ぎっくり腰(急性腰痛症)の対処法とは?症状や原因、慢性的な腰痛への対処法も紹介

ぎっくり腰(急性腰痛症)の対処法とは?症状や原因、慢性的な腰痛への対処法も紹介

ぎっくり腰(急性腰痛症)になると、何気ない動作をきっかけに突然腰に激痛が走り、動けなくなることもあります。日常生活にも大きな影響が及ぶでしょう。発症の原因は多種多様で、安静によって痛みが軽快する場合もあれば、慢性化する場合もあります。治療には、専門医による適切な検査と正確な診断が不可欠です。本記事では、ぎっくり腰の症状や原因、整形外科を受診する目安、応急処置について解説します。簡単にできる生活上の工夫や予防法、慢性的な腰痛への対処法も併せて紹介します。
竹谷内 康修 先生

監修

竹谷内 康修 先生 (竹谷内医院 院長)

ぎっくり腰の症状

ぎっくり腰は一般的によく用いられる用語ですが、正式な病名ではありません。医学的な診断名は、「急性腰痛症」です。ここでは、ぎっくり腰と慢性的な腰痛の違いを解説します。

ぎっくり腰

突然の激しい痛みが出る腰痛を指し、ヨーロッパでは「魔女の一撃」ともいわれます。くしゃみが出たとき、腰をひねったとき、重い物を持ち上げようとしたときなどに発症することも少なくありません。有症期間(症状が出ている期間)は4週間未満と定義されていて、重症の場合は身動きがとれなくなりますが、通常は数日~数週で改善します。

慢性的な腰痛

中程度の痛みが3ヵ月以上持続する腰痛を指します。場合によっては、日常生活に制限が出るほど強い痛みを覚えることもあります。ぎっくり腰からの慢性化、腰に関連する慢性の疾患、不良姿勢や運動不足などの生活習慣、ストレスの蓄積など、さまざまな要因が関与するといわれています。

病院に行くべきサイン

「単なるぎっくり腰だと思っていたら、実は重大な疾患が隠れていた」という場合もあるため、注意が必要です。ここでは、考えられる代表的な4つの疾患、病院に行くべき症状を紹介します。

最も多いのが脊椎由来の疾患で、腰椎椎間板(ようついついかんばん)ヘルニア、脊柱管狭窄症(せきちゅうかんきょうさくしょう)、脊椎椎体骨折(せきついついたいこっせつ)、脊椎感染症などです。
神経由来の疾患には、脊髄腫瘍(せきずいしゅよう)や馬尾腫瘍(ばびしゅよう)などがあります。「脊髄」とは脳と体をつなぐ神経の束のことを指し、「馬尾」とは脊髄の下端から伸びる神経の束のことを指します。
内臓由来の疾患は、腎結石や尿管結石などの腎尿路系疾患と、子宮内膜症などの婦人科系疾患に分かれます。
最後に、血管由来の疾患は、腹部大動脈瘤や解離性大動脈瘤などです。

これらの疾患を鑑別するうえで、危険信号(red flags)となる症状があります。具体的には、麻痺(体の力が入りづらい、あるいは入らない)、しびれや感覚障害(触れてもわかりにくい、あるいはわからない)などの神経症状、排尿や排便の障害、発熱、原因不明の体重減少、胸部痛などです。

これらの症状がある場合は、自己判断せず、まずは整形外科を受診しましょう。

ぎっくり腰の原因

背骨の腰部分は腰椎(ようつい)と呼ばれ、椎骨(ついこつ)と呼ばれる骨が5つ積み上がって形成されています。椎間関節(ついかんかんせつ)は、この椎骨同士をつなぐ、左右一対の関節です。さらに、椎骨と椎骨の間でクッションの働きをしている軟部組織が椎間板(ついかんばん)です。

以前は腰痛の原因は特定できない場合が多かったものの、近年では75%以上で推定が可能とされています。上述の椎間関節や椎間板の炎症など、さまざまな原因が考えられます。

ここでは、4つの代表的なぎっくり腰の原因を紹介します。

急な動作や無理な動き

ぎっくり腰は、何か物を持ち上げようとしたとき、腰をねじる動作をしたとき、急に動いたときなどにも起こりやすいとされています。具体的には「前かがみ」「後ろにそらす」「横に曲げる」「ねじる」といった腰に大きく負担がかかる動きをすると、椎間板内圧(腰の骨と骨の間にあるクッション構造にかかる圧力)が高まり、椎間板の変性が進行しやすくなります。これらの動きを組み合わせた場合にも、腰椎の椎間板内圧が高まることが知られています。

また、椎間板の変性がある場合には、腰の後方へのそらし動作で特に椎間板内圧が高まりやすいともいわれています。さらに、動作速度も影響し、急な動作は瞬間的に腰に大きな負荷がかかるため、ぎっくり腰が発症しやすくなります。

