のど(喉)の痛み
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のど(喉)の痛み

体調不良を自覚する代表的な症状の1つが「のど(喉)の痛み」。喉に痛みを感じたら放っておかず、早めに対処することが肝心です。 今回は適切に早く対処できるよう、喉の痛みが生じるメカニズムや原因、病気(疾患)を解説します。さらに、少しでも痛みを和らげるための対処法も専門医監修のもとにご紹介します。

永武 毅 先生

監修

永武 毅 先生 (桜みちクリニック 院長)

なぜのど(喉)が痛くなる?

のど(喉)の構造・働き

喉は、鼻の奥や口から食道の入り口までの「咽頭」と呼ばれる部分と、空気が通る気管の入り口にある「喉頭」と呼ばれる部分で構成されています。 口や鼻は飲食物や空気の通り道であるだけでなく、空気中に含まれるさまざまな細菌やウイルスなどの病原体が体内に侵入する入り口にあたります。
喉の主な働きとして、呼吸(息をする)、嚥下(飲食物を飲み込む)、発声(声を出す)が挙げられます。また、飲食物が肺へ行かないように、空気と飲食物を気管と食道へ振り分ける働きも。さらに、喉には病原菌を撃退する防御機構も備わっています。

異物の侵入を防ぐ防御機構
喉や気道には空気中に含まれる病原菌をはじめとする有害物質を排除するために、防御機構として下記が存在しています。

●扁桃はのど元を監視

扁桃は喉の周囲を取り巻く組織で、通過する食べ物や外気に監視の目を光らせています。4種類ありますが、口を大きく開けたときに突き当たりの左右に見える口蓋扁(こうがいへん)桃(とう)を一般に扁桃と呼びます。扁桃はリンパ組織の集まりで、外部から侵入したチリやホコリなどの異物、ウイルスや細菌などの病原体を排除し、体を守る関門の役割をしています。

●線毛は異物の侵入を防ぐ名ガード

線毛は細胞の表面に存在する、波打つような動きをする突起です。表面は粘液で覆われています。この線毛を波打たせる運動を線毛運動といい、粘液でからめとられた異物やゴミが体外に排出されます。

のど(喉)の痛みが起こるメカニズム

喉は外界の空気が最初に触れる器官であるため、ウイルスや細菌などの病原体に感染し炎症を起こしやすく、またアレルギー反応を起こしやすい場所といえます。体が疲れていたり、乾燥した空気やタバコ、刺激性ガスなどの影響により線毛運動の働きが弱くなったりすると、病原体などの異物が排出されにくくなり、体内に侵入しやすくなります。
病原体が侵入すると喉の細胞が傷害されますが、体はそれに対抗しようとして炎症反応を起こし、炎症物質や痛みを促進する物質を産生します。炎症物質が神経を刺激すると同時に、血管を広げて血流を増加させることで、喉に熱感がともない腫れるのです。

のど(喉)の痛みの原因

乾燥

空気が乾燥すると喉の防御機構の働きが低下します。異物の侵入を防ぐ線毛は、乾燥してしまうと動くことができません。そのため、吸い込んだ空気中の異物を排出できず、ウイルスに感染しやすくなったりします。また、花粉症やアレルギーなどによる鼻づまりから口呼吸になり、その結果、喉が乾燥し炎症が起きることもあります。

ウイルスや細菌の感染

喉は呼吸によって絶えず吸い込まれた外気が通るため、さまざまな異物を除去する防御機構が発達しています。しかし、強い病原体の場合や、ストレスや疲れがたまっていて防御機構の働きが低下している場合には、病原体の感染力の方が防御する力を上回ってしまいます。咽頭や喉頭は炎症が起こりやすく、扁桃も炎症はよく見られます。
喉の痛みを引き起こす主なウイルス、細菌には以下のようなものが挙げられます。

代表的なウイルス
ライノウイルス、コロナウイルス※、RSウイルス、パラインフルエンザウイルス、アデノウイルスなど

代表的な細菌
インフルエンザ菌、肺炎球菌、A群レンサ球菌など

※新型コロナウイルスを除く。新型コロナウイルスは従来のかぜウイルスとは症状や伝染力が異なります。感染したことが判明した際には、必ず各都道府県自治体の対応方針に従ってください。

