腰痛
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腰痛

腰痛は、腰やその周辺に生じる痛みや張り、不快感の総称です。筋肉の疲労やこりによる場合もありますが、背骨の変形や骨折など、骨に異常が起きているケースも少なくありません。

橋本 健史先生

監修

橋本 健史先生 (慶應義塾大学スポーツ医学研究センター所長・教授)

日常生活上の原因は悪い姿勢や筋力低下、過度の負担など

長時間同じ姿勢でいることによる筋肉の緊張

長時間座っていたり、立ちっぱなし、中腰など、無理な姿勢を続けると腰の筋肉が緊張して、時間の経過とともに筋肉が疲労し、血行が悪くなり腰に痛みが起こります。

運動不足、筋肉退化による筋力低下

腰の周りにある大腰筋(だいようきん)大殿筋(だいでんきん)中殿筋(ちゅうでんきん)の筋力が衰えると、腰椎に負担がかかり、腰痛を引き起こします。腹筋は横隔膜とともに背骨を支える働きがあるので、腹筋の筋力が低下し、正しい姿勢が保ちにくくなると、腰椎に負担をかけることになります。また骨盤の筋肉(骨盤底筋など)は姿勢を保つのに大きく関与しています。これらの筋力の低下が、腰痛の要因となります。

過剰な動きや無理な負担

過度の運動によって筋肉が疲労し、徐々に緊張を強めて腰痛を引き起こします。また、腰に無理な力がかかるような動作を行うと、ぎっくり腰など急性の腰痛を招くことがあります。

腰痛の原因となる主な疾患

代表的なのは、ぎっくり腰と呼ばれる腰仙部挫傷(ようせんぶざしょう)、椎間板の一部が神経を圧迫して起こす椎間板ヘルニアです。他にも、過度な運動が原因となる脊椎分離症や、骨の変性などが原因となるすべり症、腰部変形性脊椎症、腰部脊柱管狭窄症(ようぶせきちゅうかんきょうさくしょう)、骨がスカスカになる骨粗鬆症(こつそしょうしょう)も腰痛を引き起こします。また、腎結石や尿管結石、子宮筋腫、子宮内膜症、うつや自律神経失調症などの疾患でも腰痛が起こることがあります。

腰痛は腰椎椎間板ヘルニアなどの疾患に伴って起こることも

※以下の疾患は、医師の診断が必要です。
下記疾患が心配な場合には、早めに医師の診察を受けましょう。

ぎっくり腰

腰顔をひねることや、重いものを持ち上げる時の腰を折り曲げた姿勢などが原因で起こります。脊髄の近くにある椎間関節という小さな関節が捻挫を起こし、急激な痛みに襲われ、動けなくなることもあります。腹筋や背筋が弱い人に起こりやすく、再発することも少なくありません。

腰椎椎間板ヘルニア

骨と骨をつなぐ椎間板に亀裂ができて、中の椎間板組織の一部が飛び出し、神経を圧迫することで起こります。腰やお尻の痛み、足指のしびれ、坐骨神経痛と呼ばれる片側の足の後ろ側の痛みやしびれが代表的な症状です。若い人にも比較的多く、痛みがあまりないこともあれば、激痛で動けなくなることもあります。

腰椎分離症

ジャンプや腰の回転などの過激な運動を繰り返すことで脊椎骨の一部が骨折して離れ、腰やお尻、太ももの痛みがあらわれます。しかし、痛みを感じないこともあるので、放置されることも少なくありません。腰椎分離症は小学生高学年から中学生に多くみられ、腰椎分離が起こると分離すべり症に移行することもあります。

すべり症

縦に連なっている脊椎が前後にずれて神経を圧迫し、腰痛や間欠跛行(かんけつはこう)(しばらく歩くと太ももやお尻に痛みが生じること)が生じます。脊椎の一部が骨折して分離した分離すべり症と、加齢による椎間板の変形が原因の腰椎変性すべり症があります。いずれも40〜50代の中高年の方に多くみられます。

変形性脊椎症

加齢とともに腰椎が変形し、突出することがあります。トゲのようにも見えるため、骨棘(こっきょく)と呼ばれます。骨棘の尖った部分が神経を圧迫すると、腰痛を引き起こします。起きあがった時やトイレに立つ時など、動き始めに痛みが起こりやすいという特徴があります。

腰部脊柱管狭窄症(ようぶせきちゅうかんきょうさくしょう)