ぎっくり腰の発症リスクを減らすためには、無理な姿勢や急な動作を避けることが重要とされています。

筋肉疲労の蓄積

ぎっくり腰の発症は突然に感じますが、急な動作や無理な動きだけが原因なのではありません。関節や筋肉などに日常的に負担がかかっていると、疲労が蓄積することで些細な動作でも損傷を起こし、ぎっくり腰の原因となり得るのです。

そのうちの1つとして、運動習慣や日常生活による筋肉疲労の蓄積が考えられます。筋肉疲労の回復には「休養」と「栄養」が不可欠で、回復にかかる期間は、筋肉にかかる負荷の強さによって変わります。例えば、軽いジョギングや筋トレなどで1~2日ほど、高強度のトレーニングで数日から1週間ほど必要だといわれています。

筋肉にかかる負荷の強さに対して休養が十分に取れていないと、筋肉疲労が蓄積します。これは普段から運動をする方だけでなく、日常生活で腰に負担のかかる姿勢や作業をすることがある方も同様です。

筋肉疲労の回復には、休養だけでなく、栄養の摂取も欠かせません。筋肉疲労の回復のためには、エネルギー源である糖質や筋肉の修復に必要なタンパク質に加え、ビタミンB群が不可欠です。特に、ビタミンB1は、ブドウ糖をエネルギーに変える反応である「糖質の代謝」に関わっており、欠乏するとエネルギーが作り出せなくなってしまいます。その結果、筋肉のだるさや痛みが抜けず、筋肉疲労が蓄積します。

ビタミン全般は微量栄養素とも呼ばれ、体に必要とされる量は少ないものの、必要不可欠な栄養です。食品に含まれる量が少なく、十分に摂取することが難しいため、不足しないようにバランスの良い食事を心がけましょう。

腰に負担のかかる姿勢の継続

腰に負担のかかる姿勢を続けていると、腰椎の椎間板内圧が高まります。

直立を100%とした場合の椎間板内圧

(Nachemson A :The lumbar spain.An orthopaedic challenge.Spain 1:59-71,1976)

意外に思われるかもしれませんが、まっすぐ立っているときよりも、座っているときのほうが、椎間板内圧が約1.4倍高いとされています。また、ただ座っているときよりも、前かがみになったときのほうが、椎間板内圧は約1.3倍高いとされ、ただ立っているときよりも、前かがみになったときのほうが、椎間板内圧は約1.5倍高いとされています。さらに、骨盤が後ろに傾いて背中が丸くなった「猫背姿勢」、あるいは骨盤が過度に前へ傾く「反り腰」も椎間板内圧が高いとされています。

これらのような不良姿勢を長時間続けていると、椎間板内圧が高い状態が続き、腰を支える筋肉の負担が増加するため、ぎっくり腰を引き起こす一因になると考えられています。

椎間板の変性

椎間板は背骨の動きをスムーズにし、衝撃を吸収します。さらに、背骨の後方を通る神経を保護する働きもあります。

椎間板は「線維輪(せんいりん)」と「髄核(ずいかく)」という2つの部分からなります。線維輪は、髄核を包む硬い繊維状の層で、髄核が飛び出さないように守っています。髄核は主に水分からなり、やわらかい芯のような構造をしています。この椎間板は年齢とともに水分が減少し、弾力が失われていきます。加えて、椎間板内圧を高める姿勢や動作を繰り返すことで、弾力が失われた椎間板の線維輪は損傷しやすく、変性が進行しやすくなると考えられています。

変性が進むと、線維輪が断裂したり、椎間板が終板や靭帯からはがれることがあります。さらに、髄核が線維輪を破って飛び出ると、腰やお尻に痛みが出たり、下肢(足・足指)に痛みやしびれが出ることもあります。これを「椎間板ヘルニア」と呼びます。

椎間板ヘルニアでも無症候性(自覚できる症状がない)の場合もありますが、椎間板が中度に変性して繊維輪に亀裂が入ると、炎症反応が強まり、ぎっくり腰を引き起こすことがあるとされています。さらに、椎間板ヘルニアがあると、神経の圧迫や刺激から体を守ろうとして腰周辺の筋肉が過剰に緊張状態になったり、痛みを避けるために無意識に姿勢を変えたりして、腰への負担を増加させてしまいます。

このように、椎間板ヘルニアがある状態では日常的な動作でも腰への負担がかかりやすくなるため、ぎっくり腰の発症リスクが高まると考えられます。椎間板の健康を保つためには、日頃の姿勢や動作に気をつけることや腰やお腹などの筋力を維持することが大切です。