・風邪と新型コロナウイルス感染症、インフルエンザの違いはこちら 微熱かな?鼻水、のどの痛み・・・風邪と新型コロナウイルス感染症、インフルエンザの違い

のど(喉)の刺激

刺激性ガスやタバコの煙、冷たい空気を吸った場合やアルコールを過剰摂取した場合に、これらが刺激になって喉に炎症症状が現れることがあります。度数の高いアルコールをストレートに飲むと喉がチリチリと焼ける感じがしますが、これはアルコールによって喉の粘膜が炎症を起こした結果なので注意が必要です。飲食物では辛いものも喉の刺激になる可能性が。また、ハウスダストやほこり、花粉などのアレルギーが原因で喉に炎症が現れる場合もあります。
タバコでは、直接吸っていなくても、周りの喫煙者が吐き出したタバコの煙(呼出煙)やタバコから立ち上る煙(副流煙)によっても喉に痛みが生じることがあるので注意してください。

のど(喉)の酷使

仕事で無理に大きな声を出し続ける、カラオケで歌い過ぎる、長時間のおしゃべりをするなど、喉に過度の負担をかけることで炎症が起こり、喉に痛みが生じることがあります。

のど(喉)の痛みが起こる主な病気(疾患)

※以下の疾患は、医師の診断が必要です。
下記疾患が心配な場合には、早めに医師の診断を受けましょう。

扁桃炎

細菌などの病原体により扁桃が炎症を起こした状態です。左右にある扁桃が赤く腫れ、しばしば白い膿を持ちます。喉の強い痛み、ものやつばまで飲み込めなくなるほどの痛み、高熱を伴うこともあります。その他の症状としては高熱による頭痛や関節の痛み、悪寒、さらに首のリンパが腫れ、耳まで痛くなることもあります。

咽頭炎

喉の粘膜全体に炎症が広がった状態を指します。急性咽頭炎と慢性咽頭炎に分けられ、急性咽頭炎を繰り返すことで慢性咽頭炎になることがあります。「喉(のど)風邪」ともいわれます。

急性咽頭炎
鼻や喉から侵入したウイルスや細菌などの病原体による感染や汚れた空気による刺激によって粘膜に炎症が起きている疾患です。喉の粘膜が赤く腫れ、異物感が生じたり、ものを飲み込むときに痛みを感じることも。倦怠感や発熱、頭痛を伴うこともあります。

慢性咽頭炎
繰り返し急性咽頭炎が生じたり、副鼻腔炎が慢性化して鼻汁が絶えず喉に流れ込んだり、汚れた空気や喫煙による刺激を喉に受け続けることが原因で咽頭炎が慢性化します。ビタミン欠乏、夜間の口呼吸により喉が乾燥することで発症することも。
喉の痛みのほか、異物感や不快感、乾燥感などの症状が見られ、咳を伴うことも少なくありません。

溶連菌感染症(A群β溶血性連鎖球菌咽頭炎)

溶血性連鎖球菌(A群β溶血性連鎖球菌)という細菌が原因となる感染症です。感染力が強く、子どもに発症しやすい病気ですが、大人がかかることもあります。この感染症にかかって症状が出ている人と接触後2~5日で発症します。
主な症状は高熱と喉の痛みで、風邪の症状と異なり、咳やくしゃみ、鼻水の症状が少ないことが特徴です。口の中の上あごの奥の方に紅い発疹ができたり、舌にイチゴのようなブツブツ(イチゴ舌)ができることがあります。体や手足に発疹が出ることもあり、通常は1週間ほどで回復しますが、数週間後に皮がポロポロとむける場合も。
この溶連菌感染症が原因となって起こる別の病気(合併症)としてリウマチ熱(関節や心臓、皮膚、神経系に起きる炎症)や腎炎を起こすこともあります。

喉頭炎

喉頭は空気の通り道である気道の一部で、声を出す発声器官です。飲食物が肺の方に行かないように、空気と飲食物を気管と食道へそれぞれ振り分ける働きも担っています。ここが炎症を起こす喉頭炎には、主に急性喉頭炎、急性喉頭蓋炎、急性声門下喉頭炎があります。

