妊娠中期(安定期)はいつからいつまで?過ごし方のポイントと注意点

妊娠第4月2週~第7月(14週~27週)の妊娠中期(安定期)になるとつわりが落ち着き、ほっと一息ついているママも多いのではないでしょうか。とはいえ、安心しきって無理をしすぎるのは禁物。今回は妊娠中期の母体の変化や、起きやすいマイナートラブル、注意しておきたいことなど、産婦人科医監修のもとにご紹介していきます。

窪 麻由美 先生

監修窪 麻由美 先生(丸の内の森レディースクリニック 副院長)

妊娠中期(安定期)はいつから?どんな時期??

妊娠第4月2週~第7月(14週~27週)の期間を「妊娠中期」といいます。妊娠12週以降にはつわりが治まってくる人が増えるため、妊娠中においては比較的過ごしやすくなってくる頃といえるでしょう。
妊娠中期には胎盤の基本構造が完成し、ママの血液が赤ちゃんにどんどん送られるようになります。これにより、赤ちゃんの骨格や筋肉が大きく成長していく時期。お腹のふくらみが少しずつ目立ち始めたり、バストが張ってくるなど、赤ちゃんの成長を実感できるようになるママも多いはずです。

妊娠中期(安定期)の赤ちゃんはどんな様子?

発達状況

妊娠中期を迎える頃には、赤ちゃんの内臓の形態はほぼ完成し、その後、爪や髪の毛、産毛などが生え始めます。また、聴覚が発達してくるため、外界の大きな音に反応するように。外性器の形態は赤ちゃんの向きによって見えることもあります。
妊娠20週以降になると、赤ちゃんの筋肉や骨格がますます発達して、胎内での動きが活発になります。そのため、多くのママが赤ちゃんの動きを胎動として感じられるようになります。

妊娠中期(安定期)のママの体は?母体にどんな変化が起きる??

妊娠中期は赤ちゃんの体が大きく成長する時期。そのため、ママの体重が増え、お腹が目立ち始めるようになります。
また、この時期はエストロゲンという女性ホルモンが多く分泌されることにより、血管が太く膨れ上がってくるため、乳輪部や乳首、ワキなどが黒ずんでくるママも多いです。 そして便秘や腰痛、集中力の低下など、マイナートラブル(妊娠に伴って起こる不快な症状)が起きやすくなってくる時期でもあります。詳しくみていきましょう。

マイナートラブル①/イライラ・苛立ち

そもそも妊娠中はママ自身の体が大きく変化するうえ、日常生活に制約が増えるなど、何かとストレスを感じがちに。さらに、妊娠による女性ホルモンのバランス変化によって、自分でも気づかないうちにイライラしてしまうことが多いのです。ストレッチやウォーキングなどの軽い運動や、趣味に集中するなどしてストレス発散に努めましょう。
それでも改善しない場合は要注意。重症化すると、うつ病になってしまう恐れもあります。医師やパートナー、家族に早めに相談し、必要なサポートを得られるようにしておきましょう。

マイナートラブル②/倦怠感・眠気

要因はさまざま考えられますが、「鉄欠乏性貧血」「ホルモンバランスの変化」「赤ちゃんの成長」「栄養不足」などによる可能性があります。

■鉄欠乏性貧血

妊娠中は赤ちゃんの血液をつくる材料である鉄が、胎盤を通して赤ちゃんに送られます。そのため、特に妊娠中期以降は貧血になりやすく、1日20mg(非妊娠時は1日12~15mg)の鉄を摂る必要があります。レバー※やほうれん草などの食品、または、サプリメントなどから鉄分を多く摂ることを心がけましょう。

※レバーにはビタミンAも豊富に含まれています。過剰摂取すると胎児の形態的な異常が増加すると報告されているため、少量ずつ摂取するようにしましょう。

■ホルモンバランスの変化

妊娠によってホルモンバランスが急激に変化しますが、なかでもお腹の中で赤ちゃんを育てるために必要となるプロゲステロンの分泌量が増えます。このプロゲステロンには体温をあげたり、眠気をもよおす作用があるため、体のだるさを感じることもあります。

■赤ちゃんの成長

妊娠初期と比べてお腹が大きくなったことによる姿勢の変化で、首や背中の筋肉が異常に緊張しやすく、倦怠感を感じやすくなります。さらに胎動、赤ちゃんの動きが活発になってくることも要因だと考えられます。

