おならが臭いのはなぜ!?原因と対処法を解説

おならが臭いのはなぜ!?原因と対処法を解説

「おならが臭い」「おならがたくさん出る」「腐ったゆで卵みたいなにおいのおならが気になる」など、何かと悩まされがちなおなら。「おならが臭いのは腸内環境が悪いせい。本来おならは臭くない」といわれることもあります。おならが臭いのは本当に腸内環境のせいなのでしょうか? また、おならのにおいを抑える方法はあるのでしょうか? おならが臭くなる原因と対処法を解説します。
内藤 裕二 先生

監修

内藤 裕二 先生 (一般社団法人 日本ガットフレイル会議 理事長/日本潰瘍学会理事長/日本酸化ストレス学会理事長/京都府立医科大学大学院医学研究科生体免疫栄養学講座教授)

おならの基礎知識

臭いおならは硫化水素、二酸化硫黄などの悪臭成分が原因

「おなら」とは肛門から出るガスのことです。ガスは食事や呼吸などを通じて体内に取り入れられる他、食べたものが腸内細菌によって腸内で分解される際などに発生しています。

おならの成分の大半を占めるのは窒素で、その他に酸素、二酸化炭素、水素、メタンを少量ずつ含んでいます。

おならというと、とても臭いにおいがすると思われがちですが、大半を占める窒素は無臭ですので、基本的には無臭だったり、漬物のようなにおいがすることが多いです。

おならの臭いにおいは、ウェルシュ菌など腸内細菌の中でも悪玉菌が発生させているとされており、悪臭をもたらしているのは硫化水素、二酸化硫黄、インドール、スカトールといった成分です。

おならの回数が増えるのはなぜ?

おならの回数が増えるのは、腸内で発生するガスの量が増えるからだと考えられます。

実は腸内で発生したガスのうち、おならになるのは10%程度といわれており、そのほとんどは血液の中に吸収されています。ただし、発生するガスの量が増えると血液の中に吸収できず、腸内にたまる量が増えるため、おならとして肛門から排出される回数も増えていくと考えられます。

個人差はありますが、平均的なおならの回数は1日に1321回程度といわれています。

サツマイモやバナナ、タマネギ、プルーン、アルコール、カフェインなど、ガスを発生させやすいとされる食品や栄養成分を多く摂ると、ガスの発生量が増え、おならの回数も増える傾向があります。また、食事の影響以外に、便秘や過敏性腸症候群などの病気が影響している可能性も否定できません。

もしも「最近、おならの回数が多すぎて心配になる」という人がいれば、消化器内科を受診し、医師の診察を受けることをおすすめします。

おならに関する記事はこちら おなら

おならが臭い原因は食生活の偏りや便秘などが考えられる

生活習慣による原因

おならが臭くなる原因は大きく、生活習慣によるものと疾患(病気)によるものに分けることができます。まずは生活習慣による原因について解説します。

  • 動物性タンパク質の過剰摂取

タンパク質の摂取量が多くなると、体内のアンモニアの発生量も多くなり、おならが臭くなることがあります。特に動物性タンパク質は、脂肪分も含んでおり、タンパク質や脂肪を多く摂取することは、悪玉菌増加の一因になります。

  • ネギやニンニクなど硫黄を含むものの摂取

ニンニク、ニラ、ネギなどには、硫黄化合物が多く含まれています。代表的な硫黄化合物は硫化アリルやアリシンで、体内で硫化水素を発生させることもあるため、硫黄化合物を多く含む食品を食べると、発生する硫化水素の量が増え、おならが臭くなると考えられます。

  • 腸内環境の悪化

ヒトの腸には1,000種類以上、数にすると100兆個の腸内細菌が生息するといわれています。それらは主に大腸に存在し、善玉菌、悪玉菌、そして、そのどちらでもない中間の日和見菌という3つのグループに大きく分かれています。

これら3つの菌のグループは、互いにバランスをとり合っていますが、食習慣や不規則な生活、ストレスなどの影響でバランスが崩れ、悪玉菌が腸内に増えてしまうことがあります。悪玉菌が増えると、腸内では腐敗物質と呼ばれる物質が多くつくられるようになり、ガスの発生が増えたり、ガス自体のにおいもきつくなったりします。

  • 便秘

便秘とは「本来体外に排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状態」のことです。便秘になると、排出されない便とガスが腸内に溜め込まれます。

すると、溜まったガスを外に出すために、おならの回数が増え、長い間、腸に停滞したガスは発酵が進むことで、悪臭が発生します。

便秘に関する記事はこちら 便秘

おならのにおいに加えて腹痛や下痢などを伴う場合に考えられる胃腸の病気

おならが臭いのは、病気が原因となっている可能性も考えられます。

※以下の疾患の中には、医師の診断が必要なものもあります。症状が続くなど心配な場合には、早めに医師の診断を受けましょう。

  • 過敏性腸症候群(irritable bowel syndrome IBS)