<セルフチェック>
腰痛になりやすい姿勢や生活習慣のセルフチェックはこちらから

ぎっくり腰の対処法

ぎっくり腰への対処は、急性期の応急処置からその後の回復や再発予防まで、段階的に行うことが重要です。ここでは、発症直後の対応や医療機関での検査・治療の流れ、さらに自宅でできるセルフケアや生活上の工夫について紹介します。

発症直後は、安静と冷却が基本

発症から数日間は通常の活動を中止するか、控えめにしましょう。無理に動かさないことが大切です。

痛みのある部分は、発症直後の48~72時間は冷やし、その後は温める方法が推奨されています。冷却は炎症や腫れを一時的に和らげ、温熱は筋肉のこわばりを和らげて血行を促進するのに役立つとされているためです。冷却は10~15分とし、繰り返す場合は2~3時間おきにしましょう。温熱は40~45℃で10~15分とし、1日に3回までにしましょう。

長期間の安静や寝たきりはかえって回復を遅らせることがあるため、痛みが落ち着いたら可能な範囲で体を動かし、少しずつ普段の活動に戻りましょう。

病院での検査や治療を受ける

整形外科では、まず問診と診察で神経学的障害や危険信号(red flags)の有無を確認します。必要に応じて、単純X線(レントゲン)やMRI、CTなどを用い、骨・椎間板・神経の状態を詳しく検査します。適切な治療を行うためには、正確な診断が不可欠です。

治療は保存療法が基本ですが、必要に応じて薬物治療やリハビリなどの対症療法が行われることもあります。さらに、神経症状が強い場合や原因が明確な場合などは、手術などの対応も検討されます。

急性的なセルフケアには、鎮痛薬の使用も

ぎっくり腰は、医学的には「腰椎捻挫」と呼ばれることもあります。腰の捻挫であるぎっくり腰の痛みに対処するために、鎮痛薬が使用されることがあります。鎮痛薬には、皮膚から有効成分を浸透させて痛みを抑える湿布などの貼付剤と、有効成分が脳に作用して痛みの伝達を抑える内服薬の2つに大きく分けられます。市販の内服薬では、解熱と鎮痛の2つの効果を併せもつ成分である「アセトアミノフェン」が急性痛の緩和に適しています。

ただし、鎮痛薬は用法・用量を守って使用することが大切です。また、持病や他の内服薬がある場合は、医師や薬剤師に相談するようにしましょう。鎮痛薬はあくまで痛みへの対処であり、根本的な改善ではないことにも注意が必要です。

<腰痛・神経痛・捻挫痛など、つらい痛みを和らげるアリナミン製薬の製品>

痛みが落ち着いたら、できる限り普段通りの生活を

長期間の安静は腹筋や背筋の筋力低下につながる可能性があるため、急性痛が和らいだら、無理のない範囲で徐々に日常生活に戻るのが望ましいでしょう。

また、痛みが始まってから最初の6週間は、重いものを持ち上げることや背部をひねる動作は避けましょう。運動は無理のない範囲で、2~3週間後から徐々に再開するのが目安です。その他、セルフケアとして行える対処法としては以下のとおりです。

コルセットを使用する

コルセットは姿勢の安定をサポートするために役立ちます。市販のものでも使用可能ですが、正しい装着方法を守ることが大切です。また、長期間の使用は腹部や腰の筋力の低下につながる可能性があるため、必要な場合にのみ使用し、常時の装着は避けましょう。

腰に負担がかからない寝方をする

両脚の間に枕をはさみ、丸まった姿勢で横になると腰痛が楽になることがあります。仰向けで寝る場合は、枕や丸めたタオルを両膝の下に置くと、腰への負担が和らぐことがあります。

慢性的に腰痛が現れている場合は…

腰痛には、筋肉だけでなく、神経の働きも関与しています。慢性的に腰痛がある場合は、神経機能に働いて痛みを和らげる可能性があるビタミンB群やビタミンEを配合したビタミン剤を活用するのも良いでしょう。

例えば、ビタミンB1は“疲労回復ビタミン”とも呼ばれており、ブドウ糖からエネルギーを産生する過程に関わる栄養素です。欠乏すると疲労やだるさを感じることがあります。また、神経細胞でのエネルギー産生にも関与しています。ビタミンB6には、神経伝達物質の合成を助ける働きがあります。ビタミンB12は神経伝達をスムーズにし、末梢神経の修復や保護を助けます。さらに、ビタミンEは末梢の血液循環に関与しています。

ビタミン剤は鎮痛剤のように直接痛みを取り除くものではありませんが、神経の機能維持を通じて痛みが和らぐ可能性があるでしょう。

ビタミンBは、食品から摂取しても体に吸収されにくいという特徴があり、容易に不足しやすい栄養素の1つといわれています。そこで、神経の働きを支えるビタミンB1が効率的に体に吸収されるように開発された抗疲労成分「フルスルチアミン」が配合された製品を選ぶのもおすすめです。