■栄養不足

朝食をとらないママは、朝食をとるママと比較して、疲労感を感じている人が多いという研究があります。なるべく1日3食とるように心がけ、難しい場合はサプリメントやビタミン剤などを活用してみましょう。

マイナートラブル③/お腹の張り

妊娠中期には胎盤が完成し、子宮への血流が急激に増え、大きくなるので、多くの人がお腹の張りを感じるようになります。また、子宮の収縮が不規則的に起こるように。横になって安静にし、治まってくるようであれば問題ありません。
一方で、出血や痛みを伴う場合、また、子宮の収縮が規則的に起こっている場合は、流産や早産など、危険な状態になることがあるので、すぐに受診しましょう。

マイナートラブル④/便秘

妊娠すると、プロゲステロンという女性ホルモンの分泌が増えることで、腸の動きが鈍くなります。また妊娠中期になると、子宮が大きくなることで腸が圧迫され、動きが制限されるため、さらに便秘になりやすい状態に。
便秘の予防には、十分な水分を摂り、食物繊維の多い野菜(根菜、かぼちゃ、ブロッコリーなど)を取り入れるのがよいでしょう。また、適度な運動も効果的です。
改善されない場合は、医師に相談しましょう。

マイナートラブル⑤/腰痛

妊娠中期以降は、出産の準備態勢を整えるため、骨盤の関節が徐々に緩んでいきます。また、お腹が大きくなることで上体を反るような姿勢になったり、子宮が大きくなることなどが原因で腰痛を起こしやすくなります。特に、立ったり座ったり、階段を昇り降りするときなどに、腰部全体が鈍く疼くような痛みを感じる人が多いようです。
対策としては、横になるときは膝の間、腹部の下に枕をはさんで横向きに寝る、座るときは、背もたれのまっすぐな椅子を使用するなど、腰に負担がかからない姿勢でケアを工夫すると良いでしょう。また、骨盤ベルトや腹帯の着用も効果があります。

妊娠中期(安定期)はどう過ごしたらいい?

過ごし方のポイント

体調が良ければ、適度な運動をするのがよいでしょう。なかでもウォーキングやヨガ、水泳や水中ウォーキングなどの軽い有酸素性運動がおすすめです。たくさんの酸素を体内に取り入れることができる有酸素性運動は、赤ちゃんの発育を促すだけでなく、母体の脂肪燃焼を助けてくれるため、体重の増えすぎを予防できるからです。ただし、激しい有酸素性運動のマラソンや無酸素性運動の筋トレなどは控えましょう。
また、この頃には赤ちゃんは外界の音が聞こえるようになるので、パパと一緒に話しかけたりと、コミュニケーションをとるのもいいですね。徐々に出産準備品を検討したり、揃え始めるのもおすすめです。

注意点

妊娠中期はつわりが治まって食欲が増すことや、赤ちゃんが大きく発育する時期でもあるため、ついつい食べ過ぎてしまいがち。しかし、塩分、糖分の摂りすぎは妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病の原因になります。一汁三菜を基本に、薄味で栄養バランスのよいメニューにすることで予防に努めましょう。食事を工夫しつつも、栄養バランスが気になる時はビタミン剤やサプリメントを活用してみるといいでしょう。

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    ※妊娠3ヵ月以内の妊婦は、服用前に医師、薬剤師または登録販売者に相談してください。

その他の注意点として挙げられるのが、妊娠中のセックス。人に聞きにくく、「安定期に入り、体調が落ち着いたら再開してもよい?」と疑問に思うママ・パパもいるでしょう。ドクターストップがかかっていなければセックス自体はOKですが、長時間の正常位など、お腹が圧迫される姿勢は避けましょう。コンドームには感染症の他にも、早産を予防するため、着用をおすすめします。
また、安定期に「夫婦だけの思い出を作りたい」と、旅行を検討される方もいるかもしれません。旅行は絶対NGではありませんが、医師や家族とよく相談してから計画を立てましょう。特に海外では、何かあった際に産婦人科医による治療が受けられない可能性もあります。旅先の医療体制をしっかりと確認するようにしましょう。

行っておくと良いこと

里帰り出産をする場合は医師から紹介状をもらい、一度受診しておきましょう。病院によって1回目の受診の時期が違うので、必ず確認を。その際、いつまでに転院すればよいかも確かめ、今後の計画を立てるようにしましょう。
また、夫婦で両親学級への参加をしておくのもおすすめ。妊娠・出産・産後について夫婦一緒に学ぶことで、出産や育児への不安が和らいだり、夫婦の目線合わせができるなど、メリットがたくさんあります。産院や地域の保健所などで行っているので、調べてみましょう。
そして、忘れてはいけないのが歯科受診です。妊婦になると、虫歯や歯周病にかかりやすくなります。歯周病になると、早産および低体重児出産のリスクが約7倍にもなるので注意が必要です。妊娠時の歯科治療は実施が可能な時期、方法が限られるため、早めに歯科医師に相談しましょう。

妊娠中期(安定期)に注意しておくべき症状・病気は?