急性喉頭炎
ウイルスや細菌による感染が原因となることが多く、アレルギー、喫煙、冷たい空気を吸った場合、無理に大声を出した後に起こることもあります。
主な症状は声のかれ、乾いた咳、喉の乾燥・異物感などで、悪化すると高熱や頸部の痛みを生じることも。喉頭が空気の通り道でもあるため、炎症によって腫れが強くなると、声が出なくなったり呼吸が苦しくなったりすることもあるので注意が必要です。

急性喉頭蓋炎(きゅうせいこうとうがいえん)
喉頭蓋は、空気を気管に送り、食べ物が気管に行かないようにする蓋のような働きをしています。ほとんどの原因がインフルエンザ菌とされ、喉頭蓋が急激に炎症を起こし気道(空気の通り道)をふさいでしまう病気です。
発熱、強い喉の痛み(人生最悪ののどの痛み)、息がしづらい、ものを飲み込むときの痛み、声が出しにくくなる、喘鳴(息を吸うときにゼーゼーなどの音が鳴る)、呼吸困難などが見られ、悪化すると窒息に至る危険性があります。

急性声門下喉頭炎
声帯より下の方の気管に近い部分が炎症を起こし、むくんで腫れる病気です。生後6ヵ月~5歳児に多く、2歳前後の子どもが最も多く発症するという特徴があります。
風邪のような症状から始まり、2~3日後に、夜間に突然、喘鳴が見られたり呼吸が苦しくなり始めたりします。特に乳児は声門より下が狭く、急な呼吸困難を起こす場合が少なくありません。ときには犬の遠吠えのように聞こえる咳、声のかすれ、発熱が見られることもあります。重症化すると、強い呼吸困難により窒息する場合もあります。

のど(喉)の痛みの予防法

うがい

うがいは、ウイルスや細菌などの病原体が喉から侵入する前に外へ洗い流す効果があるので、感染予防に役立ちます。帰宅時や人混みへ外出した時、喉が乾燥してイガイガする、空気の乾燥が気になる時などに行うとよいでしょう。
うがいには、水を口にふくみブクブクして吐き出す「ブクブクうがい」と、水を口にふくみ喉の奥まで届くように上を向き15秒ほどガラガラして吐き出す「ガラガラうがい」があります。ブクブクうがいを1回行った後にガラガラうがいを2回行うと効果が期待できるとされています。

室温、湿度を調整する

空気が乾燥すると喉の粘膜の防御機能が低下し、ウイルスに感染しやすくなります。特に室内は乾燥しやすいため、室温と湿度に気を配ることが大切です。ウイルスが増殖できない環境を作るために、室温は20~25℃、湿度は50~60%を保つように調整しましょう。湿度の調整は加湿器を利用するほか、部屋に濡れたタオルを干したり、お湯を沸かしたりすることでも可能です。

刺激物を控える

アルコールや香辛料のとりすぎやタバコは、のどに刺激を与え、炎症を引き起こすことがあるので、できる限り控えるようにしましょう。

ウイルスを寄せ付けない

まず、周囲で発せられた咳やくしゃみに対して予防効果があるマスクの着用が挙げられます。ただし、空気中に存在するウイルスや細菌などの病原体を確実に遮断することはできないので、過信は禁物です。着用のポイントは肌とマスクにすき間を作らないこと。自分の顔にぴったりとフィットしているマスクを選びましょう。
外出先からの帰宅時や食事の前後などに手洗いとうがいを忘れないことも感染予防の上で重要です。また、ストレスや疲れをためないようにするとともに、規則正しい生活や体力づくりなどでウイルスや細菌に負けないよう体調を整えておくようにしましょう。

のど(喉)の痛みを和らげる対処法

日常生活での工夫

体を温めて安静にして、なるべく大声を出さないようにしましょう。喉を刺激する飲食物やたばこ、アルコールは控えてください。また、喉が乾燥しないようにすることも大切です。こまめに水分をとって喉を潤すとともに、マスクの着用や加湿器の使用で保湿を心がけてください。栄養があり喉ごしの良い飲食物を十分とって、体力をつけるようにしましょう。