<抗疲労成分フルスルチアミンやビタミンEなどを配合し、腰痛に効くアリナミン製薬の製品>

ぎっくり腰の予防法

ぎっくり腰の予防には、日常生活での姿勢や動作などの習慣を見直し、筋力と柔軟性を保つことが基本です。また、活動と休息のバランスを整えることや栄養バランスも重要です。ここでは実践しやすい予防法を紹介します。

座りっぱなしを避け、適度に運動する

椅子に座った姿勢は、立っている姿勢に比べて椎間板にかかる圧力が高く、腰への負担が大きくなります。そのため、長時間の座りっぱなしは避け、作業の合間に立ち上がって軽いストレッチや散歩を行うなど、こまめに体を動かす「能動的な休息」をとりましょう。休息の目安は、少なくとも30~60分に1回です。

不良姿勢を避けるためには、作業環境の工夫も大切です。例えば、体幹の前傾や猫背が強まらないように、机や椅子の高さを調整するなどの工夫が効果的です。

腰痛予防ストレッチ

前かがみの姿勢や座りっぱなしの状態が続いた後には、骨盤を後傾させて背骨を反らすようなストレッチを行うと良いとされています。

(厚生労働省,今日の腰痛予防対策マニュアル)

1. 足を肩幅より少し広めで平行に開く
2. 腰に両手を当てて、両肘をできるだけ近づけながら、骨盤を前に押し込む
3. 息を吐きながら3秒しっかりと押し、同じ動作を12回行う

<ポイント>
・あごは軽く水平に引き、胸を開いて骨盤を前にしっかり押し込む
・ひざは曲げずにつま先重心で、かかとは浮くか浮かないかぐらいの状態で
・痛みがお尻から太もも以下に響く場合は中止し、医師にご相談を

活動と休息のバランスを取る

腰に負担のかかかる活動や運動後に適切な休息をとらないと、筋肉の疲労が蓄積してしまいます。1週間のうちに、少なくとも1日は運動を行わない休息日を設けるようにしましょう。

最適な休息の頻度は、行う運動の強度によって異なります。疲労した筋肉の回復にかかる日数は、運動の強度が低い場合でおおよそ1~2日で、強度が高い場合はさらに数日かかります。

栄養バランスを見直す

過度な栄養摂取による肥満は腰への負担を強め、反対に栄養不足は骨や筋肉の健康に悪影響を及ぼすことがあります。そのため、日ごろから栄養バランスのとれた食事を心がけることが大切です。特に、ビタミンB群は、エネルギー代謝や神経の健康維持に関わる栄養素として知られています。

糖質の代謝を助け、エネルギー産生に関与するビタミンB1は、豚肉・うなぎ・大豆などに多く含まれています。ブロッコリー・玄米・バナナなどは、神経伝達物質の合成を助ける働きがあるビタミンB6が豊富です。さらに、赤血球の生成や神経の健康維持に関わるビタミンB12は、貝類・卵・チーズなどに多く含まれています。

これらのビタミンB群が欠乏すると、疲れや倦怠感、手足のしびれなどが生じることがあります。不足が気になる場合は、食事内容を見直したり、医師や薬剤師に相談のうえでビタミン剤やサプリメントなどの活用を検討するのも1つの方法です。

<関連記事>
ビタミンB1が豊富な食べ物とは? ビタミンB1の働きやおすすめレシピも紹介!

ぎっくり腰には適切な対処を行い、早期回復を目指そう

ぎっくり腰は腰の激しい痛みが突然発症するため、日常生活に支障をきたします。ただし、早期の適切な対処と受診の判断、そして回復後の姿勢や運動の管理によって、多くの場合は改善し、再発を防ぐことにつながります。危険信号を認める場合や改善が見られない場合は、速やかに整形外科の専門医を受診し、適切な検査と診断を受けましょう。

急性的なセルフケアには、市販の鎮痛剤を使用するのも有効です。急性痛が落ち着いたら、徐々に日常生活に復帰し、筋力強化や姿勢の改善を意識し、健康な腰の維持に努めましょう。活動と休息のバランスを整え、筋肉や神経の健康を保つために、ビタミン剤やサプリメントなども活用しつつ、普段から栄養が不足しないよう心がけましょう。

参考文献
・腰痛診療ガイドライン2019 改定第2版
・厚生労働省 腰痛予防対策
・厚生労働省 今日の腰痛予防対策マニュアル
・MedlinePlus「Low back pain-acute」,2024
・徳間書店「名医が教える 自分で治す脊柱管狭窄症改善トレ」,竹谷内康修,2024