい、ふらつき、ホットフラッシュ など
個人差が大きい

脳梗塞

脳梗塞は脳の血管内腔の動脈硬化が進行し、血管が狭くなっているところに血液の塊が詰まったり、心臓等から血栓が流れてくることによって血流が止まり、脳の組織が破壊される疾患です。血液の塊が詰まると、片側の手足や顔の麻痺、意識障害や言語障害などの症状があらわれます。小脳は運動のバランス調節する働きがあるので、小脳梗塞が起こると体のふらつきが見られます。

脳出血

高血圧などが原因となって、脳内の血管が破れて脳の中に出血による血液の塊ができる疾患です。出血が起きると、ふらつきによってまっすぐ歩けなくなったり、意識障害や手足の片方の麻痺が起こったり、徐々に強くなる頭痛などの症状があらわれ、言語障害や手足の麻痺などの後遺症が残る場合も少なくありません。出血を起こした場所によっては、数分のうちに昏睡状態におちいり、死に至るケースもあります。

脳腫瘍

頭蓋内にできた腫瘍が大きくなることによって、脳や脳周囲の脳組織に侵入したり圧迫したりして、脳機能に障害をもたらす疾患です。特徴的な症状は頭痛と吐き気、嘔吐です。腫瘍によって頭蓋内圧が高くなることで生じる頭痛は早朝に痛みを強く感じ、日中にかけて次第に弱くなる特徴があります。さらに腫瘍がどこで発生したかによって、記憶力や判断力の低下、手足の麻痺やけいれん、ふらつきなど、さまざまな症状があらわれます。小脳腫瘍では、ふらつきが徐々に進行します。

メニエール病

自分や周囲がぐるぐる回るめまいによるふらつきと、どちらか一方の耳にだけ起きる耳鳴り、そして難聴の3つが同時に起き、多くの場合、強い吐き気や嘔吐をともないます。過労やストレスが引き金になることがあります。危険な疾患ではありませんが、放置すると耳鳴り・難聴が進行します。

起立性低血圧症

健康な人でも急に立ち上がったり起き上がったとき、立ちくらみすることがあります。この立ちくらみが日常の動作の中で頻繁に起こるような場合は起立性低血圧症が疑われます。これは自律神経の一時的な障害で、急に立ち上がったときに脳の循環がとどこおり、血液が下半身に停滞してしまって、低血圧と脳の血流不足が起こるために起こります。クラクラとする立ちくらみや目の前が暗くなったり、ひどいときは気を失って倒れることもあります。起立性低血圧は改善可能な場合も多いですが、一部は何等かの病気の症状のこともありますので、繰り返すときは病院を受診しましょう。

この疾患・症状に関連する情報はこちら。 血圧が低めである

自律神経失調症

精神的なストレスや過労が引き金となって自律神経が乱れ、心や体に不調があらわれた状態です。検査をしてもこれといった原因が見つからないことが多いです。症状としては全身の倦怠感、頭痛、肩こり、手足のしびれ、動悸、めまい、ふらつき、下痢、便秘、不眠、不安、イライラなどの症状があらわれます。あらわれる症状は人によって大きく違うのが特徴です。

この疾患・症状に関連する情報はこちら。 自律神経の乱れ

更年期障害

閉経前後の約10年間をさす更年期を迎えると、女性ホルモン(エストロゲン)の急激な減少により自律神経のバランスが崩れてほてり、のぼせ、イライラ、息切れ、動悸、めまいやふらつき、肩こりなど心と体にさまざまなトラブルが生じます。ふらつくようなめまいは、脳に流れる血流の変化によって感じられます。また、顔が突然カーッと熱くなって首や背中に汗が流れる症状はホットフラッシュと呼ばれ、更年期障害の前半にあらわれる最も代表的な症状です。

この疾患・症状に関連する情報はこちら。 更年期障害

※以上の疾患は、医師の診断が必要です。
上記疾患が心配な場合には、早めに医師の診察を受けましょう。

更年期障害などでめまい・ふらつきなどを感じるときは市販薬で対処する方法も、頻発するなら病院へ

ふらつきが起きたときは、あわてないことが大切です。転倒しないよう注意しながら、座れる場所や横になれる場所へ移動し、楽な姿勢でしばらく休みましょう。

市販の薬を使う

更年期障害によるめまいやふらつきなどになどに効果をあらわす漢方薬が販売されています。更年期では体のさまざまな場所に不調が起こりやすいので、漢方処方を活用して、体全体のバランスを整えましょう。

めまいなどの更年期障害に関連するアリナミン製薬の製品

病院で診察を受ける

頻繁にふらつきが起こるようなときは、疾患が隠れている場合がありますので、かかりつけ医の診察を受けましょう。ふらつきとともに意識障害や呼吸困難が起こるようなときは、脳出血や脳梗塞が疑われます。ただちに救急車を呼んで、病院へ搬送しましょう。

生活習慣を見直してふらつきを予防しよう

栄養バランスの良い食事と質の良い睡眠をとる

体調によるふらつきを予防するには、ビタミンやミネラルのバランスの整った食事をとるようにしましょう。1日3食、規則正しく食べることも大切です。また、睡眠をしっかりとることも大切で、就寝1~2時間前に40℃前後のお風呂にゆっくりとつかると深い眠りを得ることができます。

アルコールは適量を心がける

自分の適量を知り、それを超える量やペースにならないよう、気をつけて飲むことで酔いを防ぎましょう。飲みすぎてしまったときは、水分を多めにとることで二日酔いを緩和できます。

乗り物酔いの予防薬を服用する

乗り物酔いをする人は、乗り物酔い止めの薬を飲むことでふらつき、めまい、吐き気などを予防することができます。服用する効果的なタイミングなど、添付文書をよく読んでから服用するようにしましょう。

乗り物酔いに関する情報はこちら。 乗り物酔い

プチメモ脳梗塞のサインを見逃すな!

脳梗塞のサインを見逃すな!

脳梗塞は一刻も早く対処をすることが重要です。兆候に早く気がつくために、ふらつき以外にも注意が必要です。体の半身がしびれたり、力が入らなくなったり、物が二重に見える、ろれつが回らなくなるなどの症状がある日突然起こることが特徴です。本人以外にも周りの人が異常に気がつく場合もあります。このような異常を感じたらすぐに専門医を受診して治療を行うことで、死の危険や寝たきりなどを回避することができます。