市販薬を使う

喉の痛みに効果が期待できる市販薬には大きく分けて内服薬と外用薬の2種類があります。
<内服薬>
総合かぜ薬、口腔咽喉薬、解熱鎮痛薬、漢方製剤、ドロップ剤、トローチ剤
<外用薬>
うがい薬、のどスプレー

痛みが強い場合は解熱鎮痛薬を服用することで痛みが和らぎます。唾液を飲み込むときに喉の違和感がある場合は、うがい薬やのどスプレーなどの外用薬や、甘草湯・桔梗湯などの漢方薬を使用するのもよいでしょう。喉の痛みだけでなく発熱などの他の症状がある場合は総合かぜ薬を服用するなど、症状や状況に合わせて薬を選ぶことが大切です。

喉が痛いだけでなく鼻もつまっていると、口呼吸することになり喉が乾燥して痛みが改善されにくいことがあります。鼻づまりを解消できる成分であるプソイドエフェドリン塩酸塩などが配合されている市販薬を選ぶこともポイントです。
以下は、市販薬の主な種類と有効成分を内服薬・外用薬別にまとめたものです。使用する市販薬を選ぶ際の参考としてご活用ください。

●内服薬

・解熱鎮痛成分
<喉への作用・特徴>
喉の痛みを和らげる。
頭痛などの痛みや熱を下げる作用もある。
<主な成分>
イブプロフェン、ロキソプロフェン、アセトアミノフェン、アスピリンなど

・抗炎症成分
<喉への作用・特徴>
喉の痛みや腫れなどの炎症を鎮める。
<主な成分>
トラネキサム酸、アズレンスルホン酸ナトリウム、グリチルリチン酸など

・生薬成分
<喉への作用・特徴>
痛みを和らげ、炎症を抑える。
<主な成分>
カンゾウ、シャクヤクなど

・消毒・殺菌成分
<喉への作用・特徴>
口の中や喉を消毒・殺菌する。
<主な成分>
セチルピリジニウム塩化物水和物など

●外用薬

・抗炎症成分
<喉への作用・特徴>
喉の痛みや腫れなどの炎症を鎮める。
<主な成分>
アズレンスルホン酸ナトリウム水和物、グリチルリチン酸二カリウムなど

・消毒・殺菌成分
<喉への作用・特徴>
口の中や喉を消毒・殺菌する。
<主な成分>
セチルピリジニウム塩化物水和物、ポビドンヨードなど

病院で診察を受ける

喉の痛みの原因はさまざまですが、一般的には1週間前後で治ることが多いです。しかし、ものが飲み込めないほど痛みがある、発熱など下記のような症状が見受けられた場合はセルフケアでは改善しない病気(疾患)の可能性もあるため、早めに内科や耳鼻咽喉科、呼吸器内科などで診察を受けるようにしましょう。

耳鼻咽喉科、呼吸器内科などの医療機関へ受診の目安
・喉の痛みが1~2週間以上続く
・もの(飲食物、薬など)が飲みこめず、口からよだれが出る
・息がしにくい、呼吸が苦しい、呼吸するのが難しい
・38℃以上の熱がある
・首や舌が腫れている
・口を開けることができない、口を閉じにくい

参考文献
・主婦の友社編:家庭の医学(主婦の友社), 2020
・川名正敏監: オールカラー版「家庭の医学【第3版】」(成美堂出版), 2016
・山川達郎ほか監:家庭の医学 病気がわかる事典(成美堂出版), 2021
・病気がみえる vol.4 呼吸器(メディックメディア), 2018
・堺章:目で見るからだのメカニズム 第2版(医学書院), 2016
・黒川清、武谷雄二、松尾宣武 監:大安心 健康の医学大事典(講談社)
・一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会 Webサイト「一般の皆さんへ」
http://www.jibika.or.jp/citizens/index.html
・永武毅、山下広志、広瀬英彦:ウイルスと細菌感染のかかわり一呼吸器感染症を中心に一:日本内科学会雑誌
・今日のOTC薬(南江堂)
・ガイドライン外来診療2020(日経BP)