切迫早産

頻回な子宮収縮や出血がみられ、早産に進む可能性がある状態を切迫早産といいます。
切迫早産の一番の治療法は、とにかく安静にして子宮の収縮を抑えることです。切迫早産と診断されたら、外出を控え、自宅でゆっくりと過ごすようにしてください。程度が重い場合は入院が必要になることもあります。

子宮頸管無力症

子宮頸管無力症とは、子宮口が開きやすい体質を指します。子宮頸管無力症に陥ると、胎児や胎盤の徐々に増えていく重さに耐えきれず、子宮口がどんどん拡大することがあるのです。妊娠20週頃からの出血や、強く頻回なお腹の張りを感じたら、すぐに医療機関を受診しましょう。
週数によっては早産、流産を防ぐために、子宮の出口である頸管を縛る子宮頸管縫縮術を行うこともあります。

妊娠高血圧症候群

妊娠高血圧症候群は、妊娠中に血圧が上昇し、蛋白尿が出る病気で、妊娠20週以降に起こる病気です。胎盤に影響するため、赤ちゃんの発育に悪影響を及ぼします。
初めてのお産(初産婦)、双子などの多胎妊娠、過去に妊娠高血圧症候群になったことがある、肥満、40歳以上の高齢、高血圧・腎臓病・糖尿病のある人はこの病気のリスクが高いため、厳重な体重管理を行っていく必要があります。もし発症した場合は、食事療法と薬物療法を行い、ママと赤ちゃんの状態を観察しながら、分娩する時期を調整、見定めていきます。

妊娠糖尿病

妊娠糖尿病は、妊娠中に初めて発見・発症した、糖尿病に至っていない糖代謝異常です。太りぎみ・痩せぎみといった体形や、糖分の摂り過ぎによって発症します。妊娠初期の検査で問題なかった人も、妊娠中期に発症する可能性もあるため、もう一度血糖の検査を行います。
妊娠糖尿病になると、巨大児や赤ちゃんの低血糖、黄疸など多くの合併症が起こる可能性もあります。さらに、ママと赤ちゃんの将来の糖尿病リスクを高めてしまう危険も。食事療法を行い、医師の判断に応じてインスリン注射を用いて治療します。

前置胎盤

前置胎盤とは、胎盤が正常より低い位置について、子宮の出口にかかっている状態を指します。原因は不明で、さらに無症状のことが多いため、産婦人科健診の経腟超音波検査で発見されることがほとんどです。ただ、痛みが無いのに急に出血してくることもあります。
妊娠の経過とともに子宮が大きくなるにつれ、徐々に胎盤が上に上がり、改善されることが多くあります。しかし、妊娠後期までに治らず、リスクが高いと判断された場合、帝王切開が必要になります。健診でしっかりと経過を確認してもらいましょう。

体調に気をつけながら、自分や夫婦の時間を楽しんで

つわりが落ち着いて過ごしやすくなり、胎動や話しかけなどのコミュニケーションで赤ちゃんの成長を実感できる妊娠中期。パパと一緒にウォーキングなどの運動を楽しんだり、出産準備品を揃えたりと、出産に向けて夫婦の時間を楽しみ、ふたりの関係を育んでいきましょう。

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参考文献

1) 編集・監修 公益社団法人 日本産科婦人科学会、公益社団法人 日本産婦人科医会. 産婦人科診療ガイドライン 産科編 2020
2) 公益社団法人 日本産科婦人科学会 一般の皆様へ
https://www.jsog.or.jp/modules/diseases/index.php?content_id=1
3) 厚生労働省研究班(東京大学医学部藤井班)監修・女性の健康推進室 ヘルスケアラボ
https://w-health.jp/
4) 国土交通省 航空機利用に関する質問
https://www.mlit.go.jp/koku/15_bf_000718.html
5) 厚生労働省「周産期医療体制の現状について」
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10801000-Iseikyoku-Soumuka/0000096037.pdf