過敏性腸症候群とは、特に異常が見つからないにもかかわらず、お腹の張り、腹痛、下痢、便秘などの慢性的な便通の異常を感じる症候群のことです。

腸内が何らかの原因によって過敏になり、引き起こされると考えられていることから、その名前がついています。

症状はさまざまで、下痢と便秘が交互に起こったり、何週間も下痢が続いたり、一時的に治まってもその後再発することを繰り返す、といったこともあります。

過敏性腸症候群になると腸内の環境が乱れ、腸にガスが溜まって、お腹がゴロゴロと鳴ったり、おならの回数が増えたりすることが少なくありません。

過敏性腸症候群に関する記事はこちら 過敏性腸症候群

  • 慢性胃炎

主にピロリ菌の感染による胃の炎症を指します。胃の粘膜が弱まり、炎症が繰り返されて治りにくくなっていることが多いです。

長引く胃の炎症は、胃の機能を低下させます。そして、おならの回数が増えたり、突然に胃痛や吐き気が起こったり、膨(ぼう)満感(まんかん)、胃もたれ、胃痛、胸やけ、吐き気、げっぷなどの症状が慢性的に繰り返されることも多々あります。中には、胃潰瘍(いかいよう)に進行するケースもあります。

また、ピロリ菌はアンモニアを産生するため、おならの臭いにも影響します。

胃炎に関する記事はこちら 胃炎

  • 大腸がん

初期の大腸がんの多くは、検査を受けてようやくわかる程度の血便が出るくらいで、ほとんど自覚症状がないのが特徴です。がんの進行にともなって大腸が狭くなり、がんこな便秘が生じて、弱い音のおならが出るようになります。さらには、腹部にしこりを感じたり、細い便が出たり、下痢、腹痛といった症状があらわれます。

また、大腸がんを患っている人の腸内では、硫化水素の生成に関わる細菌が増えていることが報告されており、硫化水素はおならの悪臭の一因であることから、大腸がんとおならのにおいの関連も注目されています。

※以上の疾患の中には、医師の診断が必要なものもあります。症状が続くなど心配な場合には、早めに医師の診断を受けましょう。

腐った卵のにおいやアンモニア臭など、おならの悪臭の種類

おならの悪臭のもととなる物質には以下のようなものがあります。

  • 硫化水素

「温泉のにおい」や「腐った卵のにおい」などと表現されることがある硫黄化合物の1種で、いわゆる悪臭成分として知られています。おならの中に含まれる硫化水素の割合は1%未満といわれていますが、それだけでもじゅうぶん悪臭を発生させます。

  • 二酸化硫黄

火山の噴火などで放出されるガスの1種です。無色の気体で、独特な刺激臭があります。タマネギや、ジャガイモ、サバ、サンマなどの食品には二酸化硫黄が含まれており、摂取することでおならの悪臭の原因となります。

  • スカトール、インドール

スカトールとインドールは、ともに動物などの糞便に含まれる物質です。不快な悪臭がすることで知られており、特にスカトールは、かび臭いにおいがするといわれています。

  • アンモニア

尿のにおいのようなツンとした刺激臭があり、水に非常に溶けやすいのがアンモニアの特徴です。体内ではタンパク質を分解することで生成されます。

悪臭を伴うおならのにおい対策には食べ物や運動習慣の改善が効果的

動物性タンパク質の摂取を控える

タンパク質は分解されるときにアンモニアを発生させ、おならを臭くします。特に動物性タンパク質は脂肪分も含むため、悪玉菌も増加しやすい傾向があります。

しかし、タンパク質は筋肉、臓器、皮膚、毛髪など、体をつくるのに欠かせない栄養素です。また、ホルモン、酵素、抗体といった体の調節機能にもかかわります。したがって、おならのにおいが気になるからといって、タンパク質を食べないことはおすすめできません。

食べないのではなく摂りすぎを控えたり、動物性ではなく植物性のタンパク質の摂取を増やしたりして、バランスの良い食生活をすることが大切です。

腸内フローラと大腸のバリア機能の改善

腸内に無数に存在する腸内細菌は、それぞれのなわばりを持ちながら相互に影響し合う豊かな生態系を形成しています。それを「腸内フローラ」または「腸内細菌叢(そう)」と呼んでいます。

腸内フローラを形成している細菌は、腸内に運び込まれてきた食べ物をエサとして分解し、消化や吸収を助けたり、分解の過程で生じる代謝産物によって心身の機能を左右したりと、私たちの健康に深く関わっています。

善玉菌、悪玉菌、日和見菌のバランスをとり、腸内細菌の多様性を高めることが、腸内フローラの改善につながります。

イメージ図

また、代謝産物による好ましい影響として、大腸のバリア機能の改善があります。大腸のバリア機能とは、大腸の組織に有害な物質や細菌が接触、侵入しないように分厚い粘液のバリアをつくり出すことです。粘液は潤滑油のように便をスムーズに移動させるため、便通の改善にもつながります。腸内細菌の1種である酪酸菌は、大腸の重要なエネルギー源である酪酸を産生します。酪酸は、大腸の粘膜を構成する粘膜上皮細胞という細胞が必要とするエネルギーの6080%をまかなっており、粘液の産生を促すことで大腸のバリア機能の改善に関わります。