長年腰に負担がかかって、椎間板が変性したことが原因となって神経の通り道である背骨の脊柱管が狭くなり、神経を圧迫するために起こります。安静時には症状が軽い場合が多いのですが、歩き続けると下肢のしびれや痛みが生じて動けなくなることもあります。立ち止まって休憩をとると症状が緩和し、歩き出してしばらくすると、また悪化するといった状態を繰り返すのが特徴的です。

骨粗鬆症(こつそしょうしょう)

骨量が減少し、骨がスカスカの状態になり、日常のささいな動きで小さな骨折を起こしたり、自分の体重が支え切れず圧迫骨折を起こしたりする疾患です。骨折すると腰痛を引き起こします。閉経後の女性や高齢の方に多くみられます。

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腰痛症

レントゲンなどの検査をしても、腰痛の原因となるような異常がないのに腰痛があることをまとめて腰痛症と呼びます。痛みの原因が主に背筋の疲労や炎症にあると考えられる腰痛で、疲労性の腰痛ともいわれます。姿勢、動き、柔軟性、筋力、バランスなどの機能的な問題によって起こります。

※以上の疾患は、医師の診断が必要です。
上記疾患が心配な場合には、早めに医師の診察を受けましょう。

正しい姿勢や筋力トレーニングなどで日常生活から腰痛を予防しよう

姿勢に気をつける

同じ姿勢で長く作業する場合は、前屈かがみにならないよう高さを調節する、適度に休憩を入れ体勢を変えるなどの工夫をしましょう。また、いすには深く座り背骨を伸ばす、机やいすの高さを調節するなど、姿勢に気を配りましょう。

腹筋と背筋を鍛える

日頃から、腹筋と背筋を鍛える運動を心がけましょう。仰向けに寝た状態で腰の下にたたんだタオルを当て、自転車を漕ぐように空中で足を回す動作は、腹筋と背筋を同時に鍛えることができます。ただし、腰の痛みがある時は決して無理をしないことが大切です。

靴の選び方やバッグの持ち方に注意する

ヒールの高い靴や厚底靴を避け、かかとが低く安定性のある靴を選びましょう。荷物は、片側にだけ負荷がかからないリュックサックがおすすめですが、バッグを片手で持つ時は、こまめに左右持ち替えるようにします。

重いものを力任せに持ち上げない

何かを持ち上げる時は、中腰で力を入れたり、腕の力だけで持ち上げずに、しゃがみ込むように腰を落としてゆっくり持ち上げるように心がけましょう。

炎症がある場合は、冷やしその後、温める。市販薬での対処も有効

冷やして炎症を抑える

腰に急激な痛みを感じた直後や、痛みのある部分が熱を持っていると感じる時は冷やします。冷却パックやエアゾール剤、冷やすタイプのハップ剤を利用すると良いでしょう。

腰を温めて血行を良くする

腰痛の発症直後は炎症を鎮めるために冷やしますが、炎症が軽減したら血行を良くして回復を促すために、ホットパックや使い捨てカイロなどで腰を温めましょう。ぬるめのお湯にゆっくりとつかり、しっかり温めるのも効果的です。

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市販の薬を使う

炎症と痛みを抑えるには、鎮痛消炎成分のインドメタシンやフェルビナクなどを配合した外用鎮痛消炎薬が効果的です。痛みがより強い時には内服薬の消炎鎮痛薬で一時的に痛みをブロックしましょう。また、ビタミンB1・B6・B12が配合されたビタミン剤なども、腰痛を緩和する効果があります。

腰痛の緩和に

病院で診察を受ける

痛みが良くならない・強くなる、足のしびれがある、発熱を伴う、急に腰や背中に激痛が起こるなど、早急な治療が必要になる腰痛もまれにあります。異常を感じた場合は整形外科などで早めに診察を受けましょう。また、長引く腰痛は内科、婦人科、泌尿器科などの疾患が隠れている可能性があります。一度、主治医に相談するようにしましょう。

プチメモ腰痛は人類の宿命!?

腰痛は人類の宿命!?

4本足の動物の場合、背骨が水平であり、腰への負担はそれほど大きくありません。しかし、2本足で立つ人間の場合、背骨が垂直になり上半身の重みを支える腰に大きな負担がかかります。
腰痛は、たいていの人が一生の間に一度は経験するといわれますが、人間が仮に4本足で歩いていたなら、こんなに多くの人が腰痛に悩むことはなかったはず。2本足で歩く人間の宿命ともいえる病気なのです。