腸内環境を整えることで、便通が整い、おならのにおいの軽減が期待できます。また、善玉菌である酪酸菌を摂取することで、大腸のバリア機能の改善が期待でき、有害物質や悪玉菌が腸内に入らないようになることで、おならのにおいへの影響も期待できます。

こちらの記事もチェック。 【新しい腸活】ポイントは「腸内フローラ」だけじゃない!? 腸内環境を整えるおすすめの方法

適度な運動で自律神経を整える

運動習慣は、腸内環境の改善だけでなく、血行の促進や自律神経の活性を促す効果も期待できます。

自律神経が整うと、腸のぜん動運動*の促進や便秘解消につながり、健康な腸を維持しやすくなります。腸の健康状態が改善すれば、おならのにおいの軽減にも役立つでしょう。

*ぜん動運動:腸を動かす筋肉・平滑筋が収縮と弛緩を順番に繰り返すことで、内容物を移動させ、体外に排出する動き

自律神経の乱れに関する記事はこちら 自律神経の乱れ

食物繊維の摂取

整腸作用をもち、体の中で有用な働きをする栄養素といえば、食物繊維が有名です。食物繊維には水溶性と不溶性があり、腸を整えるには水に溶けやすい水溶性食物繊維が有用です。

水溶性食物繊維を積極的に摂取すると、糞便中のアンモニアと腐敗産物の量が減少し、便のにおいが軽減されたという試験結果もあります。便のにおいの軽減にともない、おならのにおいも軽減されることが考えられます。

水溶性食物繊維を多く含む、モロヘイヤ、ごぼう、ライ麦パンなどを積極的に摂ると良いでしょう。

こちらの記事もチェック。 食物繊維はおなかの調子を整えるだけじゃないんだ?

善玉菌を含む食品の摂取

善玉菌、悪玉菌、日和見菌という3つの腸内細菌のうち、悪玉菌が増えると、おならのにおいが臭くなることがあります。そんなときは、善玉菌を積極的に摂取して腸内細菌のバランスを整えましょう。それが、おならのにおいの軽減にもつながります。

腸内の善玉菌の割合を増やす方法には、大きく分けて2通りあります。

1つ目は、健康に有用な作用をもたらす生きた善玉菌である「プロバイオティクス」を直接摂取する方法です。ビフィズス菌や乳酸菌を含むヨーグルト、乳酸菌飲料、納豆、漬物などを食べると、プロバイオティクスが摂取できます。

ただし、これらの菌は、腸内にある一定の期間は存在しても、住み着くことはないという性質であることがわかっています。そのため、毎日続けて摂取するのがおすすめです。

2つ目は、腸内にもともと存在する善玉菌を増やす作用のある「プレバイオティクス」を摂取する方法です。オリゴ糖や食物繊維がこのプレバイオティクスにあたり、これらの成分は野菜類・果物類・豆類などに多く含まれています。オリゴ糖は、大豆、たまねぎ、ごぼう、ねぎ、にんにく、アスパラガス、バナナなどの食品にも多く含まれているため、これらを日々の食事に積極的に取り入れると良いでしょう。

また、さきほど紹介した大腸の重要なエネルギー源である酪酸を生み出す酪酸菌も、腸内環境を正常に保つために重要です。腸内の酪酸菌を増やすには、酪酸菌のエサとなる食物繊維を多く取り入れるのが有効です。また、酪酸菌を直接摂取できる、ぬか漬けや臭豆腐といった食品を摂ると効率的ですが、好き嫌いがあることも。その場合は、酪酸菌を含む整腸剤などで取り入れるのも選択肢のひとつです。

こちらの記事もチェック。 腸内環境を整える!「腸活」におすすめの運動と酪酸菌のおはなし

食べ物や生活習慣を改善してもおならが臭い場合は病院へ

おならが臭くなる原因は、生活習慣や病気、腸内環境の変化など、いくつかのことが考えられます。規則正しい食習慣や運動習慣の定着などを意識して、心身と腸の健康を保つことを心がけましょう。それが結果として、おならのにおいを軽減させる近道にもなるでしょう。

<参考>

厚生労働省 e-ヘルスネット
(https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/)

山田篤生:運動・からだ図解 消化器のしくみ(マイナビ出版・2020/9/22p144-145

Effects of Partially Hydrolyzed Guar Gum Intake on Human Intestinal Microflora and Its Metabolism
(https://www.jstage.jst.go.jp/article/bbb1992/58/8/58_8_1364/_article/-char/ja)

モダンメディア66巻2号 2020 [腸内細菌叢] 37 P11-16
(https://www.eiken.co.jp/uploads/modern_media/literature/P11-16.pdf)